■掲示板に戻る■ 検索 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 最新50
雑談スレッド
レス数が1000を超えているので、これ以上投稿できません。
377 名前:金子譲@子龍 2004/04/05 00:53 [URL]
→小倉さん

CDの値段についてはおっしゃる通りかもしれません。おそらくそのほとんどの原因は再販制度のせいでしょう。しかしその高いCDの利益の中から、その分高い印税がミュージシャンに支払われているかと言うと、そんなことはありません。

最近、こんなことがありました。カナダのテレビ・プロデューサーと知り合う機会があったのですが、その人は「日本のテレビ番組は何故こんなに市販のCDの音楽が使えるんだ?」と不思議がっていました。私がじゃあカナダではどうしてるのか、と聞くと、カナダでは番組のためのオリジナル曲を作曲家にそのつど作ってもらうのが普通だ、ということでした。何故そうするかと言うと、カナダでは市販のCDの曲をテレビで使うととても高い使用料がかかり、オリジナル曲を作曲してもらった方がむしろ安いからだそうです。

つまり、同じようにテレビで曲が使われても、日本でミュージシャンに支払われる使用料は、カナダのそれよりずっと安いんです。これには二重の問題があります。一つはもちろん直接的に作詞・作曲者がもらえる印税が少ないこと。カシオペアの向谷実氏が以前インタビューで、アメリカの友人が日本にきてカシオペアの曲がテレビでバンバン流れているのを見て、「こんなに君たちの曲が流れてるんだから、さぞリッチなんだろうねえ」と言ったけど、「苦笑するしかなかった」と言っていました。私も放送使用料は定期的に受け取ってますが、まあ子供の小遣い程度の金額ですね。

もう一つの問題は、使用料が高く、カナダでは簡単に市販のCDから音楽を使えないので、その分作曲家に新たな仕事が回ってくるけど、日本の作曲家からはその機会も奪われている、ということです。テレビなどでもっとたくさんの仕事が若い作曲家に与えられれば、そこから優れた才能が育つ可能性が広がります。しかし、日本では著作権使用料が安いために、その機会が根こそぎ奪われ、ますますミュージシャンは食べていけなくなる、というわけです。

つまりこれは単に消費者がどうの、業界がどうのという問題ではなく、日本の社会全体がアーティストの社会的地位、作品の価値を欧米に比べて非常に低く見ている、ということなんです。安くすめばそれでいいと考えて、作品にお金を払うことを、単に日用品なんかを買ったりするのと同じように考えている人がほとんどなんじゃないでしょうか?結果としてミュージシャンというのは「食えない仕事」になりがちで、ますます社会的地位は下がる、というわけです。残念ながら欧米に比べ、日本ではアーティストは非常に不利な立場に追い込まれているというのが現実です。この上違法コピーが蔓延していったら、一体どうなってしまうんでしょう?

こんな話もあります。私が高校生の頃すごく熱心に聴いた、ある日本人ミュージシャンのCDが、最近になって突然再発されたことがありました。新津章夫というギタリストです。ここ10年以上、その人がなにをしてるか全く知らなかったのですが、CDを開くと彼は数年前に死んだと書いてありました。まだ40代の若さで。彼がデビューしたのは1978年のことですから、もう26年も前なのですが、当時はかなり話題になりました。その聴いたこともない斬新なサウンドに、私はジミヘンに匹敵する天才ギタリストが現れたと思いました。ずいぶんと音を真似したりして、研究したものです。多くの著名なミュージシャンが彼の作品に注目し、共演を申し込むほどでした。新津章夫という人は、さほど一般受けこそしませんしたが、玄人のミュージシャンの支持を集める、天才としか言いようがない人だったと思います。才能の有る無しで言えば、私など足下にも及ばないでしょう。

しかしその後10年もしないうちに、彼は音楽シーンから姿を消しました。それほどの才能を持っていながら、新津氏は音楽で生計を立てることが出来なかったのです。その後再発されたCDのこと、彼がいかに才能あふれる人だったかを自分のBlogに書いたところ、それを読んだ実の弟さんからメールをいただきました。CDが突然再発された背景には、弟さんの尽力があったのです。当時のエピソード、どんな風にして作品を作っていたか等を興味深くメールでやり取りしたのですが、音楽をやめてからは不遇の人生で、酒のために体を壊し、最期は誰にも看取られることなく一人自室で息を引き取り、何日かたってから発見されたそうです。それを聞いて私は泣けてきました。なんでこんなことになってしまったのか?何故日本の音楽シーンは、これほどの「宝」を育てることが出来ず、黙殺してしまったのでしょうか?今頃は坂本龍一や喜多郎と並んで、日本を代表するミュージシャンになっていてもおかしくないのに。…残念ですが、日本人の芸術に対する文化的レベルが、まだその程度なんだと思わざるを得ません。もし新津氏がヨーロッパ人かアメリカ人なら、こんなことにはならなかったのではないでしょうか?私は彼のファンの一人として、日本人の一人として、情けなく、恥ずかしく、無念に思います。

長くなってしまいました。津田さんから勧告が出てるので、私の発言はこれを最後にひとまず終わりにしますが、これを読んでいる音楽ファンの皆さんに最後に言っておきたい。もし皆さんが違法コピーをすれば、その分だけそのあとにミュージシャンの屍が続くことになるかもしれない、ということを覚えておいて欲しいのです。

708/1000k

- Flash CGI/Mini Thread Version 3.31β -