2005年07月16日(土)

音質与太話

(この記事を読む前に、未読の人は以下の記事を読んでください)
iPodの音質は「悪い」のか?
iPodに最適なMP3を作る その1〜 MP3エンコーダにまつわる噂を検証 〜
続・iPodの音質は「悪い」のか?

ネットでそこそこ話題を集めるMP3やらiPodの音質話。普通の人は音質なんて気にしてねーよというのはまったくもってその通りだと思うのだが、ネットでこれだけ注目されるというのは、やっぱりネチズン的に気になる話題ではあるのだろうなーということは一連の記事の注目度でわかった。

で、いろいろ反応とか見ているとここみたいに、藤本氏を「MP3を128kbpsで聴いてる耳の腐った人」とかそういう曲解があったりするので、そういうのを見るとやっぱそれはそれでどうかと思うわけだ。

128と192以上では当然音質(この場合オーディオ的な音質というより出音の鳴り方という意味に近いかも)は変わってくるとは思うのだが、その出音で128の方が「好み」に感じる人だっているだろう。そっちの方が好みだったからといって、それは耳が腐っているからじゃなくて、その人の快感原理によるところが大きいわけで、個人の嗜好でしかない快感原理を指して「腐っている」とか言うのは、あまり意味がないというか、批判として外しているんじゃないかとも思うわけだ。俺は高音質を聞き分けられるからこいつに勝っているとか、そういうくだらない脳内ゲームに陥っているみたいな。

もう一度言おう。音質は最終的に主観的なものだ。だから藤本氏があの連載で128Kで十分だと結論づけたのも俺は正しい(一面の真実がある)と思っている。その上で俺は192、JAZZの方が「現状のiPodには適している」と「主観で判断」している。

藤本氏の波形分析というのは、その主観的判断のものに客観要素を持ち込む1つの方法論であって当然それは完全ではない。多面的な検証があった方が良いとは俺も思うが、本格的に多人数呼んだブラインドテストなり、スペクトラム分析なり、いろいろなことをやるには、AV Watchの週刊連載という「器」はちょっと厳しいかな、とも思う。そういうコストをインプレスが全部払ってくれるならまた違うだろうが、ウェブ媒体でそんな気前の良いところを俺は知らない。

閑話休題。128でエンコードしたMP3はシンバルに代表される高音の響きが変わる。全体的にざらついた感じになるが、むしろこのざらついたローファイ感が似合うロックなんかもある。音楽制作の現場だって、ここは音が堅いからわざわざアナログミキサー通して柔らかくしたり、テープコンプかかった音をサンプリングしたり、一度サンプリングしたブレイクビーツをビットコンバートでビット数落としたり、あえてAKAIの古いサンプラー使ってざらついた感触にしたりして、それをわざわざハイファイなハードディスクレコーダーに戻したりするわけだ。

「この曲はCDよりテープで聴いた方が雰囲気出るよね」みたいな経験をした人だって多いだろう。俺と同じくらいのおっさんはラジカセに中高生の頃、ちょうどラジカセにドルビーノイズリダクションが標準装備されつつあったと思うのだが、ノイズリダクションかけるとノイズは少なくなるけどハイが落ちてしまい、ギターの音が迫力なくなるからあえてノイズリダクションをオフにしてヴァン・ヘイレンやマイケルシェンカーやポール・ギルバートやトニー・マカパインを聴いたことがあるんじゃないか。いや別に速弾きギタリストに限定しなくてもいいけど。

もちろんそのざらついた感じが嫌いな人はMP3のビットレートを上げたり、エンコーダをLAMEに変えるなり、エンコードするフォーマットにAACにするなり、メタルテープを使うなりした方がベターだ。俺自身はざらついた音は嫌いじゃないが、最初からある程度音質をよくエンコードしておけばあとから音質調整機能でそういうざらつき感は出すことができるので、できるだけ高音質で取っておこうという感じの思考でデジタル音楽に接している。しかし、まぁノイジーな音楽ばっかり聴いてた昔と違って最近はCut Copyみたいな丸っこいシンセ音とかフィルターハウスみたいな音楽を聴くことが多くなった。正直もう一日中SPKとかホワイトハウスとかそういうのは無理ですよ。Merzbox買ったのはいいけど、まだ1枚も聴いてないしな! テヘッ。人の音楽嗜好が年齢とともに変わるのと一緒で、音質に対する嗜好だって変わっていく。そのことも最初に踏まえた上でこういう音質議論みたいな話をした方が良いとは思うのだが、実際問題そういうこと言い始めるとはっきりいって議論の収拾がつかない。それだけにみんな自説を展開しがちだし、自説に過剰な自信があるんだろうなーとも思う。

そうそう、この前着うたフル買ったんですよ。ピンク・レディーの渚のシンドバット。で、それをケータイ(W21CA)のしょぼい内蔵スピーカーで車の中で流しながら運転してたんだけど、それがとても雰囲気が良くてねー。中途半端なAMラジオみたいな音質がピンク・レディーをたくさん聴いていた頃の自分をフラッシュバックさせたみたいな感じ。「あ、意外と着うたフルもこういう目的で使うならいいじゃん」と思った。音楽で感動したり、何か心が揺さぶられるのってたいていは「シチュエーション」であって、音質ではないんだよね。しかし逆にそのシチュエーションを醸し出す要素として音質は結構重要な気がする。なんか禅問答みたいになってきたな。ということで、風呂敷を広げたまま片付けずに、このエントリーは終了するよ!

(追記)
なんか言われてるみたいだけど、批判されてる部分がよくわからんな。ABXテストだって当然知ってるし、そもそも彼のサイトは何度か読んだことがあるし、こういう世界でそこそこ仕事をしていて、こんなサイトを3年もやってきているわけであるから、圧縮音声が高度に奥深い世界ってのはまぁそれなりに分かってるつもりだ。ただ、別にオレはその上でそこまで(必要以上に)音質にこだわることに意味を見いだしていない。さらに言えばこのブログは「第三者による再検証可能性という科学の最も基本的な姿勢を持ち込まずに文字だけで議論を進めようとする」ことを目的ともしてないし(もちろん、個人的に興味があって、説得力を持たすことを最大限重視する場合、そのようなアプローチをこのブログ上でやることはあるだろう。が、基本スタンスではない。オレはモヒカンチェックによると似非モヒカン族らしいしな)、それなりの信頼度が求められる既存メディアとは違うスタンスで書いているから、そういう科学的アプローチを求められてもなーとは思う。本格的にそれをやる必要が仕事として生じるならきちんと金かけてやりますよ。問題はそれだけのコスト(これは時間的なものも含む)を払ってまで記事にしたいという媒体がないし、最初の書いたようにそこまでオレは細かい部分まで興味がないっつーところもあるしなぁ。音割れに関しても同様。一応同じMP3ファイル使って、20機種くらいで低音ブーストして割れるかどうかとか確かめたことあったけど、やっぱりiPodの割れは顕著だった。そこの部分でオレの体験は嘘(たとえそれが思いこみであってもね)がないから、低音割れると(思いこみであるなど、それなりのリスクを背負いながら)書いてるわけでね。藤本さんとオレが微妙に向いている方向が違うように、匿川さんとオレも見ている方向やアプローチも違う。それだけの話なんじゃないかなとも思うね。

ただ、面白いネタではあるので、どっか真剣にこの問題検証したい(ある程度自由にお金使える)媒体の人はご連絡ください。オレはあんま耳良くないのでいろいろなコーディネート込みで記事にしまっせ。ただ、問題は金あるんだったらもっといろいろ取材したいテーマがほかにたくさんあるってことだな。

匿川さんのサイトにあるプラシーボ効果って文章は非常に面白いし、その通りなんだけどオレは別にプラシーボ効果で何が悪いの? とも思うのよ。BOSEくらい内部で「味付け」された音を「良い音」だって感じる層は確実にいるし、ボーナスつぎ込んでB&Wのスピーカー買ってたとえそれよりも安くて良い音がするスピーカーがあって、それを聴いたとき「オレのB&Wの方が高いし良い音がする」と思いこんでいる(まさにプラシーボ効果だな)こと自体まったく問題ないというか。そのB&Wを買ったオレが満足、っていうそこにこそオーディオの価値はあるんだと、あえてオレは言い切りたいね。ただ、個人の嗜好はともかく客観的評価を下す(と世間からみなされる)雑誌のような媒体にこういうプラシーボ効果が入り込んでしまうのは問題なんじゃないかと匿川さんは指摘しているのだろう。それは確かにわかる。だが、それでもまぁその評価するのは人間であって、そのプラシーボ効果(なり、雑誌のいろいろな大人の事情)込みで、自分なりの判断をすればいいんじゃねーの? とオレなんかは思うわけだ。オーディオや音質の専門家じゃないしね。

| 音声圧縮技術 | この記事のURI | Posted at 06時32分 |

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