2006年02月10日(金)

SMEの動画配信サービス「MORRICH」が3月で終了&音楽動画サービス2.0は?

某関係筋から、ソニーミュージック(正確には音楽や映像のネットワーク系ビジネスの部署が分離独立したSMN・ソニーミュージックネットワーク)が運営するブロードバンド映像配信サイト「MORRICH(モリッチ)」が3月くらいを目処に終了するというリーク情報が入ってきた。この手のサイトとしてはMORRICHはかなり歴史が古く、MORRICHが開設されたのはiTunes Music Storeが動画販売ビジネスを行う4年以上も前のことだ。まだブロードバンドが全国的に行き渡ってなかった当時、SME所属アーティストのPVが500Kbpsのクオリティで24時間フルに流れるという試みは当時としては非常に画期的だったし、俺も有線放送代わりに結構使っていた。その後MORRICHは動画コンテンツ(PV/ミュージックビデオ)を100円でオンデマンドストリーミング配信するOnline Videojukeを2003年10月1日から開始するという流れを生み出すのだが、これもiTMSの動画販売から考えれば、約2年前にPV販売ビジネスを既に事業としてスタートさせていたということだ。ただし、価格は安いものの、ストリーミングで1週間しか見られないという仕様や、iPodのように外に持ち運べるプレーヤーがない(他ならぬ親会社のソニーがこんな商品を出していたにも関わらずね)といった諸条件が重なって、ユーザーから支持されることはなかった。Gyaoと同じではっきりいって採算なんかほとんど取れてないだろう。

これが「時期尚早だった」と片付けるのは簡単だけど、問題はそれだけじゃない。せっかくPV(ミュージックビデオ)の単体販売ビジネスの可能性をいち早く示したのにうまい形でそれを活かせなかったのはまあソニー的にはいつものことというか、ソニーの伝統的なお家芸というか、お約束、予定調和の展開というか、そんなことを思いつつ、これから音楽動画サービスはどうなるのかなぁと思っていたらちょうど「MORRICH終了」という情報が飛び込んできたというわけだ。

とは言うものの、実はリークといっても、めちゃめちゃ細かい情報が入ってきたわけじゃなくて俺のところには「3月くらいにMORRICH終了らしい」程度の情報しか入ってきていない。いわゆる動画コンテンツサービスポータルとしてのMORRICHだけ閉めるのか、Online Videojukeだけは生き残るのかといったサービスの具体的な今後については正式な発表を待つ必要がある。

単純にMORRICHという形は一度リセットして新しい音楽動画コンテンツの販売サービスを立ち上げるかもしれないし、当分の間ここの部分は様子見で、新規サービスを水面下で用意する可能性もあるし、それともSCEIと提携してPSP向けのサービスをやるって展開も選択肢として用意されていないわけではないだろう。ソニー(&SME)は常に我々の斜め上を行く展開で我々をサプライズさせてくれるので、もしかしたら今回のMORRICH終了もその布石なのかもしれないね。

で、今後の展開だ。考えられる現実的なものの1つは「ウォークマンAが動画対応し、Mora上でミュージックビデオの販売が開始される」というものだろう。ただ、ここのところ、Moraでやるのか別にストアを用意するのかって話はある。ただ、普通に動画対応ウォークマンA開発するくらいなら、既に動画対応していて無線LAN積んでるPSP使えよって話もあるわけで。このあたりソニー(とSME)がどのように考えているのかは興味がある。

結局ソニーの社内的にPSPという機器がどう捉えられているかっていうことがこのあたりのビジネスに大きな影響を及ぼすことは間違いない。PS2がブロードバンド接続した時点でSCEIの久夛良木社長は音楽や動画のコンテンツ配信サービス的なものをずっとぶち上げてきたけど、結局ゲーム以外のそういうコンテンツ配信でまともに具体化したものってないんだよね。社内政治的な部分が影響しているのかもしれないけど、個人的にPSPのロケーションフリー対応や、動画を視聴するデバイスとしての能力には(UMDビデオビジネス込みで)可能性を感じているので(実際に米国ではそれで大きな結果を残してるしね)、どうせ大々的にこっちの方向でやっていくなら、ウォークマンAなんかじゃなくてPSPに集中させてやっちゃった方がいいんじゃないかと思う。近いうちハードディスク搭載PSPも出してくるだろうし。

余談になるけど、最近俺の知り合いのライターが高名なソニー評論家のところに取材に行ったら「『ソニーがヤバい』とか言ってるヤツは2ちゃんねるの見過ぎ」というステキ発言を頂いたそうで(笑) 同意同意!(といってもヤバい部分はたくさんあるとも思うけどね) PSPは米国ではゲームも調子いいし、それ以上に動画が好調。米国の市場規模考えると大きい。日本でもDSが化け物なだけで、PSP自体はまぁそこそこ売れてるし、Felicaは独占状態だし、BRAVIAも好調みたいだし、ここ数年がひどすぎた分、きちんと戻してきている。それだけじゃなくて好材料もたくさんあるんじゃないかと。まぁそれにしたってrootkit問題とかは論外も論外なわけだが。ただ、あれも最終的には現実的な和解金額で落ち着くんじゃないだろうか。リスナーを敵に回したことは間違いないけど、それがどこまで悪影響を与えるかっていうのは経済的観点で見たら全然違う話になる部分もあるからね。大体アーティストを「人質」に取られている多くのリスナーは好きなアーティストが新しい作品出したときに「不買運動」なんてそもそもできるわけがないじゃんっていう。だからこそムカつき度も上がるわけですが!

閑話休題。話がずれまくった。しかもソニーとソニーミュージックの話もごっちゃになってきた。それはいいとして音楽動画サービスだ。

まず一点明らかにしておきたいのは、俺は今のiTMSの動画販売サービスに強い不満を持っている。何より画面解像度が小さいし、このクオリティのものを楽曲の倍の値段で売るのかという感情が素朴にある。要するにiTMSを始めたときに感じられたジョブズの「強い意志」よりも、割と現実的かつ無難な著作権者に「配慮」した感じがプンプン臭うんだよね。まぁ今回はミュージックビデオだけでなく、多くの米国テレビネットワークも巻き込んだビジネスになってるからそうなっているのかもしれないけど。でも、かたやMTVやらケーブルテレビやらで(日本ではスカパー!のVMCやviewsicで)PVってのは「無料(厳密には無料じゃないけどそれに近い感覚)」で流されていて、それをハードディスクレコーダーを使ってがしがし録画して自分の欲しいものだけカットしていけば、たいていの欲しいPVは手に入ったりする現状があるわけで(そもそもがiTMSの動画販売サービス自体がそういう放送レベルで流されるような非ロングテールなPVが多いということも考慮に入れなきゃならないだろう)、しかもダウンロードした動画の取り回しもしにくい。いろいろな意味で今のサービスレベルや価格で続ける限り、少なくとも音楽動画に関してはどこかで行き詰まりがあるのではないかと思ってしまうわけだ。もっともジョブズはそんなこと百も承知でずっと先々の展開まで考えているのだろうが。

今もっともおもしろい音楽動画サービスは何か。それは間違いなくYoutubeRevvervSocialといった「2.0」思想に裏打ちされた各種の動画共有サービスだろう。もちろんGoogle Videoもこれに含まれる。サービスの具体的内容については散々ほかのブログとかで語られているので割愛するが、要はこういう動画共有サービスにレアな音楽ビデオがたくさん登録されていて、利用者はすぐに見ることができるのだ。Google Videoに至ってはご丁寧にiPodやPSPの形式に変換してダウンロードする機能も付いているし、合法コンテンツとユーザーが違法にアップロードしたコンテンツが同じページからアクセスできるという、半ばKazaaのようなファイル交換ソフトと似たような混沌的状況を作り出している。とにかく違法なアップロードがあるだろうと知りつつトラフィックを集め、人々にはこれだけ動画ニーズがあるんだということを示したあと、きちんと合法ビジネスを展開するというのはいかにも米国のネットベンチャーだなと思うわけだが、こうした動画共有サービスで音楽動画の人気が非常に高いというのはやはり注目すべき現象だと思うのだ。

個人的にこうなって欲しいという方向性でいうと、やはり「完全合法のYouTube」ということに行き着く。実は今でもそうなのだがYouTubeはアップロードされた動画コンテンツの著作権処理をYouTubeが代行してくれるという「名目」がある。これが今後キモになっていくのだろうと。まぁ実際のところアップロードされたファイルのどれだけが適正に著作権処理されているのかは疑問だが(というか実際問題ほとんどできてないだろう)、今後こうしたサービスがメディアとして価値があるとコンテンツ側が判断した場合、一定の処理ルールに基づいてアップロードすればOK(例えば、ユニバーサルミュージックが現在権利を持っているアーティストの2000年以降のPVであれば、ユーザーが勝手にアップロードして構わないよ、みたいな)みたいな展開もあるかもしれない。iMeshの完全合法化とかSnocapの普及といった事実を見るに、そういう「超流通」的な部分に米国のネット界隈は急速にシフトしているように思える。Revverの広告モデルなんかも、こうしたサービスを「マーケティング機能込みのターゲットメディア」として確立させることで、コンテンツを持っている側の合法利用促進を狙っているということも容易に想像できる。果たしてGoogle Videoの「併売」か、YouTubeの「権利処理」か、Revverの「広告」モデルか、どれが今後の趨勢になるのか(あるいはそれらが複合的になっていくのかもしれない)はわからないが、とにかく今年はこのジャンル・サービスが一番熱いってことは疑いのない事実だろう。あ、そういえばユーザーが勝手にアップロードした音楽ファイルの著作権処理を代行してくれるサービスって既に日本にありましたよね……そう、レコミュニ。紹介制をやめ(俺から言わせたら紹介制をやめるのが1年遅かったけど!)、細々といろいろな楽曲のアップロードが続いているレコミュニ(良い曲結構多いよ! 素でPhewの曲とかアップロードされてるしね)だけど、アップロードされた楽曲の処理が行われるというモデルはそこそこ機能している。このノウハウを活かしてレコード会社と喧嘩上等で日本版音楽専用YouTubeやればいいのに……とか思ったりもして。まずはニッチなインディー系のジャンルからスタートすれば何とかなるんじゃないか。いやでも帯域のコストが大変か……。

折しも日本でも先日インターネット放送を「通信」ではなく「放送」扱いにして、コンテンツの著作権許諾を大幅に簡素化すべしという方針が文化庁から示された。これが本格的に進めば日本でもYouTube、Google Video的なサービスが合法的に登場するのかもしれないね。コンテンツを持っている側は必死で抵抗するだろうけど、もはやネットの世界ではそんな意識じゃ追いつけないことは間違いないわけで。「だったらユーザーから金とったるわい」っていう米国流の方が現実的だよね。

いずれにせよ、音楽動画に関しては環境的にいろいろなことが面白くなってきたという感じ。MORRICHは時代の徒花的存在だったけど「1.0サービス」としてはよくできていた。素直にそれは褒めたいし、ソニー&SMEには今後失敗した原因を活かして消費者にとって魅力あるサービスを展開して欲しいものです。

(追記)
と思ったらさっそくこんなニュースが! MTVとYouTubeが提携して、宣伝媒体としてYpuTubeを活用していく方針らしい。アーティスト個々レベルでも宣伝媒体としてYouTubeを利用しようという動きも出てきているし、この流れの早い2.0時代にNapster時代のような悠長な裁判とかやってる暇ないという判断なのかもしれないね。

| 音楽配信 | この記事のURI | Posted at 04時28分 |

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