2006年04月08日(土)

J-POPが流れる合法ネットラジオサービスが続々登場

まずは既報の通りリアルネットワークスの定額制ネットラジオの記事から。

リアルネットワークス、日本初の本格的定額聴き放題インターネットラジオサービス「リアルミュージック」を 5月上旬サービス開始予定(リアルネットワークス)

リアル、月額945円の24時間ストリーミング音楽配信−約150chを用意。ダウンロード販売も予定(AV Watch)
リアルネットワークス、月額945円で定額制のストリーミング音楽配信(INTERNET Watch)
リアル、定額ネットラジオで音楽配信参入(ITmedia)
リアル、ソニーも参加の日本オリジナル定額制ネットラジオを開始(ITmedia)
リアルネットワークス、定額制の聞き放題インターネット・ラジオ(nikkeibp.jp)
リアルネットワークス、定額で聴き放題のインターネットラジオサービス“リアルミュージック”を5月上旬に開始(ASCII24)
リアルネットワークス、定額制インターネットラジオを5月上旬開始(Japan.internet.com)


んで、それとは別にこんなニュースも出てきた。

ニッポン放送、ネットラジオを大幅ボリュームアップ−12時間に拡大し、音楽も大量発信。BSラジオは終了(AV Watch)
ニッポン放送、楽曲や動画番組をストリーミング配信する「LFX mudigi」(INTERNET Watch)


Yahoo!のサウンドステーションがどんどんラインナップ拡充しているように、ここにきて盛り上がりを見せつつあるネットラジオサービス。総括の前にRealの新しいサービスの分析からしていこう。

まず、リアルのネットラジオサービスは基本的に「有料サービス」だということだ。150チャンネル用意されており、ITmediaによればソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)も参加することになっている。

権利の囲い込みが大好きでiTMSにはいまだに楽曲を提供していないSMEがなぜこういうサービスに楽曲を提供したかという話だが、それを説明する前にこのサービスの歴史的な話をちょっとしよう。

実はこのサービス、本来ならば2003年末には始まる予定のサービスだったのだ。リアルネットワークスは2003年8月に英国のRealを通じて日本向けに有料ネットラジオサービスを展開していた。このとき俺は日本のリアルネットワークスに取材してその記事がYahoo! Internet Guide11月号に
掲載された。とりあえずそれを若干修正して転載しておくので読んでもらいたい。

この秋から有料のネットラジオサービスが続々とスタートした。有料ネットラジオの最大の売りは、CD並みの高音質でフルコーラスの楽曲を聴けるというところ。ただし、現時点ではどこも権利面の問題から洋楽しか流れていない。

So-netが運営するWonder Jukeは日本初となる聴き放題型音楽配信サービスだ。純粋なネットラジオではなく、登録されている楽曲をユーザーがオンデマンドで呼び出し、ストリーミングで聴くことができる。既に米国ではこうした聴き放題型のサービスが主流になっており、Wonder Jukeも同様の使い勝手を実現している。Wonder Jukeのディレクター内藤克彦氏はWonder Jukeを始めた理由をこう語る。

「米国の聴き放題型音楽配信は音楽ファンにとっては夢のようなサービスなのに、米国内の利用に限定している。CDならば輸入盤ストアに行けば世界中のCDを買えるのに、ネットでそれができないのはおかしいですよね。だから、ああいう便利なサービスを日本でも始めたかったんです」

Wonder Jukeの場合、楽曲の買い付けはAIMというイギリスの独立系音楽協会を通して行っている。サービス開始直後は海外のインディーズ音源を土台にして、今後はジャズ系やコンサート系の音源も配信し、ジャンルの多様性を確保していくという。

一方、約1年前に新プレーヤーRealOneを発表したリアルネットワークスも、8月末より有料のネットラジオサービスを開始した。曲数は6万曲相当とWonder Jukeと比べると多いが、オンデマンドで好きな曲が聴けるわけではない。これで月額900円というのは料金的に割高感があるが……。

「あくまでこれは、来るべき音楽配信サービスへの“とっかかり”です。現在日本のレコード会社と調整中で、年内には国内のJ-POPを流すネットラジオサービスを始める予定です。また、米国のRhapsodyという聴き放題型サービスの日本展開も考えておりまして、早ければ1年後くらいには日本の音楽が流れる聴き放題型サービスが提供できるのではないでしょうか」(RealOneサービス本部長森勉氏)

2年近く前から積極的にネット展開を進めてきた米国の音楽配信と異なり、日本の音楽配信は、カタログ数、価格、使い勝手の面で大きく劣っている。そしてこれこそが、日本で音楽配信が進まない最大の理由でもある。東芝EMIやワーナーの参加するdu-ubも8月末でなくなってしまった。複数のレコード会社で構成されるレーベルゲートもSME以外の会社はあまり積極的に楽曲を提供していない。米国のiTunes Music Storeの成功や、聴き放題型サービスの台頭に倣って、次の一手に踏み出すのか、それともdu-ubのように完全撤退の方向に向かうのか……。どちらに転がるにせよ、日本の音楽配信が転換期に来ていることは間違いないだろう。これまで、日本で音楽配信が進まない最大の理由は「大手メジャーが消極的」ということだった。だが、それもブロードバンド環境の整備や、米国のiTunes Music Storeの成功で、徐々に態度が軟化しつつあるようだ。数年後にはネットで最新J-POPを楽しむというライフスタイルが当たり前のものになっているのかもしれない。

上のリアルのサービス本部長森氏が語ったように、リアルと日本のレコード会社の交渉が順調にいけばJ-POPが流れる有料のネットラジオサービスが2年半前に実現していたのである。

2003年12月を過ぎてもまったくサービスが始まる気配がないので「あーレコード会社がどうせ、違法コピーにつながるネットラジオは許諾できない」とか言い出して決裂したんだろうなと思ってた。

で、その後2005年8月にYahoo!が無料でJ-POPが流れるネットラジオサービスを開始した。当初は原盤権を保有するプロダクションであるオーガスタなどの限られた楽曲が中心だったが、初めてみたら思った以上にこのサービスに集客力があった。また、Yahoo!とSMEはレーベルゲートと提携してATRAC3形式の音楽配信をやっているという「接点」もあったため、12月にはSMEの楽曲がサウンドステーションで聴けるようになった

こうしたサービスは「コンテンツ」を流してトラフィックを集めたいインフラ側であるYahoo!がSMEやほかのレコード会社に使用料を払うことで成立している。しかし、SMEはなかなかあくどいというか、えげつないというか、ビジネスが分かっているというか、新譜が出るアーティストの発売日近辺に合わせて1カ月だけサウンドステーションに楽曲(中島美嘉チャンネルとかアジカンチャンネルとか)を提供し、期間が過ぎた後はソニーミュージックステーションという1チャンネルにしか楽曲を提供していない。

つまり、SMEとしてはYahoo!のインフラを使って、本来広告宣伝費としてコスト計上しなければならない新譜発売のための「プロモーション」を行い、あまつさえそれに対してYahoo!側から「収入」も得ていたということになる。Yahoo!側からしてみれば、お客が定着してトラフィックが増えなければサービスを展開する意味が薄れるわけで、当然「中島美嘉チャンネル」とか「アジカンチャンネル」は残しておきたいわけだが、それすらさせてもらえずいいようにレコード会社から金取られているわけだから、さぞかし現場は不満が貯まっていることだろう。まぁ別にSMEが違法行為やってるわけじゃないし、単にビジネス上手ですねというほかないのだが、個人的にはやってることがせこいなーとは思う。

話を戻すとサウンドステーション、業界的には「思った以上にプロモーション効果がある」と認識したのだろう。それでいてお金ももたらしてくれるわけだから、さまざまなレコード会社が現在サウンドステーションに参入しているのもわかりやすい話だ。で、一旦ポシャったはずのリアルの有料ネットラジオサービスが始まったのもこうしたサウンドステーションの「(レコード会社にとっての)成功」が背景にあるのだろう。

ただ、無料のYahoo!は32Kbpsとビットレート低いからいいけど、恐らくリアルの方は128Kbpsあたりでやるのだろう。そのため「有料じゃないと許可できませんよ」という感じになっているのではないか。

このリアルのサービス、Yahoo!と違って結構高めの有料サービスのくせに楽曲のスキップはできない糞仕様。海外のサブスクリプションみたいにToGoサービスがあるわけじゃないし、これで一般リスナーに訴求するのかねぇという疑問はある。

俺的な注目はこのサービスの画面構成だ。



この専用クライアントソフト、画面構成から見る限り俺が普段利用している米国のグレートサブスクリプションサービス「Rhapsody」とほとんど同じなんだよね。Rhapsodyの画面はこんな感じ↓



恐らくこのクライアントソフトを日本用にカスタマイズして機能限定したものが「リアルミュージック」なのだろう。だから、とりあえずここはまずレコード会社とのきちんとしたパイプを作ってサービスを展開し、機が熟したら(レコード会社がサブスクリプションにも理解を示したら)日本にすぐRhapsodyを展開できるようにするということなのかもしれない。そういう意味では期待は持てるけど、日本で本当にサブスクリプションサービスが始まるのかどうかは本当にわからないところだ。

一方独自の路線でJ-POPがまともに流れるネットラジオサービスを4年半前からやっていた「ブロードバンド!ニッポン」を運営するニッポン放送が「LFX mudigi(ミューデジ)」というサイトを立ち上げた。ユーザーからリクエストを受け付けて、それをプレイリストとして配信する「人力オンデマンド音楽配信サービス」とも呼ぶべき「あなたのジュークボックス」と、DJのトークと音楽を一緒に流す「ミュージッククルーズ」を開始した。

ブロードバンド!ニッポンの楽曲著作権処理方法はニッポン放送とレコード会社による個別契約とも言える独自スタイル。そのあたりはちょっと古い記事だが山崎潤一郎さんの“誰でも合法ネットラジオ”は日本でも実現する?という記事に詳しい。その中で

具体的な許諾方法については、「現在では十数社のレコード会社と包括契約を結んでいるので、月初に前月の使用楽曲を報告して使用料を請求してもらう」事後報告型で行っているという。気になる楽曲使用料だが、「現状は、1曲一回約1000円」とかなり高額。また「月が終わると、膨大な曲を整理して報告しなければならないので手間がかかる」とも。

と書かれている。今回のINTERNET Watchの取材記事でも同じニッポン放送メディア開発局デジタルコンテンツ部の檜原麻希氏がインタビューに答えているが、その中でも楽曲の許諾方法について触れられている。

インターネットで楽曲を配信するための著作権処理もポイントの1つ。基本的に著作権処理は楽曲ごと個別に行なうが、事前許諾ではなく月ごとに利用した楽曲を報告し、月の最後に一括して使用料を支払う方式だという。これもブロードバンド!ニッポンの際に確立した手法であり、檜原氏は「日本レコード協会などの団体が著作権の集中管理事業を検討しているという話も聞いている」とした上で、「それがいつ始まるかわからない現状では個別許諾の形は変わらない」と説明。「今回のmudigiも、各レーベルと1件1件話を進めていった結果として実現できた」との経緯を語った。

両者を比較すると、2004年1月の時点からほとんど許諾方法が進化していないということがわかる。というか、山崎さんが取材する1年くらい前、ほぼサービス開始当初に俺も檜原氏に取材したことがある。そのとき具体的な利用料の金額は教えてくれなかったが、許諾のやり方はほぼ同じだった。

「1回楽曲を流すごとに1000円」という基準が現在どうなっているのかはわからないが、恐らくほとんど変わっていないものと思われる。音楽業界ってのはそういうところだ。

たかがネットラジオで流すのに原盤許諾料がそんなぼったくり構造になってていいのかと俺なんかは思うわけだが、ライブドア株で300億円赤字出しても全然会社が揺るがないフジサンケイグループからしてみれば、そんな利用料金も大した痛手ではないのだろう。いいなー旧メディアの人は。

茶化し過ぎるのもアレなのでフォローしておくと、何にもルールがない状態でネットの原盤権を個別処理し、「通信」扱いのネットラジオできちんと従来のラジオと同じような番組を作ったニッポン放送の試みは評価されるべきだと俺は思っている。だが、あまりにもレコード会社におもねりすぎているというのも事実だ。こういう従来の業界構造の中から生まれるレコード会社に配慮し過ぎたビジネスモデルばかりが「固定」されてしまうと、Last.fmみたいなおもしろい音楽ネットサービスなんて生まれないわけで、そのあたりはやはり放送以外の業者に期待するしかないのかなとも思ってしまう。

ただ、檜原氏の「今年や来年は通信の権利の過渡期。放送局がこうした事業を進めると何が起きるのかを探っていきたい」という発言はまったくその通りで、リアルからああいうネットラジオサービスが出てきたことや、サウンドステーションの勢いが伸びていることなどを考えるに、今年から来年にかけてネット上でJ-POPが流れるということの意味がドラスティックに変わってくるのだろうなとは思う。6月くらいにはサブスクリプションのNapsterも始まるんじゃないかという話も出てきている。今後もネットラジオやネットラジオに近いサブスクリプションサービスには注目していきたいところだ。

| ネットラジオ | この記事のURI | Posted at 21時10分 |

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