2007年09月07日(金)

「ダウンロード違法化/iPodの補償金対象化」がほぼ決定した件と、ITmediaの記事で抜粋されている発言についての補足

補償金はDRM強化よりまし?――私的録音録画小委員会で議論(ITmedia)

大詰めを迎えてる文化審議会の私的録音録画小委員会の議論。これに去年の春から参加してるわけですが、まぁ最近ははっきり言って徒労感ばかり感じる委員会だなと思いつつ、まぁそれも勉強だなと思って参加してますよ。

で、9月5日の小委員会でITmediaである種余談的にした俺の発言が大フィーチャーされて記事のタイトルまで使われていて、スラッシュドットなんかではすっかり俺が補償金賛成派の寄生虫呼ばわりされているので(何か文句付けるならもうちょっと記事の詳細なり、これまでの経緯とかそのへん理解してから言ってくれと思うが、まぁそんなのはWeb 2.0時代には到底通用しない理屈であり、そもそもスラドの連中に何リテラシーとかまともななこと期待してるの?(プ とか言われたら「それもその通りですね」と答えざるを得ない状況の中)こりゃまあ少なくとも発言の意図とかは、そこに至る前後の文脈などは明らかにしておかなきゃいけないと思い、久々にエントリを書く午前3時←今ココ!

さて、問題となっている記事中の「補償金制度がなくなったら、DRMやコピーガードが強化される可能性がある。DRMが強化されるか、補償金を支払うかの2択なら、補償金を支払う方を選ぶ」という発言だが、これは確かに俺は言った。

でも、この発言につながる前に「前提」と「なぜこれを言うに至ったのか」ということの簡単な説明をしている。そのあたりが省略された状態でこの発言だけ取り出されてセンセーショナルな記事タイトルだけ付けられるのは、ちょっとそれはどうなのよ? と思ってしまうことは事実。ま、自分もレポート記事を書く場合は程度の差こそあれ、似たようなことしなきゃいけない部分はあるし、そういう編集をメディアがするのは(善し悪しは別として)俺はわかってなきゃいけない立場だから、あまりそれについてグダグダ言うつもりもない。訂正を申し入れてもしょうがない話なので、自分のブログで意図を説明します。本当にブログがあって良かったよね。メディアに自分の意図と違う発言が乗ったときに本人が反論否定できるカウンターメディアができたというのは、インターネットがもたらした最大の利点の1つなんじゃないかと思ってるよ、俺は。

また話がそれてきた。えーと、細かい発言はあとで文化庁のサイト上で議事録公開されるので、それを追ってもらえばと思うけど、「補償金制度がなくなったら、DRMやコピーガードが強化される可能性がある」という発言の前に俺が言ったのは「この2年間のなかなか進まない膠着した議論を見てきて僕が思うのは、そもそも論的なものが有効に機能してもし補償金がなくなったら、権利者の人たちは確実にDRMを強化してくるだろうなということ。良い悪いではなく、そういう厳しいDRMが普及する状況になって消費者が自由にコンテンツを楽しめなくなるのなら、返還制度がきちんと実効的に機能する枠組みがある上で1台あたり数十円とか上限を非常に安く設定して補償金を払い、その上で家庭内の私的複製を阻むようなことを権利者がしない……つまり補償金がなくてDRMが厳しい世界と、広く薄い(十分に安い)補償金払って家庭内ではコンテンツを自由にコピーできる世界の二択しかないなら、僕は後者を選ぶ」というような趣旨のこと。細かい発言とは多分違うかもしれないけど、少なくともそういう意図があってかなり細かい条件を付けて、この話をした。

あともう1個重要なのは、この話が椎名委員から「賛成だ」と言われたので、それに対して釘を刺す意味で「ただし、補償金払って良いとさっき僕が言ったのは、返還制度が機能して、十分に安い補償金で、さらには家庭内では自由にコンテンツのコピーができるような環境を権利者がきちんとユーザーに対して保証するという前提があれば、という話。少なくとも今議論の俎上にのぼってる「著作権法30条を改正して、ネット上に上がっている違法著作物のダウンロードを私的複製の外に置いて、ダウンロードする行為を犯罪化させるような状況だったら、補償金払うことは飲めませんよ」という趣旨の返答をしている。

つまりこれは、現実的には文化庁の思惑や権利者の主張とこの審議会の審議の動き方を見るに、「補償金なくしてDRMバリバリの世界にいくか、補償金払う代わりに今までの私的複製の自由な範囲はいじらない」という二択しか(この審議会においては)現実解として存在しえないだろう」と俺が判断して、そんな状況に対してある種皮肉混じりで発言した部分もあるわけです。


だって、このまま行くとこの小委員会、文化庁が書いた絵(それは要するに音楽業界、テレビ業界、映画業界の権利者の要望を100%受け入れるということだね)で著作権法改正決まっちゃうよ。その骨子は

●著作権法30条を改正。ネット上に上がってる違法な著作物(着うたやらMP3やら動画やらP2Pやら)をユーザーがダウンロードすることを「犯罪」にする

→既に日本の著作権法には「送信可能化権」が存在し、違法な著作物をネットにアップロードした奴を罪に問える環境があるし、実際に送信可能化権侵害で逮捕された連中はたくさん出ている。それに加えてダウンロードした者も違法にできるから、RIAAがやってるような音楽ファイルを「ダウンロード」した人を特定して大量に民事訴訟起こして和解金ゲットなんてことを日本レコード協会が日常茶飯事的にやるようになるかもね。「アップした奴が悪い」ってルールで今まで大した問題になってないし、実際今年の頭からレコ協が違法着うたアップローダーに対して警告メール出したらかなり多くのアップローダーが潰れたよね。そんなの効率化すれば、十分違法対策なんてできるでしょうよ。しかも、今知財推進本部で議論されてる「著作権侵害の非親告罪化」とセットになるとかなーりこれイヤな感じになるよね。

一応、この問題について危険性ばかり煽るのもフェアじゃないので、今のところ決まっている事実関係をフォローすると、ダウンロード違法化が実現してもそれは「録音・録画」についての話。テキストやらほかのコンテンツは含まれない。つまり、ニュースサイトの記事をブログに丸コピペしたものをダウンロードしてもそれは別に違法ではない。あくまで音楽業界・放送業界・映画業界だけ守りますよーってことね。でも、そんなえこひいきが罷り通るならそれこそ新聞やら出版社やらが「俺らのコンテンツも守ってくれ!」と文化庁に言いかねなくてイヤですね。そんなことやったら日本のインターネットは潜在的犯罪者何百万人産み出すんだっていう。そもそもそんな法改正自体がおかしいだろみたいな。「一部の著作権者の権益守る」のと「国民に犯罪者が増えること」のどっちが重要な問題なのよっていう。

実効性の話でいうと「違法著作物を“情を知って”ダウンロードする場合」という条件が付く。「情を知って」とは、違法か合法かよくわからない状況でユーザーが間違えてダウンロードしちゃった場合は免責されますよってことね。ただ、レコ協は「適法配信マーク」なるものを作って対応するとか言ってるから、このマーク付いてないサイトからダウンロードした場合は「お前は情を知っていただろ」とか言ってくる可能性はゼロじゃなくなるよね。何のためのマークだよっていう。

あともう1つ大きな話としてはこれは違法になっても「罰則」がないです。未成年者の飲酒喫煙と一緒ですな。ただ、民事訴訟の対象にはなり得るので、RIAAがやってるように「情を知って」ダウンロードしてる個人を対象に損害賠償請求行うなんてことはあるかもしれないね。

「情を知って」ってのは立証するのはかなり難しいとも言われてるから、どこまでこれが「抑止力」となるのか微妙ではある。しかも罰則ないわけだから、この改正が行われたところで「実態」は何も変わらないよって意見もあるんだけど、だったらわざわざ著作権法30条(私的複製)いじる必要ねーだろっていう話だよね。送信可能化権あるんだから、それで対応すりゃ問題ないわけですよ。

だから結局実効性ない法改正してレコード協会が何やりたいかって、多分啓蒙パンフレットとかで「違法な著作物をダウンロードするのは犯罪です」って煽りたいだけなんだろうね。まぁそれで確かに違法ダウンロード多少減らす効果あるかもしれないけど、本来音楽に興味持つはずだった若年層から音楽への興味奪っちゃうっていう「萎縮効果」も十分考えられるんじゃねーの? みたいな部分もあるわな。


●iPodをはじめとするメモリーオーディオを私的録音補償金の対象にする

→俺は私的録音録画小委員会に参加するに当たって書いたエントリで、「iPodはどう見ても音楽をコピーして聴くための機械であり、現状の形で私的録音補償金制度が存続するのなら、iPodは政令指定で補償金制度の対象に含めるべきだと思う」と書いた。この考えは今でも変わってないし、補償金制度が存続するのであれば、iPodは補償金の対象に入れるべきだと思う。だってMDは補償金対象で、iPodが補償金の対象じゃないって状況はどう見てもおかしいよそりゃ。

あと2回を残した委員会の議事進行を見てると、もうこの2つは確定的になってしまったという感じ。前回の小委員会で「30条を改正して違法著作物のダウンロードを私的複製の外に置くというのは、概ね了承を得た」という文化庁のまとめに対して俺は「いや、僕は了承してないし、これ僕どうしても止めたいんですけど、それはどうすればいいんでしょう? これもう決まっちゃったことなんですか?」と身も蓋もない疑問を口にしたら、会場全員苦笑いみたいな空気に包まれて俺がいたたまれなくなったりもしたんだけど、本当にこれ、補償金とかどうでもいい小さな問題で、多くのネットユーザーを潜在的に犯罪者にするような法改正しちゃっていいのかよ、という懸念はずっとある。

だから、今回の発言はこういう状況に対するあてこすりみたいな部分ははっきり言えばあるよ。「30条の変更撤回するなら、まぁ補償金払ってもいいよ。でもどうせできないよね?」みたいな感じね。

まぁ俺はユーザー代表ではないし、実際今回のITmediaの記事への反応見てると「DRM厳しくて補償金なし/DRMなしで補償金払う」の二択なら前者を選ぶって人も結構いるみたいだから、これはもうユーザー代表としてではなく、俺の個人的な意見でこれを言っているということは理解してもらいたいわけです。だってさぁ、音楽別に好きじゃない人は糞厳しいDRMの世界になって音楽聴かなくなって、音楽業界が勝手に衰退しても困らないだろうけど、俺はそんなバカなことして音楽業界に衰退されると困っちゃうんだよね。やっぱ新しい音楽には触れていたいし、ライブに行って感動とかもしたいわけでね。偉そうなこと言うつもりはないけど、端から見て明らかに権利者が頑張ってるDRM強化、保護権利強化、金よこせ的な風潮は、業界の衰退招くだけじゃんって感じてしまうわけですよ。余計なお世話だと思ってる人もたくさんいるだろうけど、業界全体の舵取り失敗してアーティストが迷惑被るのも何だかなーと思うところもありましてね……。まぁだからできるだけ音楽業界とユーザーの意識があんま離れないようなことを目指して、現実的な主張をしようと心がけてるんです。一応これでもね。

で、話を戻すと、俺は実際その二択しかないと思うよ。「補償金そのものがずさんなシステムで妥協の産物で妥当性がない。こんなものはなくすべきだ」って意見は俺もまぁその通りとは思うけど、それでも権利者が意固地にならないための「バッファー」として、数十億レベルなんだったら、「いずれなくなる制度」「十分に低廉な価格」「消費者へのコピーを何らかの形で担保」するという「条件」が揃っているならそれなりの存在意義は補償金にもあると思うんだよね。だって、「DRMフリーにしろ。補償金はゼロにしろ」ってのは消費者は最高な話だろうけど、まぁ実際そんなのは絶対権利者達は受け入れないよ。で、政策がどう決まっていくのかってプロセスを考えたら、そういう状況の中、エンドユーザーがどういう政治的な条件闘争を権利者の人たちとやっていくかって話なわけで、そういう状況を踏まえた中で出てきたのが今回の俺の発言であるわけです。

まとめれば
・俺は下記の条件が整うなら補償金払ってもいいよ

・何ならパソコンとかメモリーカードとかHDDにかけてもいい。ただし、1台当たり10円とか、本当に消費者の負担にならない価格で広く薄く取るって方法。

・ただし、音楽やテレビの録音録画に利用しない消費者(パソコンに補償金かけるなら、ビジネスユースの場合一括で返還する制度作ったりする必要もあるかもね)は簡便な手続きでその補償金が返還される制度の整備が必須。

・補償金かけるなら、基本的に利用者の公正な利用を妨げるような厳しいDRMをかけるのはなし。CCCD、コピーワンス・コピーナインなんかは問題外。

・補償金の分配がどのような理屈・ロジックで行われているのかすべてオープンにする。これはSARAHだけでじゃなく、その先のレコ協やJASRACや芸団協もね。

という主張であるわけです。まぁ当然ここまで細かく説明はしなかったけど、それでも結構いろいろな「条件」は審議会の場で言ったつもり。そのあたりのニュアンスが抜け落ちているのはやっぱりちょっとイヤだな、と思う。


まぁぶっちゃけ、僕はあの委員会に期待することはほとんどやめました。だから、俺は30条改正させるのが本当にイヤなので、メディアで記事書くなり、ほかの方法使うなりして全力で、自分のできる範囲でこれを止める活動に入ります。

で、10月に入ったらこの問題についてパブリックコメントの募集がある。パブコメで30条変更反対がたくさん来たらそれを文化庁もそれを無視して進めるわけにはいかなくなるでしょう。なんで著作権法変わるのがイヤな人は、みんなパブコメ頑張って送りましょうね。

ま、最終局面に入ってきたなという感じです。もうちょっとこの問題はきちんと音ハメ更新することも含めてアクティブにアナウンスしていこうと思ってます。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 03時38分 |

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