2009年05月12日(火)

「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」を傍聴してきました

ということで行ってきました、伏魔殿こと厚労省の医薬品ネット販売検討会。いやーひどかった。本当はtwitterで中継しようかと思ったけど、そんな雰囲気じゃなかったのと、Windows7のRC版を入れたら通信カードが動かなくなって中継できませんでした。はっはっは。

もういろいろなところで記事も上がっているので、不完全版の議事録っぽいものを上げておきます。

(事務局から、離島の人とそれまでネットで継続的に薬を買っていた人に限って2年間経過措置として買えるようにするという省令を6/1から施行させるという説明のあと自由討議)

阿南久(全国消費者団体連絡会事務局長)「経過措置そのものを設けること自体に反対。筋が通らない。事業者に伺いたいのは何ヶ月か前にこういうことがわかっていたのに、あなたがたは一体どういう努力をしたのか。今更難癖つけても遅い」

児玉孝(社団法人日本薬剤師会会長)「消費者にとってこの改正は大きな意味がある。そこの周知をする時間が短くなってしまったのは大変残念」

足高喜宣(日本置き薬協会常任理事長)「この経過措置だが、対面販売という原則を考えたときにまだ疑問が残る。離島が不便だといったら、山の中にいる人だって不便だ。拡大解釈できる余地がたくさんあるだろう」

三木谷浩史(楽天株式会社代表取締役会長兼社長)「今回の議論を通じてネット販売を慎重に進めなきゃいけないという思いを新たにした。阿南さんからの話でいえば、何で意見を言わなかったのかという話は、そもそも我々にヒアリングの機会を与えられなかったからだ。消費者マーケットは刻々と変化し、2年前とはまったく違う状況になっている。現状をある程度鑑みる必要があるだろう。影響範囲の測定というのは、厚労省のやっていることは不十分ではないかと思っている。アベイラビリティーの議論でいえば、消費者が自分にあった薬を選んでいく必要がある。医薬品が販売停止になってブランド名が変わったりすることもあり、継続購入できなくなる懸念もある。同一の医薬品しか変えないというのは厳しいんじゃないか。今回の経過措置で障害者の人々が買えないというのも問題。自分の提出した資料にも切実な意見が出てきている。妊娠検査薬もネットで気軽に買えなくなってしまう。一生懸命働いている共働きの家庭が被害を受ける」

足高「バファリンを継続販売していたら、ケンコーコムも継続販売できるのか。今バファリンネットで買ってる人はそのまま買えるってことか」

事務局「第二類医薬品であれば含まれる」

足高「二類の医薬品を使っていた客であれば閉ざされないということか。それはいかがなものか」

松本恒雄(一橋大学大学院法学研究科教授)「2年に限定してるが、2年たったら買えなくなる。そうなったら2年以内に離島の対面販売原則をなくすつもりなのか。そうでなく薬局薬店に離島に展開させるよう指導させるのか。それとも通信販売の環境を変えてちゃんとするのか。2年やってあとは、はいそれまでよ、じゃ無責任じゃないか。2年間の意図するところを教えてもらいたい」

事務局「なんで2年か。改正薬事法の経過措置は大体2年。その後は原則に基づくということ。通信販売以外の医薬品については2年といわず体制を整備したい。関係業界の強力もいただきたい。もっと早く整備するが、経過措置は前例としてそうなった」

三木谷「薬局も厳しい状況に入っており潰れるところも出ている。消費者視線というところで考えたら同一の店舗でしか買えないのはおかしい。合併した場合はどうなるのか。この2年間で合従連衡が進む。同一店舗という規制はおかしい」

増山ゆかり(全国薬害被害者団体連絡協議会)「具体的な話が煮詰まらなかったのは残念。業者には専門家としてこういう風に対応しているといった話が聞きたい」

足高「大臣は薬が届かないところがあったら良くない。不便があったらよくないと言った。日本で現在流通している4000アイテムの医薬品すべてが離島であろうが僻地・山間であろうが届かなきゃいけないのか、それとも多少アイテム数が少なかったり、多少不便はあっても、北海道の山の中であろうが東京の離島でも対面で届かけることができるのか。我々は『全部に届けることができる』と言ってきた」

三木谷「わたしはeコマースが専門。医薬品の流通コストは非常に高い。現代はネット販売をうまく活用しながら安全性を確保しながらやるのが世界的に見ても世の中の趨勢になっている。都会はすべての医薬品が買えるのに、田舎だけが50、100種類だけでいいのか。足高先生が全国に届けられると言ったが、困ってる人からすれば、今すぐに欲しい薬が3ヶ月後に届いたところで机上の空論でしかないでしょ。あと事務局に聞きたいのはなぜ離島に限ったのか。過疎地と離島は何が違うのか」

事務局「地勢的にみて、はっきりしているからだ。地続きなところは直接お店に行ってもらえればいいということ。地続きのところの規制をどうするかは医療行政の問題。離島のように店舗が物理的に存在してないところと、地続きで離れているところでは条件が違うだろう」

三木谷「北海道のどまんなかとかは100km先にいかないと薬局がない。それと離島はどう違うの? あとは障害者の対応はどうするつもり?」

事務局「今回の経過措置は利便性と安全性を十分に考えて作ったもの。障害を持っている人に対して利便性を考えなきゃいけない、ということと安全性を考えることは別で、そのバランスを考慮することが重要。最終的に障害者の人が選択購入するときはリアル店舗に来てもらって障害の状態に応じて買って頂きたいという思いがあったので経過措置には入れなかった」

三木谷「障害者にとってはネット通販がライフライン。利便性だけの話ではない。特に視覚障害者の人はネット販売でしか買えないと言ってる。要するに障害者は切り捨てようという話ですね」

児玉「その話は今まで散々この委員会で議論して、現行のシステムの中でがんばっていきましょうという結論になったでしょうが。今更何を言ってるの?」

阿南「私は周知不十分だから2年間の経過措置を設けたという認識。事務局はパブコメにかけるというが、それは利害関係者であるあくまで離島や継続使用者向けのものですよね? そこは確認しておきたい。あと、継続使用の販売記録については楽天が持つんですか。それとも各店舗が持つんですか」

楽天「技術的には店舗でも楽天でも持っている。どっちでもできる」

高柳昌幸(全国配置過程薬協会副会長)「継続使用を確認する義務は販売側にある。本人が販売記録がないのに買いたいと言ってきたらどうする」

事務局「電話でかつて買ったというだけで提供できるかどうかは微妙な話。5月末までに何らかの購入情報があるかということが基準になると思うが、それは最終的には売る立場であるお店が判断する話」

三木谷「前回のパブコメで97%が今回の規制に反対だった。次回パブコメ集めたら公開してくれ。それによって変わるんですか。変えるつもりがないならそもそもパブコメなんてやめちまえ。エンドユーザーの意見、一般の方がどう思うかということが重要だ」

事務局「5月中に省令改正しないと間に合わない」

後藤玄利(日本オンラインドラッグ協会理事長)「2年の暫定措置で6月1日に購入できなくなるという事態は避けられるかもしれないが2年たったら買えなくなってしまう。どのようにすれば通販で安全に購入できるか話し合う場が必要だ。そういう声がいろいろな委員から出ている。そういう場を別途開いてくれ。そうしないと事業者も安心して事業を継続できない」

児玉「そもそも今回の経過措置、離島は入れる必要ないだろう。離島の救済は継続使用する人の中に含めて救済すればいいんじゃないか」

事務局「6月1日以降も新しい薬を買う人も提供するので完全にかさなっているわけじゃない」

児玉「離島であろうが僻地であろうが、我々はちゃんと販売します。離島だけを特別視してやる意味がわからない」

事務局「薬局店舗がないところに関してはこういう経過措置を設けてはどうかという話」

足高「離島の定義がわからない。どんどん離島というところが拡大解釈して広がっていくんじゃないかという懸念がある。淡路島も佐渡島も離島になってネット業者に自由に売られたら困る。言葉の定義をしっかりしてもらいたい。我々は対面販売の原則があるから顔色が悪い人に「病院行った方がいいですよ」とか、薬悪用しようとしている人へ売らないということができて、それが安全弁になっている。そういうものはインターネットがどれだけ進んでも無理。だからこそ離島の定義をきちんとしてくれ」

事務局「法律上決められている。人が住んでいる島。薬局店舗がない。大きな離島は外れる」

足高「僻地への拡大解釈はない? どんどん田舎は薬局がどんどん減っていってる状況で、拡大解釈される恐れがある」

増山「継続使用の定義があいまい。希望すればできるという制度になりかねないんじゃないかと思った。そういう経過措置なら反対だ」

三木谷「正直言って議論がかみ合ってない。かみ合わない根源的な問題はここに出席してる委員がネットユーザーかそうじゃないかだと思う。僕はメールで話した方が本音で話ができるし、若い人はメールの方が本音で話をできる。ここにいる人はネットとか使わない人ばっかりだろう。そもそもこの検討会のメンバーにしても偏ってる。もっとエンドユーザーの意見を大事にしてもらいたい。対面の方が得意な人もいれば、メールの方が楽だという人もたくさんいる。そういう意見をきかないと、今回みたいな取り繕った改正で終わってしまう。根源的なネットのコミュニケーションを正確に捉えてもらいたい。過疎地を救うには本質的にはインターネットを使うしかない。そのあたりを勘案したうえで将来に向けた議論をしてもらいたい」

児玉「今の発言は問題だ。ほかの委員に対して大変失礼だ。足高さん増山さん阿南さんの意見をちゃんと聞け」

三木谷「こんな結論ありきの委員会開いておいてなんだ。そもそも呼ばれてる委員の世代をみてもおかしいだろうが。若いやつが誰一人としていないんだから」

井村座長「世代の話じゃないでしょ」

三木谷「いや世代の話だよ」

増山「今までのネット販売は全然安全性を確保できてなかった。それが反省点としてあるんじゃないのか。本人の情報確認とかネット業者はゆるゆる。ネットで一類の商品買えるようにするとかありえない」

三木谷「一類はそもそも販売しなくてもいいって言ってるんだよ。今まで何聞いてたんだ。ずさんな商品管理の問題はリアル店舗だって起きてる。そもそもそのあたりの制度設計をするときになんでネットユーザーのことを考えなかったのか」

増山「一般商品と同じ感覚で消費者が買っているのが問題。もっと健康に気をつけて買わなきゃいけない。医薬品が持っているリスクをマネージメントできるのかという観点で話し合いが必要。今困ってる人、具体的には離島や高齢者、障害者が困っているからといって、安全性が多少下がってもいいのかという話にはならない」

阿南「私は生活食料品などは全部ネットで購入している。だが、薬についてはやはりやるべきではないと思ってる。三木谷さんはサンデーモーニングで『ネット使えない人が集まって結論ありきで決めた』と発言していたが大変失礼な話だ」

後藤「安全性か利便性か。この議論の一番最初で安全性が重要だということは我々も重視している。そのときに安全性を担保するときに対面販売が絶対的な要素なのかどうなのかというところで食い違いがあるように思っている。その通信販売の安全策を話したかったが時間がないということできなかった。今後2年間でつめてもらいたい」

倉田雅子(納得して医療を選ぶ会)「後藤さんがネット販売で薬害は起きてないといったが、ネット販売で薬害をうけたとしても、消費者はネット業者じゃなくて病院や薬メーカーに文句をいうわけで、ネット業者にはいかない。だからそれはおかしいんじゃないか」

事務局「この先いろいろなことを想定して、制度についてどう対処していくか考える、そのための2年間だと思ってます」

増山「困ってしまう人の対策をどうするか、から始まっているが、誰がどのくらいどういう人が亡くなっているのか、個別にはわかるが全体像が見えにくい。ネットでは反対署名も募集していたが、署名の取り方がそもそも恣意的だった。あれが全員困っている人ではない。議論するときにどういう人がどういう風に困っているのか、それを特定できなければ適正な対処はできないのではないか」

後藤「通販業者としてそれを考えなきゃいけない。この省令案が通っても通販の安全性を高めることは継続的に高めていくことをやっていくし、それが試される2年間だと認識している。その先に業としての医薬品の通信販売ができるようになるか。安全策の周知徹底もやっていくのでよろしくお願いします」

足高「今の後藤さんの話きいても、インターネット通販は今後2年間は継続できるってことだよね。原則はダメなはずなのに、現実はできてしまう。そんなあいまいで不幸な状態続けるのはお互いにとって良くないでしょ。対面販売を崩すなら崩す、崩さないのなら崩さないで厚労省がはっきりと方針を示さなきゃいけない。ネット通販業者を日陰者みたいな扱いにしておくのは良くない」

細部ははしょってるけど、議論的にはこんな感じ。最後に事務局と井村座長がパブコメ受けてもう1回だけ委員会ありますと言ったら三木谷さんが「そんなもんやったって意味ないよ。時間の無駄だ」と吐き捨てるように言ってました。

対立構図としてはネット業者に自らの権益を侵されたくない置き薬協会(足高)、薬剤師会(児玉)が、対面販売じゃなくて売るのは安全性がやばいだろと主張し、それをロジックよりも感情的なレイヤーでネットに対して反発する消費者団体(阿南)と薬害被害者団体(増山)が後押しし、ミキティが半分諦めて苦笑しながら反発するという感じ。

ミキティが主張する、離島や僻地、それと視覚障害や車いすなどでリアル店舗に行きづらい障害者の救済はどうするんだというもっとも重要な論点に対しては、置き薬協会は「我々置き薬は対面販売してるから最強。我々が全国津々浦々回れば済む話。でもお金はないから、医療政策として政府が補助金出して支援してね。ネット? あんな血の通ってない危ない販売方式じゃ問題多すぎる」という主張で、薬剤師会はどっちかというと現状のネット医薬品通販を否定しつつ、自分たちが特別な立場でネット通販的な業務に進出できればいいという思惑がある感じ。消費者団体の人と薬害被害者団体の人は「離島や僻地や障害者の人の救済とか利便性よりも、安全性を確保することの方が重要」というところで思考停止してる(わざとかもね)感じだった。ミキティが第2類(普通の風邪薬とか)だからいいじゃんという論点を出しても、「ネット通販だと一人で100個注文することができるから危険」って、それって別にリアル店舗でも100店回ればできるっつーの。それとも対面販売なら100件回ってるような怪しい客は気づけるって話なのか。風邪薬やらバファリンやらを大量に購入服用して死ぬようなことが本当に「薬害」なのかね、っていう。誰も「安全性ゆるめて医薬品じゃんじゃん消費者にばらまきましょう」なんて話はしてないのにね。

6月以降の2年の経過措置中にネットの医薬品通販の基本的制度設計を整えるって話をしてたけど、このメンツで議論してもぜっっっっっっっっっっっっっっっったいにまとまらないね。ミキティも言ってたように僻地の人とか、エンドユーザーとか、実際にネット通販がないと困る人の意見をすくい上げて社会的にそれがどれほど必要とされているのかを効果測定してやんなきゃだめだろうね。

ミキティが「現代はネット販売をうまく活用しながら安全性を確保しながらやるのが世界的に見ても世の中の趨勢になっている」という趣旨の発言をしたが、米国では処方箋のメールオーダーなんかもある。一気にそこまでいくかどうかはともかくとして、バファリンやら市販風邪薬の通販なんて、そこからしたら大した問題ではないようにも思えるよね(もちろん、医療制度は国によって違いが大きすぎるので単純比較は難しいのだけれど)。

俺が腹が立ったのは足高さんの「僻地への拡大解釈はない? どんどん田舎は薬局がどんどん減っていってる状況で、拡大解釈される恐れがある」ってところ。過疎化が進む田舎で薬局が減るってことは、ただでさえ医療状況が悪くなってるのに、減っているからってそれを理由に拡大解釈してネットで売らせるなよって、俺にはそれは「田舎の人間は死ね」ぐらいの発言に聞こえたよ。

俺が参加してた文化審議会でもそうだったけど、ああいう審議会に昔ながらの「消費者団体」のおばさんが出て、現実のエンドユーザー(もしくは、これからの社会を担う若者と言い換えてもいい)と乖離しまくった意見を言ってそれが「消費者の総意」と役所に判断される現状は何とかならんものかね。別に俺とかMIAUが消費者の総意を代表できるとはまったく思ってないけど、少なくともいろいろな問題に対して消費者の中でも3極くらいの意見があるわけで、そういうものをそれぞれ審議会に出して行かなきゃバランスの取れた落としどころは探れないだろうに。

なんつーか大げさな話をすると、これもある種の日本社会の縮図だよなあと思いましたよ。で、肝心の立法(国会議員)が、こういうエンドユーザーが直接関連する問題の当事者性を持たずに行政に任せっぱなしにしちゃうからなあ。

ま、こういうやり取りがネットに上がって、それなりに多くの人が注目するようになったってことは一歩前進ではある。社会が変わるには、どんどんこういう政策決定プロセスがネットに公開されるようになって、それが実際の票を動かすようになる、そのための環境を地道に整えていくことを諦めないってことしかないんだろうね。

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