Information
  • 音楽配信メモの更新は終了しました(2002.1.11〜2014.8.23)。

ナタリーってこうなってたのか 表紙

ナタリーってこうなってたのか

大山卓也 著 / 双葉社

ISBN:978-4575307009 / 版型:18.2×12×1.2cm
ページ数:184ページ / 定価:1080円(税込)

▲目次を読む
▲amazon.co.jpで購入


2005年06月30日(木)

CCCDとして発売されたBONNIE PINK「Present」がCD-DAで再リリース

笑っちゃうくらいひっそりと。発売日は明日だから今日には店頭に並ぶのかな? HMVでは買えるようになってますね。CCCDとは型番も違うみたい。Amazonでもようやく買えるようになったか。

Presentは最近米iTMSで買えるようになっていたので、9.99ドルで買ってiPodに突っ込みましたよ。リプリントするにしても今更感は強いなー。

だがしかし、Fountains of WayneのB面集がUS盤もCCCDかって話もある(輸入盤もいろいろな種類があって混乱してるみたい)中、CCCD問題は米国でも深刻な問題になってきてますな。今やってる仕事が一区切りついたら、もう一度CCCDに関してはしっかり記事作るなりして問題点を洗い出していこうと思ってますよ。

(追記)
上のFoWの新譜、今日届いたので確認したらAmazonで買えるUS盤は普通のCD-DAでした。日本盤とか、店頭はCCCDばっかりなのでこちらを買うことをオススメします。

ただ、カスタマーレビュー見るとCCCDじゃないか? って書いてあるんだよね。このCDはEMIには珍しくCDの盤面に「Compact Disc Digital Audio」のロゴがあったからほぼ間違いなくCD-DAだとは思う。ただ、これって表記だと「ENHANCED」ってなってるけど、実際に届いたのは違うんだよね。US盤にもいくつか種類があって「ENHANCED」仕様のやつが新しいCCCDなのかもしれない。で、「iPodに落とせない」ってレビューした人にはそれが届いたのかな? ちょっと謎。Amazonに問い合わせした方がいいかもね。

| CCCD | この記事のURI | Posted at 09時15分 |

Grokster裁判の最高裁判決要旨和訳

MGM v. Grokster P2Pソフト配布事件 合衆国最高裁判決(プログラム関連米国判決集)

プログラム関連米国判決集」を運営している井上雅夫弁理士が、Grokster裁判の最高裁判決要旨の和訳を公開。ややこしい話が多いものの、判示事項(a)で示された「著作権保護を通して創作を支援することと侵害責任を制限することにより技術的イノベーションを促進することの競い合う価値観の間の緊張関係が本件の対象である」という部分がこの問題の本質をよく言い表していると思う。

でも、著作権を保護しないことで生まれる創作支援ってのもあるわけでね。また、技術的イノベーションを促進することで成功できるクリエイターだってたくさんいるわけだ。そのあたりまで加味して議論されなきゃいけないんだろうけど、そうすると結局は「バランスをどこで取るか」っていう結論出そうで出ないお茶濁し的ありきたりな話になっちゃうんだよね。ただ、今回の判決で現在の両者の緊張関係とか、力関係とか、今後動いていく方向などが変化するような気はするね。どのタイミングで手打ちするのが、クリエイター、消費者、コンテンツ制作会社にとって一番利益が最大化するのかねぇ。

| ファイル交換ソフト | この記事のURI | Posted at 09時07分 |

2005年06月28日(火)

Groksterが最高裁で敗訴。著作権侵害認定へ

Grokster, StreamCast Lose(⇒翻訳
Supreme Court Rules Against Grokster!(⇒翻訳
Court Sides With Entertainment Biz In Grokster Case (⇒翻訳
Grokster Loses (⇒翻訳
Grokster voting patterns(⇒翻訳
The Supreme Court's ruling against P2P(⇒翻訳

一番下のZDNetの記事は翻訳を通してもかなりわかりやすく今後の見通しが書いてあって参考になる。上の記事で1つだけ読むなら一番下のやつにするといいだろう。

また、EFFもこの判決に対してさまざまな情報をサイトで提供している。こちらのファイル(リンク先PDF)では、各裁判官のコメントが読めるようだ。

日本語で読める記事も出てきた。

米最高裁、P2P企業の法的責任認める逆転判決(ITmedia)
ファイル交換ソフト「違法性問える」 米最高裁判決(asahi.com)
ファイル交換ソフトに著作権侵害の責任・米最高裁判決(NIKKEI NET)
P2P側2社、「著作権侵害の助長行為」解釈を批判(ITmedia/IDG)
P2P 会社には、著作権侵害利用の責任あり(Japan.internet.com)
米最高裁、P2P企業のGroksterらに著作権侵害の責任追求を認める逆転判決(Internet Watch)
米最高裁,PtoPベンダーに対する著作権侵害の責任追及を認める(IT Pro)
PtoP訴訟、ファイル交換ネットワーク側が敗訴--米最高裁で判決(CNET Japan)
連邦最高裁「違法ダウンロードはP2P企業にも責任あり」(Hotwired Japan)
米最高裁、P2P企業の著作権侵害の責任を問う判断(setoh blog)
PtoP企業敗訴判決--音楽業界関係者は好意的な反応(CNET Japan)
ファイル交換は悪と言い切れるか(CNET Japan)
PtoP有罪判決で期待されるPtoPビジネス利用の促進(CNET Japan)

高裁では無罪になったGrokesterが、最高裁で逆転判決。高裁判決はでは「ファイル交換ソフトウェア自身には罪はない」っていう、世界的な潮流の1つとして語られたけどそこからエンターテイメント業界が押し戻したってことか。ある種の予定調和と言えなくもない。

ただ、元々Groksterは高裁で勝ったというもののかなりギリギリの勝利であったことは事実。また、最高裁では高裁判決そのままにはならないだろうという識者の見方も多かった。そのあたりは城所岩生成蹊大学法学部教授が書いた以下の記事に詳しい。

ソニー・ベータマックス判決を見直す米最高裁(NIKKEI NET)
原審差し戻しか?――P2Pソフト著作権侵害訴訟、米最高裁での口頭弁論を傍聴して(NIKKEI NET)

城所氏は上記記事で最高裁における原審差し戻しの可能性を示唆していたが、結果としてはまさに予想通り。「満場一致」でGroksterの責任を認め、原審へと差し戻されることとなった。

裁判の是非はともかく、Winny裁判への影響も気になるところ。上記2つの城所氏の記事はこの問題を理解するのに非常に役立つと思うので、読んでおいた方がいいでしょう。

しかし5年経った今この議論が示唆するものは非常に大きくなっているんじゃないだろうか。5年も経ったのに、ここで議論されているような本質的な問題は棚上げされたままで、コンテンツを取り巻くインフラだけが様変わりしちゃったような気もするね。

個人的に気になるのは“合法”P2Pネットラジオ(メッセンジャー)ソフトであるMercoraがどうなるかってこと。GroksterとMercoraって提携してたんだよね。

今回は映画業界の強い働きかけでこういう判決になった面はあるだろうけど(彼らにも必死になる理由がある)、音楽業界的にはどうなんだろうね。もちろん、基本的にはこの判決は歓迎なんだろうけど、Sony BMGなんかは既にGroksterがらみでこんなことも始めてるしねぇ。MercoraにしてもSnocapにしても、ようやくコンテンツ業界がP2P(P2P的なコンテンツサービス)に対して「潰す」だけの対応じゃなく、合法的な利用の道も探るようになってきて、全体的な流れとしては良い方向に向かっていたと思うだけに、ちょっとやるせない気持ちはあるなぁ。

ま、iTMSをはじめとする合法ビジネスに道筋が付いてきた今は、コンテンツ業界にとって「Napsterの亡霊」ともいえるユーザー主体で著作権侵害が横行してしまうファイル交換ソフトの息の根を止める千載一遇のチャンスなのかもしれないね。……って書いたらまさにドンピシャな記事がITmediaにアップされましたな。

上で挙げた城所教授がこの判決に対してコメント発表してますね。この判決のポイントは「最高裁は著作権侵害を助長するような行為を罰しただけで、P2P技術そのものを罰したわけではない。技術中立性は貫いた」とのこと。ということは、差し戻し裁判では、著作権侵害の助長行為に争点が移るわけだろうが、これはこれでかなり複雑な問題をはらんでいる気もする。

| ファイル交換ソフト | この記事のURI | Posted at 00時33分 |

2005年06月25日(土)

音楽配信専門フリーペーパー「ramblin'」創刊&坂本龍一インタビュー

音楽配信に特化したフリーペーパーである「ramblin'」の創刊ゼロ号が配布されました。中身はウェブで全部読むことができます。
(→こちらをクリック)

フリーペーパーと連動した音楽配信サービス紹介サイト「ramblin'」(BroadBand Watch)
ミュージックダウンロードフリーペーパー「ramblin’(ランブリン)」6/25創刊(Musicman-NET)
ブームメディア、音楽ダウンロード専門「フリぺ」創刊(シブヤ経済新聞)

僕もライターとして参加させてもらってて、この号では「ダウンロードカルチャーの未来と課題」というテーマで坂本龍一氏へインタビューする記事を担当しました。約1時間の電話インタビューでしたが非常に内容の濃いもので、あれでも3分の1くらいに削ってるのがちょっと残念だったり。ま、冗長過ぎるインタビューも、読者的には読みづらいからある程度の分量に収める必要はあるんでしょうが。

90年代半ばからネットと音楽の融合ということに対して積極的にコミットしてきた教授だけあり、非常に興味深い内容のインタビューになりました。音ハメの読者の人は楽しめるインタビューになっていると思いますのでぜひご一読を!

| 音楽配信 | この記事のURI | Posted at 23時31分 |

2005年06月22日(水)

hotwiredに韓国の音楽業界を取材した記事を書きました&著作権侵害云々の話

ブロードバンド先進国・韓国の音楽産業事情(hotwired)

詳細は上記リンク先を読んでくださいという感じで。

韓国は確かに著作権的にはかなりめちゃくちゃな国ですが、ここ数年のキャリア側、コンテンツクリエイター側、消費者側の激しいせめぎ合いの結果、ようやくビジネスとしてまともな方向に向かい始めたという感じみたい。上の記事ではBugsはまだ無料で頑張ってると書いてるけど、著作権料の支払いがきつくて、今後は完全有料化せざるを得ないだろうという話も最近韓国事情に詳しい人から聞きました。

取材で印象的だったのは、韓国の音楽業界ってこんだけめちゃくちゃな状況なのに、意外と中で業務に携わってる人はポジティブってこと。日本以上にCD売り上げは落ち込んでるのに、いろいろ新しいアイデアを仕掛けていこうと思ってるし、そういう新しいアイデアに対して日本みたいに規制が先に立つことがないから、その中からcyworldみたいに大化けするビジネスが出てくる(まぁcyworldは純粋な音楽ビジネスではないけどね)。

あまりにも極端だから、それをそのまま日本に持ってくることはできないとは思うんだけど、参考にすべき点はたくさんあると素朴に思ったよ。なんかほら、日本の音楽業界人は悲観的で、売上落ちてる原因を自分たち以外に求めようとしたり、オンライン化の波がすぐそこまで来ているのは肌で感じてるけど、先がどうなるかまったく読めないからできるだけそういうオンライン化の波をゆっくりさせようとしている人が多いじゃん。本来がクリエイティブな業種なのに必要以上にサラリーマン的価値観が横行し過ぎてしまったという結果、そうなってる。これは完全に音楽バブルがいけないんだけど。もちろん、音楽は大きな「産業」になったからサラリーマン的価値観も重要なんだけど、それが多数派になっちゃたらなかなか面白いものは生まれてこないよね。

さて、どうすりゃいいんでしょうか。

で、タイミング的にこの記事を踏まえた上で今ネットをにぎわせている「著作権をカジュアルに侵害するサイトとかパクリ問題とかそれの遵法意識」とか、そのあたりの議論を見ていくと思考が広がっていくのではないかと。
「企業ならアウト、庶民様なら OK」の身勝手さ(趣味のWebデザイン)
知財にたかるパクリ違法サイト(備忘録ことのはインフォーマル)
翻訳権とブログ(finalventの日記)
著作権とパクリと遵法と企業と個人のお話(おれはおまえのパパじゃない )
相手の発言を、自分の主張している意見に当てはめるために歪んで解釈(ARTIFACT@ハテナ系)

俺はシンプルなスタンスで「著作権は大事だけどガチガチに規制したり、当事者でないヤツが必要以上に騒ぎ立てる人たちが主流派になると、文化的におもしろいものを生み出さないだろう」って感じ(その意味でテラヤマアニさんの文章にはとても共感した)。上の韓国の記事で「日本の音楽業界が韓国から学ぶべきことが多いんじゃないか」って書いてるのもそういう部分がベースにある。

こちらのはてなダイヤリーで、

主宰の津田さんに直接聞いたことはないが「ネットラジオを、違法でなくても面白いことができる、良い音楽が流せる、しっかりとしたメディアとして確立させる」という意図があるのではないだろうか、と勝手に感じている。

という指摘があるが、これは半分正解で半分間違い。違法なネットラジオも、合法なネットラジオも混在してていいし、それが健全な状況だと思う。ただ、今違法でおもしろいネットラジオ作っている人たちが合法で大手を振ってさらにおもしろいものを作れるようになればよりベターかなとも思う。

違法ということで話をすると、ビジネスに深刻な影響が出ない範囲の「海賊行為」であれば、俺は全然存在していいと思っている。より正確に言えば、著作権者が本来取得できた利益をかすめ取るようなことを第一の目的として海賊行為は、きちんとしかるべき機関が取り締まればいいと思うが、その文化の振興に深くコミットする海賊行為というものも世の中にはたくさん存在するわけで、そういうものの扱いはグレーのまま放置しておけばいいんじゃないの、という話。

例えば自宅で行われるCDリッピング→iPodへのコピーなんてのはカジュアルな海賊行為の典型だろうが、あの文化・スタイルが普及したことで、音楽CDの購入数が増えた人も俺はたくさん知っている。昔JASRACに取材したとき、いみじくもJASRACの中の人はパソコンのリッピングやCD-Rが普及したことを「家の中に海賊盤製造工場があるようなもの」と表現したが、じゃあこれを全部違法行為にして、音楽は買った音楽CD1枚でしか楽しめないなんてことになったら、それこそ音楽文化は明らかに衰退するだろう。もっと言ってしまえば、そういう海賊行為が登場しないような文化は、そもそも「文化」として魅力を失っているのではないか。音楽だけで話をすれば、まだ海賊行為が生まれるくらい人々のニーズがあるということだし、あとは結局そのニーズをどうお金に変えていくべきなのか、というビジネスの在り方の話に集約されるのだと思う。どっちかというと、文化論より俺はそのビジネス論の話がしたいのだ。だから上の韓国の記事も書いた。

だから、こうやって俺的アルファブロガー(笑)の人たちが、みんなにこの問題を考えさせてくれる重要な問題提起をしてくれたことは大変素晴らしいことだと思う。意見はいろいろあっていいよね。そういう多様な意見に触れて、自分がどんなことを考えられるか。ここが一番重要だし、何か思ったことがある人はみんなぜひブログでパブリッシュすればいいと思う。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 15時28分 |

モーリー・ロバートソンさんのネットラジオで取材を受けました

モーリー映画を作る: ポッドキャスト「i-モーリー」を配信

話してる内容はいつものようなこと。ネットラジオとか音楽著作権とか。超長い(90分くらいある)ので、お暇な人だけどうぞ。

| ネットラジオ | この記事のURI | Posted at 15時00分 |

2005年06月18日(土)

iPodの音質は「悪い」のか?

下のMusical Batonで「iPodより音質が格段に良い」と書いたら読者の人から「それって本当ですか?」という質問を頂いた。良い機会なので、iPodの音質について語っておこう。

ただ、その前に前置きしておきたいのは「音質は主観的なものであり、絶対的なものではない」ということだ。これはエクスキューズじゃなくて、それ以外に言いようがないのだ。だから、最終的には店頭に行くなり、人から借りるなりして自分の耳で判断してもらいたいと思う。これをまず踏まえた上で以下の部分を読んで欲しい。

結論から先に言えば、iPodの音質は多くの携帯音楽プレーヤーと比較したときにあまり「良くない」と思っている。

従来のポータブルオーディオは、低音強調機能などが付いており、特にロックなどでは、一般的な消費者の耳の特性として「低音が強調された状態」で聞くケースが多い。そして、iPodの一番の問題は低音や高音の調整をプリセットイコライザでしか行えないということだ。また、iPodは元々低音成分が多いMP3を再生するときに「ROCK」や「BASS BOOST」などの低音強調イコライザを選択すると、低音が不自然に割れてしまうという現象が起きる(ただし、この現象は俺が使っている第3世代iPodの話。もしかしたら現行の第4世代は改善されているかもしれない。ただ、この現象はITmediaのコラムで小寺信良氏も指摘しており、2世代→3世代ときても改善されていないことを考えると、アップルがこの現象を問題として認識していない可能性もある)のだ。iPodはヘッドホン端子の質が悪く、これが音質低下につながっているという指摘もあるが、この現象から考えれば、ヘッドホン端子の質というよりも、iPodのデコーダ、DSPの質が悪いのではないだろうか。

例えば今俺が使ってるiRiverのH320は、iPodで再生すると不自然に低音が音割れしてしまうMP3ファイルを再生するとき、イコライザーを調整して最高レベルまで低音を上げて再生しても歪みは一切なくきれいに低音が再生される。この現象から言えることは、iPodは「音質が悪い」というより、「デコーダ/DSPの品質が悪い」ということになるだろう。

ちなみに俺は「iPod買ったけど、いまいち音が悪いよね?」という人に対しては、決まったアドバイスをしている。まずiTunesでリッピングする際のビットレートをAACでもMP3でもいいから「192Kbps」に上げさせて、(ロックを聴くことが多い人に対して)聴く際のイコライザー設定を「JAZZ」に固定させる。JAZZであれば低音の音割れはほぼなくなり、音質的に非常にバランスの良い状態で音楽を聴けるようになる。ただ、この設定で聴く場合、ポータブルMDやらCDなど、一般的なポータブルオーディオのような低音が強調される迫力のある音では聴けなくなる。そこの部分だけは割り切りが必要だが、現実問題として、低音ばかり強調されると耳が疲れるし、オーディオの本質から言えば低音が強調されることが「良い音」ではない。そう考えて使うしかないだろう。

さて、ここで結局最初に提示した「音質は結局主観の問題」というところに戻ってくる。

必ずしも「良い音」とは「特定の周波数帯がきれいに出ている」とか「ノイズの量」とかそれだけで判断できるものではないのだ。ジャズやクラシックなどを聴くことが多いピュアオーディオの世界ならともかく、ポピュラーミュージック、ロックの音の「価値観」は違う。本来の音というより、どれだけ味付けされた音を楽しめるかという部分があるからだ。そうなると、どれだけ「自分好みの音に調整できるか」ということも重要になってくるし、従来の民生向けポータブルオーディオ機器が今まで「出してきた音」と違う傾向を持つiPodに対し、「音が悪い」「なんか物足りない」と感じる消費者が出てくるのも無理はないことだろう。この事実が「iPodは音質が良くない」という評価につながっていることは想像に難くない。

極論してしまえば、本来の意味で「音質が良い」ことは重要ではないのだ。そうではなく相対的に「音質が良く聞こえない」ユーザーが多数存在する(これはiPodのそもそもの音作りの問題や、イコライザー機能が貧弱なことや、DSPやBBEで音にある種過剰な味付けをしていないことなどが原因として考えられる)ということが、「iPodは音質が悪い」という結論を導き出しているのだ。

ピュアオーディオ信仰的な考え方からすれば、DSPやらBBEなどで音質を補正する機能は、ある種の「化学調味料」のようなものだろう。しかし、大多数のポピュラーミュージック、ロックを好む人間は、ソニーやら松下やらが出してきた従来のポータブルオーディオ機器でそうした音に「慣れてしまっている」わけだ。彼らが「iPodの音質が悪い」と感じるのはある意味で当然だと俺は思うし、俺自身iPodで割れる低音を聞かされるくらいなら、H320を使って迫力ある音でロックを聴きたいという感じになる。単純な話でそっちの方が「好みの音」なのだ。突き詰めれば結局そういう話になってしまう。

ロック聴いていて音質にこだわるというのはそれ自体があまりロックっぽくない行動だが、実際のところロックを良いオーディオで聴くと今まで聞こえないいろいろな音が聞こえてきて本当にいろいろな発見がある。だから、ロックであろうとできるだけ良い環境で音を聴いた方が良いと思うのだ。

俺はオーディオの専門家ではないので、本来的な意味の「音質」を云々語れる立場ではない。だが、なぜiPodの音質が悪いという評価を聞くことが多いのか、その説明として1つの仮説を上記の文章で提案してみたつもりだ。もちろん、ほかの要因もあるだろう。そういう検証は他の人がどんどんやってくれればいいと思う。

つらつらとiPodの音質面のマイナス部分を語ってきたが、実はそういうマイナス面を差し引いても俺はiPodが現状でもっとも優れた携帯音楽プレーヤーだと思っている。iTunesの使い勝手、曲を選ぶインターフェース。これらの完成度からみたら、音質面での若干のマイナスなんて大した問題ではない。大体普通の人は音楽を聴くときに音質はそれほどは気にしてないし、そもそもがポータブルオーディオや圧縮された音声なのに音質にこだわることにどれだけの意味があるのか、っていう指摘もあるだろう。

また、現実問題として「iPodの音質が今後改善される可能性」と、「他社のプレーヤーがiTunesやiTMS、クリックホイールなどまで含めたiPodの優れた操作性・ソリューションを凌駕するものを作れる可能性」を比較したときに、明らかに前者の方が可能性が高いと思われる。その意味でもiPodを選ぶ方が現状ではベターなのではないか。もちろん、既に市場でデファクトの地位を得ているということも大きい。いかに音質、圧縮率に優れていても大失敗したSolidAudioなんて過去もあるしな。

現状俺はH320を使っていて満足しているが、操作性に関しては全然ダメだとは思ってる。またH320は音質的にはiPodよりも良い音で音楽を鳴らしてくれると思っているが、その一方でiPodを捨てるつもりもない。iTMSが始まったときにこれを利用できるのはiPodしかないしね。

だから日本市場においてソニーがiPodのシェアを急追しているのは非常に良い傾向だと思う。やっぱ、きちんとライバルが存在して追い上げない限り、iPodの品質も上がっていかないからね。iPodはバッテリーの問題もかなり深刻だし、改善しなければいけないところはたくさんある。ぜひ「製品の完成度」のところで切磋琢磨して、アップルもソニーもお互いに良い製品を作って頂きたいものだ。日本版iTMSを政治的な力で遅らせてiPodの力を失わせようとしたり、同じ20GBっていう容量なのに、ATRAC3plus換算で計算して、さもiPodよりたくさん曲が入るような宣伝をしたり、はっきり言って最近のソニーはやることがせこい。もっと製品レベルを上げるなり、iTMSと同じくらい消費者にとって魅力的な音楽配信サービスを構築するなり、まっとうなやり方で勝負してもらいたいと思うね。「技術のソニー」が、魂まで負け犬になったら終わりですよ。

しかし、切磋琢磨すべきはずのソニーの携帯音楽プレーヤーはまたこんな問題起こしてるのね。で、相変わらず自分の非を認めず、対応もなしですか。早いところ謝って新ファーム公開でもすりゃいいのにねぇ。結局液晶不具合のときはあとでやったんだから。

ソニーの携帯音楽プレーヤー部隊は上からiPodに追いつけ追い越せっていう至上命題出されて、とにかく今時間に追われている。それで十分なチェックやUIチューニングの暇が与えられないのだろうが、それははっきり言って不幸なことだ。いい加減ベータ版レベルで商品を出して不具合見つかってもその対応をしないっていうお決まりの対応はやめた方がいいんじゃないか。まだ台数出てないからいいけど、今後は確実に大きな市場になっていくんだしさー。もう従来のソニーブランドだけで勝負できる時代じゃなくなってるんだし。


(追記)
この記事、いまだに参照されることが多いので補足しておくけど、上の音割れ現象、第5世代のiPod(またはiPod nano)からは解消されてるね。第3世代のiPodでEQ「ROCK」や「R&B」にしたとき音割れした音源が第5世代では問題なくなっていた。いや正確にいうと音源によっては若干クリッピングっぽい音にはなったが、それでも昔と比べれば全然マシなレベルになった(テストしたイヤフォンはEtymotic Researchの「ER-4S」)。iPodは微妙に世代によって音質が変わってきているので、そのあたりを踏まえて議論しないと「割れた」「割れない」だけの話に終始してしまう可能性があるので注意が必要なのでは。デフォルトで付いてくるヘッドフォンとインピーダンスがまったく違うER-4Sでは、そのあたりの結果も変わってくるだろうしね。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 15時55分 |

過去のニュースへ

_EOF_