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  • 音楽配信メモの更新は終了しました(2002.1.11〜2014.8.23)。

ナタリーってこうなってたのか 表紙

ナタリーってこうなってたのか

大山卓也 著 / 双葉社

ISBN:978-4575307009 / 版型:18.2×12×1.2cm
ページ数:184ページ / 定価:1080円(税込)

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2005年07月27日(水)

SMEがレーベルゲートCD2作品を全廃。通常CD-DA作品で再リリースへ

本日7月27日よりレーベルゲートCD2としてリリースされた全商品がCD-DAで再出荷されることに。レーベルゲートCD2は9月いっぱいですべて廃盤になる予定とのこと。SMEが初期に導入したレーベルゲートCDの中にはわざわざレーベルゲートCD2で再リリースしたものもあり、そういう作品は「レーベルゲートCD→レーベルゲートCD2→CD-DA」と3種類が存在することとなった。初期作品は数年後「盤マニア」の間でプレミアつくかもね(笑) というか、サーバー運営コストとか、ATRAC3とかDRMの使用料、CDSのライセンス料金とか、カタログ作り直したりしたこと考えると、本当に壮大な「無駄遣い」だったんだなぁと改めて驚愕。

レコード店宛に届いたFAX
対象商品リストその1
対象商品リストその2
対象商品リストその3

あーやっとこれでPUFFYの「59」とかアナログフィッシュとか、ギターウルフとかそのあたり買えるようになるよ。良かった良かった。というか、SMEはこういう重要な情報こそ、サイトで一般消費者向けに告知しろって話ですよね。

当然のことながらあまり売れてない作品はお店によっては9月までレーベルゲートCD2のまま、店頭に置かれている可能性もあるので、対象作品のCD-DAが欲しい人は店頭で「CD-DA版を下さい」と言うのが吉。

Amazonはまだ全然入荷してないけど、そのうちCD-DA版が入荷されるはず。その場合、上記対象商品リストの一番左にある「新品番」をAmazonの検索ボックスに直接入力しよう。ただし、そのまま入れてもダメで、型番の書き方は「○○○○-XXXX」という形で入力する必要がある。例えばRhymesterの「グレイゾーン」のCD-DA版をAmazonで欲しい人は「ミュージック」にアクセスして、検索ボックスに「KSCL-850」と入力して検索すればカタログを指定して検索できる(現時点ではまだAmazonに登録していないので買えない)。HMVの通販だと直接カタログ番号を指定して検索できる機能もあるし、すぐにでも欲しい人は併用するといいかも。

気になるのは、レンタル店に卸しているLGCD/LGCD2はどうするんだろうってこと。エイベックスは未だにレンタル店向けにはカタログ番号変えてまでCCCDを卸しているらしいけど、SMEはそういう方針は取らないようだ。ただ、一度購入した在庫を何度も回すことが前提となっているレンタル店にCD-DA版が入るかどうかは微妙だよね。お店の体力とかの話になるのかな。TSUTAYAあたりはやってもおかしくないが、そこまでCCCDのことを気にしてるかどうかも怪しいしなぁ。

全商品回収&再リリースというのは思い切った決断のように思えるが、こうせざるを得ないのはレーベルゲートCD2がサーバーを必要とする大がかりなものだったからに他ならない。そういう意味ではSMEがレーベルゲートCDシステムに莫大なコストをかけてくれたおかげで、あまり市場ではけてない作品もCD-DAに戻してくれたとも言えるわけだ。結果的にはユーザーフレンドリーになっているというのは皮肉というか何というか。まぁ今のSMEはヒットしてるアーティスト多い勝ち組だから、こういう余裕があるのかもしれないけど。

しかし、海外ではXCP形式のCCCDが増えているということもあり、まだまだ余談を許さないこの問題。東芝EMIは相変わらずCCCDばっか出してるし、全然まだ「終わった」問題なんかじゃないよ。むしろこれからまだ一山も二山もあると思う。iTMS Japanが始まろうとしているこのタイミングでSMEがCCCDを回収再リリース。なんかいろいろな因果を感じずにはいられないね。

| CCCD | この記事のURI | Posted at 21時03分 |

Appleが8月4日に国際フォーラムでイベントを開催、iTMS Japan開始を発表か?

Apple prepares for Tokyo music event(Macworld)
翻訳
ここでiTMSの発表があるのではないかとの報道が。

ここに書いてあることが事実だと仮定して話を進めるが、価格は160円と320円になるそうだ。つーか320円ってありえねー! 東芝EMIがMoraとかWMA系で売ってる270円より高いじゃん。いやでも最初着うたフルに参加してなかったSMEが、着うたフル売れるってわかってからはちゃっかり「1曲420円」なんてふざけた価格で売ってるのを見ると、320円もさもありなんという感じではある。ホント着うたフルを420円でも喜んで買ってるお人好しさんがいる限り、ユーザーがレコード会社から(価格付けのところで)なめられる状況は変わらないんだろうな。(bbsとかトラックバックとかメールとかでたくさんご指摘頂いたが、確かにこれは日本の一般的なサービスを言っているだけだった。わははきちんと読めよって話だね恥ずかしー。そんな難しい英語でもないのにね。まぁ価格の話は枕で実は単にSMEの着うたフルに文句を言いたかったというw)

DRMはどうするのかな。結局最後までDRMがどうなるのかという情報は漏れてこなかったねぇ。ま、いずれにせよこれも8/4には明らかになるだろう。今ほとんど完成状態になったらしいアップルストア渋谷店のオープンも8/4に合わせるのかな。ネットだと8/6オープンなんて情報もあるけど……。


……と思ったらこんな情報も。
今度こそ「iTMS」……これが8月4日の“スペシャルイベント”の招待状だ!(iPod情報局)

ここって日経BP内にある半公式的コンテンツなんだけど、画像まで出しちゃっていいのかなーと思った。いや別にNDA結んでるわけじゃないだろうから(単なる招待状だしな)大丈夫なんだろうけど。というかこの招待状、メールボックスチェックしたら、ありがたいことに僕のところにも届いておりました。うはー。

iPod情報局では場所は伏せられてるけど、Macworldの記事には会場とか時間とか思いっきり書かれてるね……。

| 音楽配信 | この記事のURI | Posted at 20時14分 |

2005年07月20日(水)

Amazonが携帯デジタル音楽プレーヤーをセール中

Amazon:ポータブルオーディオ超特価アイテム

若干在庫処分市的感じもあるけど、ちょっとこういうプレーヤーを試してみたい人にはいいかも。還元分も含めてオトク度が高いのはgigabeat F20とかF60あたりとか、Creative MuVo MICRO N200 1GBあたりかな。

| Amazonネタ | この記事のURI | Posted at 19時24分 |

2005年07月16日(土)

音質与太話

(この記事を読む前に、未読の人は以下の記事を読んでください)
iPodの音質は「悪い」のか?
iPodに最適なMP3を作る その1〜 MP3エンコーダにまつわる噂を検証 〜
続・iPodの音質は「悪い」のか?

ネットでそこそこ話題を集めるMP3やらiPodの音質話。普通の人は音質なんて気にしてねーよというのはまったくもってその通りだと思うのだが、ネットでこれだけ注目されるというのは、やっぱりネチズン的に気になる話題ではあるのだろうなーということは一連の記事の注目度でわかった。

で、いろいろ反応とか見ているとここみたいに、藤本氏を「MP3を128kbpsで聴いてる耳の腐った人」とかそういう曲解があったりするので、そういうのを見るとやっぱそれはそれでどうかと思うわけだ。

128と192以上では当然音質(この場合オーディオ的な音質というより出音の鳴り方という意味に近いかも)は変わってくるとは思うのだが、その出音で128の方が「好み」に感じる人だっているだろう。そっちの方が好みだったからといって、それは耳が腐っているからじゃなくて、その人の快感原理によるところが大きいわけで、個人の嗜好でしかない快感原理を指して「腐っている」とか言うのは、あまり意味がないというか、批判として外しているんじゃないかとも思うわけだ。俺は高音質を聞き分けられるからこいつに勝っているとか、そういうくだらない脳内ゲームに陥っているみたいな。

もう一度言おう。音質は最終的に主観的なものだ。だから藤本氏があの連載で128Kで十分だと結論づけたのも俺は正しい(一面の真実がある)と思っている。その上で俺は192、JAZZの方が「現状のiPodには適している」と「主観で判断」している。

藤本氏の波形分析というのは、その主観的判断のものに客観要素を持ち込む1つの方法論であって当然それは完全ではない。多面的な検証があった方が良いとは俺も思うが、本格的に多人数呼んだブラインドテストなり、スペクトラム分析なり、いろいろなことをやるには、AV Watchの週刊連載という「器」はちょっと厳しいかな、とも思う。そういうコストをインプレスが全部払ってくれるならまた違うだろうが、ウェブ媒体でそんな気前の良いところを俺は知らない。

閑話休題。128でエンコードしたMP3はシンバルに代表される高音の響きが変わる。全体的にざらついた感じになるが、むしろこのざらついたローファイ感が似合うロックなんかもある。音楽制作の現場だって、ここは音が堅いからわざわざアナログミキサー通して柔らかくしたり、テープコンプかかった音をサンプリングしたり、一度サンプリングしたブレイクビーツをビットコンバートでビット数落としたり、あえてAKAIの古いサンプラー使ってざらついた感触にしたりして、それをわざわざハイファイなハードディスクレコーダーに戻したりするわけだ。

「この曲はCDよりテープで聴いた方が雰囲気出るよね」みたいな経験をした人だって多いだろう。俺と同じくらいのおっさんはラジカセに中高生の頃、ちょうどラジカセにドルビーノイズリダクションが標準装備されつつあったと思うのだが、ノイズリダクションかけるとノイズは少なくなるけどハイが落ちてしまい、ギターの音が迫力なくなるからあえてノイズリダクションをオフにしてヴァン・ヘイレンやマイケルシェンカーやポール・ギルバートやトニー・マカパインを聴いたことがあるんじゃないか。いや別に速弾きギタリストに限定しなくてもいいけど。

もちろんそのざらついた感じが嫌いな人はMP3のビットレートを上げたり、エンコーダをLAMEに変えるなり、エンコードするフォーマットにAACにするなり、メタルテープを使うなりした方がベターだ。俺自身はざらついた音は嫌いじゃないが、最初からある程度音質をよくエンコードしておけばあとから音質調整機能でそういうざらつき感は出すことができるので、できるだけ高音質で取っておこうという感じの思考でデジタル音楽に接している。しかし、まぁノイジーな音楽ばっかり聴いてた昔と違って最近はCut Copyみたいな丸っこいシンセ音とかフィルターハウスみたいな音楽を聴くことが多くなった。正直もう一日中SPKとかホワイトハウスとかそういうのは無理ですよ。Merzbox買ったのはいいけど、まだ1枚も聴いてないしな! テヘッ。人の音楽嗜好が年齢とともに変わるのと一緒で、音質に対する嗜好だって変わっていく。そのことも最初に踏まえた上でこういう音質議論みたいな話をした方が良いとは思うのだが、実際問題そういうこと言い始めるとはっきりいって議論の収拾がつかない。それだけにみんな自説を展開しがちだし、自説に過剰な自信があるんだろうなーとも思う。

そうそう、この前着うたフル買ったんですよ。ピンク・レディーの渚のシンドバット。で、それをケータイ(W21CA)のしょぼい内蔵スピーカーで車の中で流しながら運転してたんだけど、それがとても雰囲気が良くてねー。中途半端なAMラジオみたいな音質がピンク・レディーをたくさん聴いていた頃の自分をフラッシュバックさせたみたいな感じ。「あ、意外と着うたフルもこういう目的で使うならいいじゃん」と思った。音楽で感動したり、何か心が揺さぶられるのってたいていは「シチュエーション」であって、音質ではないんだよね。しかし逆にそのシチュエーションを醸し出す要素として音質は結構重要な気がする。なんか禅問答みたいになってきたな。ということで、風呂敷を広げたまま片付けずに、このエントリーは終了するよ!

(追記)
なんか言われてるみたいだけど、批判されてる部分がよくわからんな。ABXテストだって当然知ってるし、そもそも彼のサイトは何度か読んだことがあるし、こういう世界でそこそこ仕事をしていて、こんなサイトを3年もやってきているわけであるから、圧縮音声が高度に奥深い世界ってのはまぁそれなりに分かってるつもりだ。ただ、別にオレはその上でそこまで(必要以上に)音質にこだわることに意味を見いだしていない。さらに言えばこのブログは「第三者による再検証可能性という科学の最も基本的な姿勢を持ち込まずに文字だけで議論を進めようとする」ことを目的ともしてないし(もちろん、個人的に興味があって、説得力を持たすことを最大限重視する場合、そのようなアプローチをこのブログ上でやることはあるだろう。が、基本スタンスではない。オレはモヒカンチェックによると似非モヒカン族らしいしな)、それなりの信頼度が求められる既存メディアとは違うスタンスで書いているから、そういう科学的アプローチを求められてもなーとは思う。本格的にそれをやる必要が仕事として生じるならきちんと金かけてやりますよ。問題はそれだけのコスト(これは時間的なものも含む)を払ってまで記事にしたいという媒体がないし、最初の書いたようにそこまでオレは細かい部分まで興味がないっつーところもあるしなぁ。音割れに関しても同様。一応同じMP3ファイル使って、20機種くらいで低音ブーストして割れるかどうかとか確かめたことあったけど、やっぱりiPodの割れは顕著だった。そこの部分でオレの体験は嘘(たとえそれが思いこみであってもね)がないから、低音割れると(思いこみであるなど、それなりのリスクを背負いながら)書いてるわけでね。藤本さんとオレが微妙に向いている方向が違うように、匿川さんとオレも見ている方向やアプローチも違う。それだけの話なんじゃないかなとも思うね。

ただ、面白いネタではあるので、どっか真剣にこの問題検証したい(ある程度自由にお金使える)媒体の人はご連絡ください。オレはあんま耳良くないのでいろいろなコーディネート込みで記事にしまっせ。ただ、問題は金あるんだったらもっといろいろ取材したいテーマがほかにたくさんあるってことだな。

匿川さんのサイトにあるプラシーボ効果って文章は非常に面白いし、その通りなんだけどオレは別にプラシーボ効果で何が悪いの? とも思うのよ。BOSEくらい内部で「味付け」された音を「良い音」だって感じる層は確実にいるし、ボーナスつぎ込んでB&Wのスピーカー買ってたとえそれよりも安くて良い音がするスピーカーがあって、それを聴いたとき「オレのB&Wの方が高いし良い音がする」と思いこんでいる(まさにプラシーボ効果だな)こと自体まったく問題ないというか。そのB&Wを買ったオレが満足、っていうそこにこそオーディオの価値はあるんだと、あえてオレは言い切りたいね。ただ、個人の嗜好はともかく客観的評価を下す(と世間からみなされる)雑誌のような媒体にこういうプラシーボ効果が入り込んでしまうのは問題なんじゃないかと匿川さんは指摘しているのだろう。それは確かにわかる。だが、それでもまぁその評価するのは人間であって、そのプラシーボ効果(なり、雑誌のいろいろな大人の事情)込みで、自分なりの判断をすればいいんじゃねーの? とオレなんかは思うわけだ。オーディオや音質の専門家じゃないしね。

| 音声圧縮技術 | この記事のURI | Posted at 06時32分 |

2005年07月12日(火)

続・iPodの音質は「悪い」のか?

【藤本健の週刊 Digital Audio Laboratory】iPodに最適なMP3を作る その1〜 MP3エンコーダにまつわる噂を検証 〜(AV Watch)

AV Watchの名物連載の1つ「藤本健の週刊 Digital Audio Laboratory」の藤本健氏より先日書いたiPodの音質は「悪い」のか?というエントリーに関して問い合わせを頂いた。で、それに基づいた記事がAV Watchにアップされた模様。

記事自体に対して反論みたいなことをするつもりはないのだが、藤本氏はあのエントリーで俺が言いたかった部分とは別の方向を見ているようなので、フォロー・補足の意味で上記記事に対して適宜引用しつつ言及しようと思う。

「音楽配信メモ」の津田大介氏に問い合わせると、最も主張していたのは、「iPodのイコライザ設定をRockにすると、低音が強調されすぎて、音が割れてしまう。これは製品として問題である」という点だった。

これは要するに「iPod(iTunesでエンコードしたMP3ファイル)に対する音質的な不満があるというよりも、むしろiPodのアウトプットに問題がある」という意味。iTunesでエンコードしたMP3ファイルをそのままiTunesなりWinampで聴く分には多少EQで低音を強調したところでiPodで起きるような低音割れ現象は起きない。なのに、iPodに転送して低音をブーストするEQを選択すると音割れ現象が起きてしまう。ソースには問題がないのに、出力の部分で(しかもプリセットの範囲内の使い方で)こういう不愉快な音割れ現象が起きてしまうことが、オーディオ製品として一定のレベルに達してないんじゃないの? ということが言いたいわけだ。実際、iTunesで作ったMP3をいくつかほかの携帯音楽プレーヤーに転送して低音強調系のEQ設定で聴いてみたが、iPodのように音割れするようなプレーヤーは皆無だった。となると、問題なのは「ソース」ではなく、再生機器にあるのだと俺は考える。

ただし、前回の記事で紹介したように低音強調系のEQにさえしなければ、iPodは音割れすることは少なく、音質的に比較的自然な出音が楽しめるプレーヤーだとは思う。ある程度そういった特性を知っていれば、音割れ現象は回避できるわけでその意味では「致命的」とまでは言えないのかもしれない(が、個人的にはもう少し低音出した状態で聴きたいと思うから不満があるわけだ)。デコーダに問題があるのか、単にヘッドホン端子の出力部分の問題なのか、あるいはほかに原因があるのかはわからないが、個人的にはそこまで修正が難しい問題だとは思わないので、アップルに対してはこれを「問題」と認識してもらって早く修正してもらいたいなーとは思う。もちろんこれは個人的な希望だよ。

ちなみにこの前の記事で「"JAZZ"に固定しろ」と書いたのは、それが最善な策であるという主張ではなく(最善な策は曲ごとにもっとも自分が気持ちよく聴けるEQ設定を見つけて変更することだ)、ロックなどのジャンルの曲をたくさん聴いたとき、JAZZの設定であれば音割れが発生することが少なく、自然に聞けることが多かったという俺や友人の経験則であり、加えて言えば俺の音質の好みでしかなかったりもする。ただ、この方法を教えた人にはほぼ好評ではあったので、この「192Kbps&JAZZ固定」はある種のメソッドとして(現状では)有効だろうという確信もある。もちろん、好みじゃない人はほかのやり方を見つけてくれればいい。オーディオってのはそういうものだし、普段EQをかけずに音楽を楽しむという藤本氏がこの提案に対して「半信半疑」と書いたこともまったく正しいと思う。

個人的には、イコライザは基本的にいじらない主義なので、気にしていなかったが、周りの人に聞いてみると、「低音と高音をブーストさせて聴くのが好き」という人が結構多い。

まぁロックやテクノはドンシャリで聴くのが気持ちいいという人が多いのは事実。どんなマスタリングエンジニアだって、細かい音質の調整はモニタースピーカーだけでなく、民生用のちゃっちい(ドンシャリになりがちな)ラジカセでもモニタリングして調整するわけで、この手のユーザーの利便性を追求したオーディオ機器やiTunes、iPodに対して原音志向を前提にして話をするのはちょっと無理があるのではないかとも思う。

あと、気になったのは「ビットレートは128Kbpsで十分」という部分。

音質の良し悪しは、16kHz以上の高域がオリジナルに近い形で出ているかが決め手のひとつとなっていたが、128kbps以上に設定しても、あまり大きく変わりがないので、こうした結論を出したのだ。確かに、192kbpsさらには256kbpsとビットレートを上げていくと、より高い音が出るのだが、必ずしもオリジナルに忠実な音が出ているわけではない。まあ、先ほどのiTunesほどではないが、やや変形された形での音となる。

確かにグラフだけ見ればそうだが、iTunesで作った128KbpsのMP3と192KbpsのMP3では、明らかな音の違いが感じ取れると俺は思う。ハイハットの音とかを注意して聴けば多くの人が違いは分かるはずだ。もちろん、ヘッドフォンがショボかったりすればわからないだろうが、ER-4SSHURE E2Cのような密閉型のヘッドフォンを使えば、違いもわかりやすくなるはずだ。

もっとも、ビットレートを上げれば当然ファイルサイズも大きくなるわけで、128kbpsを256kbpsにすれば、ちょうど倍のサイズとなる。つまり、iPodなどのプレイヤーに収録できる曲の数が半分になるわけだが、それに見合うほどの高音質化ではない、ということだ。実際に音を聞いた印象では、128kbpsを超えても、ほとんど違いが感じられなかったため、128kbpsがベストという結論を出していた。

ここが一番大きなポイントだと思うのだが、藤本氏には「iTunesでリッピングした楽曲は必ずiPodだけで聴くわけではない」という視点が欠けているのではないかと思う。iTunesでリッピングした楽曲は基本的にハードディスク内に溜め込んでおくものだ。特に音楽CDを何百枚、何千枚も持っているような人は、iTunesで手持ちのCDをライブラリ化してしまえばいちいち聴きたいCDを探す苦労が大幅に軽減される。こうしたライブラリ化のメリットでiTunesをメインの(あるいはカジュアルな)リスニング環境にしている人は多い。有名どころでは俺がインタビューしたアーティストの坂本龍一氏や、音楽評論家の小野島大氏などは、既にそういうリスニングスタイルになっている(むろん、彼らはきちんとしたオーディオシステムでCDから音楽を聴くという行為を完全にやめているわけではないのでその点は誤解なきよう)し、音楽評論家の萩原健太氏もかなり早くから所有するCDをMP3化することのメリットを訴えていた(萩原氏はPC Japan誌で非常に濃いMP3関連の連載記事も執筆していた)。もちろん、そうしたアーティストや音楽評論家だけでなく、多くの音楽フリークが手持ちのCDをiTunesでライブラリ化して楽しんでいる。

iPodの容量はまだ60GB程度だが、パソコンのハードディスクはここ数年で非常に価格対容量比が上がった。あくまでパソコン内にとどめておくのであれば128KbpsのMP3を192Kbpsに上げたところで容量的に大した負担にはならない。しかもMP3は非可逆圧縮。MP3化したものを「長期保存」しておきたいのであれば、ギリギリまで音質に優れたビットレートまで上げて保存しておきたいと思うのは人情だろう。もっと言えば、20GBくらい容量があるiPodであれば、128Kbpsであろうが192Kbpsであろうが十分な曲数は収録できる。シリコンオーディオのメモリが128MBとか256MBくらいしかなかった時代ならともかく、今時「収録できる楽曲数を稼ぐためにビットレートを低めに設定する」という言説にどれだけ説得力があるのだろうかと個人的には思ってしまう。

もちろん、こういうことを書くと「しょせん圧縮されたMP3ごときで何を言ってるのか」「しょせん携帯プレーヤーじゃん。そういうこだわり自体が無意味」とかそういう突っ込みをしてくる人はいるが、利便性を第一に追求したiTunesという環境を選択した中でどこまで音質にこだわるのかということは決して無意味ではない。また、オーディオ機器開発の現場でもはやMP3もバカにできないものになっている。実際にとある国内オーディオ機器メーカーに取材したときには「昔はMP3なんて見向きもしてなかったが、最近きちんとMP3を研究したら、MP3もDSPの設計や出力のさせ方でCD並みに音質が良くなる。これは意外だった」という答えが返ってきた。オーディオ機器メーカーにとって今はピュア・オーディオ的なニーズは企業として「金」にならない。そんな中、今消費者の中で圧倒的に普及し始めているMP3にターゲットを絞って音質改良を重ねていこうとするのはビジネス判断として確実に正しい。

LAMEだって数年の開発期間を経て、ここまで音質が良くなってきたのだ。もはや「そもそも圧縮音声なんだから音質を云々するのがおかしい」というような言説自体が意味を失っているのではないだろうか。だって、俺らが語ってるのはピュア・オーディオの世界の話じゃないんだしね。ピュア・オーディオじゃなくても、できるだけ良い音で聴きたい音楽ファンってのは確実にいるのだ。そしてこういう「デジタルでパソコンに取り込んだ音楽の音質を良くしていく」ということの延長にエイベックスの高音質化プロジェクトや非圧縮音声の配信などがあるのだと俺は思う。

もちろん、この連載はまだ1回目で導入に過ぎない。2回目以降、藤本氏によってiPodに最適なMP3の高音質化のノウハウが解説されていくはずだ。そういう意味でも今後が注目される連載ではないだろうか。

だが、単にエンコーダの音質を上げるというだけならLAME使えばいいだけの話だし、Macintochであればこちらなどで提供されているiTunesのエンコードをLAMEで行えるスクリプトを導入すれば解決してしまう問題なような気もする。そしていくらMP3エンコードの質が上がったところで、低音音割れに代表されるiPodの出力問題は解決できない。

あーだこーだ俺もこの問題について言っているが、自分のMP3ライブラリは、悩んだ挙げ句最終的にはWindowsのiTunes内蔵のMP3エンコーダ(192Kbps)でライブラリを構築してしまっている。確かにLAMEは音が良いのだがエンコードに時間がかかるので、5分くらいで1アルバムをMP3化できるiTunesの便利さにはかなわないよなーとなってしまうのだ。あとは何か良いソフトがあってiPodに最適なMP3ができたとしても、それがiTunesと簡単に連携できないようだと厳しいんじゃないかという懸念もある。iTunesとiPodが素晴らしいのはそれこそパソコンの知識とか全然ない女の子でも使える優れた操作性にあるわけでね。その優れた操作性に一度慣れてしまった人はプロセスが多くなることに耐えられないんじゃないだろうか。そういう意味では現状音質もiTunesの利便性も求めたいという人はMac miniでも買ってiTunesとLAMEエンコードスクリプトを使うという方法しかないだろう。あとは「LAMEのコマンドラインオプションを試すことが生き甲斐です」みたいなギークが、iPodに一番なじむオプションを見つけてくれればいいね!

あと、作成されるファイルの汎用性にこだわらないのならば、MP3じゃなくてAACにした方が(iTunesのエンコーダを使う限り)音質は良いので、そっちをオススメしておきますよ。

(追記)
RedDustRec: weblogでも藤本氏に対するツッコミが。

・再生環境(主にスピーカーと音量なんだけど)の違いはマスタリングで吸収できると思えない。あっちを立てるとこっちが立たず、ってジレンマだろう。 BOSE みたいに再生システムに補正機能を持たせるのが一番賢いやり方だと思う。
・みんな高音と低音をブーストしたのが好きっていうのは、趣味の問題もあるけど、聴く音量が小さいと耳が高音と低音に対する感度が鈍るから、っていうのと再生機器がそれほどワイドレンジじゃないっていうのと。まあ、合理的な理由もあるかと。

これについて言うと、日本の場合、住環境の問題も大きいような気がする。小さい音で常にLOUDNESSオンみたいな。それがもうデフォルトの耳になっているような。

「聴く音量が小さいと耳が高音と低音に対する感度が鈍る」という話はCCCDのときにもあったなぁ。なんかCDSが変なフィルタ通しているようで、同じ曲のCD-DA盤より-2dBくらい音量が下がるから聞き比べたときに高音の伸びがなくなるように「聞こえる」っていう。あのときにも思ったけど、耳の良さってホント人それぞれで個人差が大きいから、「この音質で十分」とか言い切るのって本当に危険なんだよなーと思った。実は俺は-2dBの差を聞き分けられるほど繊細な耳は持っていないんだけど、それでも192Kbpsと128Kbpsの違いは明確に分かるしなぁ。どっちが良いというより音質が違うんだよね。

藤本氏のWAVE波形で音質をチェックするというのは、昔から彼がやっている方法論で、有効性もあるとは思うけど、dkexさんが指摘してるみたいに別の角度からの検証なり、オーディオ評論家呼んでくるなり、新しいスタンスの音質検証みたいな方向性が見えるといいんじゃないかと個人的には思うね。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 02時22分 |

2005年07月08日(金)

Book Baton来た

ばるぼらさんから回ってきた。

●持っている本の冊数
マンガ・雑誌抜きで200冊くらいかな。

●今読みかけの本or読もうと思っている本
これ↓

400430945XJポップとは何か―巨大化する音楽産業
烏賀陽 弘道


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

3分の2くらい読んだけど超おもしろい。実際のところ、音殺音楽未来形と、Jポップとは何か、この3冊を読めば誰でもいっぱしの音楽業界ジャーナリスト(狭い!)になれると思う。3つが3つとも同時期に書かれていて、扱っているテーマも似ているのに内容のかぶりが少なく、お互いの本が内容を補完しあっているというのは奇跡的というか素晴らしいと思う。音殺おもしろいと思ってくれた人は音楽未来形もこのJポップとは何かも絶対おもしろいと思うので、買うことをオススメしておきます。


●特別な思い入れのある本、心に残っている本5冊(まで)
別冊宝島131 ライターの事情―ボーダーレス化した書く仕事の現場を追う
1冊だけ選べと言われたらこれ。高校時代これを読んでライターになろうと思ったから。

別冊宝島106 日本が多民族国家になる日
ネタばらしをすると、音殺やMやめ(のあとがき)を書く上で実はこの本が一番思想的に重要な役割を担っている。

放送禁止歌
大学生当時、朝方にやったこのNONFIXをリアルタイムで見た俺は勝ち組。この本を読むとデーブ・スペクターに対しての見方がとても変わる。

差別用語の基礎知識
上の本と併せて読むのがいいと思う。

カツラーの秘密
ここ数年買った本で一番おもしろかった。純粋に。


●次にまわすMOK Radio
タクヤさん
実験4号さん
キョウオカさん


あーあとバトンは基本的に答えますが、これ以降振る場合ははてなの方にお願いします。

| 小ネタ | この記事のURI | Posted at 09時11分 |

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