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ナタリーってこうなってたのか 表紙

ナタリーってこうなってたのか

大山卓也 著 / 双葉社

ISBN:978-4575307009 / 版型:18.2×12×1.2cm
ページ数:184ページ / 定価:1080円(税込)

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2005年07月12日(火)

続・iPodの音質は「悪い」のか?

【藤本健の週刊 Digital Audio Laboratory】iPodに最適なMP3を作る その1〜 MP3エンコーダにまつわる噂を検証 〜(AV Watch)

AV Watchの名物連載の1つ「藤本健の週刊 Digital Audio Laboratory」の藤本健氏より先日書いたiPodの音質は「悪い」のか?というエントリーに関して問い合わせを頂いた。で、それに基づいた記事がAV Watchにアップされた模様。

記事自体に対して反論みたいなことをするつもりはないのだが、藤本氏はあのエントリーで俺が言いたかった部分とは別の方向を見ているようなので、フォロー・補足の意味で上記記事に対して適宜引用しつつ言及しようと思う。

「音楽配信メモ」の津田大介氏に問い合わせると、最も主張していたのは、「iPodのイコライザ設定をRockにすると、低音が強調されすぎて、音が割れてしまう。これは製品として問題である」という点だった。

これは要するに「iPod(iTunesでエンコードしたMP3ファイル)に対する音質的な不満があるというよりも、むしろiPodのアウトプットに問題がある」という意味。iTunesでエンコードしたMP3ファイルをそのままiTunesなりWinampで聴く分には多少EQで低音を強調したところでiPodで起きるような低音割れ現象は起きない。なのに、iPodに転送して低音をブーストするEQを選択すると音割れ現象が起きてしまう。ソースには問題がないのに、出力の部分で(しかもプリセットの範囲内の使い方で)こういう不愉快な音割れ現象が起きてしまうことが、オーディオ製品として一定のレベルに達してないんじゃないの? ということが言いたいわけだ。実際、iTunesで作ったMP3をいくつかほかの携帯音楽プレーヤーに転送して低音強調系のEQ設定で聴いてみたが、iPodのように音割れするようなプレーヤーは皆無だった。となると、問題なのは「ソース」ではなく、再生機器にあるのだと俺は考える。

ただし、前回の記事で紹介したように低音強調系のEQにさえしなければ、iPodは音割れすることは少なく、音質的に比較的自然な出音が楽しめるプレーヤーだとは思う。ある程度そういった特性を知っていれば、音割れ現象は回避できるわけでその意味では「致命的」とまでは言えないのかもしれない(が、個人的にはもう少し低音出した状態で聴きたいと思うから不満があるわけだ)。デコーダに問題があるのか、単にヘッドホン端子の出力部分の問題なのか、あるいはほかに原因があるのかはわからないが、個人的にはそこまで修正が難しい問題だとは思わないので、アップルに対してはこれを「問題」と認識してもらって早く修正してもらいたいなーとは思う。もちろんこれは個人的な希望だよ。

ちなみにこの前の記事で「"JAZZ"に固定しろ」と書いたのは、それが最善な策であるという主張ではなく(最善な策は曲ごとにもっとも自分が気持ちよく聴けるEQ設定を見つけて変更することだ)、ロックなどのジャンルの曲をたくさん聴いたとき、JAZZの設定であれば音割れが発生することが少なく、自然に聞けることが多かったという俺や友人の経験則であり、加えて言えば俺の音質の好みでしかなかったりもする。ただ、この方法を教えた人にはほぼ好評ではあったので、この「192Kbps&JAZZ固定」はある種のメソッドとして(現状では)有効だろうという確信もある。もちろん、好みじゃない人はほかのやり方を見つけてくれればいい。オーディオってのはそういうものだし、普段EQをかけずに音楽を楽しむという藤本氏がこの提案に対して「半信半疑」と書いたこともまったく正しいと思う。

個人的には、イコライザは基本的にいじらない主義なので、気にしていなかったが、周りの人に聞いてみると、「低音と高音をブーストさせて聴くのが好き」という人が結構多い。

まぁロックやテクノはドンシャリで聴くのが気持ちいいという人が多いのは事実。どんなマスタリングエンジニアだって、細かい音質の調整はモニタースピーカーだけでなく、民生用のちゃっちい(ドンシャリになりがちな)ラジカセでもモニタリングして調整するわけで、この手のユーザーの利便性を追求したオーディオ機器やiTunes、iPodに対して原音志向を前提にして話をするのはちょっと無理があるのではないかとも思う。

あと、気になったのは「ビットレートは128Kbpsで十分」という部分。

音質の良し悪しは、16kHz以上の高域がオリジナルに近い形で出ているかが決め手のひとつとなっていたが、128kbps以上に設定しても、あまり大きく変わりがないので、こうした結論を出したのだ。確かに、192kbpsさらには256kbpsとビットレートを上げていくと、より高い音が出るのだが、必ずしもオリジナルに忠実な音が出ているわけではない。まあ、先ほどのiTunesほどではないが、やや変形された形での音となる。

確かにグラフだけ見ればそうだが、iTunesで作った128KbpsのMP3と192KbpsのMP3では、明らかな音の違いが感じ取れると俺は思う。ハイハットの音とかを注意して聴けば多くの人が違いは分かるはずだ。もちろん、ヘッドフォンがショボかったりすればわからないだろうが、ER-4SSHURE E2Cのような密閉型のヘッドフォンを使えば、違いもわかりやすくなるはずだ。

もっとも、ビットレートを上げれば当然ファイルサイズも大きくなるわけで、128kbpsを256kbpsにすれば、ちょうど倍のサイズとなる。つまり、iPodなどのプレイヤーに収録できる曲の数が半分になるわけだが、それに見合うほどの高音質化ではない、ということだ。実際に音を聞いた印象では、128kbpsを超えても、ほとんど違いが感じられなかったため、128kbpsがベストという結論を出していた。

ここが一番大きなポイントだと思うのだが、藤本氏には「iTunesでリッピングした楽曲は必ずiPodだけで聴くわけではない」という視点が欠けているのではないかと思う。iTunesでリッピングした楽曲は基本的にハードディスク内に溜め込んでおくものだ。特に音楽CDを何百枚、何千枚も持っているような人は、iTunesで手持ちのCDをライブラリ化してしまえばいちいち聴きたいCDを探す苦労が大幅に軽減される。こうしたライブラリ化のメリットでiTunesをメインの(あるいはカジュアルな)リスニング環境にしている人は多い。有名どころでは俺がインタビューしたアーティストの坂本龍一氏や、音楽評論家の小野島大氏などは、既にそういうリスニングスタイルになっている(むろん、彼らはきちんとしたオーディオシステムでCDから音楽を聴くという行為を完全にやめているわけではないのでその点は誤解なきよう)し、音楽評論家の萩原健太氏もかなり早くから所有するCDをMP3化することのメリットを訴えていた(萩原氏はPC Japan誌で非常に濃いMP3関連の連載記事も執筆していた)。もちろん、そうしたアーティストや音楽評論家だけでなく、多くの音楽フリークが手持ちのCDをiTunesでライブラリ化して楽しんでいる。

iPodの容量はまだ60GB程度だが、パソコンのハードディスクはここ数年で非常に価格対容量比が上がった。あくまでパソコン内にとどめておくのであれば128KbpsのMP3を192Kbpsに上げたところで容量的に大した負担にはならない。しかもMP3は非可逆圧縮。MP3化したものを「長期保存」しておきたいのであれば、ギリギリまで音質に優れたビットレートまで上げて保存しておきたいと思うのは人情だろう。もっと言えば、20GBくらい容量があるiPodであれば、128Kbpsであろうが192Kbpsであろうが十分な曲数は収録できる。シリコンオーディオのメモリが128MBとか256MBくらいしかなかった時代ならともかく、今時「収録できる楽曲数を稼ぐためにビットレートを低めに設定する」という言説にどれだけ説得力があるのだろうかと個人的には思ってしまう。

もちろん、こういうことを書くと「しょせん圧縮されたMP3ごときで何を言ってるのか」「しょせん携帯プレーヤーじゃん。そういうこだわり自体が無意味」とかそういう突っ込みをしてくる人はいるが、利便性を第一に追求したiTunesという環境を選択した中でどこまで音質にこだわるのかということは決して無意味ではない。また、オーディオ機器開発の現場でもはやMP3もバカにできないものになっている。実際にとある国内オーディオ機器メーカーに取材したときには「昔はMP3なんて見向きもしてなかったが、最近きちんとMP3を研究したら、MP3もDSPの設計や出力のさせ方でCD並みに音質が良くなる。これは意外だった」という答えが返ってきた。オーディオ機器メーカーにとって今はピュア・オーディオ的なニーズは企業として「金」にならない。そんな中、今消費者の中で圧倒的に普及し始めているMP3にターゲットを絞って音質改良を重ねていこうとするのはビジネス判断として確実に正しい。

LAMEだって数年の開発期間を経て、ここまで音質が良くなってきたのだ。もはや「そもそも圧縮音声なんだから音質を云々するのがおかしい」というような言説自体が意味を失っているのではないだろうか。だって、俺らが語ってるのはピュア・オーディオの世界の話じゃないんだしね。ピュア・オーディオじゃなくても、できるだけ良い音で聴きたい音楽ファンってのは確実にいるのだ。そしてこういう「デジタルでパソコンに取り込んだ音楽の音質を良くしていく」ということの延長にエイベックスの高音質化プロジェクトや非圧縮音声の配信などがあるのだと俺は思う。

もちろん、この連載はまだ1回目で導入に過ぎない。2回目以降、藤本氏によってiPodに最適なMP3の高音質化のノウハウが解説されていくはずだ。そういう意味でも今後が注目される連載ではないだろうか。

だが、単にエンコーダの音質を上げるというだけならLAME使えばいいだけの話だし、Macintochであればこちらなどで提供されているiTunesのエンコードをLAMEで行えるスクリプトを導入すれば解決してしまう問題なような気もする。そしていくらMP3エンコードの質が上がったところで、低音音割れに代表されるiPodの出力問題は解決できない。

あーだこーだ俺もこの問題について言っているが、自分のMP3ライブラリは、悩んだ挙げ句最終的にはWindowsのiTunes内蔵のMP3エンコーダ(192Kbps)でライブラリを構築してしまっている。確かにLAMEは音が良いのだがエンコードに時間がかかるので、5分くらいで1アルバムをMP3化できるiTunesの便利さにはかなわないよなーとなってしまうのだ。あとは何か良いソフトがあってiPodに最適なMP3ができたとしても、それがiTunesと簡単に連携できないようだと厳しいんじゃないかという懸念もある。iTunesとiPodが素晴らしいのはそれこそパソコンの知識とか全然ない女の子でも使える優れた操作性にあるわけでね。その優れた操作性に一度慣れてしまった人はプロセスが多くなることに耐えられないんじゃないだろうか。そういう意味では現状音質もiTunesの利便性も求めたいという人はMac miniでも買ってiTunesとLAMEエンコードスクリプトを使うという方法しかないだろう。あとは「LAMEのコマンドラインオプションを試すことが生き甲斐です」みたいなギークが、iPodに一番なじむオプションを見つけてくれればいいね!

あと、作成されるファイルの汎用性にこだわらないのならば、MP3じゃなくてAACにした方が(iTunesのエンコーダを使う限り)音質は良いので、そっちをオススメしておきますよ。

(追記)
RedDustRec: weblogでも藤本氏に対するツッコミが。

・再生環境(主にスピーカーと音量なんだけど)の違いはマスタリングで吸収できると思えない。あっちを立てるとこっちが立たず、ってジレンマだろう。 BOSE みたいに再生システムに補正機能を持たせるのが一番賢いやり方だと思う。
・みんな高音と低音をブーストしたのが好きっていうのは、趣味の問題もあるけど、聴く音量が小さいと耳が高音と低音に対する感度が鈍るから、っていうのと再生機器がそれほどワイドレンジじゃないっていうのと。まあ、合理的な理由もあるかと。

これについて言うと、日本の場合、住環境の問題も大きいような気がする。小さい音で常にLOUDNESSオンみたいな。それがもうデフォルトの耳になっているような。

「聴く音量が小さいと耳が高音と低音に対する感度が鈍る」という話はCCCDのときにもあったなぁ。なんかCDSが変なフィルタ通しているようで、同じ曲のCD-DA盤より-2dBくらい音量が下がるから聞き比べたときに高音の伸びがなくなるように「聞こえる」っていう。あのときにも思ったけど、耳の良さってホント人それぞれで個人差が大きいから、「この音質で十分」とか言い切るのって本当に危険なんだよなーと思った。実は俺は-2dBの差を聞き分けられるほど繊細な耳は持っていないんだけど、それでも192Kbpsと128Kbpsの違いは明確に分かるしなぁ。どっちが良いというより音質が違うんだよね。

藤本氏のWAVE波形で音質をチェックするというのは、昔から彼がやっている方法論で、有効性もあるとは思うけど、dkexさんが指摘してるみたいに別の角度からの検証なり、オーディオ評論家呼んでくるなり、新しいスタンスの音質検証みたいな方向性が見えるといいんじゃないかと個人的には思うね。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 02時22分 |

2005年06月18日(土)

iPodの音質は「悪い」のか?

下のMusical Batonで「iPodより音質が格段に良い」と書いたら読者の人から「それって本当ですか?」という質問を頂いた。良い機会なので、iPodの音質について語っておこう。

ただ、その前に前置きしておきたいのは「音質は主観的なものであり、絶対的なものではない」ということだ。これはエクスキューズじゃなくて、それ以外に言いようがないのだ。だから、最終的には店頭に行くなり、人から借りるなりして自分の耳で判断してもらいたいと思う。これをまず踏まえた上で以下の部分を読んで欲しい。

結論から先に言えば、iPodの音質は多くの携帯音楽プレーヤーと比較したときにあまり「良くない」と思っている。

従来のポータブルオーディオは、低音強調機能などが付いており、特にロックなどでは、一般的な消費者の耳の特性として「低音が強調された状態」で聞くケースが多い。そして、iPodの一番の問題は低音や高音の調整をプリセットイコライザでしか行えないということだ。また、iPodは元々低音成分が多いMP3を再生するときに「ROCK」や「BASS BOOST」などの低音強調イコライザを選択すると、低音が不自然に割れてしまうという現象が起きる(ただし、この現象は俺が使っている第3世代iPodの話。もしかしたら現行の第4世代は改善されているかもしれない。ただ、この現象はITmediaのコラムで小寺信良氏も指摘しており、2世代→3世代ときても改善されていないことを考えると、アップルがこの現象を問題として認識していない可能性もある)のだ。iPodはヘッドホン端子の質が悪く、これが音質低下につながっているという指摘もあるが、この現象から考えれば、ヘッドホン端子の質というよりも、iPodのデコーダ、DSPの質が悪いのではないだろうか。

例えば今俺が使ってるiRiverのH320は、iPodで再生すると不自然に低音が音割れしてしまうMP3ファイルを再生するとき、イコライザーを調整して最高レベルまで低音を上げて再生しても歪みは一切なくきれいに低音が再生される。この現象から言えることは、iPodは「音質が悪い」というより、「デコーダ/DSPの品質が悪い」ということになるだろう。

ちなみに俺は「iPod買ったけど、いまいち音が悪いよね?」という人に対しては、決まったアドバイスをしている。まずiTunesでリッピングする際のビットレートをAACでもMP3でもいいから「192Kbps」に上げさせて、(ロックを聴くことが多い人に対して)聴く際のイコライザー設定を「JAZZ」に固定させる。JAZZであれば低音の音割れはほぼなくなり、音質的に非常にバランスの良い状態で音楽を聴けるようになる。ただ、この設定で聴く場合、ポータブルMDやらCDなど、一般的なポータブルオーディオのような低音が強調される迫力のある音では聴けなくなる。そこの部分だけは割り切りが必要だが、現実問題として、低音ばかり強調されると耳が疲れるし、オーディオの本質から言えば低音が強調されることが「良い音」ではない。そう考えて使うしかないだろう。

さて、ここで結局最初に提示した「音質は結局主観の問題」というところに戻ってくる。

必ずしも「良い音」とは「特定の周波数帯がきれいに出ている」とか「ノイズの量」とかそれだけで判断できるものではないのだ。ジャズやクラシックなどを聴くことが多いピュアオーディオの世界ならともかく、ポピュラーミュージック、ロックの音の「価値観」は違う。本来の音というより、どれだけ味付けされた音を楽しめるかという部分があるからだ。そうなると、どれだけ「自分好みの音に調整できるか」ということも重要になってくるし、従来の民生向けポータブルオーディオ機器が今まで「出してきた音」と違う傾向を持つiPodに対し、「音が悪い」「なんか物足りない」と感じる消費者が出てくるのも無理はないことだろう。この事実が「iPodは音質が良くない」という評価につながっていることは想像に難くない。

極論してしまえば、本来の意味で「音質が良い」ことは重要ではないのだ。そうではなく相対的に「音質が良く聞こえない」ユーザーが多数存在する(これはiPodのそもそもの音作りの問題や、イコライザー機能が貧弱なことや、DSPやBBEで音にある種過剰な味付けをしていないことなどが原因として考えられる)ということが、「iPodは音質が悪い」という結論を導き出しているのだ。

ピュアオーディオ信仰的な考え方からすれば、DSPやらBBEなどで音質を補正する機能は、ある種の「化学調味料」のようなものだろう。しかし、大多数のポピュラーミュージック、ロックを好む人間は、ソニーやら松下やらが出してきた従来のポータブルオーディオ機器でそうした音に「慣れてしまっている」わけだ。彼らが「iPodの音質が悪い」と感じるのはある意味で当然だと俺は思うし、俺自身iPodで割れる低音を聞かされるくらいなら、H320を使って迫力ある音でロックを聴きたいという感じになる。単純な話でそっちの方が「好みの音」なのだ。突き詰めれば結局そういう話になってしまう。

ロック聴いていて音質にこだわるというのはそれ自体があまりロックっぽくない行動だが、実際のところロックを良いオーディオで聴くと今まで聞こえないいろいろな音が聞こえてきて本当にいろいろな発見がある。だから、ロックであろうとできるだけ良い環境で音を聴いた方が良いと思うのだ。

俺はオーディオの専門家ではないので、本来的な意味の「音質」を云々語れる立場ではない。だが、なぜiPodの音質が悪いという評価を聞くことが多いのか、その説明として1つの仮説を上記の文章で提案してみたつもりだ。もちろん、ほかの要因もあるだろう。そういう検証は他の人がどんどんやってくれればいいと思う。

つらつらとiPodの音質面のマイナス部分を語ってきたが、実はそういうマイナス面を差し引いても俺はiPodが現状でもっとも優れた携帯音楽プレーヤーだと思っている。iTunesの使い勝手、曲を選ぶインターフェース。これらの完成度からみたら、音質面での若干のマイナスなんて大した問題ではない。大体普通の人は音楽を聴くときに音質はそれほどは気にしてないし、そもそもがポータブルオーディオや圧縮された音声なのに音質にこだわることにどれだけの意味があるのか、っていう指摘もあるだろう。

また、現実問題として「iPodの音質が今後改善される可能性」と、「他社のプレーヤーがiTunesやiTMS、クリックホイールなどまで含めたiPodの優れた操作性・ソリューションを凌駕するものを作れる可能性」を比較したときに、明らかに前者の方が可能性が高いと思われる。その意味でもiPodを選ぶ方が現状ではベターなのではないか。もちろん、既に市場でデファクトの地位を得ているということも大きい。いかに音質、圧縮率に優れていても大失敗したSolidAudioなんて過去もあるしな。

現状俺はH320を使っていて満足しているが、操作性に関しては全然ダメだとは思ってる。またH320は音質的にはiPodよりも良い音で音楽を鳴らしてくれると思っているが、その一方でiPodを捨てるつもりもない。iTMSが始まったときにこれを利用できるのはiPodしかないしね。

だから日本市場においてソニーがiPodのシェアを急追しているのは非常に良い傾向だと思う。やっぱ、きちんとライバルが存在して追い上げない限り、iPodの品質も上がっていかないからね。iPodはバッテリーの問題もかなり深刻だし、改善しなければいけないところはたくさんある。ぜひ「製品の完成度」のところで切磋琢磨して、アップルもソニーもお互いに良い製品を作って頂きたいものだ。日本版iTMSを政治的な力で遅らせてiPodの力を失わせようとしたり、同じ20GBっていう容量なのに、ATRAC3plus換算で計算して、さもiPodよりたくさん曲が入るような宣伝をしたり、はっきり言って最近のソニーはやることがせこい。もっと製品レベルを上げるなり、iTMSと同じくらい消費者にとって魅力的な音楽配信サービスを構築するなり、まっとうなやり方で勝負してもらいたいと思うね。「技術のソニー」が、魂まで負け犬になったら終わりですよ。

しかし、切磋琢磨すべきはずのソニーの携帯音楽プレーヤーはまたこんな問題起こしてるのね。で、相変わらず自分の非を認めず、対応もなしですか。早いところ謝って新ファーム公開でもすりゃいいのにねぇ。結局液晶不具合のときはあとでやったんだから。

ソニーの携帯音楽プレーヤー部隊は上からiPodに追いつけ追い越せっていう至上命題出されて、とにかく今時間に追われている。それで十分なチェックやUIチューニングの暇が与えられないのだろうが、それははっきり言って不幸なことだ。いい加減ベータ版レベルで商品を出して不具合見つかってもその対応をしないっていうお決まりの対応はやめた方がいいんじゃないか。まだ台数出てないからいいけど、今後は確実に大きな市場になっていくんだしさー。もう従来のソニーブランドだけで勝負できる時代じゃなくなってるんだし。


(追記)
この記事、いまだに参照されることが多いので補足しておくけど、上の音割れ現象、第5世代のiPod(またはiPod nano)からは解消されてるね。第3世代のiPodでEQ「ROCK」や「R&B」にしたとき音割れした音源が第5世代では問題なくなっていた。いや正確にいうと音源によっては若干クリッピングっぽい音にはなったが、それでも昔と比べれば全然マシなレベルになった(テストしたイヤフォンはEtymotic Researchの「ER-4S」)。iPodは微妙に世代によって音質が変わってきているので、そのあたりを踏まえて議論しないと「割れた」「割れない」だけの話に終始してしまう可能性があるので注意が必要なのでは。デフォルトで付いてくるヘッドフォンとインピーダンスがまったく違うER-4Sでは、そのあたりの結果も変わってくるだろうしね。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 15時55分 |

2005年03月11日(金)

22グラムでFM付き、iPod shuffle激似の「Super shuffle」が、台湾から

下で紹介したやつ、ITmediaに記事載りましたね。AV Watchには載ってない。このあたりがメディアの質の差かなぁ。

いやもう俄然Super shuffleが欲しくて欲しくて。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 19時50分 |

2005年03月08日(火)

Hi-MD PHOTO対応ウォークマン開発者インタビュー

WALKMANの新しい世界を切り開く 新「Hi-MDウォークマン」

ソニーネタが続いてますが、こんなものを見つけたので。例の「Hi-MD PHOTO」ウォークマンの開発背景が語られてます。

いろいろと突っ込みどころはあるんですが(「『ウォークマン=音楽のみを楽しむ』という規定概念を壊したい」という発言とか)、一番気になったのはここ。

音楽+画像で楽しめる。さらにその先には音楽(1)+画像(1)=3以上になる可能性があるわけです。気に入った風景やアルバムのジャケット、歌詞カードなどを撮影しておいて外出先で楽しんだりすることができますし、「あっ」と思ったら、その場で撮影することも可能(※)です。新しいカテゴリー、「Digital Music Visual Player」を提案する第1号機なので、音楽+アルファの楽しみ方をいろいろ提供できると思っています。

※音楽を再生しながらの撮影はできません。

……えーと?

※音楽を再生しながらの撮影はできません。

……………………。

いやまぁ確かに撮影するときにイヤホンが邪魔になるかもしれないから、それはそれでいいんだけど。

「音楽を聴きながら撮影する」が可能ならそれを強く打ち出すことで「新たな価値観」を提示できたかもしれないのにね。「音楽聴きながら写真撮るヤツなんていねーよ」っていう突っ込みはあるかもしれないけど、そういうことじゃないと個人的には思う。「音楽を聴きながら写真撮るとほらこんなに楽しいでしょ」って言い切ることで消費者を騙していくことが価値観やスタイルの創造につながるわけで。iPod shuffleが優れていたのは、敢えて液晶を削ってシャッフル再生限定にすることで、アルバム単位で音楽を聴くことの解体だとか、新たなリスニングスタイルを「強制する」というところが素晴らしかったわけだからさ。ソニーが「音楽+アルファ」という部分を本当に重視しているんだったら、もっとその部分で尖った製品にしなきゃ消費者の共感なんて得られないし、新たなスタイルなんかも生まれないでしょう。実際俺の使ってるauのW21CAなんて着うたフルに対応していて、音楽の購入から再生までワンストップでできて、その上このHi-MD PHOTOよりクオリティの高い200万画素オートフォーカス付きのデジカメが載ってるわけでね。競合優位性って意味ではかなりアレだよね。

コンテンツとの連携という部分も結局Moraを使わざるを得ないという部分が足かせになっている。少なくともMora対応というのは、現時点で消費者にとっての購入材料にはならないわな。

ソニーがどうなるのかはまだ分からないけど、ポイントになるのはコンテンツ事業をどうやって切り離せるか、という一点にかかっているような気はする。軟着陸でいいとは思うので、そのあたりを真剣に考える時期なんじゃないですかね。それがソニーにとっても、SMEにとっても良い結果をもたらすと思うんだけど……。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 10時09分 |

2005年03月02日(水)

ソニー、MP3と新規格「Hi-MD PHOTO」対応MDウォークマン

時代の徒花になりそうなソニーのMD最新規格「Hi-MD」に新たな規格を搭載した新製品が登場。新規格の名前は「Hi-MD PHOTO」!

……ほうほう、あーiPod photoが伸びてきてるから、Hi-MDに写真機能も加えて、さらに閲覧だけじゃなく、撮影も可能にしたと。それはそれは革新的ですねー。もっとも、富士フイルムやカシオは数年前からやってますが。

オーディオジュークボックスソフト「SonicStage」もVer.3.0にアップデート。MP3対応や、GUIの変更のほか、プレイリスト登録機能、ジャケット写真の管理機能、MP3CD作成機能などが追加された。

ふむふむ。MP3のCDを焼ける機能が追加されたのは地味な機能強化だけど便利そうだね。プレイリストはむしろ今まで付いてなかったことの方が不思議。こういう楽曲管理ソフトの超基本機能なので、また一歩iTunesに近づけたと言えるのかな。欲を言えばiTunesやWindows Media Playerに付いているスマートプレイリスト機能のようなものも欲しいけど。

なお、MP3も含めHi-MDに転送した音楽ファイルは、他のパソコンにコピーして再生することはできず、MP3ファイルの転送も、著作権保護のためSonicStageで行なう必要があるといった制限がある。

……………………。

ソニーの人たちは本当にiPodが登場してiTMSが始まったこの3年間をどう総括したんだろうか。ちょっと前に「音楽コーデックには戦略的な誤りがあった」って発言してるのにねぇ……。単にMP3採用したところで、なんでMP3が消費者の間でデファクトになったのかっていう部分(DRMフリーなため、ハンドリングやバックアップが容易。特にソフトなどで変換などの操作を行わなくても多くのプレーヤーで再生できる)を全然理解できていないから、こういう中途半端な仕様になってしまうのだろう。

はっきり言えば、糞重くてインターフェースも使いにくいことこの上ないSonicStageなんて誰も使いたいと思っていない。現状を鑑みて、今ソニーがやるべきことは未だSDMIの呪縛から逃れられていないSonicStageを一から作り直してiTunesを上回る使い勝手を実現するソフトにするか、もしくはSonicStageを捨てる(もしくはATRAC3をもっと自由な運用を可能にするフォーマットにする)か、そのどちらかの選択しかないはずだ。多少のドーピングをしてでも1位に追いつかなきゃいけない状況なのに、当のソニーは一向に速度を上げる気配がない。これじゃ1位との差は開いていく一方だよね。

PCやネットの世界では、乗り換えるだけの明確なメリットがなければ、ユーザーはわざわざデファクトから新しいものに乗り換えたりしない。しかもソニーはこの3年間でアップルに埋めがたい差を付けられてしまい、(少なくとも先鋭的なPCユーザーの間の)ブランドイメージも地に落ちたと言ってもいいだろう。ある種危機的状況とも言えるのに、「ウォークマンの命は音質です」とか呑気なキャッチコピー付けてCDウォークマン売り出したり、こういう中途半端な製品作ったり、本気で彼らが何をしたいのか分からない。というか、余計なお世話だが進むべき方向が見えてなくてかわいそうだ。

……いや、ホント期待してるんですから本気欲しいと思える携帯型音楽プレーヤー作ってくださいよ。

| 携帯型プレーヤー | この記事のURI | Posted at 23時07分 |

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