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ナタリーってこうなってたのか 表紙

ナタリーってこうなってたのか

大山卓也 著 / 双葉社

ISBN:978-4575307009 / 版型:18.2×12×1.2cm
ページ数:184ページ / 定価:1080円(税込)

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2006年12月19日(火)

オリコンのプレスリリースに対する疑問と今後の争点

一晩経っていろいろな情報が出てきて、いろいろ冷静になってきた。今更いうのもなんだが、前のエントリは煽り過ぎの面もあった(まぁ、撤回しようとかは思わないけど)ので、オリコンが今日出したプレスリリースをライターとして冷静に見てみようと思う。

事実誤認に基づく弊社への名誉毀損について(ORICON STYLE)

まず気になるのはこのポイント。

また、烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります。

ここでいう「長年」というのは要するにAERA2003年2月3日号と、今年のサイゾー4月号の2つの記事の間に長い時間があった、ということを意味しているのだろうか。この2つの間には3年間の時間があるが、烏賀陽さんがそこかしこで、「オリコンのランキングは操作できる」と言いふらしていた、という事実をオリコン側がつかんでいるのだろうか。基本的に俺が知ってる烏賀陽さんは公式サイトこそ持っているものの、足で情報を稼ぐ昔気質のジャーナリストだ。この3年間で俺は何度も烏賀陽さんに会っているし、一緒にトークイベントをやったりもしたが、そうした場で彼が「オリコンランキングの信頼性は低い」などと触れ回っているのを聞いたことがない。というのも、前のエントリにも書いたし、小野島さんも書いてくれたが、「オリコンのランキングは業界関係者の間ではある程度操作が入り込む余地があり、少なくとも以前はその仕組みを突いた売り上げ増加活動がレコード会社によって行われていたようだ」的なことが「共通理解」としてあったので、あえてそんな話をする必要がなかったのだ。むろん、そうした「常識」は他ならぬ複数の音楽業界関係者からもたらされたもので、烏賀陽さんから聞いたことで俺が「オリコンのランキングの信用性は低い」と思ったわけではない。というか、「ある程度」と強調したように、オリコンのランキングそのものがまったくのデタラメなんてことは俺だって思っていないし、そういう情報をもたらしてくれた音楽業界関係者たちも思っていないのだ。あくまでランキングにある程度の「バッファー」があるということを指摘しているだけなのである。話を戻すと、この引用部を読むと、烏賀陽さんは「長年に亘り」ずっとオリコンランキングの信頼性を損ねるような行動言動を取ってきたように見えるが、少なくとも俺が確認している限り(音楽業界にまつわるさまざまな雑誌記事を調べるのも俺の仕事のうちだ)、烏賀陽さんがそうしたことをやっていたようには思えない。それこそせいぜいこのAERAとサイゾーと「Jポップとは何か?」ぐらいじゃないか? そもそも烏賀陽さんは音楽専門のジャーナリストではないし、書籍を中心に活動されていたので、そうなると彼には「長年にわたって言いふらす」行為そのものがなかったのではないか、と思える。むろん言及されるオリコン側にとっては3年間に3つも違うメディアで言及されたことが「明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けた」と思うのかもしれないが、俺の個人的な感覚ではこの程度では烏賀陽さんが「ランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けた」とは思えない。


(1)「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)

 弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。

ここについてはある種の争点になるかな、とも思った。それは「ほとんど」という部分の解釈だ。オリコンは確かに現在ウェブ上でランキングの調査方法を公開している。調査協力店の名前もリストになっており、これだけ見れば「ほとんど明らかにしていない」は烏賀陽さんの「言い過ぎ」かもしれない。もっともこの調査方法も情報は多いように思うが、「推定ランキング」なのにそれを推定するための計算式やアイテムを合算する際の「弊社が定めた基準」、調査店がどのような形でオリコンに協力しているのかが明らかにされていないわけで、オリコンはなぜここを公開しないのだろうかという疑問は残る。チャートに経済的信頼性の意味を求めるある種の人からすれば、この程度のデータ公開では「ほとんど公開していない」も同然かもしれない。俺はそれを判断できる立場にはないので、そのあたりは裁判で争うしかないだろう。

またもう1つのポイントは、烏賀陽さんのコメントで「ほとんど」としている部分は、編集部の創作である可能性もあるということだ。烏賀陽さんはコメント内容を事前にゲラで確認してOKを出しているが、そこには細かいさまざまなニュアンスがそぎ落とされている。そして、この程度の表現であればまさか個人宛の訴訟が起こされる、という「油断」があったのかもしれない。そのことに対して「危機意識がなさすぎる」という人もいるかもしれないが、俺がもし烏賀陽さんの立場だったら細かいニュアンスが取られても「まぁこの程度だったらいいか」とOKを出していたように思う。

内容証明郵便で確認されているように、烏賀陽さんの責任で出版されているコメントではあるが、やはりここに必要以上の責任を負わせてしまうことの怖さを俺は感じる。


(2)「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)

昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。

「オリコンが予約枚数もカウントする」ということについては、実は俺も聞いたことがなかった。探偵ファイルのような「自社買い」に関してはよく聞くことであったのだが。ここはオリコン側がはっきりと「昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません」と断言している以上、本当にそうなのかもしれない。これがもし事実と違うのであれば、検証不足でコメントを出してしまった烏賀陽さんの落ち度だろう。しかし、実際のところこれが事実なのかどうかは(今のところ)オリコン側が「予約はカウントしてないよ」ということしかソースがない状況だ。

検証についていえば、3年前のAERAの記事で、

ただ、「オリコンの数字はある程度操作ができる」という噂はこれまでにもありました。小生も「同社発売の雑誌に広告を買った」「集計先レコード店から買い取りをする」等々と、「オリコン対策費」の存在を示唆するレコード会社員の話を耳にしたことがありますが、検証は不可能でした。

という部分があるが、まさにここが争点になるのかもしれない。検証できなかったことを伝聞レベルの形でメディアに載せてしまうことの問題だろう。しかし、これを封じられてしまうと、実際のところジャーナリストは原稿を書く際にかなりの制約がかかってしまう部分がある。「検証作業をきちんとやっても、明白な証拠があげられなかった。しかし、状況証拠でほぼ確実に、そうした事実はあるだろう」と思うような場合、リスクを背負って伝聞を記事内に入れることもあるからだ。今回はその「リスクを背負って」の部分が最大化してしまった、といえるのかもしれない。

このあたりは俺も複雑な思いがある。烏賀陽さんのやり方もわかるし、オリコンが(もし本当に事実無根なことが書かれているなら)怒る気持ちもわかるからだ。

烏賀陽氏は、弊社からの平成18年6月23日付け内容証明郵便の中での「サイゾーの記事のとおり発言ないし指摘をされているのでしょうか」という問いに対し、平成18年6月30日付けのFAXにて「自分が電話でサイゾー編集者の質問に答え、編集者が発言を文章にまとめました。まとめたコメントはメールで自分に打ち返され、修正・編集を加え、若干の意見交換ののち掲載の形にまとめられました」(同氏からのFAX原文)と回答してきています。このように、烏賀陽氏は、発言は自分が責任をもって行ったものと明言されています。

ここの部分は知らなかった。何の事前の文句もなしにいきなり訴訟なのかと思ったら、一応内容証明で確認はきていたと。しかし、それにしても責任の所在を明確化するための内容証明と見ることもでき、この内容証明郵便に話し合いで解決しようという意思は感じられない。穿ってみれば烏賀陽さん個人をはなからねらい打ちするための内容証明郵便だったとも考えられる。

烏賀陽氏は、同様の発言を他のメディアでも行っており、同氏の発言の社会的影響力は決して小さいものではありません。

同様の発言を他のメディアでも行っており、とするならもう少し「証拠」を出すべきではないだろうか。少なくとも訴状にはアエラとサイゾーしかなかった。

社会的信用とは長年の不断の努力によって成されるものと確信しています。ジャーナリズムの名の下に、基本的な事実確認も行わず、弊社の長年の努力によって蓄積された信用・名誉が傷つけ、損なわれることを看過することはできないことからやむを得ず提訴に及んだ次第です。
 この度の提訴はあくまで烏賀陽氏によって毀損された弊社の名誉を回復するための措置であることをご理解ください。

本当にあの程度の記事でオリコンの社会的信用が傷つけられ、それで5000万円もの損害が出たのだろうか。オリコンの主張は一部理解できるところはあるが、しかしそれにしても5000万円という金額がどのような計算に基づいて算出されたのか、そのあたりがこのプレスリリースでは明らかになっていない。

いずれにせよ、オリコンがプレスリリースを出したことで、このことは公然の事実としてさまざまな場所で議論できるようになった。無視せず迅速にプレスリリースを出したことは評価されるべきだろう。

今後この問題は司法の場に行くのだから、事実誤認、名誉毀損が成立するか、という点について徹底的に議論すべきだ。

あと、サイゾー編集部の問題というのもあるが、まだコメントをもらっていないのでサイゾー編集部の責任については別エントリとして起こそうと思う。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 20時08分 |

2006年12月18日(月)

オリコンが自分たちに都合の悪い記事を書いたジャーナリストを潰すべく高額訴訟を起こす

※このエントリを初めて読まれる方は以下のエントリも併読していただくことを強く推奨します。
http://xtc.bz/index.php?ID=397
http://xtc.bz/index.php?ID=398
http://xtc.bz/index.php?ID=399
http://xtc.bz/index.php?ID=400
http://xtc.bz/index.php?ID=401
http://xtc.bz/index.php?ID=445

年の瀬も差し迫った今日の早朝、驚くべき内容のメールが自分のメールボックスに入っていた。差出人は烏賀陽弘道氏。「Jポップとは何か」(名著!)「Jポップの心象風景」でおなじみのジャーナリストだ。

まずは下記に内容を転載するので読んでもらいたい。

※12月19日早朝、烏賀陽さんのサイトに、ご本人自らのコメントがアップされました。訴状が送られてきた日時の修正と、チェーンメールを呼びかける文面の削除が行われたので、下記転載部分も混乱を避けるため修正します。

■「オリコン」が烏賀陽個人を被告に5000万円の損害賠償訴訟■

意見が違うというだけで、企業が個人に5000万円を求めるなんて!

これは武富士と同じ手口の言論封殺の恫喝訴訟じゃないのか。オリコンは雑誌だってたくさん出しているのだから、烏賀陽の言うことが間違っているのなら「烏賀陽のいうことはウソです。なぜなら××」と反論すればいいのだ。それこそがまっとうな「言論」というものじゃないのか。意見の異なる者を高額訴訟で社会的に抹殺するなんてのは、民事司法の体裁をとった言論妨害じゃないのか。



緊急事態が起きました。どうか、みなさんのお知恵、お力を貸してください。

06年12月13日、月刊誌「サイゾー」編集部に東京地裁から損害賠償訴訟の訴状が送られてきました。原告は、音楽ヒットチャートでは知らない人のない巨大独占企業「オリコン」。その企業が、烏賀陽弘道という一個人に対して、5000万円という巨額の損害賠償金を支払うよう求める民事訴訟を同地裁に起こしたのです。

訴訟の対象になったのは、「サイゾー」06年4月号51ページの「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」という1ページの記事に掲載された烏賀陽のわずか20行ほどのコメントです。

これは、サイゾー編集部からの電話取材に対して、烏賀陽が話した内容を同編集部がまとめて文字化したものです(よって、内容は烏賀陽の原義とはかなり隔たっていますが、そのへんはひとまず置きます)。よって、烏賀陽が能動的に寄稿したものでも、執筆したものでもありません。

その中で、烏賀陽はオリコンのヒットチャートのあり方についていくつかの疑問を提示しています。ここにコメントしたことは、烏賀陽の取材経験でも、音楽業界内の複数のソースから何度も出た話で、特に目新しい話や驚くような話はひとつもありません。

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この訴訟には、いくつか露骨なまでの特徴があります。

(1)記事を掲載した「サイゾー」および発行元「インフォバーン」を訴訟対象にしていないこと。つまり烏賀陽個人だけを狙い撃ちしている。烏賀陽は前述の弁護士費用、訴訟準備などをすべて一人で負担しなければならないことになります。これではフリー記者としての活動を停止し、訴訟対策に専念しなくてはなりません。みなさん、ワタクシは生活費は一体どうやって稼げばよいのでしょう(笑)。

(2)この5000万円という金額は、応訴するために弁護士を雇うだけでも着手金が219万円かかるというおそるべき額です(そんな貯金あるわけないですがな=笑)。裁判で負ければ、烏賀陽はジャーナリストとしての信用を失い、職業的生命を抹殺されてしまうばかりか、賠償金を払えず、社会的生命をも抹殺されかねない恐れがあります。


どこかで聞いた覚えはありませんか? そう。これは、ジャーナリストの批判を封じるための恫喝を目的とした、消費者金融・武富士がかつて行ったのと同じ手法の、恫喝訴訟と言えるでしょう(武富士訴訟ではジャーナリスト側が勝訴し、逆に武富士を訴えて勝っています)。

http://www.kinyobi.co.jp/takefuji

(3)しかも、訴状をどうひっくり返して読んでも、なぜ5000万円の損害を受けたのかという計算の合理的根拠はまったくどこにも書いてありません。ずさん、というより、相手が払えない(そしてビビる)高額であればそれでいいという額をテキトーに選んだ印象を受けます。

(4)烏賀陽は一貫して「レコード会社の宣伝・営業担当者にはオリコンの数字を操作しようとする良からぬ輩もいる=オリコンは被害者である」という立場を取っているし、文意からもそれは明らかなのに、なぜかオリコンはそれを無視し烏賀陽の記事が自社の信用を損なったと主張していること。

(5)裁判の証拠書類として、烏賀陽が「アエラ」03年2月3日号に書いたオリコンの記事が添付されていました。

http://ugaya.com/private/music_jpopcolumn18.html

これはオリコンのデータとPOSデータ(サウンドスキャン社)のデータが乖離しているのはなぜか?という疑問を提示したものです。この記事も当時オリコンの小池恒右社長の憤激を買いました(社長直々にお怒りの電話を頂戴しました)ので、烏賀陽がオリコンの「好ましからざる人物」にリストアップされていたことは間違いありません(過去に取材拒否もあり)。

(6)オリコンは「オリジナル・コンフィデンス」はじめ多数の出版物を出す出版社でもあります。ですから、もし「ウガヤのいうことはウソだ」というのなら、そこの紙面上で思う存分「ウガヤの言っていることはウソです、なぜなら××」と意見を述べればいい。ぼくもまたどこかの媒体で反論します。これこそが正統な「言論」でありませんか。それこそが正当な出版社のすべきことではありませんか。
意見が違うものは高額の恫喝訴訟で黙らせる、というのは民事司法を使った暴力に近い。

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みなさん。ぼくはずぼらなので「運動」とか「闘争」とか「たたかい」とかとは縁遠い人間ですが、この訴訟はいくらなんでもひどすぎる。あまりに露骨な言論妨害だ。言論・表現の自由という基本的人権を蹂躙している(それも音楽という表現世界で商売をしている企業が!)。

もしこの種の恫喝訴訟がまかり通るようになれば、フリー記者には(いや、あるいは社員記者もできなくなるかも)企業批判はまったくできなくなります。

いやそれどころか、雑誌の求めに応じてコメントひとつしても、5000万円なのですよ。コメントすらできないではありませんか。

そんな時代が来てほしいですか?ぼくはいやです。

これが言論の自由へのテロでなくて何でしょう。民主主義の破壊でなくて何でしょう。これは体を張ってでも阻止せねばなりません。

というわけで、みなさん。長々とすみません。お忙しいところ本当に恐縮ですが、どうかお知恵とお力を貸してください。ご希望の方には訴状そのほか資料をお届けします。

どうか無視しないでください。助けてください。ぼくも2,3日前まではこんな話は(けしからんことに)他人事だと思っていたのです。でも、こんな恐ろしいことが、いつ、どこでみなさんの上に厄災として降りかかるかわからない時代になってきたようです。

長文失礼しました。ご静聴に感謝します。

メールには烏賀陽さんが実際に書いた記事が添付されており俺も読ませてもらった。一読したときの正直な感想として「こんな記事(しかもコメント)で、訴えられるのか!?」というものだった。下記に該当部分を引用する。

"初登場第1位"は上げ底か!?
ジャニーズは超VIP待遇!?
事務所とオリコンの蜜月関係

文/編集部



約30年にわたって人気を維持し続けているジャニーズ事務所。だが、その人気は、巧みなメディア操作にあるという。特にオリコンのランキングについては、こんな疑惑がつきまとっている……。

 右ページのヲリキ座談会でも言及されているように、強気な交渉で、テレビ界でのライバル蹴落としに成功してきたジャニーズ事務所。また、雑誌メディアにおいては、アイドル誌は言うに及ばず、「抱かれたい男ランキング」で木村拓哉が毎年1位を獲得する「anan」(マガジンハウス)など女性誌との蜜月関係も有名だ。

 さらにある疑惑が囁かれているのが、オリコンとの関係である。ジャニーズタレントの新曲は、発売されるたびに上位にランキングされるが、実際の売り上げと、かなりの乖離があるのではないかというのが、通説である(オリコン側は、この事実を否定)。

 『Jポップとは何か』(岩波新書)『Jポップの心象風景』(文春新書)などの著者・烏賀陽弘道氏は、「日本には、長くオリコンしかヒットチャートが存在しなかったため、その統計学的な正確さが過大評価されがちです。まず第一に、オリコンは予約枚数もカウントに入れている。予約だけ入れておいて後で解約するカラ予約が入っている可能性が高いのです。『オリコン初登場1位』などという文言は、その後の宣伝に使えます。『オリコンの数字はある程度操作が可能だ』というレコード会社員の話も複数聞いたことがあります。そもそもオリコンは不思議な団体で、『オリコン独自の統計手法だ』と言い張ってその方法をほとんど明らかにしないんですよ。ふつうの統計調査は、その手法を細かく公開して、その信憑性に疑問が挟む余地がないことを強調するのが当たり前です。それをしないで公開されたデータは、統計学的な信用度が低いと自分で言っているようなものです」と語る。

 試しに、06年2月の、オリコンチャートとPOSデータで集計を取っているサウンドスキャンを例に、ジャニーズタレントの週刊ランキングを比較してみた。2月7-13日の週では、タッキー&翼の「VENUS」(週間販売枚数45954枚)は、オリコンシングルチャート2位だが、2月6-12日週のサウンドスキャンでは、15位(週間販売枚数13573枚)とふるわない。そのほか、TOKIO「Mr.Traveling Man」の順位もそれぞれ、オリコン初登場第1位(2月14-20日)、サウンドスキャン第31位(2月13-19日)と、大きく異なる。確かに他の所属事務所のアーティストと比較して順位に差があるようだ。

 ジャニーズ事務所は、メディアの評価を作為的に高めることで、「ジャニーズタレント=売れている」というイメージを周到に用意しているようにみえる。このような刷り込み戦略の成功が、長きにわたって人気を維持してきた秘訣かもしれない。ただ、気になる点といえば、ジャニーズと蜜月関係にあるメディアがオールドメディア化しつつある点だ。同事務所のネット嫌いは周知の事実だし、「『ディスクの売り上げ枚数=人気の指標』という常識は終わりつつあります。音楽を運ぶメディアがディスクからネットに大幅に移行し始めているため、着メロや通信カラオケ、ダウンロード販売といった数を見なければ、本当の意味での人気はわからなくなってきている」(烏賀陽氏)という指摘も耳にする。ジャニーズの凋落がはじまるのか、更なる栄華を築き上げるのか、今後の成り行きに注視していきたい。

とまあこんな感じ。

この恫喝めいた個人(烏賀陽さん)宛の提訴にはいくつかのポイントがある。

●記事内のコメント主に責任はあるのか

烏賀陽さんが挙げたポイント(1)と重なるが、この提訴でまずおかしいのは、なぜオリコン側が「烏賀陽さん個人」を訴訟対象にして、この記事が掲載されている雑誌『サイゾー』を発行する「インフォバーン社」を訴訟対象にしなかったのかということ。この記事の文責は「サイゾー編集部」であり、烏賀陽さんはあくまで編集部からコメントを求められてコメントしただけなのだ。烏賀陽さん自身のコメントにもあるが、たいていの場合識者のコメントが中に挿入される記事というのは、基本的にその記事の書き手が事前にある程度の「ストーリー」を作り、そのストーリーに合致した部分を「識者のコメント」(この場合烏賀陽さんからもらった電話コメント)から抜き出して適宜編集し、コメントとして文中に入れ、その文章に客観的な説得力を持たせるというフォーマットで作られることが多い。つまり、オリコン側が主張するようにこの記事によってオリコンに対して何らかのネガティブなイメージが読者にもたらされるとするならば、真っ先にその対象とすべきなのは記事全体の筆者(この場合はサイゾー編集部)であり、訴訟対象とすべきなのはサイゾーを発行しているインフォバーン社だろう。

いわゆる識者コメントというのはとても難しい。俺自身これまで識者からコメントをもらって記事を書いてきたことも多いし、今では自分がこうしたメディアに対してコメントをするということもやっている。どちらの経験もある立場から1つ言えることは、よほどひどい内容(あるいは過激で政治的な主張)でない限り、コメント主に対して責任を負わせるというのは、あまりにも乱暴な方法でないかということだ。

先ほど、地の文を書く筆者が「ストーリー」を作り、そこにコメントを当てはめていくと書いたが、もちろん全ての記事がそのようなやり方で作られるわけではない。純粋に取材をして、取材をした人の話の内容を踏まえて全体のストーリーを決めることもあるし、事前に取材先に内容を精査してもらって事実関係や発言の趣旨などが変わらないかチェックしてもらうこともある。だが、文字数に制約がないネット媒体と異なり、紙媒体は限られた文字数の中でコメントのエッセンスを圧縮して盛り込まなければならない。端的にいえば、「○○は△△という事情が背景にあり、本当は□□ならば良いんだけど、結果的に××になっている」というコメントをしたときに「○○は△△なので、××だ」と、細かい背景説明などが省かれてしまうことがあるのだ。実際、自分が取材を受けてコメントするときの経験でいえば、1時間しゃべったことが細かいディテールを全部抜き取られて数行のコメントに圧縮されてしまうこともある。そういうとき、内容に間違いはなくてもその記事を読んだ人には俺の言いたいことのせいぜい2〜3割しか伝わらないなぁとも思ってしまう。だが、実際に自分が誰かにコメントを求めて記事を書くときは文字数の制約がある以上、同じようにコメントを圧縮しなければならないわけで、コメントを取って記事にするライター・記者の苦労も十分わかる。だから完全に自分の意図した形のコメントにならなくてもある程度は妥協して、「自分の言いたいことを全部入れなければ、コメントの許可は出さない」というような無茶は言わないようにしている(そのかわり、幸いに俺は自分のメディアを持っているので、意図が十分に伝わらないコメントになった場合は、真意をこのサイトに書くようにしているが)。

また、媒体によってコメントの事前確認をさせないところもある。大体新聞や新聞系の出版社は、社の方針として、ゲラをコメント主に見せないようにしており、そうなるとさらに厄介だ。出版されてみると自分の意図とは正反対の(とまではいかなくても本来の意図とはかなり違った)趣旨のコメントが、あたかも自分が言ったように書かれてしまうことがあるからだ。このあたりも確かに難しい問題なのである。

自分がライターとしていろいろなメーカーを取材したときの経験では、大体メーカーの広報は記事の事前確認を求めてくる。そして、記事のゲラを彼らにFAXすると、彼らにとってちょっとでも都合の悪い部分はたいていの場合すべて削除され、別の表現に直されて返ってくる。報道被害の問題を考慮すれば、記事に重大な事実誤認が含まれるような場合、問題が大きいということはわかる。だから、「事実誤認があるかどうかの確認」であればゲラを出すこと自体は俺は問題ないと思っている。しかし、現実はそうならない。広告記事であればクライアントが表現に口を出してくるのも当然だが、メディアはあくまでメディアとして責任を持って情報を発信しなければならない。新聞系のメディアが事前確認をさせないのは彼らに「表現の自由を守るため」というお題目があり、そしてそこに一定の正当性はある。ただ、現実にメディアの現場を見ると事前確認をさせないことによって起きる弊害も多いし、表現の自由が単なる「建前」になっているという点も否定はしないが。

話が長くなってしまったが、俺が言いたいのは、従来の紙媒体が今までのやり方を続ける以上、記事内の著者に過分な「責任」を負わせるのは酷だ、ということだ。

しかも、今回の記事の場合烏賀陽さんはコメント内で直接オリコンを腐しているわけではない。あくまで彼が取材した(彼が責任を持って調べ、ある程度客観性が担保されるはずの)「事実」をコメントとして言っているに過ぎないからだ。

大体、記事全体の「ストーリー」を読めば、ジャニーズとオリコンが癒着関係にある(かもしれない)ことを読者に想起させ、それを面白おかしく煽ろうとしているのはサイゾー編集部が作った「地の文」である。特にオリコンチャートとサウンドスキャンのデータを比較しているところは、単に集計方法の「誤差」の範囲内で収まるところをあえて面白おかしくかき立てているようにも見える。

オリコンが今どういう方法でランキングを集計しているのかは俺も細かくは知らないが(何しろ調査店に関する質問は「下記(調査協力店一覧)記載内容以上の詳細についてはお答えできませんのでご了承ください」として、具体的な集計方法を公開してないからね)、音楽業界内で言われているのは「出荷枚数と消化率から売り上げを推計している」ということだ。これに対し、プラネットやサウンドスキャンは実売ベースのランキングと言われている。出荷ベースのオリコンと、実売ベースのプラネット・サウンドスキャンでは特に初動枚数に大きな違いが出ると言われており、その意味ではこの記事の

試しに、06年2月の、オリコンチャートとPOSデータで集計を取っているサウンドスキャンを例に、ジャニーズタレントの週刊ランキングを比較してみた。2月7-13日の週では、タッキー&翼の「VENUS」(週間販売枚数45954枚)は、オリコンシングルチャート2位だが、2月6-12日週のサウンドスキャンでは、15位(週間販売枚数13573枚)とふるわない。そのほか、TOKIO「Mr.Traveling Man」の順位もそれぞれ、オリコン初登場第1位(2月14-20日)、サウンドスキャン第31位(2月13-19日)と、大きく異なる。確かに他の所属事務所のアーティストと比較して順位に差があるようだ。

という部分は、説得力に欠けるように思える。この記事に説得力を持たせたいのなら、サイゾー編集部は、同じ時期に発売された「ジャニーズ以外」のアーティストのオリコンとサウンドスキャンの「違い」を検証し、それらのアーティストよりもジャニーズが「優遇」されていることを客観的なデータとして出すべきだった。その点は俺も(烏賀陽さんではなく)サイゾー編集部の落ち度だったと思う。

いずれにせよ、この記事に対してオリコンが「事実無根のイメージ誘導だ」というなら、自分たちがどのようにランキングを集計しているのかクリアにして、その結果いかにこのサイゾーの記事が間違っているかを説明し、烏賀陽さんではなくインフォバーン社に記事内容の訂正と謝罪を求めれば済む話である。それをなぜ烏賀陽さん個人なのか。そして5000万円という途方もない金額の根拠は一体どこにあるのか、オリコンにはきちんと説明する責任がある。

あのJASRACですら、昨年9月に発売された「週刊ダイヤモンド 9/17号」における「〈企業レポート〉日本音楽著作権協会(ジャスラック)/使用料1000億円の巨大利権 音楽を食い物にする呆れた実態」という記事(→PDF、→画像1、→画像2)に対して、すぐさま怒ってその後訴訟を起こしているけど、あくまで被告は資本力のあるダイヤモンド社と記事執筆者であるダイヤモンド社の社員だ。そんな訴訟起こして裁判費用ムダにかけるくらいなら、メディア使ってデータ出して反論して、その分きちんと会員アーティストへの還元額を増やせよと思わなくもないが、少なくともJASRACはきちんとその記事の発行元であるダイヤモンド社と記事の文責がある記者を対象に訴訟をしており、記事内でコメントしているジャズ喫茶の店主や玉木宏樹氏を訴えているわけではない(スワンとの訴訟は別にあるという話はややこしくなるので、ここではとりあえず置いておく)。JASRACだってこういうときの「最低限の仁義」は踏まえているのだ。


●チャート操作について

オリコンが出荷ベースの推計ランキングである以上、それはある程度「操作可能」であるというのは客観的事実として明白だ。一時的にランキングを上げたければ「多く出荷して、集計対象店で大量購入する」ことで、(ある程度は)ランキングを上げることが「システム上」可能だからだ。これはオリコンがある種前時代的なアナログ的なシステムを使っている(少なくとも以前はそうだったわけで、今は違うというのならそれをきちんとオリコンがオープンにすればいい話だ)ことから起きるセキュリティホールのようなもので、オリコンは別に「不正」に関わらなくてもこの抜け道をそのままの形で残しておくだけで良いのである。これが残っていることで探偵ファイルに掲載されたこの記事のような手段を使って、レコード会社は自腹でランキングを上げることができるからだ。もっとも探偵ファイルのこの記事は“あらゆるレコード店を巡回し、その店ごとに同一のCDを大量に買い込む”ことを「違法行為」と断言しており、あたかもレコード会社とオリコンがグルになって消費者を騙しているかのようなイメージ操作を行っている。サイゾーの記事なんぞより、よほどこっちの方が(オリコンやレコード会社にとっては)悪質だし、烏賀陽さん訴えるならそれより先に探偵ファイル(探偵ファイル特捜班)を訴えるべきであろう。

ちなみに俺は上の記事に対して違法行為というなら具体的に法律に違反しているのか書けばいいのにねというエントリを書いたし、チャートが「メディア」としての性質を持っている以上、そこにコンテンツ企業がお金を投じて「プロモーション」を行うこと自体は否定されるべきではない、という考え方だ。もっとも烏賀陽さんが記事でコメントしている通り、今は「ディスクの売り上げ枚数=人気の指標」ではなくなりつつある、とも思うが。

さて、記事中の烏賀陽さんのコメント

『オリコンの数字はある程度操作が可能だ』というレコード会社員の話も複数聞いたことがあります。

についてだが、これは俺も複数のレコード会社員、小売店、その他音楽業界関係者から同じ趣旨の話を聞いたことがある。また、Wikipediaの「オリコン」の項目を見てみると、こんなことも書かれている。

●POSシステム
集計方法は、あらかじめ決められた販売店から売り上げデータを受け取るもの。[1]以前はFAXなどに頼っていたが、販売店にPOSシステムが普及したこともあり、最近ではPOSの売り上げデータによってデイリーチャートを集計している。対象となる販売店は、ここ数年でAmazon.co.jpなどのオンライン店舗も一部は対象には入っているが、それらに含まれない特殊なルートでの販売しかない楽曲にはオリコンチャートにランクインしないものもある。例としては、NEWSのデビューシングル『NEWSニッポン』はセブン-イレブン限定販売だったため、オリコンチャートにランクインしなかった。また、DVDの面では、代表的な例は「水曜どうでしょうDVD全集」があげられる。

特殊ルートでの販売のオリコンランクインを認める以前ではオリコン上位にランクインしていたが、ローソンやオンラインショップのみの販売ルートなので、この方式がとられてから販売されたDVDは週売り上げ1位にもかかわらず、オリコンには掲載されなかった。(「幻の1位」としてあげられることが多い。)

●累計売り上げ枚数
オリコンチャートによる累計売り上げ枚数と称されるものは、チャート圏内(CDの場合、かつては週刊チャート100位以内、2002年12月以降はシングルは週刊チャート200位以内、アルバムは週刊チャート300位以内)の売り上げのみを単純に加算したものであり、圏外に落ちてからの売り上げは含まれていない。(同業他社のプラネット・サウンドスキャン等は一週間に1枚の売り上げでも累計売り上げ枚数に加算される)また、レンタル店の購入分や特殊なルートでの販売はランキングに加算されないため、売り上げの実数よりは少ない数値になる。特に、演歌・アニメソングや、「定番」と称される名盤アルバムなどは、チャート圏外やオリコンの集計対象外の店での売り上げが多いため、実数からはかけ離れた数値になると考えられる。

●赤丸
 オリコンチャートでは、初登場や売り上げが伸びている曲を赤字で表記し、「赤丸急上昇」と呼ぶ。これらはチャート順位の浮き沈みで付けられているのではなく、前週よりも多くの枚数を売り上げを上げた作品に付けられるもので、ごく稀にチャート順位が下がっているにもかかわらずこの現象が起きることがある。

●影響度
音楽チャート業界では、プラネット・サウンドスキャンといった同業他社がいるものの、オリコンチャートの影響力は絶大であり、アメリカのビルボード誌と同様、音楽界での評価指標として真っ先に用いられる。

オリコンチャートでは総売り上げよりも初登場順位ばかりが強調されがちであり、レコード会社もそれを承知で発売1週目により多くの売り上げを稼ごうとする。そのため、基本的にチャートは急激な右肩下がりとなる傾向がある(近年、この傾向は特に如実に現れている)。逆に、チャートの下がり幅が小さいか、1週目の順位が低くても2週目以降のランキングがアップするアーティストは着実にファンを獲得していく傾向があり、その実力は後々になって受け入れられる。また、一部の人気低枠アーティストに対してはスタッフがわざわざ集計対象店に出向き、大量にCDを買い付けるサクラのようなものも実際にはいるとされ、一部で恣意的なチャート操作が行われているとも言われる。

また、音楽業界からの圧力で「KinKi Kids、B'zには必ず1位を取らせなければいけない」とも言われており、事実、この2グループが直接対決を行ったことは今までに一度も無い。

ということだ。Wikipediaなので信頼性がどれだけあるのかという議論はあるだろうが、この際Wikipediaの信頼性とかはどうでもいい話なのである。重要なのはこういう記述に代表されるように、ある程度音楽業界に明るい人間からすれば「オリコンチャートが現実の売り上げと乖離している部分があり、ランキング操作が行われている」ということが「常識」的な空気として作られていることなのだ。このことをオリコンはきちんと自覚した方が良い。自覚した上でオリコンがすべきことは、真っ当に仕事をしている個人のジャーナリストに資本力を背景とした嫌がらせのような訴訟を起こすことではなく、自分たちが持っている「チャート」という強大なメディアの信頼性をいかにオープンなやり方で高めて、音楽業界と音楽リスナーにメディアとしての有効性を提示するか、ではないか。

オリコンが音楽配信に乗り出すというニュースが出たとき、いろいろなところに取材したが、取材を離れたところでのレコード会社員から返ってきた反応は概ね「なんで、公正なチャートを提供する、ある種中立的な立場でなきゃいけないはずのオリコンが、自分たちで配信始めるんだろうね。それって初めから『配信のチャートは操作可能』って言ってるようなものじゃん」というものだった。

別に俺はオリコンに何の恨みがあるわけでもないし、前述した通りチャートが「メディア」である以上、ある程度のアナログ的な「操作」が入り込む余地があることは仕方ないとも思っている(データの客観性や信頼性でいったら、テレビ視聴率なんてどうなるんだって話だよ。それに比べりゃオリコンチャートなんて全然まともだ)。

だけど、言論を金や力で封殺するような今回のオリコンのやり方には強い抵抗を覚える。俺だってこのように実名でいろいろなメディアに好き勝手(本当は好き勝手なんて書けないけどな!)いろいろ書いている以上、無関係じゃない。もしかしたら来週には俺のところにもオリコンから訴状が届くかもしれない。

オリコン自体がこの訴訟にノリノリというわけじゃなく、もしかしたら裏で手を回しているのは記事中でもう1つの揶揄対象になっていたジャニーズ事務所なのかもしれない。しかし、そんな細かいことはどうでもいい。間違いなく言えることは、こういう訴訟がまかりとおるようになったら、音楽業界に「ジャーナリズム」とか「自浄作用」なんてものは今後一切生まれない、ということだ。

俺ら個人のジャーナリストが潰されたあとは、次に来るのはネット規制に決まってる。こういう流れが加速すれば、プロバイダー制限責任法も改悪され、ネットから匿名性は奪われ、著作権侵害は非親告罪化され、著作物のダウンロードは違法化され、権力と金を持っているところに楯突く存在は、こういう形で抹殺されるだろう。

だから、このエントリを読んでくれた人は「なんか音楽業界とか出版業界で揉めてるんだね」とかそういう意識じゃなくて、現実の自分たちの生活に関わってくる問題として捉えて欲しい。もう対岸の火事じゃないんだよ。力を持っている連中が自分たちの都合の悪いことをシステマティックに潰せる仕組みができあがりつつあるんだから。そうなったらもう左とか右とか、関係ないよ。

烏賀陽さんはメールの冒頭で「みなさんのお知恵、お力を貸してください。記事にしてください。ブログに書いてください。ウエブサイトに載せてください。メールを転送してください。言いふらしてください」と書いた。

みんなができることは簡単だ。このことをリアルの社会で話のネタにしたり、ふざけるなと憤ってネット上で「今こんなことが起きているんだよ」と広めてくれるだけでいい。それが大きなうねりになれば、オリコンだって態度を軟化させざるを得なくなる。

ネットなんて現実社会を動かせない? そんなことないよ。輸入盤の問題のときだって法案は通ってしまったけど、あそこであれだけ大きな動きになったから今歯止めが効いている部分だってあるし、電気用品安全法だってあのネットの動きがなかったら、今はもっと現場は混乱していたかもしれない。

今はまだ小さな力でしかないかもしれないけど、ネットが持つ潜在的な力を理解したからこそ、既存のメディアの連中が今焦って、そういう力をスポイルさせようとしている。そういう彼らの焦りは、メディア業界に片足突っ込んでいる俺は本当によくわかる。

あんま大仰な話で煽るのは好きじゃないし、柄でもないけど、この訴訟は本当に許せなかったし、やりきれない思いになった。オリコンは「出版社」という「言論メディア」の性格を持っているんだよ? だったらサイゾーと烏賀陽さんが提起した「言論」に対しては少なくとも最初は「言論」で対抗してくださいよ。それが最低限の「仁義」だろうし、メディアとして当然持たなきゃいけないプライドじゃねーのか?

とにかく俺は俺でこの問題に対していろいろ動きます。烏賀陽さんを支援できる立場にある人、憤りを感じた人はぜひ協力してください。よろしくお願いします。


(追記1)
オリコンチャートの「以前」の集計方法に関しては小野島大さんのブログで、細かい事情が書かれている。こちらもご参照のこと。

あと、今のところ情報が烏賀陽さんからもらった情報しかない状態なので、このエントリはいろいろな予断、推測も含んでいます。今後、訴状を見せてもらうなどして、いろいろ詳細な情報がわかり次第、情報を更新していこうと思います。


(追記2)
烏賀陽さんから訴状をFAXしてもらいました。下記に記事転載部分を省略した11ページ分を転載いたします。

訴状ページ1
訴状ページ2
訴状ページ3
訴状ページ4
訴状ページ5
訴状ページ6
訴状ページ7
訴状ページ8
訴状ページ9
訴状ページ10
訴状ページ11

全部まとめて画像をダウンロードしたい方はこちらの圧縮ファイルをどうぞ。

全部をまとめたPDF版も用意しました。

訴状を読むと確かにサイゾー編集部に届いているものの、訴えているのは烏賀陽さん個人になっていますね。

サイゾー編集部にも問い合わせたところ、この訴状が届いていることが間違いないということがわかりました。追ってサイゾー編集部から正式なコメントをいただくことになっています。

なお、烏賀陽さんはこの訴訟の当事者であるため、自発的な発言が非常に難しい(微妙な)状況に置かれております。この訴訟に関する発言が少ないことに関しては、そのような事情があることをご理解ください。

さらにいえば、烏賀陽さんは第1回期日(来年1月4日)までに答弁書を作成し、裁判所に提出しなければなりません。それをしなければオリコン(原告)の主張が認められてしまうからです。この訴訟に関する(現時点での)彼の発言が少ないことに関しては、そのような事情があることをご理解ください。

烏賀陽さんの年末年始はこの答弁書の作成に追われることになってしまうでしょう(しかも高額の着手金を自腹で弁護士に支払って、です)。ライター・ジャーナリストにとって死ぬほど忙しいこの時期を狙い打ちし、本来はゆっくり落ち着くための年末年始を潰し、精神的に追いつめるようなオリコンのやり口は個人的に到底許すことはできません。本当に憤懣やるかたない思いでいっぱいです。


(追記3)
オリコンのサイトに事実誤認に基づく弊社への名誉毀損についてというプレスリリースが掲載されています。内容については訴状とあわせて各自ご判断ください。

いずれにせよ、この問題、来年初頭には司法の場で「事実誤認」があったかどうかが争われることになるわけです。僕は烏賀陽さんを応援しようと思っています。

(追記4)
上のオリコンが出したプレスリリースを受けて新エントリ起こしました。

(追記5)
オリコン社長小池恒氏が自分の名前で真意を発表。事実誤認あったら提訴を取り下げ? なら、なんでいきなり5000万円の訴訟? またあとでこれは書きます。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 03時05分 |

2006年12月13日(水)

「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」シンポジウムの「仮動画」をアップしました

先日無事行われた「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」第1回公開シンポジウムですが、「早くパネルディスカッションの内容を観たい」という声が多かったので、当日デジカメで撮影していた動画をサイトにアップしました。

シンポジウム概要 - シンポジウムストリーミング中継動画(著作権保護期間の延長問題を考える国民会議 - thinkcopyright.org)

実際にどのようなテンションでパネリストの皆様が発言されたか確認したいという方はアクセスしていただければ。

著作権保護期間は延長すべきか 賛否めぐり議論白熱(ITmedia)
著作権保護期間、死後50年から70年への延長を巡って賛成・反対両派が議論(INTERNET Watch)

これらの記事も動画と併せて読むことで、いろいろなことが見えてくると思います。

| 著作権 | この記事のURI | Posted at 19時36分 |

2006年12月06日(水)

CDTubeの使い道

CDTube - カウントダウンチューブ

既に各所で話題になっているCDTube(カウントダウンTVのサイトからランキングデータを引っ張ってきて、その楽曲をYouTubeで自動的に探してページ内にEmbed表示させるサービス)だけど、レコード会社の人間がこれだけ見たら普通は「なんだこれは! 中国韓国の違法ストリーミングサイトよりもひどい著作権侵害横行サイトじゃないか!」みたいな反応を起こすだろう。こういう「便利」なサービスが出てくれば、そりゃ権利者の方はYouTube憎しでロビーイングして、ダウンロード違法化法案とか作ろうとするだろう。その流れはまぁ自然というか理解できる範囲。

著作権法改正についてはまた別のところで書くつもりなので今回は置いておくが、CDTubeを見て真っ先に思ったのは、「Web 2.0」とか「マッシュアップ」ということがよくわからない上司に、このサイトを見せれば「WWW上に公開された情報であるカウントダウンTVのランキングデータを引っ張ってきて、そのデータを元にYouTubeにアップされた動画を自動的に検索して、PVをページに自動的に表示させ、さらにはPV見て気に入った人はAmazonにジャンプしてすぐに楽曲が買えるシステム」がほぼ自動的に構築されているということを理解させやすいんじゃないかということだ。

公衆送信権が規定として設けられている日本でも、このCDTubeの開発者はアップロードした主体ではないので、あくまで自動的にYouTubeのデータを表示しているだけ。引っかかるとしたらTBSに著作権があるCDTVのランキングデータを転用しているところなんだろうけど、これもあくまでYouTubeで検索するときのキーとして利用しているわけで、そのまま「転載」しているわけじゃない。このあたりが著作権法上どのような扱いになるのかは興味深いところだ(ランキングデータは著作物性のない「事実」なのか「著作物」なのかという議論もあるかもね)。

いずれにせよ、現状著作権侵害の違法サイトとしてしょっぴくのだとしたら、せいぜいWinnyと同じく著作権侵害幇助で無理矢理しょっぴくしかないのではないだろうか。もしかしたら解釈次第ではEmbed表示の場合もアップロードの主体になる可能性もゼロじゃないのかもしれないが、そのへんの細かい法律論はちょっと俺もわからない。要するにこういうWeb 2.0的なマッシュアップサービスが現状の著作権法の下でどのように扱われるか、というさまざまな問題点・論点がこのサービスで浮き彫りになっているといえる。

CDTVなんて俺も久しく見ていない。実際あれをランキング最初から最後まで見るには時間がかかりすぎるし、自分が興味のない楽曲を見せられても「今こんなのが流行ってるんだね」的なことを知る以上のメリットはない。だったらネットで興味のあるものをオンデマンドでぱぱっと見られた方が時間の節約になるし、「ネット的」だ。置かれているのは商品を「宣伝」するためのPVであるわけで、自動的にその商品を(Amazonを使って)「販売」するシステムまでも整っている。だから、音楽業界はこういうサービスを見たときに怒りまくって潰すのではなく、まず最初にCDTubeが存在したことでどれだけの経済的損失が生まれたのか、あとはここ経由でCDの販売促進効果がどれだけあったのか、本気で調べてみるということから始めればいいんじゃないかと思う。それこそ作者の人に始めてからどれだけAmazonアソシエイト経由の購入があったのか聞いてみるとかね。

今の時代、PVは以前と違って「あとでDVDで発売するかもしれない動画商品」になったが、YouTubeのクオリティの画質で流れることの経済的損失(あの荒い画質のPVをサイト上で見ることでPVを含んだDVD商品を買わなくなったという人がどれだけ増えたか、ということ。俺はほとんどいないと思う)をレコード会社が本気で調べているなんて話は聞いたことがないし、ああいう消費者ニーズに見合った便利なデジタルコピーがもたらすポジティブな効果もはかった上で、あえて「この程度は不問に処す」という選択もゼロではないのではないか。もはやレコード業界だってとっくに護送船団時代じゃなくなってる。生き残りをかけてしたたかな戦略を考えたときに、むやみな権利保護強化しか道がないというのではあまりにも状況が理解できていない。

CDTubeは音楽業界の人間が今時のウェブというものをどれだけきちんと認識しているのか、ということを調べる上でとてもよくできた「リトマス試験紙」なのだと思う。

なんか数年前は音楽業界の中に、こういうサービスが登場したときに素朴に「あーあれ便利だよね。面白いよね」と言える人間が結構いたと思うんだけど、そういう人は今はどんどん独立したり、閑職に追いやられちゃったりして、本気でこういうサービスを潰したいと思うガチガチな人ばっかりになっちゃった印象がある。実際のところ、そのあたりどうなのかねぇ。

| 著作権 | この記事のURI | Posted at 09時37分 |

2006年12月04日(月)

バンドのIT化にかけられる情熱とコスト

こういう事例(コメント欄参照)を見ていると、MySpaceやYoroZooは安価でIT化にお金をかけられないインディーズバンドのページ作成代行(といっても自分のサービスの機能を使えばいいからそんな手間もコストもかからんでしょ)をどんどんネット使って売り込んで行く、ということをやればいいのに、と思った。

メジャーやセミメジャーの位置にいるインディーだけが音楽ではないし、ボトムアップを地道にやるって視点がITの人たちには欠けてる感じするよね。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 08時28分 |

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