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ナタリーってこうなってたのか 表紙

ナタリーってこうなってたのか

大山卓也 著 / 双葉社

ISBN:978-4575307009 / 版型:18.2×12×1.2cm
ページ数:184ページ / 定価:1080円(税込)

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2006年12月25日(月)

オリコン訴訟問題の現状の詳細なまとめ

烏賀陽さんのメールが届いてから1週間。ITmediaなど一部の報道が出たり、その間にオリコンからリリースが出たり、社長名義のコメントが出たり、いろいろありました。新聞報道系のメディアもこの件について既に動いているところもあるそうで、来週には一般報道レベルでもこの問題が知られていくことになるでしょう。(→毎日新聞の記事出ましたね。なぜかmixiニュースの方と微妙に記事内容が違う。こっちは朝刊? 烏賀陽さんのコメントが長い)

この問題についていろいろ調べていく過程で、今感じている僕の感想はこんな感じです。

「とにかく複雑な論点が絡み合っていて、どうにも解きほぐすことが難しい」

なので、今回はこのエントリより、さらに冷静にこの問題にどのような論点が含まれているのか、僕なりに整理して皆さんに提示したいと思います。問題を整理していく過程で、オリコン側、そしてサイゾー側、また烏賀陽さんにも非があることが分かってきたところもあります。だからこそこの問題は複雑で、かつ不幸なことだと思いますし、はっきりいえば、この訴訟をオリコンが行うことで、勝つにしろ負けるにしろ「誰も得をしない」という状況がそこにあると思います。不毛ですね。

ということで、以下論点ごとに問題となっているところを整理していきたいと思います。


●オリコンは何を問題にしているのか?

(1)訴状や社長コメントなどを見る限り、オリコンが問題にしているのは以下の2つ。「予約も含めてカウントして集計しているということは事実無根」「オリコンは集計方法を明らかにしており、記事中のほとんど明らかにしていないというのは事実無根」。これに対して音楽業界人から得た「チャートは操作可能だ」と伝聞を記事内に盛り込むことで、それらがそも事実であるかのような誘導をしている。これがオリコンに対する「誹謗中傷」「名誉毀損」に当たるということ。

→「事実無根」なのか、「チャートの操作は可能なのか」という2点については別項にて検証する


(2)なぜ、誹謗中傷にあたるのか? それは彼らが「音楽ヒットチャート関連事業」を中核とするビジネスモデルの企業であるからだ。そのため、チャートの信頼性を損ねるような言説がメディアに(彼らが「事実無根」とする要因を元にした記事が)掲載されるようなことは、事業全体に重大な損失を与える。

→これはオリコン側の主張が100%正しいと仮定するならその通りだろう。


(3)だから烏賀陽氏個人に対して信頼性を損ねると多大な損失を招くため、当社の年間売上高57億円の1%に満たない数字を基準に算定し、5000万円の損害賠償訴訟を起こした。

→オリコンのチャートの信頼性や操作可能か、ということではなくこの問題の本質はすべてここに凝縮されている。果たして5000万円という金額は妥当なのか、なぜサイゾー編集部ではなく、烏賀陽氏個人宛に訴訟を起こしたのか、そして「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもなく、ただ事実誤認の訂正を求める目的」で訴訟を起こしたのならば、なぜ出版社と著者に対する記事訂正・謝罪文要請、もしくは両者間による十分な事実確認の話し合いというプロセスを踏まずに(このことについては内容証明郵便の項で別途検証する)、5000万円で提訴したのかという問題が残る。お金が目的じゃないのに、具体的に信頼性を損ねると多大な損失を招くため、当社の年間売上高57億円の1%に満たない数字を基準に算定して損害賠償を求める請求をしているとメディアに答えているのは、矛盾があるように思える。「謝罪と訂正」が本当の目的であるなら、5000万円の訴訟という「手段」が妥当であったのかということだ。


●オリコンの調査方法の信頼性はどうなのか

(1)大きな問題として横たわっているのは「今の問題」なのか「昔の問題」なのかということである。

→オリコンの調査方法は以前と現在では変わっている。現在はウェブ上で調査方法と調査対象店を公開している。これによれば、現在は「操作」のきかないPOSデータとネット通販の売上データをもとに作成していることがわかる。だが、POSシステムが普及する前は、以前は調査対象店から電話やFAXで報告される売上データを元に集計していた。どちらにも共通しているのはこれは「標本調査」であるということである。つまり、調査対象店から上がってくる「基礎データ」に、オリコンが独自に作った「計算方法」を掛け合わせることで、最終的な「推計」の「売上枚数」が算出されるということだ。これは予約問題にもつながってくる複雑な論点なので、予約問題の項目を参照のこと。

ここでポイントになるのは調査対象店からオリコンに上がってくる「基礎データ」の信頼性がどうなのか、という部分だ。POS時代になった現在はそこに操作が入り込む余地はない。しかしかつてはFAXや電話による人為的な集計であり、ここに操作が入り込む余地があった。実際、ここの部分で「操作」が行われていたとする音楽業界関係者の発言は複数聞かれる。1つの争点となっている「予約」についても、恐らく問題となるのは「昔の時代」の話なのであろう。音楽業界関係者に取材した結果は別エントリを起こしたので、このエントリを最後まで読んだあと、読んでもらいたい。さらにいえば、基礎データは現在操作する余地はなくなっていても、肝心の「どのような計算式で数字を掛け合わせると、オリコンが発表する数値になるか」ということが明らかになっていないのである。つまり、昔と現在では「操作できる余地」は明らかに少なくなったとはいえ、現在でも「操作できる余地」が残っているということは、実際に彼らがやっているかどうかはともかく事実として踏まえておかねばならないだろう。


(2)オリコンが発表する集計方法は「統計データとして信頼に値するものなのか」という問題

→烏賀陽氏自身が例の記事でコメントを行うときに話した内容とも関連するが、信頼される統計調査というものは何なのかを調べたらこのようなページが見つかった。これによれば、統計調査の区分は「全数調査」(調査の対象となる構成単位をすべて調べる調査)と「標本調査」(母集団の構成単位を一部抜き出して調査し,それによって,母集団全体の様子を推定する調査)に分かれる。オリコン(プラネット、サウンドスキャンも同じ)の調査の場合、日本にあるレコード店全部のデータをまとめているわけではないので、「全数調査」ではない。つまり「標本調査」である。そして、標本抽出の方法には「無作為抽出法」と「有意抽出法」に大別されるが、いわゆる統計調査は無作為抽出により調査されたものをいうとのことだ。オリコンの場合、現在サイトで調査店を公開しているので、どこのお店で買えばそれがランキングに反映されるかどうかということがわかっている。つまり、「有意抽出法」にあたる。本来「統計」として、信頼性の高いデータであるには、方法として「無作為抽出法」でなければならないはずだ。つまり、オリコンからしたら「我々は調査店まで開示しているクリアーな統計データなのだ」と言いたいのだろうが、実際は逆で、統計データとしての信頼性を高めたいのならば、「どこのお店で調査しているのか」という情報は明らかにしてはいけないのだ。

もちろん「有意抽出法」でも、まったく信頼性がないかといえばそれは別の議論になる。音楽業界人に取材した結果の中には、「実売データと照らし合わせても非常に近いデータだ」という意見(A氏)もあり、「有意抽出法」であれば信頼できない、という話でもないだろう。実際、全体に対する標本数が少ない視聴率調査(無作為抽出法でも、当然誤差は出るので、その誤差がどれだけあるのかということが信頼性をはかる基準になる)よりも、よりもPOSに基づく売上実数の数理集積を元にしたオリコンのデータの方が信頼性が高いとする向きもあり、俺も個人的な感覚だけで話をすれば前のエントリに書いた通り、視聴率調査よりもオリコンのデータの方が信頼性は高いと思う。ただし、一般論としては統計調査が信頼を得るためには、オリコンはもう少し細かい集計方法を明らかにしなければならないような気がする。

(追記)
この点に関して下記の指摘メールを頂きました。これも信頼性に関する1つの論点になるところで、具体例を交えた解説は非常に参考になりました。ありがとうございます。ただ、僕はこうした意見も耳にするので、オリコンの調査の信頼性を高めるのにはどっちの方式の方が良いのか、というところの判断は保留させて頂きます。

オリコンが発表する集計方法は「統計データとして信頼に値するものなのか」について

今のフレームだと、「値します」。12/25の記事で、無作為抽出と有意抽出でかかれていることは、教科書通りのことですね。

オリコンが調べたいのは、売上データです。ならば、彼らのやっている方法は十分妥当です。

なぜか。

売上ランキングでは、個票が大事だからです。

無作為抽出しても、回答してくれなくてはなんの意味もありません。

例えば、ビールのランキングを出したいとします。一生懸命地方の酒屋さんをランダムサンプリングしました。でも、セブンイレブン、ダイエーからは回答がありませんでした。そのような調査結果に意味があるでしょうか?

業界全体をみて、売上上位の会社からは絶対回収しなくてはいけない。それがランキング調査なのです。有意抽出でなくてはいけないのです。調査フレームが安定していて、その結果を時系列で見ることにこそランキングの意味合いはあります。

> 実際は逆で、統計データとしての信頼性を高めたいのならば、
> 「どこのお店で調査しているのか」という情報は明らかに
> してはいけないのだ。

というのは真逆です。あのリストで日本全体の売上のどの程度が網羅されているか、そのことこそが重要なのです。オリコンに限らず、世の中で売上ランキングを出している調査の調査方法を調べてみてください。どこでも、必ず明示しているはずです。
例:http://bcnranking.jp/bcn/07-00000142.html

無作為抽出が必要なのは、売上ではなく、「日本全体のレコード店の店長の意見を知りたい」ときです。
(追記終わり)

もっともオリコンがデータを売っているのは一般人ではなく、それを参考に商品開発や番組作り、マーケティングを行う「企業」だ。つまり、オリコンの主なビジネスモデルはBtoBであり、買う企業側が「指標」として有効だと思って買っているのなら、内容の信頼性はある意味で必要以上に問わなくてもいいという議論もあるだろう。この点オリコンのビジネスモデルとも関わってくるので別項「オリコンのビジネスモデルと「訴権の濫用」問題」にてまた触れる。

烏賀陽氏は朝日新聞社在職時代、世論調査に関わったこともあるそうだ。そうした立場で「一般論」として「信頼性の高い統計データとは、標本数の公開や標本誤差の許容範囲、抽出方法など、細かく集計方法が明らかになったものである」とサイゾー編集部の取材に答え、そのときに「オリコンのデータが信頼できないと言っているわけじゃない。だからオリコンのデータは信頼性がないというような書き方はやめてくれ」と編集部員に言ったという。ではなぜあのようなコメント記事になったのか? ここは別項「そもそものサイゾー記事の質と編集部の責任」で検証する。


(3)オリコンは本当に開始時以来集計方法を明示していたのかという問題

事実誤認に基づく弊社への名誉毀損についてというプレスリリースでは「調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)」と書かれている。「調査店を開示することイコール統計の信頼性を高める」わけではないことは、統計の専門家からしたら常識だろうが、問題は平成15年7月以前の調査方法の「明示」がどのような形で行われていたか、ということだ。法人向けデータベースシステム「真大樹」で公開されているとしても、それ以前は業界誌の「ORIGINAL CONFIDENCE」の方で公開されていた、ということなんだろうか。一部の人にしかアクセスできないような情報公開であった場合、「昭和43年のランキング開始時以来明示してきた」という表現は議論が分かれるのではないか。

あと気になるのは調査方法に関して「さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています」という部分。これも内容証明のところの話と関わるが、烏賀陽氏に話を聞いたところ、サイゾー記事が出たあと、烏賀陽氏は「オリコンチャートの問題についてはこれまであまり深く掘って取材したことがなかった。(追記)これは俺の勘違いで、03年2月3日のアエラに合わせて、烏賀陽氏はその前後オリコンに何度か取材をかけているそうだ。FAXでのやり取りも残っていているそうだが、肝心の質問には広報は答えたり、はぐらかしたりという感じだったようだ。前の書き方では烏賀陽氏はオリコンのことを何も知らずにコメントしたようにも見えるので、少なくともオリコン本体にもきちんと取材しようとしたことがある、というように訂正しておく。(追記終わり)(筆者註:これは別項「そもそものサイゾー記事の質と編集部の責任」にも関わる問題なので、そちらも参照されたし)。ならば、まず正面突破でオリコンに取材を申し込み、この問題について明らかにしよう」と思い、「ランキングの集計方法について取材させてください」とオリコン広報部に連絡したそうだ。

オリコン広報部は「ええっ。烏賀陽さんですか……。ちょっとお待ちください。あとで連絡します」とその場では電話を切り、その後、電話連絡ではなくサイゾー編集部に内容証明が送られてきた。ということだ。これが烏賀陽氏がサイトにアップした経緯の「過去に取材拒否もあり」という部分に当たる。この話も俺は烏賀陽氏から聞いた話なので、もしかしかたらオリコン側は「違う」と主張するかもしれない。いずれにせよ、烏賀陽氏とオリコン側両者しかこの点は事実関係は知らない、ということだ。そして、恐らくこのやり取りは裁判における1つの大きな争点になるだろう。なので、これ以上の論評は控えておく。ただ、「他社メディアの取材に応じています」という部分については、疑問の余地があるというところは指摘しておきたい。


(4)サイゾー記事内の「ほとんど」という表現の問題

→日本語の解釈の問題になるが、「ほとんど明らかにしていない」というコメントは「明らかにしている部分もある」ということである。結局のところPOSから出てくる実売データにオリコンがブラックボックスとして持っている「係数」に対して、どれだけの重要性を見るか、というところにかかってくる。そして前述した通りこの「係数」に関してはオリコンは明らかにしていない(ここについては、オリコン社のビジネスモデルに関わる問題でもある。個人的には、企業側が納得ずくで購入しているのならば、このブラックボックスをむやみに明らかにする必要はないと思う)。しかし、この「係数」こそがチャートの信頼性をはかる本質だ、と考える人からみたら、オリコンの集計方法公開は「ほとんど明らかにされていない」と言っても決して過言ではないだろう。「まったく明らかにされていない」ではないのだ。が、もちろん「係数」は重要ではない。「基礎データ」を集めるものを調査店まで明らかに公開しているのだが、「ほとんど公開している」と考える人もいるだろうし、オリコン側としたらそういう認識を持っているのだろう。

まさにこのあたりには「言葉の解釈」という問題と、さらにはチャートの信頼性は何によって担保されるのか、という大きな問題が横たわっている。


(5)オリコンのチャートは「出荷」ベースだったことはあるのか
→これは最初のエントリで俺も考えなしに「音楽業界内で言われているのは『出荷枚数と消化率から売り上げを推計している』ということだ。これに対し、プラネットやサウンドスキャンは実売ベースのランキングと言われている」と書いてしまったが、これはミスリードをもたらすものだったかもしれない。少なくとも現在はPOSデータを使っている以上実売がベースになっている可能性が「高い」わけで、その意味で現在のオリコンの「推計」方法に出荷枚数が含まれているのかどうかに関しては、きちんとした検証が必要だろう。

しかし、まったく無根拠というわけではなく「オリコンのランキングは出荷ベースだから、プラネットやサウンドスキャンでミリオンにいかないものがミリオンになる」的な話は、それこそ数え切れないほど複数の音楽業界関係者から聞いていた話である。今回いろいろ取材して、チャートや小売店の現場に近い人に話を聞くと、いや「出荷数だけでランキング決まるなんてないですよ」的な冷静な反応が返ってくることが多かったので、このへん、オリコンがずっと「ブラックボックス」にしておいたことが、やがて業界関係者の中で「オリコンは出荷ベースのランキングだから操作可能」的な噂(常識)になり、一人歩きしていった部分があるんじゃないか、とも思える。この部分はさらなる検証が必要だろう。


●果たしてオリコンのチャートは「予約枚数」もカウントしたデータに基づくものなのか

(1)訴状とオリコン側から出された2つのプレスリリースを見る限り、もっとも彼らが訴えたいところはここである

→今回の裁判におけるポイントはいくつもあるが、争点となるもっとも重要なポイントは間違いなくここであろう。訴状にしても、プレスリリースにしても、書いてある文章をよく読んでいくと、オリコン側は自分たちにとって「痛くないところ」である「予約」の部分を武器に、烏賀陽氏の言っていることを「事実無根」ということにしたい、という思惑が見えてくる。前述した通り、具体論の話になると実は彼らは困る(オリコンチャートの信頼性というところは、解釈次第でどうとでも争える)ので、あえて具体的なポイントである「予約」というところに的を絞って烏賀陽氏を提訴したのではないか。彼らにとっては「予約を枚数に入れていない」ということは歴然たる事実であり、そこに絶対的な自信があるから「勝訴できる」と踏んで、「これに基づいた事実誤認でそれが結果的にオリコンへの誹謗中傷になっている」という論を組み立てているように思える。


(2)「予約」が含まれるという話の真偽は?

→まず踏まえておかなければならないのは、別項「オリコンの調査方法の信頼性はどうなのか」の(1)で指摘した「今の問題」なのか「過去の問題」なのか、というところで密接に関わってくる。まずは「過去」の話からしよう。過去、POSがなかった時代は調査店からオリコンへの報告は電話かFAXにて行われていた。これはどういうことかというと、ぶっちゃけていえば、ある程度の誤差の範囲内で「レコード店」が数字を水増しできる余地がたくさんあった、ということを意味する。水増しのために「予約」という手法が使われた可能性はゼロではない。古いオリコンの体制を知る業界関係者に話を聞くと、いろいろな情報がかえってきたが、概ね「しっかりやっていた店もあれば、適当にやっていた店もあるし、レコード会社から金銭的な便宜を受けて報告枚数を増やしていた店もある」というものだった。ここでまた、論点が複雑化するのだが、オリコンにとっては、レコード店から上がってる「売上」に予約枚数が含まれていようといまいとどうでも良いことである。それはあくまで名目上レコード店が「自発的」(であったかどうか、という論点はまた別項で触れる)にやったことであるからだ。店や担当者によっても変わっただろうし、おかしな数字が出てきたときに「あそこは予約枚数も含めて報告してるから」的な疑問が出てもおかしくはないだろう。そのあたりは音楽業界人への取材も読んでもらいたい。いろいろな人に話を聞いた結果、このオリコンのカラ予約を使ってランキングを上げる手法について聞くと

「あったよ(過去形であることがポイント)」
「実質的に予約で順位上げることができるよ」
「今はやってないよ」
「そもそもそんな話聞いたことないよ」

という4種類の反応があった。業界関係者の中でも意見が割れるという意味では、これは非常に微妙な問題なのだと思う。烏賀陽氏にも「ソースはどこ?」という話を聞いたが、それはそれで上記で述べたような(完全な証拠とするには)微妙なソースであった。が、これは現状烏賀陽氏が俺に話せる部分も限定的であろうことを考えると、結論を出しにくい。


(3)昔はともかく現在は予約はカウントされないのでは?

→これも手法の問題というか、状況によって変わる。オリコンのチャートが現在は実売ベースになっているというのはよく聞く話であるが、最終的には「推計」で数字を作っていることは事実だ。で、この話になるとオリコンのこの推計方法、ブラックボックスに足を踏み入れざるを得なくなる。プラネットなどはPOSデータから上がってる数字に係数をかける、というある種単純な方法を取っているが、オリコンはそのあたりどうなっているのだろうか。現在のオリコンチャートはプラネットやサウンドスキャンと同じように完全にPOSを通した実売データと消化率(実際に売れた数量を入荷した商品数量で割ったもの)で計算しているのだろうか。

以下仮定の話になるが、この「推計」のやり方が、メーカー出荷枚数をベースにして、サンプル店での消化率を調査し、出荷枚数×消化率を計算する方式でやっているのだとすれば、調査対象店で集中的な買いを入れて、そこでの消化率を上げれば、チャート上昇させることは可能である(これは別項「オリコンの調査方法の信頼性はどうなのか」でも述べた)。そして、このベースに出荷枚数があるとしたら(あくまでこれは仮定の話なので注意)、レコード会社が出荷枚数を増やせば、それに伴って推定実売枚数も増える仕組みになるわけだ。

ここでポイントとなるのは、どうやってレコード会社の出荷枚数を増やすかということを考えたときに、「予約」というものも絡んでくる可能性がある、ということだ。具体的にいえばあるレコード会社がアーティストの新譜を出すときに、調査対象店であるA店が50枚買い取ってくれそうだ、ということがわかっった。そのときに、オーダー締切直前にレコード会社がバイト雇うなり、自分でお店行くなりして10枚その新譜の予約をする。そうするとA店は予約分も考慮して60枚、もしくは現場で話題になっているという効果も見越して70枚や80枚などレコード会社に対してオーダーする数を増やすかもしれない。これは「予約を数に入れる」という単純な図式ではないが、予約を利用して初回出荷数を増やす(=チャートを意図的に上昇させる)ことが可能である、ということを意味する。ここまですべて仮定の話だが、もしこうしたことが現実に行われているのなら「予約枚数もカウントしている」という表現は、事実とは違ったとして「事実無根」とまで言い切るのは厳しいのではないかとも思える。実際にかつては予約枚数もカウントされる(レコード店がそうしていてもオリコン側にそれを防ぐ術がなかった)ような仕組みで運営したいたわけで、それも含めればもっと「無根」と言い切るのはつらいのではないか。ただ、もちろんどちらの場合にしろ予約枚数の問題は「オリコン側に責任がある」とするのは難しいだろう。レコード会社や一部の熱狂的ファンやチャートシステムの穴を逆手に取っておもしろそうな「祭」に参加した人に、その「原因」はあるからだ(むろん、そのことを知りつつ、システム上整っていない部分をオリコン側が意図的に放置している可能性もあり、このことの是非もあるわけだが、これもまた別の議論になるだろう)。

この問題、予約が一番の重要な論点なのであるが、そこを深く掘っていくと、「チャート操作」には「オリコンが関与したもの」と「レコード会社がシステム上の不備を突いて操作したもので、オリコンは関与していないもの」の2種類があるということが大きなポイントであることがわかる。これについては別項「チャート操作は可能なのか」で詳述する。


●チャートは操作可能なのか

(1)なぜオリコンの出す数字はPOS中心のプラネット、サウンドスキャンと異なるケースがあるのか

→これについてはまず先にプラネット、サウンドスキャンのチャートがどれだけ実態を反映したものなのか、という議論もしなければならない。音楽業界人へ取材した際、A氏はプラネット、(特に)サウンドスキャンのチャートの信頼性に対して疑問を呈していた。オリコンは自ら「老舗」と謳うように、数十年かけて作ってきた独自の信頼すべき集計方法を持っている。現場感覚に基づいて実態に即したチャートにするために、POSデータだけでは図れないさまざまな要素をチャートに組み込んでいるわけだろうから、その意味ではプラネット、サウンドスキャンと差異があるのは当然のことである。つまり、「チャートに差異があること」自体はオリコンチャートの信頼性を否定する根拠にはならないのだ。プラネット、サウンドスキャンのチャートが「絶対的指標」でない限り、差異はあって当然である。そして、もっといえばチャートが出荷するレコード会社や、一部の消費者によって「操作可能」なのは、オリコンだけに限らないのである。「タワー渋谷店のインディチャート○位」が欲しくて予約を入れるインディーレーベルのオーナーもいるし、Amazonのランキングを上げたくて午前中に自分の本をまとめ買いしてランキングを上げる著者だっている。世の中で公開されている多くの「チャート」は、誰が主体になるか、どこまで操作できるのか、という問題はあるが、ある程度は「恣意的な操作が可能」なのである。チャートが「メディア」的性格を強く有している以上、それは認められるべき(仕方ない)ものだと理解すべきだ。逆にいえば、踊らされる消費者の側も「チャートなんてそんな程度のものだよ」的に捉えておくことが重要なのだろう。そもそもチャートなんてあんま気にしない、という人の方がほとんどだろうが。


(2)チャートを操作する「主体」の問題

→今まで書いてきたように、一口に「チャート操作」といっても、チャートシステムの「穴」を突いてランキングを上げようとする「操作」(もしかしたらこれは「操作」というより「上昇を意図した行為」と呼んだ方が良いのかもしれない)と、オリコンとレコード会社が結託して意図的に集計結果から導き出された「チャート」を書き換える「操作」の2種類がある。極端なことをいえば、前者の操作はあくまでレコード会社や消費者が「勝手にやったこと」であって、そうした行為があったところでオリコンに責任はない。オリコンが今回の訴訟で強気の姿勢を取っているのは、前者については自分たちが責任に問われることをないことを知っているからだろう。

そして、予約問題を中心にして烏賀陽氏を責めているのも、同じ理由であると思われる。オリコンかすれば現在はPOSデータを基礎データにしているのだから、レコード店から上がってくる数字は疑いようがない。そして予約についてもPOSは「通った(売り上げた)もの」しか記録されないから、カラ予約はすべて排除される。そして、POS以前のFAX集計のときにカラ予約で数字が水増しされてオリコンに報告されていたとしても、それは「かつてのことで現在のことではない」ということに加え、「レコード店が勝手にやったこと」であるから、オリコン側はそもそも「関知しないことです」と言うことができる。


(3)烏賀陽氏の「コメント」の責任は?

→オリコンがそもそも「関知しないことです」と、ある種の強弁が行えるここの部分は烏賀陽氏の「コメント」と大きく結びついている。俺もいろいろと取材をしていく中で、この予約問題だけが争点になるなら、烏賀陽氏はかなり厳しい立場に追い込まれたんじゃないかと思っている。どう転んでもオリコン側は「予約が数に含まれる」ということを「事実無根」と言える状況が整っているからだ。これを覆すには、烏賀陽氏が「オリコンが予約も数に入れている」ということの、確実な「証拠」を出さなければならないだろう。

ただし、実際に裁判となったときには、「予約枚数がカウントに含まれるのかどうか」という事実だけが争点になるわけではない。そもそも烏賀陽氏はこの点について「現在事実関係」を明らかにすべく、オリコン側に取材を申し込んで断られたという経緯があるからだ(もちろん、烏賀陽氏が僕に対して言ってくれたこのことが真実であるならば、ではあるが)。著者が事実を確認しようと正当な手続きを踏んでいるのにもかかわらずそれを拒否し、著者の記事(今回の場合、文責は編集部にある「コメント者」でしかないわけだが)を「事実無根」と主張することが、裁判においてどのような影響をもたらすのかは、1つの大きなポイントとなる可能性が高い。そして、このあたりのことはオリコン側、烏賀陽氏側双方の「裁判戦略」に大きく関わってくるだろう。


●そもそものサイゾー記事の質と編集部の責任

※この項に書かれることは基本的に烏賀陽氏から聞いた内容を元に起こしてます。聞いた内容が「事実」と異なっていた場合、まったく展開が異なることがあることをあらかじめご留意いただければ幸いです。また、僕の現在の「気分」としては、「烏賀陽氏にも非があるポイントはあるが、それでもオリコンが高額訴訟に踏み切ったことに対しては非常に強い抵抗感を持っている」という状況です。いろいろなものを飲み込んだ上で、烏賀陽氏を基本的には支援するつもりなので、その点読者の方は差し引いて考えていただければ幸いです。


(1)そもそものサイゾーの記事の「質」はどうだったのか?

最初のエントリで引用した、サイゾー2006年4月号の記事をバックナンバーのページで見ると、このような内容が書かれている。ワイド特集〈ジャニーズタレント〉「ジャニヲタかく語りき、ジャニタレの真の姿とは?」という、ワイド特集の中の1つの記事だ。引用した部分を見てもらえればわかると思うが、オリコンのチャートでジャニーズが1位になることが多いことをネタに、ジャニーズを揶揄しよう、という執筆者の意図が見える。ただ、それこそ「事実無根」で揶揄するわけにはいかないから、音楽業界に詳しいジャーナリストである烏賀陽氏が記事に箔を付ける意味で選ばれたのであろう。変な話、ここで電話取材の対象は烏賀陽氏ではなく、津田大介でも良かったはずだ。識者のコメントと後述するずさんな「チャートのおかしさの指摘」で適当に構成された、まぁ言葉は悪くなってしまうが、「ページの埋め草」的な程度の低い記事である。「チャート操作している」的な話にまとめたいのなら、確たる証拠もなくこういう記事を書くべきではなかった。オリコンが見たときに腹を立てて、何らかの抗議をしてくる可能性だって十分予見できたはずだ。そして、この問題の本質だが、記事の文責はサイゾー編集部の編集部員であった。


(2)チャート操作を指摘するときの集計週がずれていた?

MUSIC ROOMというブログのエントリがわかりやすいが、サイゾーの記事の

試しに、06年2月の、オリコンチャートとPOSデータで集計を取っているサウンドスキャンを例に、ジャニーズタレントの週刊ランキングを比較してみた。2月7-13日の週では、タッキー&翼の「VENUS」(週間販売枚数45954枚)は、オリコンシングルチャート2位だが、2月6-12日週のサウンドスキャンでは、15位(週間販売枚数13573枚)とふるわない。そのほか、TOKIO「Mr.Traveling Man」の順位もそれぞれ、オリコン初登場第1位(2月14-20日)、サウンドスキャン第31位(2月13-19日)と、大きく異なる。確かに他の所属事務所のアーティストと比較して順位に差があるようだ。

という部分は、どうやら比較した週が単に1週間ずれているため、オリコンサウンドスキャンで大きな差が出ているのでは、という指摘が出ている。週がずれているというのもお粗末だが、それ以上にこのブログの著者ダイス氏や、業界関係者A氏が指摘しているように、サウンドスキャンとオリコンのジャニーズ関連の順位の差は、チャートの信頼性云々の話よりも、同一タイトルで同一商品とみなせるものに関しては、メディアの違いを問わず「すべて」合算して集計を行っているオリコンと、品番別にランキングを集計するサウンドスキャンの集計方法の違いによるものが大きいのだ。複数商品を同時購入するのがデフォルトになってるジャニーズファンの行動(最近のジャニーズのシングルは初回限定盤はCD+DVDで、CDには2曲くらいにして、通常盤はCDのみだが初回限定版には含まれないトラックが含まれるので、ファンはどちらも買わなければならない)によるものが大きい。実際サウンドスキャンのこの週のランキングをチェックしてみると、ソメイヨシノ/ ENDLICHERI☆ENDLICHERI(堂本剛)の初回限定盤が1位、通常盤が6位に入っていることがわかる。初回限定盤は5万7733枚で、通常盤が3万4332枚であるから、恐らく初回盤も潤沢に供給するであろうジャニーズの場合、通常盤の購入者はほとんどが初回限定盤との同時購入組であることが予想される。単純な数字だけで見れば約6割、少なく見積もっても3〜5割のファンが同時購入しているのだろう。本来ならば、オリコンの「ジャニーズがらみのチャートのおかしさ」を指摘するなら、オリコンのランキングにはそういう特性があることを踏まえた上で、同じ時期に発売された「ジャニーズ以外」のアーティストのオリコンとサウンドスキャンの「違い」を検証し、それらのアーティストよりもジャニーズが「優遇」されていることを客観的なデータとして出すべきだった。またはオリコン内部から「ブラックボックス」である推計方法を入手してきて、それを白日の下に晒し、その上でおかしいことを明白な証拠として出さなければ「ジャーナリズム」としてはNGだっただろう。そして、これらの記事の質の低さについて烏賀陽氏は責任はない。単に巻き込まれただけだ。本来ならば、この記事の質が低いことが原因で訴訟が起きるのならば、その原因は他ならぬサイゾー編集部(もしくは書いた記者)が取るというのが「筋」であろう。


(3)烏賀陽氏のコメント編集の問題

→実際の記事を読むと、烏賀陽氏が「わずか20行」とコメントしているように、内容的にそれほど際どいことをコメントしているようには思えない。オリコンからしたら、予約のところがカチンと来たのだろうが、それであれば編集部に事実誤認の訂正と謝罪を求めれば済む話である。そこで済めば、よくある雑誌記事に対するクレーム→謝罪で終わったはずだ。

そしてさらに重要なことは(烏賀陽氏の話を信じる限り)。サイゾーから電話取材でコメントを求められたとき、烏賀陽氏は「一般論」として統計データの話をして、「オリコンのチャートのことを言っているわけじゃない」ということを編集部の記者に念押ししたそうだ。ところがゲラが上がってくるとこのような内容になってきており、烏賀陽氏も編集部員に文句を言ったそうだが「時間的に校了が迫っていて大幅な修正は難しい」とか「文字数が少ない関係で微妙なニュアンスを出すのも限りがある」とかそういう理由で「これでいかせてくれ」と要望され、烏賀陽氏もしぶしぶそれを了承したという経緯があるそうだ。

個人的にはここがまさにポイントで(さっきからポイントいっぱいあって読みにくいよね。ごめんね!)、なんで烏賀陽氏はOKを出してしまったんだろうか、脇が甘いと責められても仕方ないよなと思う反面、元新聞記者で最初のエントリで書いた通り、限られた字数でコメントを入れて処理しなきゃいけない記者の苦労もわかる烏賀陽氏の「人の良さ」が、最悪の形でここに出てしまったのだなぁと嘆息してしまうのだ。人によっては、こういう脇の甘さ、人の良さを評して「ジャーナリストとしては致命的」と言うのかもしれないが、俺は人間的には烏賀陽氏みたいな人が好きだし、信頼できる。ただ、現状そういう烏賀陽氏の「迂闊さ」が、オリコンから訴訟される原因になっており、さらにはネットメディアでこういう問題を巻き込んでいくときに悪い方向に出ている面も否めない。愛・蔵太さんが感じているような危惧はまさにそのようなものの典型だろう。

しかし、これは断言するが、烏賀陽氏は「自分に都合に良い情報を小出しにしてネット世論を操作してやろう」なんて意図はまったくない。むしろそういう部分があるとしたら俺の方だろう(笑……えない)。冗談はともかく、このあたりは烏賀陽氏が迂闊だったとはいえ、基本、サイゾー編集部員が質の低い記事を適当なコメントででっちあげたことに問題があるのだ。

実は8月、俺のところにもサイゾー編集部から電話取材があって、コメントをした。内容は「CM音楽と音楽業界でどんな癒着があって、音楽出版社はどんなひどいことをしているのか」ということだった。俺は話を聞いたとき、「これはかなりクリティカルな内容の取材になる」と判断し、電話口のコメントはかなり注意して話した。編集部の人は恐らく「テレビ局系の音楽出版社はアーティストから搾取しまくりでひどいですよはっはっは」的なゴシップコメントを期待していたのだろうが、最初から最後まで一般論に終始するコメントにしたので(良くも悪くも、一部を除けば音楽出版社の仕事は地味だ。そして、物事は全部そうだが、彼らが今までやってきたことには功もあれば罪もある。一部の典型的なネガティブな事例だけを取り出して音楽出版社全部、CMタイアップなどを否定するような文脈で使われるのは勘弁という感じだった)、最終的に上がってきたゲラの俺のコメントは非常にマイルドなものであった。

しかし、あのとき調子に乗って自分の近いところでひどい音楽出版社の事例をたまたま聞くことができて、それを得意げにサイゾーに話していたら、それこそ俺のところにも訴状が来ていたのかもしれない。

終わった話だから仕方ないが、サイゾー編集部はどうしてもジャニーズとオリコンはできていて、チャート操作しているという文脈で記事にしたかったのなら、烏賀陽氏の名前は出さずに「音楽業界関係者はこう語る」と匿名で記事にしておけば良かったのだ。そうしたら、オリコン側からしたらたかが「サイゾーの与太記事」、で済んだかも知れない。

最終的にGOを出したのは烏賀陽氏ではあるが、烏賀陽氏だけにその責任を100%負わせるのはあまりにも酷だ。少なくともサイゾー編集部もこの記事に対して50%は責任を負わねばなるまい。


(4)烏賀陽氏の社会的影響力は?

→これは非常に失礼な話になるが、オリコン側が再三再四主張するこの記事による「風評被害」というのはどれだけのものなのかということがある。サイゾーなんてせいぜいが実売数万部の雑誌だし、「Jポップとは何か」にしたって10万部を超えるベストセラーになったなんて話は聞かない。せいぜい2万部くらいだろう。あとは烏賀陽氏個人の「知名度」がどれだけあるか、ということだ。俺は頻繁にテレビなど、露出度の高いメディアに出ているわけじゃない烏賀陽氏の知名度は、現時点ではあまりない(失礼!)と思う。そして、烏賀陽氏本人が発言しているように彼がオリコンについて書いた記事は「アエラ2003年2月3日号」だけである。コメントしたサイゾーと含めるとメディアでこのことが出たのは2つだけだ(「Jポップとは何か」にはオリコンの話は出てこないそうだ)。以前のエントリにも書いたが、オリコンが「烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります」というのなら、きちんとそのことをオリコン側が「証拠」として明らかにした方がいいだろう。ここも裁判における1つの争点になるはずだ。


(5)5000万円の妥当性

→これはあちこちで言われているが、本当にこの金額は妥当なのかという疑問は常に残る。ただ、オリコンは上場企業であり、企業の評判が落ちて株価が落ちれば、数億円では済まないレベルの「被害」が起きる。そして、オリコンの中核事業が自らの「チャート」にあるのならば、それを否定するような言論に対して断固闘うということは、企業防衛の観点から見れば正しい。しかし、それを踏まえたとしても、なぜコメントした烏賀陽氏ねらい打ちだったのか、なぜ5000万円の被害が出たと言えるのか、なぜインフォバーン社に対して訂正要求を出さずに直接烏賀陽氏ねらい打ちで内容証明を出して、その後話し合う態度を見せずに訴訟に踏み切ったのか。さまざまな疑問は残されたままだ。前項の「烏賀陽氏個人の影響力がどれくらいあったのか」という問題も絡み、やはり5000万円という金額の妥当性は多くの議論の余地を残しているように思う。具体的に「被害を受けた」というなら、サイゾーのあの記事を見て「それまで音楽番組のチャート表示にオリコンを使っていたテレビ番組がプラネットに変わりました」とか、「スポーツ新聞に掲載されるランキングがオリコンからプラネットになってしまいました」とか、そういう具体的な「被害」を出すべきなんじゃないか。「あの記事以降それが何十件もあるんです。チャートの貸し出し費用は毎月○○万円でそれが○件あったから5000万円の被害であります」という言い方をすれば、それは誰でもわかる経済的な「被害」であろう。

でも多分違うよね? あのサイゾーの記事を見て現在のオリコンのデータ使わせてもらっている顧客が「オリコンのデータは信頼性ないからやめよう」なんて思わないもん。みんな納得ずくでオリコンのデータ使ってるでしょ。つまりは、サイゾーのあの記事は「無視して問題ないレベル」の記事だったってことだ。要するに、いろいろな意味で5000万円の根拠が希薄なのだ。


●内容証明問題

(1)内容証明はいつ、何がきっかけで来たのか

→6月にサイゾー編集部に届いた内容証明郵便は俺も見せてもらった。スキャンまではしているが、裁判とのからみもあるのでアップするのは控えることにする。ただ、内容について簡単に書いておくと、「そもそもあの記事を作成するにあたり、烏賀陽氏は本当にあの趣旨の発言、指摘をしたのかということ。そして本当に発言しているなら「オリコンの数字が操作可能で統計学的な信用度が低い」とする根拠をお答えください、という質問と回答を求めるものだった。

これに対して烏賀陽氏は「ジャニーズとオリコンの関係のことはよくわからない」と答えたところ、編集部から「一般論で構わない」ということを言われ、コメントしたそうだ。そしてまとめたコメント部分はメールで烏賀陽氏に打ち返され、修正・編集を加え、若干の意見交換ののち、掲載の形にまとめられたという趣旨の返信をしていた。

ちなみにこれも、この内容証明郵便が来た時点でサイゾー編集部と烏賀陽氏の間で、一種の揉め事になったそうだ(烏賀陽氏からすれば、言いたいことの趣旨をねじまげられてコメント掲載され、それが原因で内容証明が送られてきたのだから当然だろう。ただ、もちろんそれは本人が掲載時にきちんと名前を出して掲載することを断っていれば防げた問題ではあるが)。このあたりはサイゾー編集部にも言い分はあるだろうから、烏賀陽氏からそのように聞いているという事実を記しておくだけにしたい。

そして、先ほどの「取材拒否」の話と関連するが、この内容証明郵便は、烏賀陽氏がサイゾーの記事をきっかけに、「そういえばオリコンのチャートのことをきちんと調べなくてはいけないな」と思って、オリコンに取材を申し込んだ際に、取材の応諾の代わりにサイゾー編集部に届いたものである。取材に対して内容証明で答えた時点で、烏賀陽氏はオリコンにとって「危険人物」と認定されていたのかもしれないが、このあたりのやり取りはいささか不条理なものを感じざるを得ない。烏賀陽氏に文句があるなら堂々と取材を受けて「お前のあの記事はこことここが間違っている。謝罪しろ」と言えばいいじゃん、と俺なんかは思うのだが、なぜオリコンは内容証明を出すことにこだわったのだろうか。それとも烏賀陽氏がまだ語っていないオリコンとのいざこざがあるのだろうか。

内容証明だが、烏賀陽氏からオリコンに対して返信した内容の末尾に「今回の件に関しまして、更なるご質問等ございましたら、サイゾ一編集部ならびに鳥賀陽弘道宛にご指摘いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます」という文があった。少なくとも烏賀陽氏には(取材を申し込んだぐらいなわけだから当たり前だが)オリコン側と「対話」しようという意思はあったということだ。


(2)内容証明で本人のコメントであることを認めたため、個人対象もやむなし?

→内容証明に対する返答を読む限り、烏賀陽氏は(微妙な表現ではあるが)、サイゾー編集部との連帯責任的な部分を臭わせつつ、自分の発言であることを認めている。オリコンの提訴理由が「烏賀陽はオリコンのチャートの信頼性を損ねる記事や言動を繰り返していた」ところにあるのなら、内容証明でそれを確認して訴訟に踏み切るというプロセスはまったくもって正しい、というか想定内の出来事といってもいいだろう。

しかし、前述したように烏賀陽氏が本当に「繰り返していたのか」という問題もあるし、サイゾーの記事がオリコンへもたらすネガティブな印象は、烏賀陽氏のコメントよりもサイゾー編集部員が作ったあの「地の文」にあるということを忘れてはならない。ここまで烏賀陽氏個人をねらい打ちするのはなぜか? 今回の記事でサイゾー編集部のことは一切眼中になし、というのが不可解なのである。


(3)本当に責任を取るべき人間は誰か

→さて、問題のサイゾー編集部で記事を書いた人間はどうしているか。これは凄いオチがあって、あの記事を作成後インフォバーン社から退職してしまったそうなのである。おいおいおいおい、って感じなのだが、そうなったときに、この記事の責任は誰が取るべきなのか。もっとも彼が在職中であったとしても、これは編集部・会社として責任を取らねばならない話だろうから、このことは論点としては重要な話ではないのかもしれないが、腰砕けするような「事実」ではあった。


●オリコンのビジネスモデルと「訴権の濫用」問題

(1)オリコンのビジネスモデルの根幹はBtoB

→彼らが売っているものはチャート情報だ。雑誌ビジネスもやってはいるが、採算ベースではないと聞く。それに対する信頼性が損なわれれば、会社としての存亡に関わるという危機感は、当たり前のものとして理解できる。そして、こういう訴訟を起こすことにより、ブログや一般消費者から白眼視されることは、恐らくある程度は予想していたはずだ。しかしそれでもこの訴訟に踏み切った背景には、BtoCビジネスよりもBtoBビジネスが根幹であるという彼らのビジネスモデルがあるような気がする。すごく極端な話をすれば、彼らは消費者からどう思われようが、メインのビジネスの部分ではあまり関係ないのだ。


(2)なぜサイゾーに対して謝罪記事を求めることをしなかったのか

→内容証明から訴訟、という一連の流れを見る限り(そしてその間何も接触がなかったという前提で話をする限り)、なぜオリコンが事実誤認に基づく謝罪要求をしなかったのか。それが非常に気になる。このことについて納得がいく説明がオリコン側から出てこないと、烏賀陽氏個人が目の上のたんこぶになっていたから訴訟を起こしたと思われても仕方がないだろう。


(3)オリコンの目的は何か

→「烏賀陽氏個人に対する社会的制裁という幼稚な理由」でなければ一体何か。考えられるのは、自分たちがBtoBで売っているデータは「老舗で、正確で、完璧で非の打ち所がない信頼性の高いものである」ということを、対外企業に向けてアピールするということだ。BtoBビジネスが主体で、さらには上場企業である。上場企業が自分たちの「メシの種」を守るために、外部からの脅威に対して訴訟で応えた、というのが単純な事実かもしれないが、それにしても今回の件のさまざまなプロセスを見る限り、個人に対する訴訟としては「大げさ」な面は否めない。あまつさえオリコンは公式に「賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい」「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます」などと発言しているのである。これでは「訴権の濫用」だと言われても仕方のない面があるだろう。


(4)この訴訟でオリコンにメリットはあるのか?

→個人的な考えでいえば、これが訴訟までいってしまうことでオリコン側にとっては1つもメリットはないと思う。勝ったとしても、負けたとしても、デメリットの方がはるかに大きいはずだ。

というのも、この裁判、展開次第では彼らのチャートが「信頼性が高いものである」ということを証明するために、推定方法というブラックボックスの実態について、明らかにしなければならなくなる可能性があるからだ。ここを深く突っ込まれることはオリコンとしては本意ではないだろう。何しろ推計方法は「企業秘密」に属するようなものだからだ。

そして、「チャートの信頼性」が大きな議論になったとき、烏賀陽氏に協力する業界関係者もゼロではないのではないか。「証人」として裁判まで出る人がいるかどうかはわからないが、それ以外のさまざまな部分で、オリコンのチャートの信頼性についてしゃべれるという人はいるはずだ。オリコン側からすれば「そんなやつは業界に一人もいない」と踏んでいるかもしれないが、このあたりはどうなるかわからないところだ。予約をカウントするか否かの問題だけで済めばいいが、チャートの信頼性そのものに話が行きすぎると、オリコンとしてはかなり面倒くさい話になってくるような気がする。

たとえ「勝った」ところで、結果的にチャートの信頼性を損ねるような話が出てこないとも限らない。そして、もし「負け」たら武富士事件になぞらえられて、個人の言論を恫喝訴訟で潰そうとして負けたという汚名を着せられることになる。

オリコン側は100%勝てるつもりでいるかもしれないが、俺個人の感覚で見れば、この訴訟は法廷での議論の進み方によってどちらにも転ぶんじゃないかと思う。たとえオリコンが勝ったとしても、5000万円満額が得られることはないだろうし、裁判の過程でさまざまなブラックボックスを明らかにしなければならなくなるかもしれない。その「リスク」を考えれば、訴訟に踏み切ることは得策ではないと俺は思う。


●結論

長々と書いてきたが、とりあえず「現時点」での俺の結論を書いておく。

・迂闊なコメントをした烏賀陽氏も悪いし、それを見て真っ赤になって5000万円の訴訟を起こしたオリコンも大人げない。しかし、この件で一番責められるべきは(この件に関して)無責任な記事作りをしたサイゾー編集部・インフォバーン社にあるだろう。混乱を招いた多くの原因はサイゾー編集部にある、と俺は思う。

・オリコンチャートの信頼性というものは、恐らく今のビジネスモデルでオリコンがやっていて、ほぼ独占状態になっていることを考えれば、「買う側」からしてみれば重大な問題ではない。そして、今回のサイゾーの記事が出たことぐらいではその「信頼性」が揺らぐということはないはずだ。むしろ、オリコンがこういう訴訟を起こしたことで「何焦ってるの?」と信頼性を疑う向きが出てきたんじゃないか。

・信頼性の議論は「昔」の議論と「今」の議論が混同されがち。しかも、レコード会社が自主的に行う買い取りと、レコード会社とオリコンが「協議」して順位を変動させるのではまったく違う。音楽業界関係者に話を聞くと「どちらもある(あった)。しかし、操作できる幅はあまり大きくない」という意見が返ってくることが多い。オリコンは訴訟をすることでここを掘りすぎると、彼らにとって都合の良くない事実も出てくるのではないかという懸念がある。

・最終結論。1月9日の第1回公判の前にオリコンが訴訟を取り下げるのがいいと思います! そのときにサイゾーに事実関係があやふやだった「予約」の部分についてだけ謝罪記事を載せる、という条件で「手打ち」するのが、誰にとっても幸せなんじゃないかと思うんだけど……。


あ、一応自分の立場を明らかにしておくと、今回のこの三者。どことも付き合いはあります。烏賀陽さんとは普通に知り合いだし、共著出したいねなんて話もあります。

オリコンはORIGINAL CONFIDENCEに音楽配信の原稿を書いて、ギャラをもらった経験はあるし、過去に何度か取材に行きました。ORIGINAL CONFIDENCEのギャラはちょっと他の雑誌に比べると安いなーとは思いましたけど、特にそれでオリコンという会社に対して悪印象があったわけではありません。

サイゾーは何度か原稿書いたことあるし、メールマガジン版を出していたときは連載記事書いてました。あと、識者としてコメントしたこともあるし、基本的に僕はサイゾーという雑誌は好きです。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 08時15分 |

オリコン訴訟問題について音楽業界関係者に取材しました

この件に関して、「オリコンチャートは本当に操作が可能なのか?」ということをテーマに音楽業界関係者に取材を試みました。反応は実にバラバラで、この問題の複雑さの一端がこれらのインタビューである程度は明らかになっていると思います。

レコード会社、チャート関係、小売店、それらのどこにいるかということでもこの問題に対する見方は変わってくるし、入ってくる情報も異なるでしょう。立場が違う人からみれば当然「それは違うよ!」という意見もあるかもしれません。そういう方がいらしたらぜひ僕に連絡してください。取材させてください。このエントリはいろいろな取材ができ次第、どんどん追加していこうと思っています。

あと、取材原稿に入る前に書いておきます。僕の基本的な立場は何度か書いてますが、チャートが一企業が作成する「メディア」的な性質を有するものである以上、「ある程度の操作」は許容されるべき、というものです。

だからこそオリコンが「我が社のチャートは公明正大、何の曇りもないチャートなんです」と言って、個人に訴訟を起こしたことには違和感を持っています。「うちのチャートは歴史があって一番便利、要するにそれが信頼のおけるチャートなんですよ」的な大人な立ち位置でいれば良かったのにという部分がある。そういうことも踏まえた上で取材原稿読んでもらえれば。



それでは以下、取材原稿です。

●小売店(オリコン対象ではない) A氏

※言及したオリコンの時期:約15年前〜現在

――今回の一件、どうご覧になってます?

A氏:オリコンの数字が「統計的手法を元に出てきたデータに人為的な操作を加えて出てきた推計値」ということは歴然たる事実ですし、関係者も否定しないでしょう。でも、僕は「予約」がカウントに入っているという話は聞いたことないですよ。

僕が勤めている会社ではオリコンは立派な「指標」になってます。実店舗での感触とオリコンの数字の間に「えっ?」と驚くような大きな差があるということはほとんどありません。予約者が多そうな商品のランクが異様に上がるというケースはまれですし、そうした差異がジャニーズに集中しているということも一切ないですね。

もし店側で「予約数と実売数の合計」を報告するというのであれば、わざわざ「仕入れ数から減算」するなり、「実売数に加算」なりして報告しなきゃいけません。お店によっては内金を全額支払ってもらう形の予約を「売上」扱いで処理するところもあるみたいですが、基本的に「入金が終わっていないもの」を売上として計上することはPOSのシステム上絶対にできないんですよ。だってPOSって「レジ」なんですから。あれが売上管理のすべての礎です。お金をもらっていない状態で「売上」を操作するということは100%ないですね。

オリコンは調査対象店のリストを公開してますが、もし「予約」をカウントしているんだったら、あのリストにあるお店の全店舗が「仕入数」「予約数」「実売数」を報告していてオリコン側で合計処理を行っている、ということになる。だとすると「ジャニーズ以外で予約が多いアーティストも異常値が出ていないとおかしい」ってことになるんです。

例えばアイドルですね。ハロープロジェクトのファンは「イベント券目当ての空予約」がとても多いんです。一人でたくさん予約することでお目当てのイベント券が手に入りやすくなる。無事手に入ったらあとの予約はキャンセル、みたいなことは日常茶飯事です。予約の数値が入っているのなら、こういう特殊なアーティストのランキングが上がってこなければおかしいわけです。でも、プラネットやサウンドスキャンとランキングを比べたときにそういう話は聞かない。


――ジャニーズは特別扱いされているわけじゃないんですね。

A氏:端的にいうと、ジャニーズファンにはジャケット違いの商品や限定盤などバージョン違いの同商品を複数購入する傾向があるんですよ。オリコンの場合それらを合算するので必然的にランキングが高くなる。例えば、TOKIOのシングルはほとんどが「限定盤」「通常盤の初回仕様」「通常盤の通常仕様」の3形態、場合によっては限定盤が2種の4形態で発売されています。 コールセンターの担当者に聞いたことがあるんですが、店舗に「通常盤の通常仕様を発売日に入手したい」と問い合わせしてくるお客は圧倒的にジャニーズファンが多いそうなんです。もっとも、一部エイベックスのアーティストでもこういうことはあるみたいですけどね。

ジャニーズファンはオリコンの仕組みもよく知ってますから、一部の熱狂的なファンは「オリコンの調査対象店で買ってランキングあげよう」みたいな共通認識を持っています。熱狂的なファンが発売日に大挙して対象店に押し寄せて複数枚購入していく。ジャニーズの数値が上昇するのは当たり前すぎるほど当たり前ですよね。むしろ、それこそが「業界関係者の常識」ですよ。


――それは意図的な「ランキングの操作」ではないと?

A氏:つまりね。「業界関係者の常識」というのは「オリコンの数値は工夫次第で変動させられる」ということなんです。ここのところがポイントなんですが、「どうやってプラス方向に作用させるほうにファンを扇動するか」というころが重大テーマなのであって、「オリコンの数字はオリコン社内の人間の手によって意図的に捏造されている」ということではないんです……まあ、多少はやってるのかもしれないですけど。でも、僕から見て「明らかにこりゃ変だ」というようなケースはほとんど覚えがありません。ジャニーズであろうとB'zであろうとね。

だからこの問題を僕の視点から見たら、オリコンの数値すべてに予約数が含まれているとは考えにくい。もしかしたら多少は含まれてるかもしれないけど。あと、ジャニーズ絡みの数値は実際の市場より高めに出ている可能性は極めて高い。でもそれは要するにオリコンの「捏造」ではなくて、システムを知っている熱狂的なファンが作り上げた「現象」なんです。オリコンの数値を盲信するのはバカだと思いますが、「オリコンは捏造しているから信用できない」と言ってるやつもバカです。「都市型チャート」としては十分参考になる値ということですね。


――オリコン側が「チャートの信頼性」を殊更に主張しているのも十分理由があると。

A氏:オリコンからすれば、チャートの作成方法というのは丸秘中の丸秘なんです。だってチャートの作成方法を公開してしまうと「客を扇動して自分たちの思ったとおりの数字を出す」ってことがきわめて簡単にできますからね。当然複数購入されたときに「○枚以上の複数同時購入は弾く」みたいな指標は内部で持っていると思います。この数字がわかっちゃうと「○−1枚買えばいい」ということになってしまいますから。

17〜8年くらい前かな。オリコンウィークリーに確か「オリコンができるまで」みたいな1ページの漫画が載りました。そこではランキングができるまではファクスと電話で集計して、最後に秘密の計算をしてチャートができる、と書かれてました。秘密の計算については「企業秘密だから」と明らかにされてませんでした。当然その時代は今は違います。オリコンが公開している対象店のPOSデータからオンラインでもらっているということは事実としてわかりますが、じゃあその数字を何倍してどう計算すればオリコンが発表する数字なるのか、ということはブラックボックスになってます。ただ、僕はその計算方法がブラックボックスであることで担保される公正さ、というのもあると思ってるんです。以前はどこの店で調査しているかすら明らかにしなかったわけですし。

これは都市伝説と言ってもいいのかもしれませんが、まことしやかに言われていた話としては、以前はオリコンの推定ポイントって10枚単位だったんですよ。オリコンでは、調査対象店全店の中から「市場占拠率10%」になる組み合わせを4通り組んであって、その4パターンを毎週適宜使い分けている、って話を噂で聞いたことはあります。


――もう1つの論点として、昔はどうだったのか? ということがあると思いますが。

A氏:オリコンの調査用紙を見たことがあるのは20年近く前ですね。その頃は電話じゃなくてFAX送信でした。 確かに、あの形式ではウソ数値を書いてしまえばいくらでも工作はできます。 あれ、出荷数(店にしてみれば仕入れ数)を書いていたのか実売数を書いていたのかわかんないんですけど……「送りつけ商品」がいくらあっても実売を記入して返答していれば全然問題ないんですよね? このときは僕はこの業界にいたわけじゃないのでちょっとわからないんですよね。


――この問題を受けたネットの反応についてはどう思いますか。

A氏:1つ気になったのはこのブログの記事ですね。これは明らかに事実誤認だと思います。本当にすべて出荷数で決まっていたのならば「大した売上のない商品」は、送りつけられた店は2週目以降発注ゼロになりますし、後から発注する店は小規模店や特販ルートなど特殊店だけになる。これらはほぼ調査対象外ですから。となると、発売週に9割近くあるいはそれ以上の売上が集中する、ということになります。ランク下げるどころか、下手をすると50位圏外でランクアウトになるという結果になると思うんですよね。実売でやってるサウンドスキャンやプラネットとの差は今どころじゃなくなります。

ビクターとか東芝とかは僕の記憶が確かなら8年前くらいまで「送りつけ慣習」というものをやってました。ちなみに、ビクターは『SP』と呼ばれており、東芝は『オートサプライ』と呼んでいましたね。中にはとんでもない数量送りつけられてる商品もありましたけど、そういう商品が上位に出たことはなかったですね。

だから、そういう状況証拠的な部分から検証すれば「出荷枚数そのまま」がランキングに反映されているわけではないと思います。もし、オリコンの調査対象店勤務だったのならわかるんでしょうけど、そうでない人にはそれなりの大型店勤務でない限りブラックボックスなのではないでしょうか。

僕は小売店の中では非常に大きな企業にいたものですからわかるのですが、うちの会社で売れた数に「うちの会社小売業界における市場占拠率」から100%になるように掛け合わせたときの数字(註:市場占拠率が10%なら10倍、20%なら5倍、25%なら4倍、33%なら3倍ということ)が、オリコンの発表する数字と合致するケースは何度も遭遇しています。その意味ではオリコンが出している数字は、まったくデタラメなんてことはなくて、数字ベースでもそれなりの裏はあるんですよ。


――オリコンが行う「操作」ではないですが、レコード会社による「買い取り」についてはどうですか。

A氏:買い取り工作はあると思いますが、僕は買い取り工作って焼け石に水だと思ってるんです。オリコンにしろ、ほかのところににしろサンプリング調査ですから。例えば、シェア10%のサンプルを取って10倍して算出しているのであれば、対象店を完全に把握すれば、買い取り枚数の10倍の枚数をチャート上に計上できる計算になります。もっとも今は対象店も広がってるしオリコンではせいぜい3倍〜5倍が関の山でしょうけど。

シングル5000枚で500万円といいますが、これだけ投下すりゃうまいこと店を選んで成功したら1万枚〜2万枚くらいは水増しできるでしょう。だいたい30位近辺をうろうろしていたものを5位6位あたりに放り込むことができます。あとはゼロベース(ランク外)のものを10位くらいに放り込むこともできます。

1000枚100万円で、2000枚〜4000枚くらい水増しすれば、50位あたりのものをベスト20くらいには放り込めます。テレビや新聞に出稿して大衆を扇動してこれだけの枚数を動かすのは難しいですよ(笑)。もっとも、オリコンの順位だけ上がっても今はあんまりアナウンス効果もないんですが……。 どちらかといえば、オリコンの順位獲りって今は主に広告代理店とテレビ局対策のような気がするんですけどね。


●津田コメント
小売店の立場から「オリコンチャートは十分信頼のおけるチャートだ」とする意見ですね。「予約」の部分はかつてオリコンが「出荷」チャートだったのかどうかを検証する上で重要な論点を含んでいるように思います。10年くらい前にCDショップで働いていたというk_turner氏からの反論も期待したいところですが……。(追記)k_turner氏による反論が掲載されました。こちらも非常に興味深い内容なのでご一読することをオススメします。

●元小売店(オリコン対象店)B氏

※言及したオリコンの時期:約18年前

――平成元年頃小売店に在籍されていたということですが、その頃のオリコンチャートってどうだったんでしょう?

B氏:オリコンのチャートが操作可能なんてことは、レコードショップに在籍していたことのある人ならみんな知っている事実ですよ。チャート集計店一覧リストを手に持ってやってくる「CD買占め隊」の連中をさばいたことのある経験は、少なくとも僕と同世代以上のディーラー経験者ならゴロゴロいるんじゃないかな。

問題はこういう行為をどう捉えるか。オリコンではなく、チャート順位を上げたいメーカーからの回し者がやったことだとしても、虚偽は虚偽だよね。もちろん、オリコンに責任はないとする考え方もあるだろうけど。


――1つの論点ですよね。昔のチャート集計はどうだったのかというところは。

B氏:僕がチェーン店にいたころは、オリコンチャートのための報告は地区の事務所がかなり適当な数字をあげていたと記憶してます。なにしろPOSもない時代だったし、何よりいろいろ報告しなくちゃいけない集計データが多かった。自社内で上に提出する報告はデタラメを書くと怒られるのできちんと書いていましたが、それ以外の集計データなんて適当もいいところだったんじゃないかな。


――もう1つの争点になってる「予約を含めていたかどうか」についてはどうですか。

B氏:平成元年頃の記憶だから、曖昧な部分もあるんですけど、当時予約分というのは店頭から下げて「取り置き」していたため、初回発注数から店頭に出した分を引き算して「売上げ実績」としていたはず。だから、オリコンが「予約分を含めたことはありません」というのは実態に即していないんじゃないかな。


●津田コメント
昔のレコード店からオリコンへの報告がどのようになっているか、また当時「予約」がどのように扱われていたのかという重要な証言が含まれていると思います。

●元音楽チャート会社 C氏

※言及したオリコンの時期:約10年前〜

――今の音楽チャートを語る際に踏まえておくべき基本的なことってありますか。

C氏:要するにレコード店すべてにPOSがあって、そこで売れた枚数をチャートにする形式であれば今回みたいな話は出ないんですよね。対象店が限られている以上、「実売に係数をかけた比例値」にならざるを得ない。


――チャートが推計値になることの弊害って具体的にはどういうことがあるんでしょうか。

C氏:端的にいえば、集計する期間が長くなればなるほど売上が実売よりも大きくなってしまうという問題があるんです。発売から間もない状態で、いっぱい売れているうちは正確なんですけど、期間が長くなると累計の数字はどんどん実態と離れたものになっていってしまう。うちはPOSで報告する方式ですから、純粋に何枚売れたかというところは操作できない。ただ、それに一定の係数をかけて推計するというやり方なので、お店の入荷が少ないものがたまたま数枚売れただけでそれが「全国的には何百枚も売れた」ということになってしまう。サンプリング調査の弊害ですね。オリコンはこのことを多分よく知っていて、100位以下に落ちたもの関しては累計に加えないんですよね。100位以下まで落ちちゃったものの数字を累計に加えると実態と離れてしまいがちなことをよく知っているんでしょう。まぁこれは当時の話なんで今がどうなっているかは知りませんが。

累計数字はいろいろおもしろい話があって、レコード会社の人と話をすると累計数字がレコード会社のトータルの出荷枚数より大きくなってたなんてことも稀にありました。ただこれはうちの会社がそうだっただけでオリコンでそういうことがあったかどうかはわからないです。


――今回の事件の大きな争点になっている「オリコンによる意図的なチャート操作はあったのか」という点についてどう思いますか。

C氏:操作があったかなかったかでいうと、あったと思いますよ。普段はオリコンとプラネットってそんなにチャートは変わらないんです。でも、たまに明らかに結果が違うものがあった。明らかに違ったのはやはりジャニーズ系ですね。

それ以外で印象的だったのは宇多田ヒカルのファーストアルバム。あれ、ちょうど浜崎あゆみのアルバムとぶつかったんですよね。プラネットのチャートは2週連続宇多田ヒカルが1位だったんですが、オリコンは1週目が宇多田、2週目浜崎というランキングになったんです。あれは不可解でしたね。


――やはり、世間でよくいわれがちなジャニーズ系、エイベックス系が強いということなんでしょうか。

C氏:不可解という意味でいえば、プラネットだと40〜50位くらいのシングルが、オリコンだと20位台になってるみたいなことはよくありましたね。急上昇して20位台に食い込むとチャートの横にある赤丸欄に掲載されるので、ある種あそこが「広告枠」的になっていたんじゃないかと思いますね。ただ、それがレコード会社による買い取りの成果なのか、オリコンとレコード会社による協議の上の「調整」なのかは僕にはわかりませんけど。


●津田コメント
オリコンとは別のチャート関係者による貴重な証言です。標本調査の限界や、ランキング的に変な動きをした商品が具体例として出ているので、オリコンチャートがどのようなものかわかりやすいですね。

●元レコード会社 D氏

※言及したオリコンの時期:約25年前〜現在

――今回のオリコン問題についてお聞きしたいんですけど……

D氏:あんま詳しく答えられることはないよ。具体的な手段とかじゃなくて事実関係ぐらいかな。


――じゃあ、端的にお聞きしますが、レコード会社による買い取りによるチャート操作、もしくはオリコンとレコード会社による恣意的なチャート操作ってあったんでしょうか。

D氏:買い取りがあるのは当然として、レコード会社のプロモーターはオリコンに行って順位を調整するとか普通にしてたよ。ただ、「調整」には限界がある。50位のものを1位にするとかあからさまなことはさすがにできない。だからそれこそ2位のものを1位にするとか、40位のものを20位にするとか、100位圏外のものを100位以内に入れるとかだね。そういうのは昔は日常茶飯事的なものとして行われていたし、今だって多少はあるんじゃないかな。


●津田コメント
これはレコード会社の「買い取り」(オリコンに責任なし)だけでなく、レコード会社のプロモーターがオリコンに行って順位の「調整」を行っている(つまり、オリコンもグルになっている)という、ある意味で衝撃的な発言です。これが、真実であれば「かつては」なのか、「今でもやっているのか」ということになりますが……。

●音楽業界人(レコード会社勤務経験あり)E氏

※言及したオリコンの時期:20年前〜現在

――オリコンのチャートの操作があるかないか、という点で話をすると、よく「昔はあった」ということを言われますが……。

E氏:いわゆるレコード会社の「オリコン対策」でいえば、今でも普通にやってますよ(笑) 典型的なのはコンフィデンスへの広告出向ですね。広告を出せば順位が上がる。ただ、それで上げられる幅はそんなに大きくない。「広告入れたんだからトップ10に入れろ」なんて無茶なのは通用しません。100位圏外のものを100位以内に入れるとか、「右ページ」と言われている100位以内のものを「左ページ」といわれている50位以内に入れる作業とかですね。


――よくいわれる「買い取り」についてはどうですか。

E氏:もちろん「買い取り」はかなりの確率で行われていますよ。今は「チャート対象店」が明らかになってますから、レコード会社としてはとにかくそれらの店でPOSを通すことが至上命題になってる。僕が知ってる一番凄い買取はNというT社所属のバンドかな。1万枚の買い取りをしてました。Rというバンドが売れたのでそれの税金対策ってことだったらしいですが……。このバンド、さらに凄いのは収録曲減らして定価下げれば、同じ買取金額でも倍買い取れるということで買い取ったということですね。

探偵ファイルの記事でユニバーサルの買取表がアップされて話題になりましたが、あのときは「各店舗で○枚購入しろ」という指示書でしたが、現在のオリコンの集計はチェーン店舗のまとめたPOSデータを送信しているだけなので、今は足を使わず、本部一括で買取作業が行われているんじゃないですかね。最近だと、レコード会社の方から小売店に「買い取りやってくれ」なんて依頼もあります。しかも「卸価格を下げさせてくれ」というおまけ付き(笑)


――やはりそれだけ「買い取り」は常態化してるんですね。

E氏:誤解されがちですけど、「買い取り」は、あくまで仕組みを知ってるレコード会社がこれは勝手にやってることなんで、オリコンは関係ないといえば関係ない。ただ、いわゆる「チャート操作」のミーティングはオリコンとレコード会社でよくやってたのは確かですね。僕は参加したことないけど、取締役がしょっちゅう行ってました。あとは、特定の作品を1位にするために事務所やレコード会社が話し合ってる……一種の談合ですね。そういうことは常に行われてますよ。まぁ、それでもCDTVのチャートに比べればオリコンはまともですけどね……。


●津田コメント
今回取材した中で一番過激な内容かもしれませんね。「昔」「今」の問題をすっ飛ばしかねない、いろいろ重要なポイントが含まれていると思います。真偽がどうなのか、という点については読者の方の判断にお任せします。

●元音楽制作会社 F氏

※言及したオリコンの時期:約15年〜5年前

――制作会社だとオリコンとの関わりはどうしても深くなりますよね

F氏:うちの会社には邦楽セクションがありまして、そこでは担当者がオリコンに連絡を取り、上位に入れるよう働きかけることは日常的に行なわれてましたね。


――そういう働きかけって実際どうなんですか。レコード会社や制作会社がたくさんあってそれが全部そういう働きかけをやっていたらあまり意味がないように思いますけど。

F氏:それはそうですね。ただ、すべてではないですけどそれなりの確率であまり売れていない自社の商品がオリコンでは上位に入るということは珍しいことではなかったです。


――なんでそういうことが常態化しているんでしょう。

F氏:要するに制作会社の社員……少なくともうちの会社の社員にとって、オリコンへの働きかけというのは「それも仕事の一環」なんですよ。それをやることで担当しているミュージシャンに対する「これだけやっているんだぞ」「上位にきたからこれからだ、がんばろう!」的な演出ができると。オリコンのチャートというのは元からそういう側面があって操作は可能だということです。ただ、今にして思えば、レコード会社や事務所のアーティスト担当者にとって、売上実績とは別にチャートの上位に入れるよう交渉することは、単行本編集者にとっての各メディアに書評を掲載するよう働きかけるようなものだったのかもしれません。ようするに「自己満足」みたいな部分もあったんでしょうね。

●津田コメント
最後の部分の感覚は出版業界に身を置いている僕的にはとてもよく理解できるものです。この問題で結構重要なポイントで、要するにレコード会社や事務所からオリコンへの働きかけが「常態化」しているのなら、もはやそれは単に広告枠、スペースの奪い合いみたいなもんで、こうなるとチャートが「操作可能」とかいうよりも、むしろオリコンからすれば「この前はあそこのアーティストの順位上げたから、今回はこっちで」みたいな「持ち回り」みたいな感じになっていたかもしれませんね。


| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 08時00分 |

2006年12月22日(金)

烏賀陽さんのサイトに■お詫びと訂正■が

愛・蔵太さんのところで指摘されていた問題ですが、烏賀陽さんのサイトに「お詫びと訂正」がアップロードされました。

■お詫びと訂正■(UGAYA Journal.)

僕自身もこの問題を広めるのに大きく関わっていると思いますので、このことについての状況説明をいたします。

・烏賀陽さんからメールが届いたのは17日(日)の午前6時41分でした。

・その時点で書かれている内容に大きな衝撃を受けました。また、メールだけではにわかに信じられない内容だったので(本来なら烏賀陽さんに電話をかけて確認すれば良かったのですが、早朝で迷惑かもしれないと思い)、事の真偽を尋ねるメールと、事実なら応援する旨を伝えるメールを送信しました。

・メールは午前11時38分に返信が返ってきました。ただし、この時点で僕は睡眠していた(メール送信後、朝方に寝ました)ので起きたのは夕方です。

・僕個人としてはこの時点でいろいろな選択があったと思います。週明けになってオリコン側に電話で尋ねてみて事実関係を確認し、訴えられた記事で書かれている内容の簡単な裏取りをして論点を整理し、冷静なエントリを月曜日以降に上げるという選択もあったでしょう。また、そのときに「どのような内容であれ、チェーンメールを勧めるような知らせ方は良くない。きちんとugaya.comにアップしてそこにリンクして騒いでもらう方がいいでしょう」と烏賀陽さんにアドバイスするという手もあったと思います。

・なぜ、それをしなかったかといえば、今になって思えば僕も烏賀陽さんと同様に動転していた部分があるんだと思います。同じような立場で原稿を書き、取材活動をし、各種のメディアに「コメント」をしている僕にはそれぐらいインパクトの大きい内容だったし、はっきり言って「他人事」ではありませんでした。また、烏賀陽さんが今非常に差し迫った状態に置かれているということも容易に想像できました。

・僕自身がチェーンメール化を勧める情報を転載することにためらいがなかったわけではないですが、僕がアップする以前に武田徹さんの掲示板など、一部ネットにはこの内容が転載され始めていました。すでに情報流通が始まっているのならば、むしろこうした情報は拡散するより、ある程度アクセスが集まる場所で集約された方が良いだろうと思った部分もあります。そこで自分のサイトにエントリとして起こしました。

・ただ、僕はあの時点で「内容の信憑性」に関してはリスクを背負って配信したつもりです。僕は基本的に烏賀陽弘道というジャーナリスト、そして「Jポップとは何か」に代表される彼の仕事を尊敬してますし、まったく根も葉もない妄想を垂れ流す人ではないと確信していたからです。簡単にいえば人間として信用していたし、だからこそオリコンのやったことに対して(内容の是非はこれから検証するとして)僕は彼を支援しようと思います。

・その後、オリコン側からも早い段階でコメントが出て、訴えるのにはオリコンなりの理由があるということもわかりました。実際問題として、サイゾーに掲載されたあの記事の質は僕は非常に低いと思っています。ただ、なぜああいう形になって烏賀陽さんが訴えられたか、ということはきちんと検証して明らかにしようと思います。

・いずれにせよ、僕が情報が不確定な状態で扇情的なエントリを書いて、煽ったのは事実です。結果的に不確定な情報を蔓延させ、この問題に関する情報を錯綜させた責任は僕にも大いにあるでしょう。その点は謝罪いたします。申し訳ありませんでした。

・ただ、企業が「雑誌記事にコメントした人」に対して反証や議論をすることなく、5000万円という高額の訴訟を起こして言論を封じ込めようとする、ということについては今でも大問題だと思っています。特にJ-CASTニュースによるIR担当の「賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい」というコメント、そしてオリコン社長小池恒氏名義で出されたリリース内の「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます」という2つのコメントは、資本力を背景にして自分たちに対する不利益な言動を行う個人に対して、訴状以前にまず行うべき、当事者間による内容の事実確認プロセスを省いて恫喝する意図をもって訴訟を起こしたということを公的に認めたと解釈できるもの(少なくとも僕はそう解釈しました)であり、メディアの場に身を置いている者として承伏できる内容ではありません。ですから、あのエントリで書かれていること、タイトルなどを変更するつもりはありません。これらのコメント、前者の方は本当にこんなコメントを裁判前にIRが出すのか、という疑念もあるのですが、後者、つまり社長名義のコメントとニュアンスを比較したときにほぼ同じことを言っているわけですから、それを鑑みれば「信憑性」はある(取材に対してIRがあのようなコメントをした可能性が高い)と言えるのではないでしょうか。

・こういう形で首をつっこんでしまった以上、僕もこの問題に対してきちんとコミットしていく責任があると思っています。訴えられた事実誤認の2点の検証と、なぜこのような訴訟問題に発展したのか、ということは烏賀陽さんとは離れたところで独自に取材をして、逐次本サイトにアップロードしていこうと思っています。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 02時15分 |

2006年12月19日(火)

オリコンのプレスリリースに対する疑問と今後の争点

一晩経っていろいろな情報が出てきて、いろいろ冷静になってきた。今更いうのもなんだが、前のエントリは煽り過ぎの面もあった(まぁ、撤回しようとかは思わないけど)ので、オリコンが今日出したプレスリリースをライターとして冷静に見てみようと思う。

事実誤認に基づく弊社への名誉毀損について(ORICON STYLE)

まず気になるのはこのポイント。

また、烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります。

ここでいう「長年」というのは要するにAERA2003年2月3日号と、今年のサイゾー4月号の2つの記事の間に長い時間があった、ということを意味しているのだろうか。この2つの間には3年間の時間があるが、烏賀陽さんがそこかしこで、「オリコンのランキングは操作できる」と言いふらしていた、という事実をオリコン側がつかんでいるのだろうか。基本的に俺が知ってる烏賀陽さんは公式サイトこそ持っているものの、足で情報を稼ぐ昔気質のジャーナリストだ。この3年間で俺は何度も烏賀陽さんに会っているし、一緒にトークイベントをやったりもしたが、そうした場で彼が「オリコンランキングの信頼性は低い」などと触れ回っているのを聞いたことがない。というのも、前のエントリにも書いたし、小野島さんも書いてくれたが、「オリコンのランキングは業界関係者の間ではある程度操作が入り込む余地があり、少なくとも以前はその仕組みを突いた売り上げ増加活動がレコード会社によって行われていたようだ」的なことが「共通理解」としてあったので、あえてそんな話をする必要がなかったのだ。むろん、そうした「常識」は他ならぬ複数の音楽業界関係者からもたらされたもので、烏賀陽さんから聞いたことで俺が「オリコンのランキングの信用性は低い」と思ったわけではない。というか、「ある程度」と強調したように、オリコンのランキングそのものがまったくのデタラメなんてことは俺だって思っていないし、そういう情報をもたらしてくれた音楽業界関係者たちも思っていないのだ。あくまでランキングにある程度の「バッファー」があるということを指摘しているだけなのである。話を戻すと、この引用部を読むと、烏賀陽さんは「長年に亘り」ずっとオリコンランキングの信頼性を損ねるような行動言動を取ってきたように見えるが、少なくとも俺が確認している限り(音楽業界にまつわるさまざまな雑誌記事を調べるのも俺の仕事のうちだ)、烏賀陽さんがそうしたことをやっていたようには思えない。それこそせいぜいこのAERAとサイゾーと「Jポップとは何か?」ぐらいじゃないか? そもそも烏賀陽さんは音楽専門のジャーナリストではないし、書籍を中心に活動されていたので、そうなると彼には「長年にわたって言いふらす」行為そのものがなかったのではないか、と思える。むろん言及されるオリコン側にとっては3年間に3つも違うメディアで言及されたことが「明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けた」と思うのかもしれないが、俺の個人的な感覚ではこの程度では烏賀陽さんが「ランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けた」とは思えない。


(1)「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)

 弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。

ここについてはある種の争点になるかな、とも思った。それは「ほとんど」という部分の解釈だ。オリコンは確かに現在ウェブ上でランキングの調査方法を公開している。調査協力店の名前もリストになっており、これだけ見れば「ほとんど明らかにしていない」は烏賀陽さんの「言い過ぎ」かもしれない。もっともこの調査方法も情報は多いように思うが、「推定ランキング」なのにそれを推定するための計算式やアイテムを合算する際の「弊社が定めた基準」、調査店がどのような形でオリコンに協力しているのかが明らかにされていないわけで、オリコンはなぜここを公開しないのだろうかという疑問は残る。チャートに経済的信頼性の意味を求めるある種の人からすれば、この程度のデータ公開では「ほとんど公開していない」も同然かもしれない。俺はそれを判断できる立場にはないので、そのあたりは裁判で争うしかないだろう。

またもう1つのポイントは、烏賀陽さんのコメントで「ほとんど」としている部分は、編集部の創作である可能性もあるということだ。烏賀陽さんはコメント内容を事前にゲラで確認してOKを出しているが、そこには細かいさまざまなニュアンスがそぎ落とされている。そして、この程度の表現であればまさか個人宛の訴訟が起こされる、という「油断」があったのかもしれない。そのことに対して「危機意識がなさすぎる」という人もいるかもしれないが、俺がもし烏賀陽さんの立場だったら細かいニュアンスが取られても「まぁこの程度だったらいいか」とOKを出していたように思う。

内容証明郵便で確認されているように、烏賀陽さんの責任で出版されているコメントではあるが、やはりここに必要以上の責任を負わせてしまうことの怖さを俺は感じる。


(2)「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)

昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。

「オリコンが予約枚数もカウントする」ということについては、実は俺も聞いたことがなかった。探偵ファイルのような「自社買い」に関してはよく聞くことであったのだが。ここはオリコン側がはっきりと「昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません」と断言している以上、本当にそうなのかもしれない。これがもし事実と違うのであれば、検証不足でコメントを出してしまった烏賀陽さんの落ち度だろう。しかし、実際のところこれが事実なのかどうかは(今のところ)オリコン側が「予約はカウントしてないよ」ということしかソースがない状況だ。

検証についていえば、3年前のAERAの記事で、

ただ、「オリコンの数字はある程度操作ができる」という噂はこれまでにもありました。小生も「同社発売の雑誌に広告を買った」「集計先レコード店から買い取りをする」等々と、「オリコン対策費」の存在を示唆するレコード会社員の話を耳にしたことがありますが、検証は不可能でした。

という部分があるが、まさにここが争点になるのかもしれない。検証できなかったことを伝聞レベルの形でメディアに載せてしまうことの問題だろう。しかし、これを封じられてしまうと、実際のところジャーナリストは原稿を書く際にかなりの制約がかかってしまう部分がある。「検証作業をきちんとやっても、明白な証拠があげられなかった。しかし、状況証拠でほぼ確実に、そうした事実はあるだろう」と思うような場合、リスクを背負って伝聞を記事内に入れることもあるからだ。今回はその「リスクを背負って」の部分が最大化してしまった、といえるのかもしれない。

このあたりは俺も複雑な思いがある。烏賀陽さんのやり方もわかるし、オリコンが(もし本当に事実無根なことが書かれているなら)怒る気持ちもわかるからだ。

烏賀陽氏は、弊社からの平成18年6月23日付け内容証明郵便の中での「サイゾーの記事のとおり発言ないし指摘をされているのでしょうか」という問いに対し、平成18年6月30日付けのFAXにて「自分が電話でサイゾー編集者の質問に答え、編集者が発言を文章にまとめました。まとめたコメントはメールで自分に打ち返され、修正・編集を加え、若干の意見交換ののち掲載の形にまとめられました」(同氏からのFAX原文)と回答してきています。このように、烏賀陽氏は、発言は自分が責任をもって行ったものと明言されています。

ここの部分は知らなかった。何の事前の文句もなしにいきなり訴訟なのかと思ったら、一応内容証明で確認はきていたと。しかし、それにしても責任の所在を明確化するための内容証明と見ることもでき、この内容証明郵便に話し合いで解決しようという意思は感じられない。穿ってみれば烏賀陽さん個人をはなからねらい打ちするための内容証明郵便だったとも考えられる。

烏賀陽氏は、同様の発言を他のメディアでも行っており、同氏の発言の社会的影響力は決して小さいものではありません。

同様の発言を他のメディアでも行っており、とするならもう少し「証拠」を出すべきではないだろうか。少なくとも訴状にはアエラとサイゾーしかなかった。

社会的信用とは長年の不断の努力によって成されるものと確信しています。ジャーナリズムの名の下に、基本的な事実確認も行わず、弊社の長年の努力によって蓄積された信用・名誉が傷つけ、損なわれることを看過することはできないことからやむを得ず提訴に及んだ次第です。
 この度の提訴はあくまで烏賀陽氏によって毀損された弊社の名誉を回復するための措置であることをご理解ください。

本当にあの程度の記事でオリコンの社会的信用が傷つけられ、それで5000万円もの損害が出たのだろうか。オリコンの主張は一部理解できるところはあるが、しかしそれにしても5000万円という金額がどのような計算に基づいて算出されたのか、そのあたりがこのプレスリリースでは明らかになっていない。

いずれにせよ、オリコンがプレスリリースを出したことで、このことは公然の事実としてさまざまな場所で議論できるようになった。無視せず迅速にプレスリリースを出したことは評価されるべきだろう。

今後この問題は司法の場に行くのだから、事実誤認、名誉毀損が成立するか、という点について徹底的に議論すべきだ。

あと、サイゾー編集部の問題というのもあるが、まだコメントをもらっていないのでサイゾー編集部の責任については別エントリとして起こそうと思う。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 20時08分 |

2006年12月18日(月)

オリコンが自分たちに都合の悪い記事を書いたジャーナリストを潰すべく高額訴訟を起こす

※このエントリを初めて読まれる方は以下のエントリも併読していただくことを強く推奨します。
http://xtc.bz/index.php?ID=397
http://xtc.bz/index.php?ID=398
http://xtc.bz/index.php?ID=399
http://xtc.bz/index.php?ID=400
http://xtc.bz/index.php?ID=401
http://xtc.bz/index.php?ID=445

年の瀬も差し迫った今日の早朝、驚くべき内容のメールが自分のメールボックスに入っていた。差出人は烏賀陽弘道氏。「Jポップとは何か」(名著!)「Jポップの心象風景」でおなじみのジャーナリストだ。

まずは下記に内容を転載するので読んでもらいたい。

※12月19日早朝、烏賀陽さんのサイトに、ご本人自らのコメントがアップされました。訴状が送られてきた日時の修正と、チェーンメールを呼びかける文面の削除が行われたので、下記転載部分も混乱を避けるため修正します。

■「オリコン」が烏賀陽個人を被告に5000万円の損害賠償訴訟■

意見が違うというだけで、企業が個人に5000万円を求めるなんて!

これは武富士と同じ手口の言論封殺の恫喝訴訟じゃないのか。オリコンは雑誌だってたくさん出しているのだから、烏賀陽の言うことが間違っているのなら「烏賀陽のいうことはウソです。なぜなら××」と反論すればいいのだ。それこそがまっとうな「言論」というものじゃないのか。意見の異なる者を高額訴訟で社会的に抹殺するなんてのは、民事司法の体裁をとった言論妨害じゃないのか。



緊急事態が起きました。どうか、みなさんのお知恵、お力を貸してください。

06年12月13日、月刊誌「サイゾー」編集部に東京地裁から損害賠償訴訟の訴状が送られてきました。原告は、音楽ヒットチャートでは知らない人のない巨大独占企業「オリコン」。その企業が、烏賀陽弘道という一個人に対して、5000万円という巨額の損害賠償金を支払うよう求める民事訴訟を同地裁に起こしたのです。

訴訟の対象になったのは、「サイゾー」06年4月号51ページの「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」という1ページの記事に掲載された烏賀陽のわずか20行ほどのコメントです。

これは、サイゾー編集部からの電話取材に対して、烏賀陽が話した内容を同編集部がまとめて文字化したものです(よって、内容は烏賀陽の原義とはかなり隔たっていますが、そのへんはひとまず置きます)。よって、烏賀陽が能動的に寄稿したものでも、執筆したものでもありません。

その中で、烏賀陽はオリコンのヒットチャートのあり方についていくつかの疑問を提示しています。ここにコメントしたことは、烏賀陽の取材経験でも、音楽業界内の複数のソースから何度も出た話で、特に目新しい話や驚くような話はひとつもありません。

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この訴訟には、いくつか露骨なまでの特徴があります。

(1)記事を掲載した「サイゾー」および発行元「インフォバーン」を訴訟対象にしていないこと。つまり烏賀陽個人だけを狙い撃ちしている。烏賀陽は前述の弁護士費用、訴訟準備などをすべて一人で負担しなければならないことになります。これではフリー記者としての活動を停止し、訴訟対策に専念しなくてはなりません。みなさん、ワタクシは生活費は一体どうやって稼げばよいのでしょう(笑)。

(2)この5000万円という金額は、応訴するために弁護士を雇うだけでも着手金が219万円かかるというおそるべき額です(そんな貯金あるわけないですがな=笑)。裁判で負ければ、烏賀陽はジャーナリストとしての信用を失い、職業的生命を抹殺されてしまうばかりか、賠償金を払えず、社会的生命をも抹殺されかねない恐れがあります。


どこかで聞いた覚えはありませんか? そう。これは、ジャーナリストの批判を封じるための恫喝を目的とした、消費者金融・武富士がかつて行ったのと同じ手法の、恫喝訴訟と言えるでしょう(武富士訴訟ではジャーナリスト側が勝訴し、逆に武富士を訴えて勝っています)。

http://www.kinyobi.co.jp/takefuji

(3)しかも、訴状をどうひっくり返して読んでも、なぜ5000万円の損害を受けたのかという計算の合理的根拠はまったくどこにも書いてありません。ずさん、というより、相手が払えない(そしてビビる)高額であればそれでいいという額をテキトーに選んだ印象を受けます。

(4)烏賀陽は一貫して「レコード会社の宣伝・営業担当者にはオリコンの数字を操作しようとする良からぬ輩もいる=オリコンは被害者である」という立場を取っているし、文意からもそれは明らかなのに、なぜかオリコンはそれを無視し烏賀陽の記事が自社の信用を損なったと主張していること。

(5)裁判の証拠書類として、烏賀陽が「アエラ」03年2月3日号に書いたオリコンの記事が添付されていました。

http://ugaya.com/private/music_jpopcolumn18.html

これはオリコンのデータとPOSデータ(サウンドスキャン社)のデータが乖離しているのはなぜか?という疑問を提示したものです。この記事も当時オリコンの小池恒右社長の憤激を買いました(社長直々にお怒りの電話を頂戴しました)ので、烏賀陽がオリコンの「好ましからざる人物」にリストアップされていたことは間違いありません(過去に取材拒否もあり)。

(6)オリコンは「オリジナル・コンフィデンス」はじめ多数の出版物を出す出版社でもあります。ですから、もし「ウガヤのいうことはウソだ」というのなら、そこの紙面上で思う存分「ウガヤの言っていることはウソです、なぜなら××」と意見を述べればいい。ぼくもまたどこかの媒体で反論します。これこそが正統な「言論」でありませんか。それこそが正当な出版社のすべきことではありませんか。
意見が違うものは高額の恫喝訴訟で黙らせる、というのは民事司法を使った暴力に近い。

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みなさん。ぼくはずぼらなので「運動」とか「闘争」とか「たたかい」とかとは縁遠い人間ですが、この訴訟はいくらなんでもひどすぎる。あまりに露骨な言論妨害だ。言論・表現の自由という基本的人権を蹂躙している(それも音楽という表現世界で商売をしている企業が!)。

もしこの種の恫喝訴訟がまかり通るようになれば、フリー記者には(いや、あるいは社員記者もできなくなるかも)企業批判はまったくできなくなります。

いやそれどころか、雑誌の求めに応じてコメントひとつしても、5000万円なのですよ。コメントすらできないではありませんか。

そんな時代が来てほしいですか?ぼくはいやです。

これが言論の自由へのテロでなくて何でしょう。民主主義の破壊でなくて何でしょう。これは体を張ってでも阻止せねばなりません。

というわけで、みなさん。長々とすみません。お忙しいところ本当に恐縮ですが、どうかお知恵とお力を貸してください。ご希望の方には訴状そのほか資料をお届けします。

どうか無視しないでください。助けてください。ぼくも2,3日前まではこんな話は(けしからんことに)他人事だと思っていたのです。でも、こんな恐ろしいことが、いつ、どこでみなさんの上に厄災として降りかかるかわからない時代になってきたようです。

長文失礼しました。ご静聴に感謝します。

メールには烏賀陽さんが実際に書いた記事が添付されており俺も読ませてもらった。一読したときの正直な感想として「こんな記事(しかもコメント)で、訴えられるのか!?」というものだった。下記に該当部分を引用する。

"初登場第1位"は上げ底か!?
ジャニーズは超VIP待遇!?
事務所とオリコンの蜜月関係

文/編集部



約30年にわたって人気を維持し続けているジャニーズ事務所。だが、その人気は、巧みなメディア操作にあるという。特にオリコンのランキングについては、こんな疑惑がつきまとっている……。

 右ページのヲリキ座談会でも言及されているように、強気な交渉で、テレビ界でのライバル蹴落としに成功してきたジャニーズ事務所。また、雑誌メディアにおいては、アイドル誌は言うに及ばず、「抱かれたい男ランキング」で木村拓哉が毎年1位を獲得する「anan」(マガジンハウス)など女性誌との蜜月関係も有名だ。

 さらにある疑惑が囁かれているのが、オリコンとの関係である。ジャニーズタレントの新曲は、発売されるたびに上位にランキングされるが、実際の売り上げと、かなりの乖離があるのではないかというのが、通説である(オリコン側は、この事実を否定)。

 『Jポップとは何か』(岩波新書)『Jポップの心象風景』(文春新書)などの著者・烏賀陽弘道氏は、「日本には、長くオリコンしかヒットチャートが存在しなかったため、その統計学的な正確さが過大評価されがちです。まず第一に、オリコンは予約枚数もカウントに入れている。予約だけ入れておいて後で解約するカラ予約が入っている可能性が高いのです。『オリコン初登場1位』などという文言は、その後の宣伝に使えます。『オリコンの数字はある程度操作が可能だ』というレコード会社員の話も複数聞いたことがあります。そもそもオリコンは不思議な団体で、『オリコン独自の統計手法だ』と言い張ってその方法をほとんど明らかにしないんですよ。ふつうの統計調査は、その手法を細かく公開して、その信憑性に疑問が挟む余地がないことを強調するのが当たり前です。それをしないで公開されたデータは、統計学的な信用度が低いと自分で言っているようなものです」と語る。

 試しに、06年2月の、オリコンチャートとPOSデータで集計を取っているサウンドスキャンを例に、ジャニーズタレントの週刊ランキングを比較してみた。2月7-13日の週では、タッキー&翼の「VENUS」(週間販売枚数45954枚)は、オリコンシングルチャート2位だが、2月6-12日週のサウンドスキャンでは、15位(週間販売枚数13573枚)とふるわない。そのほか、TOKIO「Mr.Traveling Man」の順位もそれぞれ、オリコン初登場第1位(2月14-20日)、サウンドスキャン第31位(2月13-19日)と、大きく異なる。確かに他の所属事務所のアーティストと比較して順位に差があるようだ。

 ジャニーズ事務所は、メディアの評価を作為的に高めることで、「ジャニーズタレント=売れている」というイメージを周到に用意しているようにみえる。このような刷り込み戦略の成功が、長きにわたって人気を維持してきた秘訣かもしれない。ただ、気になる点といえば、ジャニーズと蜜月関係にあるメディアがオールドメディア化しつつある点だ。同事務所のネット嫌いは周知の事実だし、「『ディスクの売り上げ枚数=人気の指標』という常識は終わりつつあります。音楽を運ぶメディアがディスクからネットに大幅に移行し始めているため、着メロや通信カラオケ、ダウンロード販売といった数を見なければ、本当の意味での人気はわからなくなってきている」(烏賀陽氏)という指摘も耳にする。ジャニーズの凋落がはじまるのか、更なる栄華を築き上げるのか、今後の成り行きに注視していきたい。

とまあこんな感じ。

この恫喝めいた個人(烏賀陽さん)宛の提訴にはいくつかのポイントがある。

●記事内のコメント主に責任はあるのか

烏賀陽さんが挙げたポイント(1)と重なるが、この提訴でまずおかしいのは、なぜオリコン側が「烏賀陽さん個人」を訴訟対象にして、この記事が掲載されている雑誌『サイゾー』を発行する「インフォバーン社」を訴訟対象にしなかったのかということ。この記事の文責は「サイゾー編集部」であり、烏賀陽さんはあくまで編集部からコメントを求められてコメントしただけなのだ。烏賀陽さん自身のコメントにもあるが、たいていの場合識者のコメントが中に挿入される記事というのは、基本的にその記事の書き手が事前にある程度の「ストーリー」を作り、そのストーリーに合致した部分を「識者のコメント」(この場合烏賀陽さんからもらった電話コメント)から抜き出して適宜編集し、コメントとして文中に入れ、その文章に客観的な説得力を持たせるというフォーマットで作られることが多い。つまり、オリコン側が主張するようにこの記事によってオリコンに対して何らかのネガティブなイメージが読者にもたらされるとするならば、真っ先にその対象とすべきなのは記事全体の筆者(この場合はサイゾー編集部)であり、訴訟対象とすべきなのはサイゾーを発行しているインフォバーン社だろう。

いわゆる識者コメントというのはとても難しい。俺自身これまで識者からコメントをもらって記事を書いてきたことも多いし、今では自分がこうしたメディアに対してコメントをするということもやっている。どちらの経験もある立場から1つ言えることは、よほどひどい内容(あるいは過激で政治的な主張)でない限り、コメント主に対して責任を負わせるというのは、あまりにも乱暴な方法でないかということだ。

先ほど、地の文を書く筆者が「ストーリー」を作り、そこにコメントを当てはめていくと書いたが、もちろん全ての記事がそのようなやり方で作られるわけではない。純粋に取材をして、取材をした人の話の内容を踏まえて全体のストーリーを決めることもあるし、事前に取材先に内容を精査してもらって事実関係や発言の趣旨などが変わらないかチェックしてもらうこともある。だが、文字数に制約がないネット媒体と異なり、紙媒体は限られた文字数の中でコメントのエッセンスを圧縮して盛り込まなければならない。端的にいえば、「○○は△△という事情が背景にあり、本当は□□ならば良いんだけど、結果的に××になっている」というコメントをしたときに「○○は△△なので、××だ」と、細かい背景説明などが省かれてしまうことがあるのだ。実際、自分が取材を受けてコメントするときの経験でいえば、1時間しゃべったことが細かいディテールを全部抜き取られて数行のコメントに圧縮されてしまうこともある。そういうとき、内容に間違いはなくてもその記事を読んだ人には俺の言いたいことのせいぜい2〜3割しか伝わらないなぁとも思ってしまう。だが、実際に自分が誰かにコメントを求めて記事を書くときは文字数の制約がある以上、同じようにコメントを圧縮しなければならないわけで、コメントを取って記事にするライター・記者の苦労も十分わかる。だから完全に自分の意図した形のコメントにならなくてもある程度は妥協して、「自分の言いたいことを全部入れなければ、コメントの許可は出さない」というような無茶は言わないようにしている(そのかわり、幸いに俺は自分のメディアを持っているので、意図が十分に伝わらないコメントになった場合は、真意をこのサイトに書くようにしているが)。

また、媒体によってコメントの事前確認をさせないところもある。大体新聞や新聞系の出版社は、社の方針として、ゲラをコメント主に見せないようにしており、そうなるとさらに厄介だ。出版されてみると自分の意図とは正反対の(とまではいかなくても本来の意図とはかなり違った)趣旨のコメントが、あたかも自分が言ったように書かれてしまうことがあるからだ。このあたりも確かに難しい問題なのである。

自分がライターとしていろいろなメーカーを取材したときの経験では、大体メーカーの広報は記事の事前確認を求めてくる。そして、記事のゲラを彼らにFAXすると、彼らにとってちょっとでも都合の悪い部分はたいていの場合すべて削除され、別の表現に直されて返ってくる。報道被害の問題を考慮すれば、記事に重大な事実誤認が含まれるような場合、問題が大きいということはわかる。だから、「事実誤認があるかどうかの確認」であればゲラを出すこと自体は俺は問題ないと思っている。しかし、現実はそうならない。広告記事であればクライアントが表現に口を出してくるのも当然だが、メディアはあくまでメディアとして責任を持って情報を発信しなければならない。新聞系のメディアが事前確認をさせないのは彼らに「表現の自由を守るため」というお題目があり、そしてそこに一定の正当性はある。ただ、現実にメディアの現場を見ると事前確認をさせないことによって起きる弊害も多いし、表現の自由が単なる「建前」になっているという点も否定はしないが。

話が長くなってしまったが、俺が言いたいのは、従来の紙媒体が今までのやり方を続ける以上、記事内の著者に過分な「責任」を負わせるのは酷だ、ということだ。

しかも、今回の記事の場合烏賀陽さんはコメント内で直接オリコンを腐しているわけではない。あくまで彼が取材した(彼が責任を持って調べ、ある程度客観性が担保されるはずの)「事実」をコメントとして言っているに過ぎないからだ。

大体、記事全体の「ストーリー」を読めば、ジャニーズとオリコンが癒着関係にある(かもしれない)ことを読者に想起させ、それを面白おかしく煽ろうとしているのはサイゾー編集部が作った「地の文」である。特にオリコンチャートとサウンドスキャンのデータを比較しているところは、単に集計方法の「誤差」の範囲内で収まるところをあえて面白おかしくかき立てているようにも見える。

オリコンが今どういう方法でランキングを集計しているのかは俺も細かくは知らないが(何しろ調査店に関する質問は「下記(調査協力店一覧)記載内容以上の詳細についてはお答えできませんのでご了承ください」として、具体的な集計方法を公開してないからね)、音楽業界内で言われているのは「出荷枚数と消化率から売り上げを推計している」ということだ。これに対し、プラネットやサウンドスキャンは実売ベースのランキングと言われている。出荷ベースのオリコンと、実売ベースのプラネット・サウンドスキャンでは特に初動枚数に大きな違いが出ると言われており、その意味ではこの記事の

試しに、06年2月の、オリコンチャートとPOSデータで集計を取っているサウンドスキャンを例に、ジャニーズタレントの週刊ランキングを比較してみた。2月7-13日の週では、タッキー&翼の「VENUS」(週間販売枚数45954枚)は、オリコンシングルチャート2位だが、2月6-12日週のサウンドスキャンでは、15位(週間販売枚数13573枚)とふるわない。そのほか、TOKIO「Mr.Traveling Man」の順位もそれぞれ、オリコン初登場第1位(2月14-20日)、サウンドスキャン第31位(2月13-19日)と、大きく異なる。確かに他の所属事務所のアーティストと比較して順位に差があるようだ。

という部分は、説得力に欠けるように思える。この記事に説得力を持たせたいのなら、サイゾー編集部は、同じ時期に発売された「ジャニーズ以外」のアーティストのオリコンとサウンドスキャンの「違い」を検証し、それらのアーティストよりもジャニーズが「優遇」されていることを客観的なデータとして出すべきだった。その点は俺も(烏賀陽さんではなく)サイゾー編集部の落ち度だったと思う。

いずれにせよ、この記事に対してオリコンが「事実無根のイメージ誘導だ」というなら、自分たちがどのようにランキングを集計しているのかクリアにして、その結果いかにこのサイゾーの記事が間違っているかを説明し、烏賀陽さんではなくインフォバーン社に記事内容の訂正と謝罪を求めれば済む話である。それをなぜ烏賀陽さん個人なのか。そして5000万円という途方もない金額の根拠は一体どこにあるのか、オリコンにはきちんと説明する責任がある。

あのJASRACですら、昨年9月に発売された「週刊ダイヤモンド 9/17号」における「〈企業レポート〉日本音楽著作権協会(ジャスラック)/使用料1000億円の巨大利権 音楽を食い物にする呆れた実態」という記事(→PDF、→画像1、→画像2)に対して、すぐさま怒ってその後訴訟を起こしているけど、あくまで被告は資本力のあるダイヤモンド社と記事執筆者であるダイヤモンド社の社員だ。そんな訴訟起こして裁判費用ムダにかけるくらいなら、メディア使ってデータ出して反論して、その分きちんと会員アーティストへの還元額を増やせよと思わなくもないが、少なくともJASRACはきちんとその記事の発行元であるダイヤモンド社と記事の文責がある記者を対象に訴訟をしており、記事内でコメントしているジャズ喫茶の店主や玉木宏樹氏を訴えているわけではない(スワンとの訴訟は別にあるという話はややこしくなるので、ここではとりあえず置いておく)。JASRACだってこういうときの「最低限の仁義」は踏まえているのだ。


●チャート操作について

オリコンが出荷ベースの推計ランキングである以上、それはある程度「操作可能」であるというのは客観的事実として明白だ。一時的にランキングを上げたければ「多く出荷して、集計対象店で大量購入する」ことで、(ある程度は)ランキングを上げることが「システム上」可能だからだ。これはオリコンがある種前時代的なアナログ的なシステムを使っている(少なくとも以前はそうだったわけで、今は違うというのならそれをきちんとオリコンがオープンにすればいい話だ)ことから起きるセキュリティホールのようなもので、オリコンは別に「不正」に関わらなくてもこの抜け道をそのままの形で残しておくだけで良いのである。これが残っていることで探偵ファイルに掲載されたこの記事のような手段を使って、レコード会社は自腹でランキングを上げることができるからだ。もっとも探偵ファイルのこの記事は“あらゆるレコード店を巡回し、その店ごとに同一のCDを大量に買い込む”ことを「違法行為」と断言しており、あたかもレコード会社とオリコンがグルになって消費者を騙しているかのようなイメージ操作を行っている。サイゾーの記事なんぞより、よほどこっちの方が(オリコンやレコード会社にとっては)悪質だし、烏賀陽さん訴えるならそれより先に探偵ファイル(探偵ファイル特捜班)を訴えるべきであろう。

ちなみに俺は上の記事に対して違法行為というなら具体的に法律に違反しているのか書けばいいのにねというエントリを書いたし、チャートが「メディア」としての性質を持っている以上、そこにコンテンツ企業がお金を投じて「プロモーション」を行うこと自体は否定されるべきではない、という考え方だ。もっとも烏賀陽さんが記事でコメントしている通り、今は「ディスクの売り上げ枚数=人気の指標」ではなくなりつつある、とも思うが。

さて、記事中の烏賀陽さんのコメント

『オリコンの数字はある程度操作が可能だ』というレコード会社員の話も複数聞いたことがあります。

についてだが、これは俺も複数のレコード会社員、小売店、その他音楽業界関係者から同じ趣旨の話を聞いたことがある。また、Wikipediaの「オリコン」の項目を見てみると、こんなことも書かれている。

●POSシステム
集計方法は、あらかじめ決められた販売店から売り上げデータを受け取るもの。[1]以前はFAXなどに頼っていたが、販売店にPOSシステムが普及したこともあり、最近ではPOSの売り上げデータによってデイリーチャートを集計している。対象となる販売店は、ここ数年でAmazon.co.jpなどのオンライン店舗も一部は対象には入っているが、それらに含まれない特殊なルートでの販売しかない楽曲にはオリコンチャートにランクインしないものもある。例としては、NEWSのデビューシングル『NEWSニッポン』はセブン-イレブン限定販売だったため、オリコンチャートにランクインしなかった。また、DVDの面では、代表的な例は「水曜どうでしょうDVD全集」があげられる。

特殊ルートでの販売のオリコンランクインを認める以前ではオリコン上位にランクインしていたが、ローソンやオンラインショップのみの販売ルートなので、この方式がとられてから販売されたDVDは週売り上げ1位にもかかわらず、オリコンには掲載されなかった。(「幻の1位」としてあげられることが多い。)

●累計売り上げ枚数
オリコンチャートによる累計売り上げ枚数と称されるものは、チャート圏内(CDの場合、かつては週刊チャート100位以内、2002年12月以降はシングルは週刊チャート200位以内、アルバムは週刊チャート300位以内)の売り上げのみを単純に加算したものであり、圏外に落ちてからの売り上げは含まれていない。(同業他社のプラネット・サウンドスキャン等は一週間に1枚の売り上げでも累計売り上げ枚数に加算される)また、レンタル店の購入分や特殊なルートでの販売はランキングに加算されないため、売り上げの実数よりは少ない数値になる。特に、演歌・アニメソングや、「定番」と称される名盤アルバムなどは、チャート圏外やオリコンの集計対象外の店での売り上げが多いため、実数からはかけ離れた数値になると考えられる。

●赤丸
 オリコンチャートでは、初登場や売り上げが伸びている曲を赤字で表記し、「赤丸急上昇」と呼ぶ。これらはチャート順位の浮き沈みで付けられているのではなく、前週よりも多くの枚数を売り上げを上げた作品に付けられるもので、ごく稀にチャート順位が下がっているにもかかわらずこの現象が起きることがある。

●影響度
音楽チャート業界では、プラネット・サウンドスキャンといった同業他社がいるものの、オリコンチャートの影響力は絶大であり、アメリカのビルボード誌と同様、音楽界での評価指標として真っ先に用いられる。

オリコンチャートでは総売り上げよりも初登場順位ばかりが強調されがちであり、レコード会社もそれを承知で発売1週目により多くの売り上げを稼ごうとする。そのため、基本的にチャートは急激な右肩下がりとなる傾向がある(近年、この傾向は特に如実に現れている)。逆に、チャートの下がり幅が小さいか、1週目の順位が低くても2週目以降のランキングがアップするアーティストは着実にファンを獲得していく傾向があり、その実力は後々になって受け入れられる。また、一部の人気低枠アーティストに対してはスタッフがわざわざ集計対象店に出向き、大量にCDを買い付けるサクラのようなものも実際にはいるとされ、一部で恣意的なチャート操作が行われているとも言われる。

また、音楽業界からの圧力で「KinKi Kids、B'zには必ず1位を取らせなければいけない」とも言われており、事実、この2グループが直接対決を行ったことは今までに一度も無い。

ということだ。Wikipediaなので信頼性がどれだけあるのかという議論はあるだろうが、この際Wikipediaの信頼性とかはどうでもいい話なのである。重要なのはこういう記述に代表されるように、ある程度音楽業界に明るい人間からすれば「オリコンチャートが現実の売り上げと乖離している部分があり、ランキング操作が行われている」ということが「常識」的な空気として作られていることなのだ。このことをオリコンはきちんと自覚した方が良い。自覚した上でオリコンがすべきことは、真っ当に仕事をしている個人のジャーナリストに資本力を背景とした嫌がらせのような訴訟を起こすことではなく、自分たちが持っている「チャート」という強大なメディアの信頼性をいかにオープンなやり方で高めて、音楽業界と音楽リスナーにメディアとしての有効性を提示するか、ではないか。

オリコンが音楽配信に乗り出すというニュースが出たとき、いろいろなところに取材したが、取材を離れたところでのレコード会社員から返ってきた反応は概ね「なんで、公正なチャートを提供する、ある種中立的な立場でなきゃいけないはずのオリコンが、自分たちで配信始めるんだろうね。それって初めから『配信のチャートは操作可能』って言ってるようなものじゃん」というものだった。

別に俺はオリコンに何の恨みがあるわけでもないし、前述した通りチャートが「メディア」である以上、ある程度のアナログ的な「操作」が入り込む余地があることは仕方ないとも思っている(データの客観性や信頼性でいったら、テレビ視聴率なんてどうなるんだって話だよ。それに比べりゃオリコンチャートなんて全然まともだ)。

だけど、言論を金や力で封殺するような今回のオリコンのやり方には強い抵抗を覚える。俺だってこのように実名でいろいろなメディアに好き勝手(本当は好き勝手なんて書けないけどな!)いろいろ書いている以上、無関係じゃない。もしかしたら来週には俺のところにもオリコンから訴状が届くかもしれない。

オリコン自体がこの訴訟にノリノリというわけじゃなく、もしかしたら裏で手を回しているのは記事中でもう1つの揶揄対象になっていたジャニーズ事務所なのかもしれない。しかし、そんな細かいことはどうでもいい。間違いなく言えることは、こういう訴訟がまかりとおるようになったら、音楽業界に「ジャーナリズム」とか「自浄作用」なんてものは今後一切生まれない、ということだ。

俺ら個人のジャーナリストが潰されたあとは、次に来るのはネット規制に決まってる。こういう流れが加速すれば、プロバイダー制限責任法も改悪され、ネットから匿名性は奪われ、著作権侵害は非親告罪化され、著作物のダウンロードは違法化され、権力と金を持っているところに楯突く存在は、こういう形で抹殺されるだろう。

だから、このエントリを読んでくれた人は「なんか音楽業界とか出版業界で揉めてるんだね」とかそういう意識じゃなくて、現実の自分たちの生活に関わってくる問題として捉えて欲しい。もう対岸の火事じゃないんだよ。力を持っている連中が自分たちの都合の悪いことをシステマティックに潰せる仕組みができあがりつつあるんだから。そうなったらもう左とか右とか、関係ないよ。

烏賀陽さんはメールの冒頭で「みなさんのお知恵、お力を貸してください。記事にしてください。ブログに書いてください。ウエブサイトに載せてください。メールを転送してください。言いふらしてください」と書いた。

みんなができることは簡単だ。このことをリアルの社会で話のネタにしたり、ふざけるなと憤ってネット上で「今こんなことが起きているんだよ」と広めてくれるだけでいい。それが大きなうねりになれば、オリコンだって態度を軟化させざるを得なくなる。

ネットなんて現実社会を動かせない? そんなことないよ。輸入盤の問題のときだって法案は通ってしまったけど、あそこであれだけ大きな動きになったから今歯止めが効いている部分だってあるし、電気用品安全法だってあのネットの動きがなかったら、今はもっと現場は混乱していたかもしれない。

今はまだ小さな力でしかないかもしれないけど、ネットが持つ潜在的な力を理解したからこそ、既存のメディアの連中が今焦って、そういう力をスポイルさせようとしている。そういう彼らの焦りは、メディア業界に片足突っ込んでいる俺は本当によくわかる。

あんま大仰な話で煽るのは好きじゃないし、柄でもないけど、この訴訟は本当に許せなかったし、やりきれない思いになった。オリコンは「出版社」という「言論メディア」の性格を持っているんだよ? だったらサイゾーと烏賀陽さんが提起した「言論」に対しては少なくとも最初は「言論」で対抗してくださいよ。それが最低限の「仁義」だろうし、メディアとして当然持たなきゃいけないプライドじゃねーのか?

とにかく俺は俺でこの問題に対していろいろ動きます。烏賀陽さんを支援できる立場にある人、憤りを感じた人はぜひ協力してください。よろしくお願いします。


(追記1)
オリコンチャートの「以前」の集計方法に関しては小野島大さんのブログで、細かい事情が書かれている。こちらもご参照のこと。

あと、今のところ情報が烏賀陽さんからもらった情報しかない状態なので、このエントリはいろいろな予断、推測も含んでいます。今後、訴状を見せてもらうなどして、いろいろ詳細な情報がわかり次第、情報を更新していこうと思います。


(追記2)
烏賀陽さんから訴状をFAXしてもらいました。下記に記事転載部分を省略した11ページ分を転載いたします。

訴状ページ1
訴状ページ2
訴状ページ3
訴状ページ4
訴状ページ5
訴状ページ6
訴状ページ7
訴状ページ8
訴状ページ9
訴状ページ10
訴状ページ11

全部まとめて画像をダウンロードしたい方はこちらの圧縮ファイルをどうぞ。

全部をまとめたPDF版も用意しました。

訴状を読むと確かにサイゾー編集部に届いているものの、訴えているのは烏賀陽さん個人になっていますね。

サイゾー編集部にも問い合わせたところ、この訴状が届いていることが間違いないということがわかりました。追ってサイゾー編集部から正式なコメントをいただくことになっています。

なお、烏賀陽さんはこの訴訟の当事者であるため、自発的な発言が非常に難しい(微妙な)状況に置かれております。この訴訟に関する発言が少ないことに関しては、そのような事情があることをご理解ください。

さらにいえば、烏賀陽さんは第1回期日(来年1月4日)までに答弁書を作成し、裁判所に提出しなければなりません。それをしなければオリコン(原告)の主張が認められてしまうからです。この訴訟に関する(現時点での)彼の発言が少ないことに関しては、そのような事情があることをご理解ください。

烏賀陽さんの年末年始はこの答弁書の作成に追われることになってしまうでしょう(しかも高額の着手金を自腹で弁護士に支払って、です)。ライター・ジャーナリストにとって死ぬほど忙しいこの時期を狙い打ちし、本来はゆっくり落ち着くための年末年始を潰し、精神的に追いつめるようなオリコンのやり口は個人的に到底許すことはできません。本当に憤懣やるかたない思いでいっぱいです。


(追記3)
オリコンのサイトに事実誤認に基づく弊社への名誉毀損についてというプレスリリースが掲載されています。内容については訴状とあわせて各自ご判断ください。

いずれにせよ、この問題、来年初頭には司法の場で「事実誤認」があったかどうかが争われることになるわけです。僕は烏賀陽さんを応援しようと思っています。

(追記4)
上のオリコンが出したプレスリリースを受けて新エントリ起こしました。

(追記5)
オリコン社長小池恒氏が自分の名前で真意を発表。事実誤認あったら提訴を取り下げ? なら、なんでいきなり5000万円の訴訟? またあとでこれは書きます。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 03時05分 |

2006年12月13日(水)

「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」シンポジウムの「仮動画」をアップしました

先日無事行われた「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」第1回公開シンポジウムですが、「早くパネルディスカッションの内容を観たい」という声が多かったので、当日デジカメで撮影していた動画をサイトにアップしました。

シンポジウム概要 - シンポジウムストリーミング中継動画(著作権保護期間の延長問題を考える国民会議 - thinkcopyright.org)

実際にどのようなテンションでパネリストの皆様が発言されたか確認したいという方はアクセスしていただければ。

著作権保護期間は延長すべきか 賛否めぐり議論白熱(ITmedia)
著作権保護期間、死後50年から70年への延長を巡って賛成・反対両派が議論(INTERNET Watch)

これらの記事も動画と併せて読むことで、いろいろなことが見えてくると思います。

| 著作権 | この記事のURI | Posted at 19時36分 |

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