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ナタリーってこうなってたのか 表紙

ナタリーってこうなってたのか

大山卓也 著 / 双葉社

ISBN:978-4575307009 / 版型:18.2×12×1.2cm
ページ数:184ページ / 定価:1080円(税込)

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2006年12月31日(日)

生方則孝氏の住友生命のサウンドロゴ裁判和解報告記事と著作権保護期間延長問題について

朝日新聞で不採用になった原稿。(uBuLOG2)

生方則孝氏といえば、「生福」の一員である。生福は元々DX7などのシンセの音色プログラムを商品として売る、シンセ音色プログラマーのユニットとして有名だったが、実は音楽ユニットとしても一枚アルバムを作っている。打ち込み芸術・プロの作曲性をギャグ・パロディの方向に昇華させた「内容の無い音楽会」は、当然ながら今は廃盤で、ヤフオクなどではプレミアが付いている状況だ。

そんな生方氏の名前を昨年ニュースなどの報道で目にした。住友生命の企業名の「サウンドロゴ」の著作権を巡って同氏と住友生命が裁判までもつれこんだのである。

元々の発端は生方氏のブログ(現在は移転済み)に詳しい。経緯を簡単に説明すれば、生方氏が86年に作った住友生命のサウンドロゴは、8年間オンエアされた。その後10年近いブランクがあり、2004年に再録音されてオンエアされるようになった。

ここで問題になったのが、再録音されたものの著作権だ。この策録音には生方氏は関わっておらず、住友生命はサウンドロゴの作曲者である生方氏に何の断りもなく、再録音(そしてメロディーの改変)を行ったのだ。

生方氏はこのことに対して住友生命に対して抗議したが、あるときから住友生命が態度を豹変。「わずか数秒のサウンドロゴは著作物でないので、再録音で勝手に使用することは問題ない」と通告してきたという。

そしてその後この争いは法廷に場を移すことになるのだが、そのあたりの細かい経緯は生方氏のブログに時系列でアップされている(→Yahoo!ブログ、→さくらのブログ)ので、この問題について深く知りたい人はぜひこちらの読んでもらいたい。メロディーの改変やサウンドロゴの著作物性など、非常に興味深い論点がたくさん入っており、またいかに大企業がクリエイターの創作物に対して軽く見ているかということがよくわかる事例になっている。この裁判自体は今月15日に両者の間で和解が成立した。どのような条件で和解に至ったのか詳細が明らかになっていないが、「住友生命は生方氏の「すみともせいめい」サウンドロゴの制作に関する精神的営為に対し敬意を表明する」ということが和解条項に盛り込まれ、生方氏が「円満解決」とブログで表明していることを考えれば、今後同様のサウンドロゴの著作権紛争が起きた際に一定の参考にすべき事例ができた、と考えて良さそうである。

そして、生方氏は2年近くかかったこの問題に原告として携わった立場から、この事件の総括と現場のクリエイターが不当な条件を企業側から押しつけられている現状をテーマにしたコラムを朝日新聞に寄稿した。が、朝日新聞はこのコラムを「テーマが個別具体的過ぎて普遍性がない」理由でボツにしてしまったそうだ。

生方氏は「音楽やそれに関するものを特別視するこの国の社会の傾向が顕れていると思います」と述べているが、俺自身まったくその通りだと思う。この前の国民会議のシンポジウムのパネルディスカッションにも関連する話題だが、著作権というのは「一部の芸術家に与えられる特殊な権利」ではない。物議を醸している松本零士氏の「そばやうどんは私にも作れる」発言だが、これはある種芸術性の高い著作物を創るクリエイターのプライドや苦労が、このような意識・言葉となって出てしまったものだと俺は思っている。個人的にはまさにこの部分に著作権を語るときの難しさが凝縮されていると思っており、ここを単純に「松本先生は何おかしなこと言ってるんだ」で切り捨てていたのでは、いつまでたっても議論は平行線のままで終わってしまうのではないかと危惧している。

クリエイターが今まで十分守られていないから、保護を厚くしてもらいたいと思うことは、一般の人から見れば「甘え」に見えるかもしれない。が、現状多くの職業クリエイターは「クリエイティブに関われれば幸せ」という、ある種の「クリエイターの人の良さ」だったり、「物を創ることしか考えられない」的な脇の甘さにつけ込まれて、経済的・権利的に十分な見返りを得ていないのも事実である。彼らは「好きでやっていること」とはいえ、それでもやはり長い人生を考えたときに一般のサラリーマンと比べれば多大な「リスク」や「コスト」を支払って創作している(ただし、中には実家が資産家のボンボンで、ある種の道楽としてクリエイティブに携わっている人もいる)。もちろん、どちらが上、どちらが下という話ではない。「社会」全体として考えたときに俺は「どちらも必要」だと考えている。

人によっては「お芸術」なんていらないよという人もいるかもしれないが、少なくとも今は政府が国を挙げて「これからはコンテンツ振興だ」なんて言っている状況になっているわけだから、社会政策・経済政策的にも、コンテンツを産み出すクリエイターが活動しやすい環境をどう整備するか、ということが「社会全体」にとって大きなマターになってきていると言ってもいいだろう。

松本氏も三田氏も、そういう状況の中でクリエイターは今まで辛酸をなめさせられてきたという認識があるのだろう。ようやく「クリエイターの立場」に脚光があたる状況になったきたときに、今までクリエイターから搾取してきた既得権益者は、自分たちの権益を守るための「方便」として、保護期間延長を「クリエイターの立場の保護につながる」というものを持ち出し、彼らにそれを吹き込んだのだ。この問題で本当に「議論」の場に出なければいけないのは、立場はクリエイターで、クリエイターの立場を向上させようと思って保護期間延長をロビーしている松本氏や三田氏ではない。その裏にいるコンテンツの「権利」で商売を行っている「著作権者」たちなのだ。しかし、彼らは絶対にそういう場所で矢面に立つことはせず、お手盛りの文化審議会を通じて静かに、そして巧妙にこうした権利強化を進めようとしている。このあたり小寺信良氏のコラムも併せて読むと状況がよく理解できるだろう。

現場にいる多くのクリエイターが「死んだあとの権利強化なんかより、今俺たちの権利を強化してくれ」と思っているにも関わらず、結果だけ見れば一部の著作者(そしてその遺族)と多くの著作権者しか利益にならず、貧困にあえぐ多くの職業クリエイターの悲惨な状況は変わらない。こういう現実が変わらない限り、いくら政府が「コンテンツ振興」というお題目でさまざまな施策を実行していこうと寒々しい状況は変わらない。

そして、さらにこの問題が難しいのは、末廣恒夫氏が指摘するように「誰もが著作権者であると同時に、利用者である」という構造を抱えているところに加え、「著作物」が音楽・文芸・絵画といった創作性が高いものだけでなく、評論や個人のブログであろうと「均等」に保護されるというところにある。

延長賛成派の主張からは(本当はここに踏み込んで欲しくないだろうが)「創作性の高い著作物」を「そばやうどんレベル」の個人ブログの日記と区別して欲しい、という本音が見え隠れしている。「コンテンツ振興」という問題を社会政策・文化的に捉えたときに、それを峻別するということは1つの方法論・議論としてはアリだと思う。しかし、それならばそう堂々と主張すればいいのだ。そもそも著作権の元になったベルヌ条約だって元々はフランスの文豪ビクトル・ユーゴーが「国の利害や対立から離れて、手を携えて文化遺産を守ろう。文学や美術は国際的にきちんと保護されるべき」と言って制定されたものなんだから。まず間違いなくユーゴーは個人のブログで書かれる日記なんかを「文化遺産として残そう」なんて思ってなかったはずだ。芸術家に特権を与えるべきかどうかという問題は、俺はその国民が「文化」に対してどのような考えを持っているか、誤解を恐れずに言えばどの程度の「民度」があるか、ということなんじゃないかと思っている。しかし、そういう側面が「欧米は70年だから民度が高い」的な思考停止的「誤解」を招いているのも事実だ。そして著作権者たちは巧妙にこの側面を「武器」として使っている。彼らが「欧米標準」を延長の理由としてしつこく主張する裏には「ぶっちゃけ50年の国って発展途上国ばかりだよね。仮にも先進国の日本がそんなレベルでいいの?」的な、日本人の欧米コンプレックスへの刺激が隠されているのだろう。それは圧倒的に賛成派の戦略としては正しい。ただ、当たり前だがこれは差別的感情に裏打ちされているので、彼らは絶対にそういう「本音」は決して口にしない。シンプルに「欧米が70年ですから日本も70年に」とだけ言えば、あとは多くの日本人が「欧米が70年なら日本も70年に」と思ってくれるという計算がそこにはある。松本氏も三田氏も、シンポジウムで「反対派との激しい議論はあまりしたくない」と発言していたが、これは議論をするべき人の態度としては責められるべき面があると思うが、俺がもし賛成派で「このロビー活動を成功させることだけ」を考えるなら、松本氏三田氏のような「情に訴える」やり方を通していたんじゃないかと思う。完璧な理屈で情に勝てるなら、いじめ問題だってもうちょっとましな状況になってるよね。

また、話が複雑というかこんがらがってきてしまったが、とにかくこの問題は、シンポジウムでも明らかになったことだがまだ論点すら出尽くしてない状況なのだ。朝日新聞がこの原稿をボツにしたというのは、一億総クリエイターと言われるこの時代に「生方氏の原稿は一部の『芸術村』のルールをテーマにした特殊な話ですね」と言っているに等しいわけで、あまりの見識のなさに呆れてしまう。少なくともこのコラムは住友生命の裁判の話は話の枕でしかない。生方氏が主張したいのは「個人の権利が企業の論理によって踏みにじられがちな日本の社会構造の問題」だ。他の理由ならともかく「普遍性がない」という理由でボツにするのは、あまりにも想像力が足りない。こういう理屈がまかりとおるなら、著作権の議論はほとんどが普遍性のないものになってしまうのではないか。

まあ、朝日新聞からしたら著作権、著作物の話は「特殊」なものにしておきたいんだろうね。だって間違いなく彼らは著作物においても「エリート」で、「ブログの記事」と自分たちの「新聞記事」が同等に扱われている現状には不満を持っているだろうから。

| 著作権 | この記事のURI | Posted at 03時45分 |

2006年12月29日(金)

著作権保護期間の延長問題を考える国民会議公開シンポジウムの完全版動画を公開しました

第1回公開シンポジウム概要(著作権保護期間の延長問題を考える国民会議 - thinkcopyright.org)

今までデジカメで仮アップしていた動画の完全版を公開しました。WMV形式になってしまったので、Macユーザーの方は見られないかもしれません。近々QuickTime形式も用意して配信する予定なので、それまでお待ちいただければ幸いです。

第1部の基調講演と賛否意見講演に加え、パネルディスカッションのパネリストの表情などがアップで分かるようになっているため、一度見た方でもまた違った感じ方ができるかと思います。この問題をより深く考えたい方はぜひご覧ください。

(追記)
Slowpokeさんの記事によれば、Flip4Macというソフトを使うことでWMVのストリームをマックでも観られるみたいです。QTムービーが上がるまではそれでお願いします。

| 著作権 | この記事のURI | Posted at 23時36分 |

2006年12月26日(火)

オリコン訴訟問題についてより深く考えるための参照テキスト

一応、前回と前々回のエントリで僕の立場、スタンスは表明したつもりです。よほど状況が大きく変化することがない限り、この問題に対して明確な「発言」をすることは当面の間控えようと思ってます。

で、ここからは僕の意見だけでなく、この問題に対して反応してくださったブログの中から個人的に興味深い、拝聴すべきだと思ったところをピックアップしました。特に興味深い意見の部分を抜粋しておりますが、当然前後の文脈によっても感じ方は異なると思われます。30分もあればリンク先の文章を含めても全部読めます。お時間がある方はすべてのブログにアクセスして、ぜひこの問題をより深く考えるきっかけにしていただければと思います。

歌舞伎・プロレス論(丸山茂雄の音楽予報)

今回のオリコンの訴訟は、「いかにオリコンチャートが公正であるか」、「チャートはガチンコだ」を「証明確認したい」ということのようですが、芸能界の本質は、そのような考え方と真反対にあると私は思っています。「オリコンチャートはオリコンが決めている」でどこが悪いのですか? それで「イイジャナイ」です。オリコンに私が期待するのは、こんなことではなくて、業界を「盛り上げる」ことなのです。そしてこれまでオリコンは、その役目を十二分に果たしているのではないですか。ですから、もっと自分のやっていることに自信を持っていただきたいと思うのです。


「オリコン」がジャーナリストの烏賀陽弘道さんに5000万円の損害賠償訴訟を起こす その2(ヒット曲が世界を変える)

論争点について、私は一方的にどちらかが間違っているとは認識していません。それはこれから、当事者間で明らかにすべきことです。

ただ、「調査方法を明らかにしていない」という点に関しては、私も明らかになっていないと思います。「オリコンの音楽ソフトチャートについて」というページに説明がありますが、データの集め方は書いてあっても、そこから「全国の週間売上推定数を算出したものです」というところに関して、説明は全く書いてありません。その「推定」の仕方がもっとも大事であるわけで、ある程度公開してもいいのではないか、と前から思っています。

米国のチャート誌『ビルボード』のサイトでは、どんなデータを使っているかもっと詳しい説明があるのに加え、チャートに関しての疑義を質問できるコーナーが設けてあり、それに対し誠意を持って回答されています。

ここまでしなくても方法はあったのではないか、それが私のどうしてもひっかかるところです。


オリコンから5000万円の損害賠償請求(wabisabiland pop diary)

オリコンのチャートの作成方法を判断する材料を持っているわけではないから、その当否についてぼくはどうこう言うつもりはない。オリコンのランキングが音楽業界にとってもファンにとっても目安のひとつとして機能してきたことを否定するつもりもない。

それに対する疑惑や批判があれば、情報産業に関わる当事者としてオリコンが行なうべきことは、明快な説明や行動を通じて信頼性を高めることであって、個人を攻撃することではない。世間ではこういうのをいじめと言うのではなかったか。

この裁判は、続ければ続けるほど、オリコンと、記事の俎上に上げられたジャニーズ事務所にとってはボディブローのようにきいてきて、致命的な重荷になるだろう。企業の盛衰は世のならいだから、両社が凋落するとすれば、それもまた運命といえばそれまでだが、この事件で音楽の夢がまた損なわれていくだろうと思うと残念でならない。


これはさすがにどうかと思うので(kato takao's weblog)

僕らは僕らが正しいと思うことならきちんと話し合って、お互いに理解しようと努めてきた。ただ闇雲に戦うのではなくて、僕らの考えを伝え、きちんと行動し、なるべくだれにも迷惑がかからないように大きなことをしようとしてきた。

力のある人たちが、自分達に反する人たちを訴訟して押し込めるなんていうことがまかり通ったら、僕らに生きていく場所はなくなる。こんなことは許されてはならないと僕は思う。

 僕はミュージシャンなので、業界についてのことは書かない。
 ミュージシャンなら誰でも持っているような不平や不満などは書かない。
 なぜならそれは、僕らの問題であって、世の中と共有できるような問題ではないからだ。

 だから、この件が事実なのかどうかはわからない。
 この件に関しての個人的な解釈などは書かない。

ただ一点、「企業が個人をこのような理由で訴訟する」という点に関しては断固として反対する。

なぜならこれは他人事ではないし、僕らが生まれながらにして持っていた遊び場が汚されていく気がするからだ。


オリコン問題について(newswave on line (personal edition))

3日前のエントリーにも書いた通り、20年ほど前には、レコード会社等による、チャート調査対象のレコード店への「チャート工作」と称した働きかけはありました。また調査した数字を集計しランキングという形で発表する過程で、なんらかの恣意的な操作があった可能性も、否定はできませんでした。

現在はどうなっているのか、巷間言われるような特定個人あるいは企業との癒着という実態があるのかどうかは、わかりません。ただ、そうした疑いを招きかねない体質あるいはイメージを、オリコンという会社が持っていることは確かで、しかもそれは音楽業界内部では半ば公然のコンセンサスのように語られている。そこを烏賀陽氏やサイゾーは衝いたのです。

つまりオリコンは「痛くもない腹」あるいは「痛い腹」をさぐられてしまった。その報復が、今回の訴訟であるというわけです。


(前回の続き)♪よ〜く考えよぉ〜 ブランド大事だよ〜(アーティスト・ブランディング アナリスト 井上秀二)

「オリコンチャート」についての様々な噂・憶測の類は、何年にも渡って私ごときの耳にも入ってきました。それらを「集約」してメディアで発信する「社会的影響力」のある烏賀陽さんを提訴すること、これが「最良」の「企業防衛」だとお考えでしたら、私は呆れて物が言えません。。。

「問題の根本」を解決する術って考えましたか? それに、

あなた達のほうが遥かに影響力のあるメディアなんですよ!

様々な噂・憶測の類というノイズの問題を何とかしたいのなら、音楽専門ライターではない(しかも音楽関係の書籍を刊行したり雑誌に執筆をはじめて、たかが数年の)烏賀陽さんを「見せしめ」的なターゲットにする行為こそ、長年の不断の努力によって成された社会的信用を失墜させてしまうことに他ならないでしょう。


嬉しかったのでいっぱい更新(境真良(実名登録)の  “とりあえず、前進!”)

5000万円という金額が多いかといえば、おそらく被害額としては高すぎるとは思えない。それを言論封殺というのはやや言い過ぎのように思います。たとえ「言葉」であっても、それくらいの影響は出る。単純に損害賠償をすればこんなものか、或いは訴訟当事者に言わせれば、これでもかなり小さく見積もっているという気持ちでいることでしょう。

ただ、訴訟法的な次元では、この5000万円という金額は厳しい。つまり、裁判着手金が個人ジャーナリストには自弁できないという問題があるわけです。結果的に、裁判に応ずることさえできないという問題が生じます。

問題はここに尽きると考えます。


悩まないで相談してね(la_causette)

今時この案件で着手金を200万円以上も請求する弁護士はそうそういないように思います。

弁護士会の報酬規定に効力があった時代ですら、名誉毀損訴訟で訴額どおりに着手金の算定をする弁護士は少なかったし(名誉毀損訴訟の場合の請求額というのは、原告=被害者の思いが込められているので、予想される慰謝料相場よりは高目に設定されがちです。)、まして今は弁護士会の報酬規定は廃止されています。それに、最近は、訴訟事件でも、タイムチャージで動く弁護士も増えています。


オリコンvs.烏賀陽弘道(Matimulog)

武富士の場合は、故意に、正しく言論封殺を意図して、提訴したのだろうが、名誉毀損訴訟はすべからくそのような性質を共通して持っているものだ。つまり、言論による攻撃に対して、言論による反論ではなく法的手段による、司法権力を通じた反撃を加えるものだから。

加えて、名誉毀損訴訟は通常の訴訟よりも被告に負担が重い。社会的評価の低下を原告が主張立証すれば、被告は公共性・公益目的・真実性・相当性を主張立証しなければならないから。 

さらに、損害額を高く設定されれば、それに応じた弁護士費用がかかることも事実だ。もっともこの点は小倉弁護士なら旧基準通りの着手金を要求しないということなのだが、いずれにしても日常的な金銭感覚からすれば高額な着手金が必要であることは間違いない。

しかしながら、言論により他者に批判を加える活動をする以上、これに対する司法を通じた反撃があり得ることは覚悟しておくべきである。


オリコンvs烏賀陽弘道氏で、あえて烏賀陽弘道氏を批判してみる。あとヒットチャートについて(愛・蔵太の少し調べて書く日記)

まず、烏賀陽さんの行動は、初動で次のような判断ミスがあったとぼくには感じられました。

1・自分に同情的になるであろう知り合いで、今回の事件とは無関係な「ネット上で多大な影響力のある人間」(「音楽配信メモ」の津田大介さん)を通して自分の主張(客観的にその主張を正しいと判断できるような材料に欠ける主張)を流すことにより、「被害者である自分(烏賀陽弘道)」「ひどいことをする相手(オリコン)」という情報を、一方的に複数の人間を通して流そうとした(事実それには成功している)。

2・事情説明をするにあたって、「オリコン」側が今回の件に関して「声明」的なものを出すまで、裏事情その他を示さなかった。

要するに、「情報操作をしようとしていた」というのがぼく自身にとって烏賀陽さんの行動に信用が置けない・疑問を感じる要素があったのでした。


烏賀陽弘道さんに対するオリコンの5000万円は「高額訴訟」なのか(愛・蔵太の少し調べて書く日記)

ネットやマスコミの「表現の自由」的に考えると、「オリコンのチャートは信用できない。俺がいいと思った曲が入ってないからだ」というのは多分オーケーですが、「オリコンのチャートは信用できない。情報操作されているからだ」は、その「情報操作」の具体的な事実が提示・証明されていないと、多分アウトだと思います。

ぼくが見た限りでは、「レコード会社」によるチャートの操作に関しては、「過去にはあった」という(確認が難しい)複数証言があるんですが、「オリコン」によるそのような操作は確認できませんでした。「オリコンは被害者である」という烏賀陽弘道さんの主張はある種正しいようにぼくには思えたので*2、烏賀陽弘道さんは、今後ぼくとしては「自分はオリコンに訴えられた被害者である」という主張を続けるよりは、「オリコンは被害者である」という主張を、もっとはっきり、バカにも分かるように言い続けるほうが、業界的にはいい感じに話が流れそうな気がします。


オリコンが何故か記事の出版元じゃなく記事内のインタビュー受けたライターに5000万の損害賠償を求める訴訟を起こした件について(NC-15)

で、今回の裁判のポイントは以下のポイントが決め手となるだろう。

・烏賀陽氏が、自分の記事・発言を裏付けるソースを法廷の場で提出できるか。

 表現上で、極端にどぎついところはない(つーか、探偵ファイルの方が過激)ので、表現よりも事実誤認のあるなしが決めてとなるかも。

・最高裁で判例が出ちまってるのがきついが、訴訟そのものが正当かどうかの認定

 武富士裁判は、高額訴訟の不当性が明らかになって地裁敗訴になったが、最高裁判例でお墨付き与えてる以上、「どこに文責があるか」と、「出版社じゃなく個人を訴えた正当性」が争点となる。

 文責の観点では、少なくともサイゾーの記事に対しては、訴えたことは不当だろう。


ではご期待にお答えして… (子供騙しの猿仕事日記)

最後に私個人のオリコンチャートに対する考えを披露しておくと、順位を操作される余地は充分にあると思うし、実際ある程度は操作があるのだろう。ただそれを操作しているのはオリコンそのものではなく、レコード会社やアーティストの所属事務所、或いは代理店などの意向だろう。そうした思惑が働く背景にはオリコンチャートが権威として存在する必要があり、こんなことが話題になるうちはそれが認められているということになるのではないか。


オリンコンVS烏賀陽弘道 上場企業のビヘイビアとしてどうよ?(魁!清谷防衛経済研究所 ブログ分室/ウェブリブログ)

一般論として、書き手にだけに対象を絞って訴訟を起こし天文学的な賠償金を要求する。これによって自社に対するネガティブな意見を封殺する。こういう戦法が普遍化すればそれは言論に弾圧につながります。少なくとも上場企業がこのような大人気ない、「違法でなければ何をやってもいい」、あるいは社会常識に照らし合わせてどうかという訴訟を起こすのは如何かと思います。
 
このような戦術は無論違法行為ではありません。戦術的には極めて有効でしょう。ですが戦略的に考えた場合、これは高圧的な会社であるというイメージをまき散らすことになり、かえって企業イメージを落とす可能性もあります。


「オリコン」の烏賀陽氏への提訴について(SiteBites Blog)

先に述べたように、手続き上は問題ない。しかし、そもそも先のオリコンの担当者の発言がオリコンの公式見解だとしたら、 賠償金をかちとる意図がないのに、訴状にその旨を記載するならその時点で民事訴訟法の乱用とみなされるべきではないか 、と思う。

また、本来ならば当事者同志の話合いによって解決するのが最善だという考えが民事の係争の解決ポリシーの根底にあるはずだ 。ならば、損害賠償が目的であったとしても、事実誤認の情報に対して公式な訂正や謝罪を求めるにしても、最初は当事者同志の示談で、それが紛糾したならば、つぎは調停、それでもダメなら提訴という筋で話をすすめるのが本来は妥当だろう。


オリコンが烏賀陽さん個人に対して、5000万円の損害賠償訴訟(深夜のシマネコBlog)

烏賀陽さんとは、読書会で直接お会いしたことがあります。

いかにも音楽が好きそうな雰囲気で、とても紳士的で、決して的を外さない話をしてくれる人だったことを覚えています。こっちがあやふやな質問をしても、質問の意図を読みとり、的を外さないように返答するってのは、結構難しいんですよ。

その時にちょうどこの辺の話もしました。烏賀陽さんは「オリコンとPOSデータの違いはあるけれども、最終的にはおおよそ同じような値に収束する」と言っていました。けっして「オリコンのデータはいいかげんだ」などとは言っていませんでしたよ。


都合の悪い記事を書いたジャーナリストを潰すには…オリコンの訴訟からIT業界を考える(横山哲也の100年Windows)

繰り返すが編集部でも出版社でもなく,電話取材の相手というのが恐ろしい。たとえば,私は過去に日経BP社の取材を何度か受けている。日経BP社は,新聞社系の常として,取材記事の校正は見せてもらえない。どんな記事になるか発売日まで分からないのである。これで訴えられてはかなわない。


協力店の店頭で買われさえすればよいのであって(演歌記者・咆哮堂の仕事日記)

演歌のCD・カセットについては、あまり売上の実態が十分に反映されてはいないのかも。(+_+)

「これだけ売れているのにチャートに反映されない」という声を時々聞きますし…。キャンペーンやコンサートの即売で局地的に売れる枚数が売上の多くを占める演歌は集計されづらい、とどこかで読んだことがあります。

同じCDでありながら、おそらく、ポップスとはまったく違った商品であるかのごとき売られ方・買われ方をするものなのです。


「オリコン」訴訟の続報!(シャ ノワール カフェ 別館あるいは黒猫房主の寄り道)

民訴および名誉毀損の訴えは誰にも対等に保証された権利だから、その訴訟する権利は法理的・形式的にも阻害できないだろう。それから名誉毀損の構成要件は名誉毀損された事実の有無には無関係だ。但し「結果的に誰かの悪口になってしまっていたとしても、「真実を広く世の中に伝える」ことも大切である。だから、230条の2がある。内容が公共の利害に関することである場合は、結果として誰かの評判を落とすことになっても、それを知ることの利益を確保しましょう、ということである」(http://www.i-foe.org/civil_suit/index.htmlより)だそうだから、その辺(公益)を踏まえた「事実誤認」が論争ポイントになるようだ。


メディアの化けの皮を剥ぐタブーを犯すと追い込まれる(novtan別館)

メディアはすでに広告に支配されている。そして自らの力がウェブの力に押され、弱くなっていることを自覚している。事実に対して手心を加えないウェブという力が事実を操作することで広告を得てきたメディアを意図的でないにしても潰そうとしている。しかし、もしそれが真実だとしたら自業自得というほかはない。

ともかく、このような訴訟で個人を追い込もうという戦術は局地的には有効かもしれない。しかし、その過程で事実を暴かれたとき、あるいは自らの手で今までの虚構に止めを刺すことになるかもしれない。この訴訟にオリコンが勝利するようなことがあれば、ものの言えない世界の到来となる。


ネット業界の皆様的「オリコン vs ジャーナリストの見所」(今日のニッパウ)

ほんとに不謹慎な話ですが、この話を読んだ時に反射的に、もしもこの訴訟が烏賀陽氏の勝利に終わると、「CGMってすごい」をあらわす事例のひとつになるなと思ってしまいました。

この訴訟、ブログ界隈でオリコンの強引さが指摘されてはいるものの、


「本人が情熱をもってインフルエンサーに働きかけ」
 ↓
「それを取り上げた人がブログに書き」
 ↓
「そこからソーシャルメディアに伝播し」
 ↓
「ソーシャルメディア経由でニュースサイトが取り上げる」

という、完全なインフルエンサーマーケティングの成功例ロードを歩いています。この先までいった場合、

「追加のストーリーをデジタルメディアが取り上げ続け、」
 ↓
「ついには週刊誌・雑誌に飛び火し」
 ↓
「TVに露出する」

というのが最高系。

既得権益層 vs 市民

ものすごーく不透明な既得権益層の主張

検閲

あなたにも被害がいくのかも!

等々、ネタにしやすい要素満載なので、行く可能性はあると思います。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 04時23分 |

2006年12月25日(月)

オリコン訴訟問題の現状の詳細なまとめ

烏賀陽さんのメールが届いてから1週間。ITmediaなど一部の報道が出たり、その間にオリコンからリリースが出たり、社長名義のコメントが出たり、いろいろありました。新聞報道系のメディアもこの件について既に動いているところもあるそうで、来週には一般報道レベルでもこの問題が知られていくことになるでしょう。(→毎日新聞の記事出ましたね。なぜかmixiニュースの方と微妙に記事内容が違う。こっちは朝刊? 烏賀陽さんのコメントが長い)

この問題についていろいろ調べていく過程で、今感じている僕の感想はこんな感じです。

「とにかく複雑な論点が絡み合っていて、どうにも解きほぐすことが難しい」

なので、今回はこのエントリより、さらに冷静にこの問題にどのような論点が含まれているのか、僕なりに整理して皆さんに提示したいと思います。問題を整理していく過程で、オリコン側、そしてサイゾー側、また烏賀陽さんにも非があることが分かってきたところもあります。だからこそこの問題は複雑で、かつ不幸なことだと思いますし、はっきりいえば、この訴訟をオリコンが行うことで、勝つにしろ負けるにしろ「誰も得をしない」という状況がそこにあると思います。不毛ですね。

ということで、以下論点ごとに問題となっているところを整理していきたいと思います。


●オリコンは何を問題にしているのか?

(1)訴状や社長コメントなどを見る限り、オリコンが問題にしているのは以下の2つ。「予約も含めてカウントして集計しているということは事実無根」「オリコンは集計方法を明らかにしており、記事中のほとんど明らかにしていないというのは事実無根」。これに対して音楽業界人から得た「チャートは操作可能だ」と伝聞を記事内に盛り込むことで、それらがそも事実であるかのような誘導をしている。これがオリコンに対する「誹謗中傷」「名誉毀損」に当たるということ。

→「事実無根」なのか、「チャートの操作は可能なのか」という2点については別項にて検証する


(2)なぜ、誹謗中傷にあたるのか? それは彼らが「音楽ヒットチャート関連事業」を中核とするビジネスモデルの企業であるからだ。そのため、チャートの信頼性を損ねるような言説がメディアに(彼らが「事実無根」とする要因を元にした記事が)掲載されるようなことは、事業全体に重大な損失を与える。

→これはオリコン側の主張が100%正しいと仮定するならその通りだろう。


(3)だから烏賀陽氏個人に対して信頼性を損ねると多大な損失を招くため、当社の年間売上高57億円の1%に満たない数字を基準に算定し、5000万円の損害賠償訴訟を起こした。

→オリコンのチャートの信頼性や操作可能か、ということではなくこの問題の本質はすべてここに凝縮されている。果たして5000万円という金額は妥当なのか、なぜサイゾー編集部ではなく、烏賀陽氏個人宛に訴訟を起こしたのか、そして「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもなく、ただ事実誤認の訂正を求める目的」で訴訟を起こしたのならば、なぜ出版社と著者に対する記事訂正・謝罪文要請、もしくは両者間による十分な事実確認の話し合いというプロセスを踏まずに(このことについては内容証明郵便の項で別途検証する)、5000万円で提訴したのかという問題が残る。お金が目的じゃないのに、具体的に信頼性を損ねると多大な損失を招くため、当社の年間売上高57億円の1%に満たない数字を基準に算定して損害賠償を求める請求をしているとメディアに答えているのは、矛盾があるように思える。「謝罪と訂正」が本当の目的であるなら、5000万円の訴訟という「手段」が妥当であったのかということだ。


●オリコンの調査方法の信頼性はどうなのか

(1)大きな問題として横たわっているのは「今の問題」なのか「昔の問題」なのかということである。

→オリコンの調査方法は以前と現在では変わっている。現在はウェブ上で調査方法と調査対象店を公開している。これによれば、現在は「操作」のきかないPOSデータとネット通販の売上データをもとに作成していることがわかる。だが、POSシステムが普及する前は、以前は調査対象店から電話やFAXで報告される売上データを元に集計していた。どちらにも共通しているのはこれは「標本調査」であるということである。つまり、調査対象店から上がってくる「基礎データ」に、オリコンが独自に作った「計算方法」を掛け合わせることで、最終的な「推計」の「売上枚数」が算出されるということだ。これは予約問題にもつながってくる複雑な論点なので、予約問題の項目を参照のこと。

ここでポイントになるのは調査対象店からオリコンに上がってくる「基礎データ」の信頼性がどうなのか、という部分だ。POS時代になった現在はそこに操作が入り込む余地はない。しかしかつてはFAXや電話による人為的な集計であり、ここに操作が入り込む余地があった。実際、ここの部分で「操作」が行われていたとする音楽業界関係者の発言は複数聞かれる。1つの争点となっている「予約」についても、恐らく問題となるのは「昔の時代」の話なのであろう。音楽業界関係者に取材した結果は別エントリを起こしたので、このエントリを最後まで読んだあと、読んでもらいたい。さらにいえば、基礎データは現在操作する余地はなくなっていても、肝心の「どのような計算式で数字を掛け合わせると、オリコンが発表する数値になるか」ということが明らかになっていないのである。つまり、昔と現在では「操作できる余地」は明らかに少なくなったとはいえ、現在でも「操作できる余地」が残っているということは、実際に彼らがやっているかどうかはともかく事実として踏まえておかねばならないだろう。


(2)オリコンが発表する集計方法は「統計データとして信頼に値するものなのか」という問題

→烏賀陽氏自身が例の記事でコメントを行うときに話した内容とも関連するが、信頼される統計調査というものは何なのかを調べたらこのようなページが見つかった。これによれば、統計調査の区分は「全数調査」(調査の対象となる構成単位をすべて調べる調査)と「標本調査」(母集団の構成単位を一部抜き出して調査し,それによって,母集団全体の様子を推定する調査)に分かれる。オリコン(プラネット、サウンドスキャンも同じ)の調査の場合、日本にあるレコード店全部のデータをまとめているわけではないので、「全数調査」ではない。つまり「標本調査」である。そして、標本抽出の方法には「無作為抽出法」と「有意抽出法」に大別されるが、いわゆる統計調査は無作為抽出により調査されたものをいうとのことだ。オリコンの場合、現在サイトで調査店を公開しているので、どこのお店で買えばそれがランキングに反映されるかどうかということがわかっている。つまり、「有意抽出法」にあたる。本来「統計」として、信頼性の高いデータであるには、方法として「無作為抽出法」でなければならないはずだ。つまり、オリコンからしたら「我々は調査店まで開示しているクリアーな統計データなのだ」と言いたいのだろうが、実際は逆で、統計データとしての信頼性を高めたいのならば、「どこのお店で調査しているのか」という情報は明らかにしてはいけないのだ。

もちろん「有意抽出法」でも、まったく信頼性がないかといえばそれは別の議論になる。音楽業界人に取材した結果の中には、「実売データと照らし合わせても非常に近いデータだ」という意見(A氏)もあり、「有意抽出法」であれば信頼できない、という話でもないだろう。実際、全体に対する標本数が少ない視聴率調査(無作為抽出法でも、当然誤差は出るので、その誤差がどれだけあるのかということが信頼性をはかる基準になる)よりも、よりもPOSに基づく売上実数の数理集積を元にしたオリコンのデータの方が信頼性が高いとする向きもあり、俺も個人的な感覚だけで話をすれば前のエントリに書いた通り、視聴率調査よりもオリコンのデータの方が信頼性は高いと思う。ただし、一般論としては統計調査が信頼を得るためには、オリコンはもう少し細かい集計方法を明らかにしなければならないような気がする。

(追記)
この点に関して下記の指摘メールを頂きました。これも信頼性に関する1つの論点になるところで、具体例を交えた解説は非常に参考になりました。ありがとうございます。ただ、僕はこうした意見も耳にするので、オリコンの調査の信頼性を高めるのにはどっちの方式の方が良いのか、というところの判断は保留させて頂きます。

オリコンが発表する集計方法は「統計データとして信頼に値するものなのか」について

今のフレームだと、「値します」。12/25の記事で、無作為抽出と有意抽出でかかれていることは、教科書通りのことですね。

オリコンが調べたいのは、売上データです。ならば、彼らのやっている方法は十分妥当です。

なぜか。

売上ランキングでは、個票が大事だからです。

無作為抽出しても、回答してくれなくてはなんの意味もありません。

例えば、ビールのランキングを出したいとします。一生懸命地方の酒屋さんをランダムサンプリングしました。でも、セブンイレブン、ダイエーからは回答がありませんでした。そのような調査結果に意味があるでしょうか?

業界全体をみて、売上上位の会社からは絶対回収しなくてはいけない。それがランキング調査なのです。有意抽出でなくてはいけないのです。調査フレームが安定していて、その結果を時系列で見ることにこそランキングの意味合いはあります。

> 実際は逆で、統計データとしての信頼性を高めたいのならば、
> 「どこのお店で調査しているのか」という情報は明らかに
> してはいけないのだ。

というのは真逆です。あのリストで日本全体の売上のどの程度が網羅されているか、そのことこそが重要なのです。オリコンに限らず、世の中で売上ランキングを出している調査の調査方法を調べてみてください。どこでも、必ず明示しているはずです。
例:http://bcnranking.jp/bcn/07-00000142.html

無作為抽出が必要なのは、売上ではなく、「日本全体のレコード店の店長の意見を知りたい」ときです。
(追記終わり)

もっともオリコンがデータを売っているのは一般人ではなく、それを参考に商品開発や番組作り、マーケティングを行う「企業」だ。つまり、オリコンの主なビジネスモデルはBtoBであり、買う企業側が「指標」として有効だと思って買っているのなら、内容の信頼性はある意味で必要以上に問わなくてもいいという議論もあるだろう。この点オリコンのビジネスモデルとも関わってくるので別項「オリコンのビジネスモデルと「訴権の濫用」問題」にてまた触れる。

烏賀陽氏は朝日新聞社在職時代、世論調査に関わったこともあるそうだ。そうした立場で「一般論」として「信頼性の高い統計データとは、標本数の公開や標本誤差の許容範囲、抽出方法など、細かく集計方法が明らかになったものである」とサイゾー編集部の取材に答え、そのときに「オリコンのデータが信頼できないと言っているわけじゃない。だからオリコンのデータは信頼性がないというような書き方はやめてくれ」と編集部員に言ったという。ではなぜあのようなコメント記事になったのか? ここは別項「そもそものサイゾー記事の質と編集部の責任」で検証する。


(3)オリコンは本当に開始時以来集計方法を明示していたのかという問題

事実誤認に基づく弊社への名誉毀損についてというプレスリリースでは「調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)」と書かれている。「調査店を開示することイコール統計の信頼性を高める」わけではないことは、統計の専門家からしたら常識だろうが、問題は平成15年7月以前の調査方法の「明示」がどのような形で行われていたか、ということだ。法人向けデータベースシステム「真大樹」で公開されているとしても、それ以前は業界誌の「ORIGINAL CONFIDENCE」の方で公開されていた、ということなんだろうか。一部の人にしかアクセスできないような情報公開であった場合、「昭和43年のランキング開始時以来明示してきた」という表現は議論が分かれるのではないか。

あと気になるのは調査方法に関して「さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています」という部分。これも内容証明のところの話と関わるが、烏賀陽氏に話を聞いたところ、サイゾー記事が出たあと、烏賀陽氏は「オリコンチャートの問題についてはこれまであまり深く掘って取材したことがなかった。(追記)これは俺の勘違いで、03年2月3日のアエラに合わせて、烏賀陽氏はその前後オリコンに何度か取材をかけているそうだ。FAXでのやり取りも残っていているそうだが、肝心の質問には広報は答えたり、はぐらかしたりという感じだったようだ。前の書き方では烏賀陽氏はオリコンのことを何も知らずにコメントしたようにも見えるので、少なくともオリコン本体にもきちんと取材しようとしたことがある、というように訂正しておく。(追記終わり)(筆者註:これは別項「そもそものサイゾー記事の質と編集部の責任」にも関わる問題なので、そちらも参照されたし)。ならば、まず正面突破でオリコンに取材を申し込み、この問題について明らかにしよう」と思い、「ランキングの集計方法について取材させてください」とオリコン広報部に連絡したそうだ。

オリコン広報部は「ええっ。烏賀陽さんですか……。ちょっとお待ちください。あとで連絡します」とその場では電話を切り、その後、電話連絡ではなくサイゾー編集部に内容証明が送られてきた。ということだ。これが烏賀陽氏がサイトにアップした経緯の「過去に取材拒否もあり」という部分に当たる。この話も俺は烏賀陽氏から聞いた話なので、もしかしかたらオリコン側は「違う」と主張するかもしれない。いずれにせよ、烏賀陽氏とオリコン側両者しかこの点は事実関係は知らない、ということだ。そして、恐らくこのやり取りは裁判における1つの大きな争点になるだろう。なので、これ以上の論評は控えておく。ただ、「他社メディアの取材に応じています」という部分については、疑問の余地があるというところは指摘しておきたい。


(4)サイゾー記事内の「ほとんど」という表現の問題

→日本語の解釈の問題になるが、「ほとんど明らかにしていない」というコメントは「明らかにしている部分もある」ということである。結局のところPOSから出てくる実売データにオリコンがブラックボックスとして持っている「係数」に対して、どれだけの重要性を見るか、というところにかかってくる。そして前述した通りこの「係数」に関してはオリコンは明らかにしていない(ここについては、オリコン社のビジネスモデルに関わる問題でもある。個人的には、企業側が納得ずくで購入しているのならば、このブラックボックスをむやみに明らかにする必要はないと思う)。しかし、この「係数」こそがチャートの信頼性をはかる本質だ、と考える人からみたら、オリコンの集計方法公開は「ほとんど明らかにされていない」と言っても決して過言ではないだろう。「まったく明らかにされていない」ではないのだ。が、もちろん「係数」は重要ではない。「基礎データ」を集めるものを調査店まで明らかに公開しているのだが、「ほとんど公開している」と考える人もいるだろうし、オリコン側としたらそういう認識を持っているのだろう。

まさにこのあたりには「言葉の解釈」という問題と、さらにはチャートの信頼性は何によって担保されるのか、という大きな問題が横たわっている。


(5)オリコンのチャートは「出荷」ベースだったことはあるのか
→これは最初のエントリで俺も考えなしに「音楽業界内で言われているのは『出荷枚数と消化率から売り上げを推計している』ということだ。これに対し、プラネットやサウンドスキャンは実売ベースのランキングと言われている」と書いてしまったが、これはミスリードをもたらすものだったかもしれない。少なくとも現在はPOSデータを使っている以上実売がベースになっている可能性が「高い」わけで、その意味で現在のオリコンの「推計」方法に出荷枚数が含まれているのかどうかに関しては、きちんとした検証が必要だろう。

しかし、まったく無根拠というわけではなく「オリコンのランキングは出荷ベースだから、プラネットやサウンドスキャンでミリオンにいかないものがミリオンになる」的な話は、それこそ数え切れないほど複数の音楽業界関係者から聞いていた話である。今回いろいろ取材して、チャートや小売店の現場に近い人に話を聞くと、いや「出荷数だけでランキング決まるなんてないですよ」的な冷静な反応が返ってくることが多かったので、このへん、オリコンがずっと「ブラックボックス」にしておいたことが、やがて業界関係者の中で「オリコンは出荷ベースのランキングだから操作可能」的な噂(常識)になり、一人歩きしていった部分があるんじゃないか、とも思える。この部分はさらなる検証が必要だろう。


●果たしてオリコンのチャートは「予約枚数」もカウントしたデータに基づくものなのか

(1)訴状とオリコン側から出された2つのプレスリリースを見る限り、もっとも彼らが訴えたいところはここである

→今回の裁判におけるポイントはいくつもあるが、争点となるもっとも重要なポイントは間違いなくここであろう。訴状にしても、プレスリリースにしても、書いてある文章をよく読んでいくと、オリコン側は自分たちにとって「痛くないところ」である「予約」の部分を武器に、烏賀陽氏の言っていることを「事実無根」ということにしたい、という思惑が見えてくる。前述した通り、具体論の話になると実は彼らは困る(オリコンチャートの信頼性というところは、解釈次第でどうとでも争える)ので、あえて具体的なポイントである「予約」というところに的を絞って烏賀陽氏を提訴したのではないか。彼らにとっては「予約を枚数に入れていない」ということは歴然たる事実であり、そこに絶対的な自信があるから「勝訴できる」と踏んで、「これに基づいた事実誤認でそれが結果的にオリコンへの誹謗中傷になっている」という論を組み立てているように思える。


(2)「予約」が含まれるという話の真偽は?

→まず踏まえておかなければならないのは、別項「オリコンの調査方法の信頼性はどうなのか」の(1)で指摘した「今の問題」なのか「過去の問題」なのか、というところで密接に関わってくる。まずは「過去」の話からしよう。過去、POSがなかった時代は調査店からオリコンへの報告は電話かFAXにて行われていた。これはどういうことかというと、ぶっちゃけていえば、ある程度の誤差の範囲内で「レコード店」が数字を水増しできる余地がたくさんあった、ということを意味する。水増しのために「予約」という手法が使われた可能性はゼロではない。古いオリコンの体制を知る業界関係者に話を聞くと、いろいろな情報がかえってきたが、概ね「しっかりやっていた店もあれば、適当にやっていた店もあるし、レコード会社から金銭的な便宜を受けて報告枚数を増やしていた店もある」というものだった。ここでまた、論点が複雑化するのだが、オリコンにとっては、レコード店から上がってる「売上」に予約枚数が含まれていようといまいとどうでも良いことである。それはあくまで名目上レコード店が「自発的」(であったかどうか、という論点はまた別項で触れる)にやったことであるからだ。店や担当者によっても変わっただろうし、おかしな数字が出てきたときに「あそこは予約枚数も含めて報告してるから」的な疑問が出てもおかしくはないだろう。そのあたりは音楽業界人への取材も読んでもらいたい。いろいろな人に話を聞いた結果、このオリコンのカラ予約を使ってランキングを上げる手法について聞くと

「あったよ(過去形であることがポイント)」
「実質的に予約で順位上げることができるよ」
「今はやってないよ」
「そもそもそんな話聞いたことないよ」

という4種類の反応があった。業界関係者の中でも意見が割れるという意味では、これは非常に微妙な問題なのだと思う。烏賀陽氏にも「ソースはどこ?」という話を聞いたが、それはそれで上記で述べたような(完全な証拠とするには)微妙なソースであった。が、これは現状烏賀陽氏が俺に話せる部分も限定的であろうことを考えると、結論を出しにくい。


(3)昔はともかく現在は予約はカウントされないのでは?

→これも手法の問題というか、状況によって変わる。オリコンのチャートが現在は実売ベースになっているというのはよく聞く話であるが、最終的には「推計」で数字を作っていることは事実だ。で、この話になるとオリコンのこの推計方法、ブラックボックスに足を踏み入れざるを得なくなる。プラネットなどはPOSデータから上がってる数字に係数をかける、というある種単純な方法を取っているが、オリコンはそのあたりどうなっているのだろうか。現在のオリコンチャートはプラネットやサウンドスキャンと同じように完全にPOSを通した実売データと消化率(実際に売れた数量を入荷した商品数量で割ったもの)で計算しているのだろうか。

以下仮定の話になるが、この「推計」のやり方が、メーカー出荷枚数をベースにして、サンプル店での消化率を調査し、出荷枚数×消化率を計算する方式でやっているのだとすれば、調査対象店で集中的な買いを入れて、そこでの消化率を上げれば、チャート上昇させることは可能である(これは別項「オリコンの調査方法の信頼性はどうなのか」でも述べた)。そして、このベースに出荷枚数があるとしたら(あくまでこれは仮定の話なので注意)、レコード会社が出荷枚数を増やせば、それに伴って推定実売枚数も増える仕組みになるわけだ。

ここでポイントとなるのは、どうやってレコード会社の出荷枚数を増やすかということを考えたときに、「予約」というものも絡んでくる可能性がある、ということだ。具体的にいえばあるレコード会社がアーティストの新譜を出すときに、調査対象店であるA店が50枚買い取ってくれそうだ、ということがわかっった。そのときに、オーダー締切直前にレコード会社がバイト雇うなり、自分でお店行くなりして10枚その新譜の予約をする。そうするとA店は予約分も考慮して60枚、もしくは現場で話題になっているという効果も見越して70枚や80枚などレコード会社に対してオーダーする数を増やすかもしれない。これは「予約を数に入れる」という単純な図式ではないが、予約を利用して初回出荷数を増やす(=チャートを意図的に上昇させる)ことが可能である、ということを意味する。ここまですべて仮定の話だが、もしこうしたことが現実に行われているのなら「予約枚数もカウントしている」という表現は、事実とは違ったとして「事実無根」とまで言い切るのは厳しいのではないかとも思える。実際にかつては予約枚数もカウントされる(レコード店がそうしていてもオリコン側にそれを防ぐ術がなかった)ような仕組みで運営したいたわけで、それも含めればもっと「無根」と言い切るのはつらいのではないか。ただ、もちろんどちらの場合にしろ予約枚数の問題は「オリコン側に責任がある」とするのは難しいだろう。レコード会社や一部の熱狂的ファンやチャートシステムの穴を逆手に取っておもしろそうな「祭」に参加した人に、その「原因」はあるからだ(むろん、そのことを知りつつ、システム上整っていない部分をオリコン側が意図的に放置している可能性もあり、このことの是非もあるわけだが、これもまた別の議論になるだろう)。

この問題、予約が一番の重要な論点なのであるが、そこを深く掘っていくと、「チャート操作」には「オリコンが関与したもの」と「レコード会社がシステム上の不備を突いて操作したもので、オリコンは関与していないもの」の2種類があるということが大きなポイントであることがわかる。これについては別項「チャート操作は可能なのか」で詳述する。


●チャートは操作可能なのか

(1)なぜオリコンの出す数字はPOS中心のプラネット、サウンドスキャンと異なるケースがあるのか

→これについてはまず先にプラネット、サウンドスキャンのチャートがどれだけ実態を反映したものなのか、という議論もしなければならない。音楽業界人へ取材した際、A氏はプラネット、(特に)サウンドスキャンのチャートの信頼性に対して疑問を呈していた。オリコンは自ら「老舗」と謳うように、数十年かけて作ってきた独自の信頼すべき集計方法を持っている。現場感覚に基づいて実態に即したチャートにするために、POSデータだけでは図れないさまざまな要素をチャートに組み込んでいるわけだろうから、その意味ではプラネット、サウンドスキャンと差異があるのは当然のことである。つまり、「チャートに差異があること」自体はオリコンチャートの信頼性を否定する根拠にはならないのだ。プラネット、サウンドスキャンのチャートが「絶対的指標」でない限り、差異はあって当然である。そして、もっといえばチャートが出荷するレコード会社や、一部の消費者によって「操作可能」なのは、オリコンだけに限らないのである。「タワー渋谷店のインディチャート○位」が欲しくて予約を入れるインディーレーベルのオーナーもいるし、Amazonのランキングを上げたくて午前中に自分の本をまとめ買いしてランキングを上げる著者だっている。世の中で公開されている多くの「チャート」は、誰が主体になるか、どこまで操作できるのか、という問題はあるが、ある程度は「恣意的な操作が可能」なのである。チャートが「メディア」的性格を強く有している以上、それは認められるべき(仕方ない)ものだと理解すべきだ。逆にいえば、踊らされる消費者の側も「チャートなんてそんな程度のものだよ」的に捉えておくことが重要なのだろう。そもそもチャートなんてあんま気にしない、という人の方がほとんどだろうが。


(2)チャートを操作する「主体」の問題

→今まで書いてきたように、一口に「チャート操作」といっても、チャートシステムの「穴」を突いてランキングを上げようとする「操作」(もしかしたらこれは「操作」というより「上昇を意図した行為」と呼んだ方が良いのかもしれない)と、オリコンとレコード会社が結託して意図的に集計結果から導き出された「チャート」を書き換える「操作」の2種類がある。極端なことをいえば、前者の操作はあくまでレコード会社や消費者が「勝手にやったこと」であって、そうした行為があったところでオリコンに責任はない。オリコンが今回の訴訟で強気の姿勢を取っているのは、前者については自分たちが責任に問われることをないことを知っているからだろう。

そして、予約問題を中心にして烏賀陽氏を責めているのも、同じ理由であると思われる。オリコンかすれば現在はPOSデータを基礎データにしているのだから、レコード店から上がってくる数字は疑いようがない。そして予約についてもPOSは「通った(売り上げた)もの」しか記録されないから、カラ予約はすべて排除される。そして、POS以前のFAX集計のときにカラ予約で数字が水増しされてオリコンに報告されていたとしても、それは「かつてのことで現在のことではない」ということに加え、「レコード店が勝手にやったこと」であるから、オリコン側はそもそも「関知しないことです」と言うことができる。


(3)烏賀陽氏の「コメント」の責任は?

→オリコンがそもそも「関知しないことです」と、ある種の強弁が行えるここの部分は烏賀陽氏の「コメント」と大きく結びついている。俺もいろいろと取材をしていく中で、この予約問題だけが争点になるなら、烏賀陽氏はかなり厳しい立場に追い込まれたんじゃないかと思っている。どう転んでもオリコン側は「予約が数に含まれる」ということを「事実無根」と言える状況が整っているからだ。これを覆すには、烏賀陽氏が「オリコンが予約も数に入れている」ということの、確実な「証拠」を出さなければならないだろう。

ただし、実際に裁判となったときには、「予約枚数がカウントに含まれるのかどうか」という事実だけが争点になるわけではない。そもそも烏賀陽氏はこの点について「現在事実関係」を明らかにすべく、オリコン側に取材を申し込んで断られたという経緯があるからだ(もちろん、烏賀陽氏が僕に対して言ってくれたこのことが真実であるならば、ではあるが)。著者が事実を確認しようと正当な手続きを踏んでいるのにもかかわらずそれを拒否し、著者の記事(今回の場合、文責は編集部にある「コメント者」でしかないわけだが)を「事実無根」と主張することが、裁判においてどのような影響をもたらすのかは、1つの大きなポイントとなる可能性が高い。そして、このあたりのことはオリコン側、烏賀陽氏側双方の「裁判戦略」に大きく関わってくるだろう。


●そもそものサイゾー記事の質と編集部の責任

※この項に書かれることは基本的に烏賀陽氏から聞いた内容を元に起こしてます。聞いた内容が「事実」と異なっていた場合、まったく展開が異なることがあることをあらかじめご留意いただければ幸いです。また、僕の現在の「気分」としては、「烏賀陽氏にも非があるポイントはあるが、それでもオリコンが高額訴訟に踏み切ったことに対しては非常に強い抵抗感を持っている」という状況です。いろいろなものを飲み込んだ上で、烏賀陽氏を基本的には支援するつもりなので、その点読者の方は差し引いて考えていただければ幸いです。


(1)そもそものサイゾーの記事の「質」はどうだったのか?

最初のエントリで引用した、サイゾー2006年4月号の記事をバックナンバーのページで見ると、このような内容が書かれている。ワイド特集〈ジャニーズタレント〉「ジャニヲタかく語りき、ジャニタレの真の姿とは?」という、ワイド特集の中の1つの記事だ。引用した部分を見てもらえればわかると思うが、オリコンのチャートでジャニーズが1位になることが多いことをネタに、ジャニーズを揶揄しよう、という執筆者の意図が見える。ただ、それこそ「事実無根」で揶揄するわけにはいかないから、音楽業界に詳しいジャーナリストである烏賀陽氏が記事に箔を付ける意味で選ばれたのであろう。変な話、ここで電話取材の対象は烏賀陽氏ではなく、津田大介でも良かったはずだ。識者のコメントと後述するずさんな「チャートのおかしさの指摘」で適当に構成された、まぁ言葉は悪くなってしまうが、「ページの埋め草」的な程度の低い記事である。「チャート操作している」的な話にまとめたいのなら、確たる証拠もなくこういう記事を書くべきではなかった。オリコンが見たときに腹を立てて、何らかの抗議をしてくる可能性だって十分予見できたはずだ。そして、この問題の本質だが、記事の文責はサイゾー編集部の編集部員であった。


(2)チャート操作を指摘するときの集計週がずれていた?

MUSIC ROOMというブログのエントリがわかりやすいが、サイゾーの記事の

試しに、06年2月の、オリコンチャートとPOSデータで集計を取っているサウンドスキャンを例に、ジャニーズタレントの週刊ランキングを比較してみた。2月7-13日の週では、タッキー&翼の「VENUS」(週間販売枚数45954枚)は、オリコンシングルチャート2位だが、2月6-12日週のサウンドスキャンでは、15位(週間販売枚数13573枚)とふるわない。そのほか、TOKIO「Mr.Traveling Man」の順位もそれぞれ、オリコン初登場第1位(2月14-20日)、サウンドスキャン第31位(2月13-19日)と、大きく異なる。確かに他の所属事務所のアーティストと比較して順位に差があるようだ。

という部分は、どうやら比較した週が単に1週間ずれているため、オリコンサウンドスキャンで大きな差が出ているのでは、という指摘が出ている。週がずれているというのもお粗末だが、それ以上にこのブログの著者ダイス氏や、業界関係者A氏が指摘しているように、サウンドスキャンとオリコンのジャニーズ関連の順位の差は、チャートの信頼性云々の話よりも、同一タイトルで同一商品とみなせるものに関しては、メディアの違いを問わず「すべて」合算して集計を行っているオリコンと、品番別にランキングを集計するサウンドスキャンの集計方法の違いによるものが大きいのだ。複数商品を同時購入するのがデフォルトになってるジャニーズファンの行動(最近のジャニーズのシングルは初回限定盤はCD+DVDで、CDには2曲くらいにして、通常盤はCDのみだが初回限定版には含まれないトラックが含まれるので、ファンはどちらも買わなければならない)によるものが大きい。実際サウンドスキャンのこの週のランキングをチェックしてみると、ソメイヨシノ/ ENDLICHERI☆ENDLICHERI(堂本剛)の初回限定盤が1位、通常盤が6位に入っていることがわかる。初回限定盤は5万7733枚で、通常盤が3万4332枚であるから、恐らく初回盤も潤沢に供給するであろうジャニーズの場合、通常盤の購入者はほとんどが初回限定盤との同時購入組であることが予想される。単純な数字だけで見れば約6割、少なく見積もっても3〜5割のファンが同時購入しているのだろう。本来ならば、オリコンの「ジャニーズがらみのチャートのおかしさ」を指摘するなら、オリコンのランキングにはそういう特性があることを踏まえた上で、同じ時期に発売された「ジャニーズ以外」のアーティストのオリコンとサウンドスキャンの「違い」を検証し、それらのアーティストよりもジャニーズが「優遇」されていることを客観的なデータとして出すべきだった。またはオリコン内部から「ブラックボックス」である推計方法を入手してきて、それを白日の下に晒し、その上でおかしいことを明白な証拠として出さなければ「ジャーナリズム」としてはNGだっただろう。そして、これらの記事の質の低さについて烏賀陽氏は責任はない。単に巻き込まれただけだ。本来ならば、この記事の質が低いことが原因で訴訟が起きるのならば、その原因は他ならぬサイゾー編集部(もしくは書いた記者)が取るというのが「筋」であろう。


(3)烏賀陽氏のコメント編集の問題

→実際の記事を読むと、烏賀陽氏が「わずか20行」とコメントしているように、内容的にそれほど際どいことをコメントしているようには思えない。オリコンからしたら、予約のところがカチンと来たのだろうが、それであれば編集部に事実誤認の訂正と謝罪を求めれば済む話である。そこで済めば、よくある雑誌記事に対するクレーム→謝罪で終わったはずだ。

そしてさらに重要なことは(烏賀陽氏の話を信じる限り)。サイゾーから電話取材でコメントを求められたとき、烏賀陽氏は「一般論」として統計データの話をして、「オリコンのチャートのことを言っているわけじゃない」ということを編集部の記者に念押ししたそうだ。ところがゲラが上がってくるとこのような内容になってきており、烏賀陽氏も編集部員に文句を言ったそうだが「時間的に校了が迫っていて大幅な修正は難しい」とか「文字数が少ない関係で微妙なニュアンスを出すのも限りがある」とかそういう理由で「これでいかせてくれ」と要望され、烏賀陽氏もしぶしぶそれを了承したという経緯があるそうだ。

個人的にはここがまさにポイントで(さっきからポイントいっぱいあって読みにくいよね。ごめんね!)、なんで烏賀陽氏はOKを出してしまったんだろうか、脇が甘いと責められても仕方ないよなと思う反面、元新聞記者で最初のエントリで書いた通り、限られた字数でコメントを入れて処理しなきゃいけない記者の苦労もわかる烏賀陽氏の「人の良さ」が、最悪の形でここに出てしまったのだなぁと嘆息してしまうのだ。人によっては、こういう脇の甘さ、人の良さを評して「ジャーナリストとしては致命的」と言うのかもしれないが、俺は人間的には烏賀陽氏みたいな人が好きだし、信頼できる。ただ、現状そういう烏賀陽氏の「迂闊さ」が、オリコンから訴訟される原因になっており、さらにはネットメディアでこういう問題を巻き込んでいくときに悪い方向に出ている面も否めない。愛・蔵太さんが感じているような危惧はまさにそのようなものの典型だろう。

しかし、これは断言するが、烏賀陽氏は「自分に都合に良い情報を小出しにしてネット世論を操作してやろう」なんて意図はまったくない。むしろそういう部分があるとしたら俺の方だろう(笑……えない)。冗談はともかく、このあたりは烏賀陽氏が迂闊だったとはいえ、基本、サイゾー編集部員が質の低い記事を適当なコメントででっちあげたことに問題があるのだ。

実は8月、俺のところにもサイゾー編集部から電話取材があって、コメントをした。内容は「CM音楽と音楽業界でどんな癒着があって、音楽出版社はどんなひどいことをしているのか」ということだった。俺は話を聞いたとき、「これはかなりクリティカルな内容の取材になる」と判断し、電話口のコメントはかなり注意して話した。編集部の人は恐らく「テレビ局系の音楽出版社はアーティストから搾取しまくりでひどいですよはっはっは」的なゴシップコメントを期待していたのだろうが、最初から最後まで一般論に終始するコメントにしたので(良くも悪くも、一部を除けば音楽出版社の仕事は地味だ。そして、物事は全部そうだが、彼らが今までやってきたことには功もあれば罪もある。一部の典型的なネガティブな事例だけを取り出して音楽出版社全部、CMタイアップなどを否定するような文脈で使われるのは勘弁という感じだった)、最終的に上がってきたゲラの俺のコメントは非常にマイルドなものであった。

しかし、あのとき調子に乗って自分の近いところでひどい音楽出版社の事例をたまたま聞くことができて、それを得意げにサイゾーに話していたら、それこそ俺のところにも訴状が来ていたのかもしれない。

終わった話だから仕方ないが、サイゾー編集部はどうしてもジャニーズとオリコンはできていて、チャート操作しているという文脈で記事にしたかったのなら、烏賀陽氏の名前は出さずに「音楽業界関係者はこう語る」と匿名で記事にしておけば良かったのだ。そうしたら、オリコン側からしたらたかが「サイゾーの与太記事」、で済んだかも知れない。

最終的にGOを出したのは烏賀陽氏ではあるが、烏賀陽氏だけにその責任を100%負わせるのはあまりにも酷だ。少なくともサイゾー編集部もこの記事に対して50%は責任を負わねばなるまい。


(4)烏賀陽氏の社会的影響力は?

→これは非常に失礼な話になるが、オリコン側が再三再四主張するこの記事による「風評被害」というのはどれだけのものなのかということがある。サイゾーなんてせいぜいが実売数万部の雑誌だし、「Jポップとは何か」にしたって10万部を超えるベストセラーになったなんて話は聞かない。せいぜい2万部くらいだろう。あとは烏賀陽氏個人の「知名度」がどれだけあるか、ということだ。俺は頻繁にテレビなど、露出度の高いメディアに出ているわけじゃない烏賀陽氏の知名度は、現時点ではあまりない(失礼!)と思う。そして、烏賀陽氏本人が発言しているように彼がオリコンについて書いた記事は「アエラ2003年2月3日号」だけである。コメントしたサイゾーと含めるとメディアでこのことが出たのは2つだけだ(「Jポップとは何か」にはオリコンの話は出てこないそうだ)。以前のエントリにも書いたが、オリコンが「烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります」というのなら、きちんとそのことをオリコン側が「証拠」として明らかにした方がいいだろう。ここも裁判における1つの争点になるはずだ。


(5)5000万円の妥当性

→これはあちこちで言われているが、本当にこの金額は妥当なのかという疑問は常に残る。ただ、オリコンは上場企業であり、企業の評判が落ちて株価が落ちれば、数億円では済まないレベルの「被害」が起きる。そして、オリコンの中核事業が自らの「チャート」にあるのならば、それを否定するような言論に対して断固闘うということは、企業防衛の観点から見れば正しい。しかし、それを踏まえたとしても、なぜコメントした烏賀陽氏ねらい打ちだったのか、なぜ5000万円の被害が出たと言えるのか、なぜインフォバーン社に対して訂正要求を出さずに直接烏賀陽氏ねらい打ちで内容証明を出して、その後話し合う態度を見せずに訴訟に踏み切ったのか。さまざまな疑問は残されたままだ。前項の「烏賀陽氏個人の影響力がどれくらいあったのか」という問題も絡み、やはり5000万円という金額の妥当性は多くの議論の余地を残しているように思う。具体的に「被害を受けた」というなら、サイゾーのあの記事を見て「それまで音楽番組のチャート表示にオリコンを使っていたテレビ番組がプラネットに変わりました」とか、「スポーツ新聞に掲載されるランキングがオリコンからプラネットになってしまいました」とか、そういう具体的な「被害」を出すべきなんじゃないか。「あの記事以降それが何十件もあるんです。チャートの貸し出し費用は毎月○○万円でそれが○件あったから5000万円の被害であります」という言い方をすれば、それは誰でもわかる経済的な「被害」であろう。

でも多分違うよね? あのサイゾーの記事を見て現在のオリコンのデータ使わせてもらっている顧客が「オリコンのデータは信頼性ないからやめよう」なんて思わないもん。みんな納得ずくでオリコンのデータ使ってるでしょ。つまりは、サイゾーのあの記事は「無視して問題ないレベル」の記事だったってことだ。要するに、いろいろな意味で5000万円の根拠が希薄なのだ。


●内容証明問題

(1)内容証明はいつ、何がきっかけで来たのか

→6月にサイゾー編集部に届いた内容証明郵便は俺も見せてもらった。スキャンまではしているが、裁判とのからみもあるのでアップするのは控えることにする。ただ、内容について簡単に書いておくと、「そもそもあの記事を作成するにあたり、烏賀陽氏は本当にあの趣旨の発言、指摘をしたのかということ。そして本当に発言しているなら「オリコンの数字が操作可能で統計学的な信用度が低い」とする根拠をお答えください、という質問と回答を求めるものだった。

これに対して烏賀陽氏は「ジャニーズとオリコンの関係のことはよくわからない」と答えたところ、編集部から「一般論で構わない」ということを言われ、コメントしたそうだ。そしてまとめたコメント部分はメールで烏賀陽氏に打ち返され、修正・編集を加え、若干の意見交換ののち、掲載の形にまとめられたという趣旨の返信をしていた。

ちなみにこれも、この内容証明郵便が来た時点でサイゾー編集部と烏賀陽氏の間で、一種の揉め事になったそうだ(烏賀陽氏からすれば、言いたいことの趣旨をねじまげられてコメント掲載され、それが原因で内容証明が送られてきたのだから当然だろう。ただ、もちろんそれは本人が掲載時にきちんと名前を出して掲載することを断っていれば防げた問題ではあるが)。このあたりはサイゾー編集部にも言い分はあるだろうから、烏賀陽氏からそのように聞いているという事実を記しておくだけにしたい。

そして、先ほどの「取材拒否」の話と関連するが、この内容証明郵便は、烏賀陽氏がサイゾーの記事をきっかけに、「そういえばオリコンのチャートのことをきちんと調べなくてはいけないな」と思って、オリコンに取材を申し込んだ際に、取材の応諾の代わりにサイゾー編集部に届いたものである。取材に対して内容証明で答えた時点で、烏賀陽氏はオリコンにとって「危険人物」と認定されていたのかもしれないが、このあたりのやり取りはいささか不条理なものを感じざるを得ない。烏賀陽氏に文句があるなら堂々と取材を受けて「お前のあの記事はこことここが間違っている。謝罪しろ」と言えばいいじゃん、と俺なんかは思うのだが、なぜオリコンは内容証明を出すことにこだわったのだろうか。それとも烏賀陽氏がまだ語っていないオリコンとのいざこざがあるのだろうか。

内容証明だが、烏賀陽氏からオリコンに対して返信した内容の末尾に「今回の件に関しまして、更なるご質問等ございましたら、サイゾ一編集部ならびに鳥賀陽弘道宛にご指摘いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます」という文があった。少なくとも烏賀陽氏には(取材を申し込んだぐらいなわけだから当たり前だが)オリコン側と「対話」しようという意思はあったということだ。


(2)内容証明で本人のコメントであることを認めたため、個人対象もやむなし?

→内容証明に対する返答を読む限り、烏賀陽氏は(微妙な表現ではあるが)、サイゾー編集部との連帯責任的な部分を臭わせつつ、自分の発言であることを認めている。オリコンの提訴理由が「烏賀陽はオリコンのチャートの信頼性を損ねる記事や言動を繰り返していた」ところにあるのなら、内容証明でそれを確認して訴訟に踏み切るというプロセスはまったくもって正しい、というか想定内の出来事といってもいいだろう。

しかし、前述したように烏賀陽氏が本当に「繰り返していたのか」という問題もあるし、サイゾーの記事がオリコンへもたらすネガティブな印象は、烏賀陽氏のコメントよりもサイゾー編集部員が作ったあの「地の文」にあるということを忘れてはならない。ここまで烏賀陽氏個人をねらい打ちするのはなぜか? 今回の記事でサイゾー編集部のことは一切眼中になし、というのが不可解なのである。


(3)本当に責任を取るべき人間は誰か

→さて、問題のサイゾー編集部で記事を書いた人間はどうしているか。これは凄いオチがあって、あの記事を作成後インフォバーン社から退職してしまったそうなのである。おいおいおいおい、って感じなのだが、そうなったときに、この記事の責任は誰が取るべきなのか。もっとも彼が在職中であったとしても、これは編集部・会社として責任を取らねばならない話だろうから、このことは論点としては重要な話ではないのかもしれないが、腰砕けするような「事実」ではあった。


●オリコンのビジネスモデルと「訴権の濫用」問題

(1)オリコンのビジネスモデルの根幹はBtoB

→彼らが売っているものはチャート情報だ。雑誌ビジネスもやってはいるが、採算ベースではないと聞く。それに対する信頼性が損なわれれば、会社としての存亡に関わるという危機感は、当たり前のものとして理解できる。そして、こういう訴訟を起こすことにより、ブログや一般消費者から白眼視されることは、恐らくある程度は予想していたはずだ。しかしそれでもこの訴訟に踏み切った背景には、BtoCビジネスよりもBtoBビジネスが根幹であるという彼らのビジネスモデルがあるような気がする。すごく極端な話をすれば、彼らは消費者からどう思われようが、メインのビジネスの部分ではあまり関係ないのだ。


(2)なぜサイゾーに対して謝罪記事を求めることをしなかったのか

→内容証明から訴訟、という一連の流れを見る限り(そしてその間何も接触がなかったという前提で話をする限り)、なぜオリコンが事実誤認に基づく謝罪要求をしなかったのか。それが非常に気になる。このことについて納得がいく説明がオリコン側から出てこないと、烏賀陽氏個人が目の上のたんこぶになっていたから訴訟を起こしたと思われても仕方がないだろう。


(3)オリコンの目的は何か

→「烏賀陽氏個人に対する社会的制裁という幼稚な理由」でなければ一体何か。考えられるのは、自分たちがBtoBで売っているデータは「老舗で、正確で、完璧で非の打ち所がない信頼性の高いものである」ということを、対外企業に向けてアピールするということだ。BtoBビジネスが主体で、さらには上場企業である。上場企業が自分たちの「メシの種」を守るために、外部からの脅威に対して訴訟で応えた、というのが単純な事実かもしれないが、それにしても今回の件のさまざまなプロセスを見る限り、個人に対する訴訟としては「大げさ」な面は否めない。あまつさえオリコンは公式に「賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい」「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます」などと発言しているのである。これでは「訴権の濫用」だと言われても仕方のない面があるだろう。


(4)この訴訟でオリコンにメリットはあるのか?

→個人的な考えでいえば、これが訴訟までいってしまうことでオリコン側にとっては1つもメリットはないと思う。勝ったとしても、負けたとしても、デメリットの方がはるかに大きいはずだ。

というのも、この裁判、展開次第では彼らのチャートが「信頼性が高いものである」ということを証明するために、推定方法というブラックボックスの実態について、明らかにしなければならなくなる可能性があるからだ。ここを深く突っ込まれることはオリコンとしては本意ではないだろう。何しろ推計方法は「企業秘密」に属するようなものだからだ。

そして、「チャートの信頼性」が大きな議論になったとき、烏賀陽氏に協力する業界関係者もゼロではないのではないか。「証人」として裁判まで出る人がいるかどうかはわからないが、それ以外のさまざまな部分で、オリコンのチャートの信頼性についてしゃべれるという人はいるはずだ。オリコン側からすれば「そんなやつは業界に一人もいない」と踏んでいるかもしれないが、このあたりはどうなるかわからないところだ。予約をカウントするか否かの問題だけで済めばいいが、チャートの信頼性そのものに話が行きすぎると、オリコンとしてはかなり面倒くさい話になってくるような気がする。

たとえ「勝った」ところで、結果的にチャートの信頼性を損ねるような話が出てこないとも限らない。そして、もし「負け」たら武富士事件になぞらえられて、個人の言論を恫喝訴訟で潰そうとして負けたという汚名を着せられることになる。

オリコン側は100%勝てるつもりでいるかもしれないが、俺個人の感覚で見れば、この訴訟は法廷での議論の進み方によってどちらにも転ぶんじゃないかと思う。たとえオリコンが勝ったとしても、5000万円満額が得られることはないだろうし、裁判の過程でさまざまなブラックボックスを明らかにしなければならなくなるかもしれない。その「リスク」を考えれば、訴訟に踏み切ることは得策ではないと俺は思う。


●結論

長々と書いてきたが、とりあえず「現時点」での俺の結論を書いておく。

・迂闊なコメントをした烏賀陽氏も悪いし、それを見て真っ赤になって5000万円の訴訟を起こしたオリコンも大人げない。しかし、この件で一番責められるべきは(この件に関して)無責任な記事作りをしたサイゾー編集部・インフォバーン社にあるだろう。混乱を招いた多くの原因はサイゾー編集部にある、と俺は思う。

・オリコンチャートの信頼性というものは、恐らく今のビジネスモデルでオリコンがやっていて、ほぼ独占状態になっていることを考えれば、「買う側」からしてみれば重大な問題ではない。そして、今回のサイゾーの記事が出たことぐらいではその「信頼性」が揺らぐということはないはずだ。むしろ、オリコンがこういう訴訟を起こしたことで「何焦ってるの?」と信頼性を疑う向きが出てきたんじゃないか。

・信頼性の議論は「昔」の議論と「今」の議論が混同されがち。しかも、レコード会社が自主的に行う買い取りと、レコード会社とオリコンが「協議」して順位を変動させるのではまったく違う。音楽業界関係者に話を聞くと「どちらもある(あった)。しかし、操作できる幅はあまり大きくない」という意見が返ってくることが多い。オリコンは訴訟をすることでここを掘りすぎると、彼らにとって都合の良くない事実も出てくるのではないかという懸念がある。

・最終結論。1月9日の第1回公判の前にオリコンが訴訟を取り下げるのがいいと思います! そのときにサイゾーに事実関係があやふやだった「予約」の部分についてだけ謝罪記事を載せる、という条件で「手打ち」するのが、誰にとっても幸せなんじゃないかと思うんだけど……。


あ、一応自分の立場を明らかにしておくと、今回のこの三者。どことも付き合いはあります。烏賀陽さんとは普通に知り合いだし、共著出したいねなんて話もあります。

オリコンはORIGINAL CONFIDENCEに音楽配信の原稿を書いて、ギャラをもらった経験はあるし、過去に何度か取材に行きました。ORIGINAL CONFIDENCEのギャラはちょっと他の雑誌に比べると安いなーとは思いましたけど、特にそれでオリコンという会社に対して悪印象があったわけではありません。

サイゾーは何度か原稿書いたことあるし、メールマガジン版を出していたときは連載記事書いてました。あと、識者としてコメントしたこともあるし、基本的に僕はサイゾーという雑誌は好きです。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 08時15分 |

オリコン訴訟問題について音楽業界関係者に取材しました

この件に関して、「オリコンチャートは本当に操作が可能なのか?」ということをテーマに音楽業界関係者に取材を試みました。反応は実にバラバラで、この問題の複雑さの一端がこれらのインタビューである程度は明らかになっていると思います。

レコード会社、チャート関係、小売店、それらのどこにいるかということでもこの問題に対する見方は変わってくるし、入ってくる情報も異なるでしょう。立場が違う人からみれば当然「それは違うよ!」という意見もあるかもしれません。そういう方がいらしたらぜひ僕に連絡してください。取材させてください。このエントリはいろいろな取材ができ次第、どんどん追加していこうと思っています。

あと、取材原稿に入る前に書いておきます。僕の基本的な立場は何度か書いてますが、チャートが一企業が作成する「メディア」的な性質を有するものである以上、「ある程度の操作」は許容されるべき、というものです。

だからこそオリコンが「我が社のチャートは公明正大、何の曇りもないチャートなんです」と言って、個人に訴訟を起こしたことには違和感を持っています。「うちのチャートは歴史があって一番便利、要するにそれが信頼のおけるチャートなんですよ」的な大人な立ち位置でいれば良かったのにという部分がある。そういうことも踏まえた上で取材原稿読んでもらえれば。



それでは以下、取材原稿です。

●小売店(オリコン対象ではない) A氏

※言及したオリコンの時期:約15年前〜現在

――今回の一件、どうご覧になってます?

A氏:オリコンの数字が「統計的手法を元に出てきたデータに人為的な操作を加えて出てきた推計値」ということは歴然たる事実ですし、関係者も否定しないでしょう。でも、僕は「予約」がカウントに入っているという話は聞いたことないですよ。

僕が勤めている会社ではオリコンは立派な「指標」になってます。実店舗での感触とオリコンの数字の間に「えっ?」と驚くような大きな差があるということはほとんどありません。予約者が多そうな商品のランクが異様に上がるというケースはまれですし、そうした差異がジャニーズに集中しているということも一切ないですね。

もし店側で「予約数と実売数の合計」を報告するというのであれば、わざわざ「仕入れ数から減算」するなり、「実売数に加算」なりして報告しなきゃいけません。お店によっては内金を全額支払ってもらう形の予約を「売上」扱いで処理するところもあるみたいですが、基本的に「入金が終わっていないもの」を売上として計上することはPOSのシステム上絶対にできないんですよ。だってPOSって「レジ」なんですから。あれが売上管理のすべての礎です。お金をもらっていない状態で「売上」を操作するということは100%ないですね。

オリコンは調査対象店のリストを公開してますが、もし「予約」をカウントしているんだったら、あのリストにあるお店の全店舗が「仕入数」「予約数」「実売数」を報告していてオリコン側で合計処理を行っている、ということになる。だとすると「ジャニーズ以外で予約が多いアーティストも異常値が出ていないとおかしい」ってことになるんです。

例えばアイドルですね。ハロープロジェクトのファンは「イベント券目当ての空予約」がとても多いんです。一人でたくさん予約することでお目当てのイベント券が手に入りやすくなる。無事手に入ったらあとの予約はキャンセル、みたいなことは日常茶飯事です。予約の数値が入っているのなら、こういう特殊なアーティストのランキングが上がってこなければおかしいわけです。でも、プラネットやサウンドスキャンとランキングを比べたときにそういう話は聞かない。


――ジャニーズは特別扱いされているわけじゃないんですね。

A氏:端的にいうと、ジャニーズファンにはジャケット違いの商品や限定盤などバージョン違いの同商品を複数購入する傾向があるんですよ。オリコンの場合それらを合算するので必然的にランキングが高くなる。例えば、TOKIOのシングルはほとんどが「限定盤」「通常盤の初回仕様」「通常盤の通常仕様」の3形態、場合によっては限定盤が2種の4形態で発売されています。 コールセンターの担当者に聞いたことがあるんですが、店舗に「通常盤の通常仕様を発売日に入手したい」と問い合わせしてくるお客は圧倒的にジャニーズファンが多いそうなんです。もっとも、一部エイベックスのアーティストでもこういうことはあるみたいですけどね。

ジャニーズファンはオリコンの仕組みもよく知ってますから、一部の熱狂的なファンは「オリコンの調査対象店で買ってランキングあげよう」みたいな共通認識を持っています。熱狂的なファンが発売日に大挙して対象店に押し寄せて複数枚購入していく。ジャニーズの数値が上昇するのは当たり前すぎるほど当たり前ですよね。むしろ、それこそが「業界関係者の常識」ですよ。


――それは意図的な「ランキングの操作」ではないと?

A氏:つまりね。「業界関係者の常識」というのは「オリコンの数値は工夫次第で変動させられる」ということなんです。ここのところがポイントなんですが、「どうやってプラス方向に作用させるほうにファンを扇動するか」というころが重大テーマなのであって、「オリコンの数字はオリコン社内の人間の手によって意図的に捏造されている」ということではないんです……まあ、多少はやってるのかもしれないですけど。でも、僕から見て「明らかにこりゃ変だ」というようなケースはほとんど覚えがありません。ジャニーズであろうとB'zであろうとね。

だからこの問題を僕の視点から見たら、オリコンの数値すべてに予約数が含まれているとは考えにくい。もしかしたら多少は含まれてるかもしれないけど。あと、ジャニーズ絡みの数値は実際の市場より高めに出ている可能性は極めて高い。でもそれは要するにオリコンの「捏造」ではなくて、システムを知っている熱狂的なファンが作り上げた「現象」なんです。オリコンの数値を盲信するのはバカだと思いますが、「オリコンは捏造しているから信用できない」と言ってるやつもバカです。「都市型チャート」としては十分参考になる値ということですね。


――オリコン側が「チャートの信頼性」を殊更に主張しているのも十分理由があると。

A氏:オリコンからすれば、チャートの作成方法というのは丸秘中の丸秘なんです。だってチャートの作成方法を公開してしまうと「客を扇動して自分たちの思ったとおりの数字を出す」ってことがきわめて簡単にできますからね。当然複数購入されたときに「○枚以上の複数同時購入は弾く」みたいな指標は内部で持っていると思います。この数字がわかっちゃうと「○−1枚買えばいい」ということになってしまいますから。

17〜8年くらい前かな。オリコンウィークリーに確か「オリコンができるまで」みたいな1ページの漫画が載りました。そこではランキングができるまではファクスと電話で集計して、最後に秘密の計算をしてチャートができる、と書かれてました。秘密の計算については「企業秘密だから」と明らかにされてませんでした。当然その時代は今は違います。オリコンが公開している対象店のPOSデータからオンラインでもらっているということは事実としてわかりますが、じゃあその数字を何倍してどう計算すればオリコンが発表する数字なるのか、ということはブラックボックスになってます。ただ、僕はその計算方法がブラックボックスであることで担保される公正さ、というのもあると思ってるんです。以前はどこの店で調査しているかすら明らかにしなかったわけですし。

これは都市伝説と言ってもいいのかもしれませんが、まことしやかに言われていた話としては、以前はオリコンの推定ポイントって10枚単位だったんですよ。オリコンでは、調査対象店全店の中から「市場占拠率10%」になる組み合わせを4通り組んであって、その4パターンを毎週適宜使い分けている、って話を噂で聞いたことはあります。


――もう1つの論点として、昔はどうだったのか? ということがあると思いますが。

A氏:オリコンの調査用紙を見たことがあるのは20年近く前ですね。その頃は電話じゃなくてFAX送信でした。 確かに、あの形式ではウソ数値を書いてしまえばいくらでも工作はできます。 あれ、出荷数(店にしてみれば仕入れ数)を書いていたのか実売数を書いていたのかわかんないんですけど……「送りつけ商品」がいくらあっても実売を記入して返答していれば全然問題ないんですよね? このときは僕はこの業界にいたわけじゃないのでちょっとわからないんですよね。


――この問題を受けたネットの反応についてはどう思いますか。

A氏:1つ気になったのはこのブログの記事ですね。これは明らかに事実誤認だと思います。本当にすべて出荷数で決まっていたのならば「大した売上のない商品」は、送りつけられた店は2週目以降発注ゼロになりますし、後から発注する店は小規模店や特販ルートなど特殊店だけになる。これらはほぼ調査対象外ですから。となると、発売週に9割近くあるいはそれ以上の売上が集中する、ということになります。ランク下げるどころか、下手をすると50位圏外でランクアウトになるという結果になると思うんですよね。実売でやってるサウンドスキャンやプラネットとの差は今どころじゃなくなります。

ビクターとか東芝とかは僕の記憶が確かなら8年前くらいまで「送りつけ慣習」というものをやってました。ちなみに、ビクターは『SP』と呼ばれており、東芝は『オートサプライ』と呼んでいましたね。中にはとんでもない数量送りつけられてる商品もありましたけど、そういう商品が上位に出たことはなかったですね。

だから、そういう状況証拠的な部分から検証すれば「出荷枚数そのまま」がランキングに反映されているわけではないと思います。もし、オリコンの調査対象店勤務だったのならわかるんでしょうけど、そうでない人にはそれなりの大型店勤務でない限りブラックボックスなのではないでしょうか。

僕は小売店の中では非常に大きな企業にいたものですからわかるのですが、うちの会社で売れた数に「うちの会社小売業界における市場占拠率」から100%になるように掛け合わせたときの数字(註:市場占拠率が10%なら10倍、20%なら5倍、25%なら4倍、33%なら3倍ということ)が、オリコンの発表する数字と合致するケースは何度も遭遇しています。その意味ではオリコンが出している数字は、まったくデタラメなんてことはなくて、数字ベースでもそれなりの裏はあるんですよ。


――オリコンが行う「操作」ではないですが、レコード会社による「買い取り」についてはどうですか。

A氏:買い取り工作はあると思いますが、僕は買い取り工作って焼け石に水だと思ってるんです。オリコンにしろ、ほかのところににしろサンプリング調査ですから。例えば、シェア10%のサンプルを取って10倍して算出しているのであれば、対象店を完全に把握すれば、買い取り枚数の10倍の枚数をチャート上に計上できる計算になります。もっとも今は対象店も広がってるしオリコンではせいぜい3倍〜5倍が関の山でしょうけど。

シングル5000枚で500万円といいますが、これだけ投下すりゃうまいこと店を選んで成功したら1万枚〜2万枚くらいは水増しできるでしょう。だいたい30位近辺をうろうろしていたものを5位6位あたりに放り込むことができます。あとはゼロベース(ランク外)のものを10位くらいに放り込むこともできます。

1000枚100万円で、2000枚〜4000枚くらい水増しすれば、50位あたりのものをベスト20くらいには放り込めます。テレビや新聞に出稿して大衆を扇動してこれだけの枚数を動かすのは難しいですよ(笑)。もっとも、オリコンの順位だけ上がっても今はあんまりアナウンス効果もないんですが……。 どちらかといえば、オリコンの順位獲りって今は主に広告代理店とテレビ局対策のような気がするんですけどね。


●津田コメント
小売店の立場から「オリコンチャートは十分信頼のおけるチャートだ」とする意見ですね。「予約」の部分はかつてオリコンが「出荷」チャートだったのかどうかを検証する上で重要な論点を含んでいるように思います。10年くらい前にCDショップで働いていたというk_turner氏からの反論も期待したいところですが……。(追記)k_turner氏による反論が掲載されました。こちらも非常に興味深い内容なのでご一読することをオススメします。

●元小売店(オリコン対象店)B氏

※言及したオリコンの時期:約18年前

――平成元年頃小売店に在籍されていたということですが、その頃のオリコンチャートってどうだったんでしょう?

B氏:オリコンのチャートが操作可能なんてことは、レコードショップに在籍していたことのある人ならみんな知っている事実ですよ。チャート集計店一覧リストを手に持ってやってくる「CD買占め隊」の連中をさばいたことのある経験は、少なくとも僕と同世代以上のディーラー経験者ならゴロゴロいるんじゃないかな。

問題はこういう行為をどう捉えるか。オリコンではなく、チャート順位を上げたいメーカーからの回し者がやったことだとしても、虚偽は虚偽だよね。もちろん、オリコンに責任はないとする考え方もあるだろうけど。


――1つの論点ですよね。昔のチャート集計はどうだったのかというところは。

B氏:僕がチェーン店にいたころは、オリコンチャートのための報告は地区の事務所がかなり適当な数字をあげていたと記憶してます。なにしろPOSもない時代だったし、何よりいろいろ報告しなくちゃいけない集計データが多かった。自社内で上に提出する報告はデタラメを書くと怒られるのできちんと書いていましたが、それ以外の集計データなんて適当もいいところだったんじゃないかな。


――もう1つの争点になってる「予約を含めていたかどうか」についてはどうですか。

B氏:平成元年頃の記憶だから、曖昧な部分もあるんですけど、当時予約分というのは店頭から下げて「取り置き」していたため、初回発注数から店頭に出した分を引き算して「売上げ実績」としていたはず。だから、オリコンが「予約分を含めたことはありません」というのは実態に即していないんじゃないかな。


●津田コメント
昔のレコード店からオリコンへの報告がどのようになっているか、また当時「予約」がどのように扱われていたのかという重要な証言が含まれていると思います。

●元音楽チャート会社 C氏

※言及したオリコンの時期:約10年前〜

――今の音楽チャートを語る際に踏まえておくべき基本的なことってありますか。

C氏:要するにレコード店すべてにPOSがあって、そこで売れた枚数をチャートにする形式であれば今回みたいな話は出ないんですよね。対象店が限られている以上、「実売に係数をかけた比例値」にならざるを得ない。


――チャートが推計値になることの弊害って具体的にはどういうことがあるんでしょうか。

C氏:端的にいえば、集計する期間が長くなればなるほど売上が実売よりも大きくなってしまうという問題があるんです。発売から間もない状態で、いっぱい売れているうちは正確なんですけど、期間が長くなると累計の数字はどんどん実態と離れたものになっていってしまう。うちはPOSで報告する方式ですから、純粋に何枚売れたかというところは操作できない。ただ、それに一定の係数をかけて推計するというやり方なので、お店の入荷が少ないものがたまたま数枚売れただけでそれが「全国的には何百枚も売れた」ということになってしまう。サンプリング調査の弊害ですね。オリコンはこのことを多分よく知っていて、100位以下に落ちたもの関しては累計に加えないんですよね。100位以下まで落ちちゃったものの数字を累計に加えると実態と離れてしまいがちなことをよく知っているんでしょう。まぁこれは当時の話なんで今がどうなっているかは知りませんが。

累計数字はいろいろおもしろい話があって、レコード会社の人と話をすると累計数字がレコード会社のトータルの出荷枚数より大きくなってたなんてことも稀にありました。ただこれはうちの会社がそうだっただけでオリコンでそういうことがあったかどうかはわからないです。


――今回の事件の大きな争点になっている「オリコンによる意図的なチャート操作はあったのか」という点についてどう思いますか。

C氏:操作があったかなかったかでいうと、あったと思いますよ。普段はオリコンとプラネットってそんなにチャートは変わらないんです。でも、たまに明らかに結果が違うものがあった。明らかに違ったのはやはりジャニーズ系ですね。

それ以外で印象的だったのは宇多田ヒカルのファーストアルバム。あれ、ちょうど浜崎あゆみのアルバムとぶつかったんですよね。プラネットのチャートは2週連続宇多田ヒカルが1位だったんですが、オリコンは1週目が宇多田、2週目浜崎というランキングになったんです。あれは不可解でしたね。


――やはり、世間でよくいわれがちなジャニーズ系、エイベックス系が強いということなんでしょうか。

C氏:不可解という意味でいえば、プラネットだと40〜50位くらいのシングルが、オリコンだと20位台になってるみたいなことはよくありましたね。急上昇して20位台に食い込むとチャートの横にある赤丸欄に掲載されるので、ある種あそこが「広告枠」的になっていたんじゃないかと思いますね。ただ、それがレコード会社による買い取りの成果なのか、オリコンとレコード会社による協議の上の「調整」なのかは僕にはわかりませんけど。


●津田コメント
オリコンとは別のチャート関係者による貴重な証言です。標本調査の限界や、ランキング的に変な動きをした商品が具体例として出ているので、オリコンチャートがどのようなものかわかりやすいですね。

●元レコード会社 D氏

※言及したオリコンの時期:約25年前〜現在

――今回のオリコン問題についてお聞きしたいんですけど……

D氏:あんま詳しく答えられることはないよ。具体的な手段とかじゃなくて事実関係ぐらいかな。


――じゃあ、端的にお聞きしますが、レコード会社による買い取りによるチャート操作、もしくはオリコンとレコード会社による恣意的なチャート操作ってあったんでしょうか。

D氏:買い取りがあるのは当然として、レコード会社のプロモーターはオリコンに行って順位を調整するとか普通にしてたよ。ただ、「調整」には限界がある。50位のものを1位にするとかあからさまなことはさすがにできない。だからそれこそ2位のものを1位にするとか、40位のものを20位にするとか、100位圏外のものを100位以内に入れるとかだね。そういうのは昔は日常茶飯事的なものとして行われていたし、今だって多少はあるんじゃないかな。


●津田コメント
これはレコード会社の「買い取り」(オリコンに責任なし)だけでなく、レコード会社のプロモーターがオリコンに行って順位の「調整」を行っている(つまり、オリコンもグルになっている)という、ある意味で衝撃的な発言です。これが、真実であれば「かつては」なのか、「今でもやっているのか」ということになりますが……。

●音楽業界人(レコード会社勤務経験あり)E氏

※言及したオリコンの時期:20年前〜現在

――オリコンのチャートの操作があるかないか、という点で話をすると、よく「昔はあった」ということを言われますが……。

E氏:いわゆるレコード会社の「オリコン対策」でいえば、今でも普通にやってますよ(笑) 典型的なのはコンフィデンスへの広告出向ですね。広告を出せば順位が上がる。ただ、それで上げられる幅はそんなに大きくない。「広告入れたんだからトップ10に入れろ」なんて無茶なのは通用しません。100位圏外のものを100位以内に入れるとか、「右ページ」と言われている100位以内のものを「左ページ」といわれている50位以内に入れる作業とかですね。


――よくいわれる「買い取り」についてはどうですか。

E氏:もちろん「買い取り」はかなりの確率で行われていますよ。今は「チャート対象店」が明らかになってますから、レコード会社としてはとにかくそれらの店でPOSを通すことが至上命題になってる。僕が知ってる一番凄い買取はNというT社所属のバンドかな。1万枚の買い取りをしてました。Rというバンドが売れたのでそれの税金対策ってことだったらしいですが……。このバンド、さらに凄いのは収録曲減らして定価下げれば、同じ買取金額でも倍買い取れるということで買い取ったということですね。

探偵ファイルの記事でユニバーサルの買取表がアップされて話題になりましたが、あのときは「各店舗で○枚購入しろ」という指示書でしたが、現在のオリコンの集計はチェーン店舗のまとめたPOSデータを送信しているだけなので、今は足を使わず、本部一括で買取作業が行われているんじゃないですかね。最近だと、レコード会社の方から小売店に「買い取りやってくれ」なんて依頼もあります。しかも「卸価格を下げさせてくれ」というおまけ付き(笑)


――やはりそれだけ「買い取り」は常態化してるんですね。

E氏:誤解されがちですけど、「買い取り」は、あくまで仕組みを知ってるレコード会社がこれは勝手にやってることなんで、オリコンは関係ないといえば関係ない。ただ、いわゆる「チャート操作」のミーティングはオリコンとレコード会社でよくやってたのは確かですね。僕は参加したことないけど、取締役がしょっちゅう行ってました。あとは、特定の作品を1位にするために事務所やレコード会社が話し合ってる……一種の談合ですね。そういうことは常に行われてますよ。まぁ、それでもCDTVのチャートに比べればオリコンはまともですけどね……。


●津田コメント
今回取材した中で一番過激な内容かもしれませんね。「昔」「今」の問題をすっ飛ばしかねない、いろいろ重要なポイントが含まれていると思います。真偽がどうなのか、という点については読者の方の判断にお任せします。

●元音楽制作会社 F氏

※言及したオリコンの時期:約15年〜5年前

――制作会社だとオリコンとの関わりはどうしても深くなりますよね

F氏:うちの会社には邦楽セクションがありまして、そこでは担当者がオリコンに連絡を取り、上位に入れるよう働きかけることは日常的に行なわれてましたね。


――そういう働きかけって実際どうなんですか。レコード会社や制作会社がたくさんあってそれが全部そういう働きかけをやっていたらあまり意味がないように思いますけど。

F氏:それはそうですね。ただ、すべてではないですけどそれなりの確率であまり売れていない自社の商品がオリコンでは上位に入るということは珍しいことではなかったです。


――なんでそういうことが常態化しているんでしょう。

F氏:要するに制作会社の社員……少なくともうちの会社の社員にとって、オリコンへの働きかけというのは「それも仕事の一環」なんですよ。それをやることで担当しているミュージシャンに対する「これだけやっているんだぞ」「上位にきたからこれからだ、がんばろう!」的な演出ができると。オリコンのチャートというのは元からそういう側面があって操作は可能だということです。ただ、今にして思えば、レコード会社や事務所のアーティスト担当者にとって、売上実績とは別にチャートの上位に入れるよう交渉することは、単行本編集者にとっての各メディアに書評を掲載するよう働きかけるようなものだったのかもしれません。ようするに「自己満足」みたいな部分もあったんでしょうね。

●津田コメント
最後の部分の感覚は出版業界に身を置いている僕的にはとてもよく理解できるものです。この問題で結構重要なポイントで、要するにレコード会社や事務所からオリコンへの働きかけが「常態化」しているのなら、もはやそれは単に広告枠、スペースの奪い合いみたいなもんで、こうなるとチャートが「操作可能」とかいうよりも、むしろオリコンからすれば「この前はあそこのアーティストの順位上げたから、今回はこっちで」みたいな「持ち回り」みたいな感じになっていたかもしれませんね。


| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 08時00分 |

2006年12月22日(金)

烏賀陽さんのサイトに■お詫びと訂正■が

愛・蔵太さんのところで指摘されていた問題ですが、烏賀陽さんのサイトに「お詫びと訂正」がアップロードされました。

■お詫びと訂正■(UGAYA Journal.)

僕自身もこの問題を広めるのに大きく関わっていると思いますので、このことについての状況説明をいたします。

・烏賀陽さんからメールが届いたのは17日(日)の午前6時41分でした。

・その時点で書かれている内容に大きな衝撃を受けました。また、メールだけではにわかに信じられない内容だったので(本来なら烏賀陽さんに電話をかけて確認すれば良かったのですが、早朝で迷惑かもしれないと思い)、事の真偽を尋ねるメールと、事実なら応援する旨を伝えるメールを送信しました。

・メールは午前11時38分に返信が返ってきました。ただし、この時点で僕は睡眠していた(メール送信後、朝方に寝ました)ので起きたのは夕方です。

・僕個人としてはこの時点でいろいろな選択があったと思います。週明けになってオリコン側に電話で尋ねてみて事実関係を確認し、訴えられた記事で書かれている内容の簡単な裏取りをして論点を整理し、冷静なエントリを月曜日以降に上げるという選択もあったでしょう。また、そのときに「どのような内容であれ、チェーンメールを勧めるような知らせ方は良くない。きちんとugaya.comにアップしてそこにリンクして騒いでもらう方がいいでしょう」と烏賀陽さんにアドバイスするという手もあったと思います。

・なぜ、それをしなかったかといえば、今になって思えば僕も烏賀陽さんと同様に動転していた部分があるんだと思います。同じような立場で原稿を書き、取材活動をし、各種のメディアに「コメント」をしている僕にはそれぐらいインパクトの大きい内容だったし、はっきり言って「他人事」ではありませんでした。また、烏賀陽さんが今非常に差し迫った状態に置かれているということも容易に想像できました。

・僕自身がチェーンメール化を勧める情報を転載することにためらいがなかったわけではないですが、僕がアップする以前に武田徹さんの掲示板など、一部ネットにはこの内容が転載され始めていました。すでに情報流通が始まっているのならば、むしろこうした情報は拡散するより、ある程度アクセスが集まる場所で集約された方が良いだろうと思った部分もあります。そこで自分のサイトにエントリとして起こしました。

・ただ、僕はあの時点で「内容の信憑性」に関してはリスクを背負って配信したつもりです。僕は基本的に烏賀陽弘道というジャーナリスト、そして「Jポップとは何か」に代表される彼の仕事を尊敬してますし、まったく根も葉もない妄想を垂れ流す人ではないと確信していたからです。簡単にいえば人間として信用していたし、だからこそオリコンのやったことに対して(内容の是非はこれから検証するとして)僕は彼を支援しようと思います。

・その後、オリコン側からも早い段階でコメントが出て、訴えるのにはオリコンなりの理由があるということもわかりました。実際問題として、サイゾーに掲載されたあの記事の質は僕は非常に低いと思っています。ただ、なぜああいう形になって烏賀陽さんが訴えられたか、ということはきちんと検証して明らかにしようと思います。

・いずれにせよ、僕が情報が不確定な状態で扇情的なエントリを書いて、煽ったのは事実です。結果的に不確定な情報を蔓延させ、この問題に関する情報を錯綜させた責任は僕にも大いにあるでしょう。その点は謝罪いたします。申し訳ありませんでした。

・ただ、企業が「雑誌記事にコメントした人」に対して反証や議論をすることなく、5000万円という高額の訴訟を起こして言論を封じ込めようとする、ということについては今でも大問題だと思っています。特にJ-CASTニュースによるIR担当の「賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい」というコメント、そしてオリコン社長小池恒氏名義で出されたリリース内の「我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます」という2つのコメントは、資本力を背景にして自分たちに対する不利益な言動を行う個人に対して、訴状以前にまず行うべき、当事者間による内容の事実確認プロセスを省いて恫喝する意図をもって訴訟を起こしたということを公的に認めたと解釈できるもの(少なくとも僕はそう解釈しました)であり、メディアの場に身を置いている者として承伏できる内容ではありません。ですから、あのエントリで書かれていること、タイトルなどを変更するつもりはありません。これらのコメント、前者の方は本当にこんなコメントを裁判前にIRが出すのか、という疑念もあるのですが、後者、つまり社長名義のコメントとニュアンスを比較したときにほぼ同じことを言っているわけですから、それを鑑みれば「信憑性」はある(取材に対してIRがあのようなコメントをした可能性が高い)と言えるのではないでしょうか。

・こういう形で首をつっこんでしまった以上、僕もこの問題に対してきちんとコミットしていく責任があると思っています。訴えられた事実誤認の2点の検証と、なぜこのような訴訟問題に発展したのか、ということは烏賀陽さんとは離れたところで独自に取材をして、逐次本サイトにアップロードしていこうと思っています。

| 音楽業界全般 | この記事のURI | Posted at 02時15分 |

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